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血桜 襲〜編集する

最終更新： ne1107 ne1107 2023年01月01日(日) 11:08:34履歴

作者 : さくらもん ／ タグ : 妖精虐 鬼威惨 害獣 駆除


このシリーズの前の作品 - 血桜

襲

妖精ずんだもん…枝豆を好んで食べる謎多き生命体…
繁殖力が高いが故に、適応進化のスピードが異常に速い。生物の進化は、本来数万年単位で行われるものだが、ずんだもんは数年単位だ。
それ故、世界中の生物学者が興味を示し、こぞって研究対象にしている。

しかし大抵の個体は、他の小動物よりもほんの少し頭が良いだけ。
7〜8割の個体は、社会性を身に付ける可能性など皆無である。

…そう、その殆どは人間社会に対しての興味など皆無なのだ。

自分の家族の為であって悪気はないのか、或いは人間を完全に舐めきっているのか…それは個体にもよる。

しかし、人間の作物を大量に奪ったり、食い荒らしたりする様子は完全に害獣のそれである。



『…ふう。配信が終わってしまった…今日も楽しかったなぁ。』

「闇落ち農家」の名前でカカシの裏メンバーシップに登録し、ずんだもんの虐待動画を見始めてから早くも1年が経過していた。

１年半前、設立一周年を迎えた株式会社カカシに依頼をした張本人。それがこの農家、春山である。

現在は枝豆の他に、別な作物にも手を出している。

…枝豆の栽培量を、全盛期より控え目にしたため、土地が余ったからだ。

『あの畜生共め…！』

「春山の枝豆」は文句なしのブランドものだった。
非常に濃厚で肉厚。塩茹でも、天ぷらでも、生でも絶品であった。

田舎で生まれ、毎日に退屈していた子供時代。
たった１つの趣味としてやりはじめた筈の家庭菜園は、何時しか生きる意味と化し、遂には世界中に売り出すほどの味に昇華した。


『あの日から俺はどうしてしまったんだろうか…

我が子同然の枝豆に関して研究もせず、育てもせず、別なものにうつつを抜かすようになった。

駆除してもらうだけで良かったんだ。あんなに惨たらしく殺して欲しいと思ってたわけじゃないはずなんだ。

…そのはずなのに、さくらさんの動画を見ると、どうしても心の底から満たされてしまう。
今じゃ、少し暇になったら見るようになった。

…あの日から俺は…嗜虐心に目覚めてしまったんだな…。』

栽培規模を縮小した今ですら買いに来る客は相当多い。

貯金に関しても、億は下らない。

しかし春山の怒りは収まらなかった。



一番許せなかったのは…



忘れもしない、1年半前の朝。
朝日が霞むほど霧が濃く、不気味だった。





―1年半前―


ずんだもんに枝豆を盗み食いされることは、以前から度々あった。
この時点で相当洗練された味の枝豆ができていたため、盗み食いしたくなるのも当然のことだろう。

ずんだもんとて生態系の一部。
共に生きる命として、意思のある生き物をむやみに殺すことなどできなかった。

当時の春山は、畑に枝豆を盗みに来る個体の中で、会話のできる知能を持っている妖精を捕まえ…

群れに、協力関係を築くことを提案したのだった。

《ここのえだまめさんを…ここのはんいだけ…とっていいのだ！？こんなに！？すごいりょうあるのだ！！

そのかわり、えだまめさんをいっしょにつくってほしいのだ？

わかったのだ！こんなにおいしいえだまめさんなら、てつだうのだ！》

そうして春山は、辺鄙な山奥で貴重な労働力を得た。

ずんだもんの働きはかなり良かった。
害虫駆除、雑草むしり、間引き、病気の早期発見、種植え、どれをとっても的確だった。
野生ならではの、自然の植物に対する、直感の鋭さがあった。

また、ずんだもん達が使った技術や直感を、春山は経験として学びとった。ずんだもん達も、春山と協力して作った枝豆を美味しそうに食べた。


妖精ならではの視点と、春山の積み重ねた経験。
人と妖精のギブ・アンド・テーク。

世界に愛される程の味覚は、異種同士の共生と調和の証でもあったのだ。


純利益が1億円を達成したときは、金に無頓着な春山も流石に雄叫びを上げた。
ずんだもん達を…「相棒」を家に招き、自慢の枝豆を使って料理を振る舞った。

彼らも自分のことのように、喜んでくれた。金という概念が分からずとも、心は同じだった。




その枝豆が…俺「達」にとって娘同然のものが…

俺の宝が…




『どうして…根こそぎ無くなっている…

…どうして…アイツらが居ない…

いつもなら下山してきて畑のチェックをしに来る時間だ…この霧で遭難でもしたのか…？』


春山の畑の枝豆は…消えていた。
文字通り、そこには土しか残っていなかった。

湧き出てくる絶望感を抑え、春山は冷静に状況を把握し始める。

『…土には複数の足跡…
妖精達の…アイツらの足跡が残っている…
…何かあったなら、アイツらは飛んで逃げれるはずだ…何故こんなにボコボコと足跡が残っている…』

そうだ、屋根裏部屋！俺としたことが…アイツらの仮拠点として貸した場所を失念していた…

子ずん共々、そこに身を潜めているかもしれない！

当時の春山にとっては枝豆よりも、相棒達の安否確認が最優先事項だった。
それほど、ずんだもんが大切な存在となっていた。

急いで家に戻り、屋根裏部屋にかけ上がる。

息を整え、顔を上げる。

《……………………》

『…なんだ、いるじゃねぇか…随分と静かだな…？
あれ…いつもより多くねぇか…？』

普段下山して手伝ってくれるのは基本的に親ずん、それと見学でついて来る数匹の子ずんのみ…合計で8〜9匹程度である。

それがどういうわけか、ここには15匹も子ずんが居た。

…え？

『…ちょっと待て。親は…親は何処にいった…？』

《…………………》
ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ

どこか見覚えのある子ずん達は、春山の問いに答えない。

物音1つ、鳴らさない。


『まさか、でけぇ熊でも出たのか？
…落ち着け…熊にしては…枝豆が綺麗サッパリ消えすぎだ…
全く残ってねぇってのが、きっとヒントになるんだ…

…………嘘だろ？』

頭の中に1つの可能性が浮かぶ。しかし、もうそれしか考えられない。

『主犯は…妖精なのか…！？
どうして…？アイツらが？
いや、主犯がアイツらなら俺にガキを託して消えるわけがない…』

《……》

パニックになる頭をどうにか抑え、春山はとある番号に電話をかけた。
――――――――――

電話が鳴った。

『…はい、こちらカカシの技術兼社長のさくらです。はい。…春山重一様。…子ずんの保護？
……失礼ながらお尋ねいたしますが、妖精被害のご相談ですよね？駆除ではなく保護とは…？

…共生…共に枝豆栽培を…なるほど、そうだったんですか…それであの味を…はい、秘密事項ですね。かしこまりました。

それで…………畑から根こそぎですか！？

それほどの被害規模は私も初めて聞きました。
現場の写真をお送り頂けますか？そこから状況を把握いたします。では、後程。』

電話が切られた直後、パソコンに写真が転送される。

『…本当に根こそぎ無くなっているね…
見たことないよ、こんなの。

しかし不味いね、これがずんだもんによるものなら…
今頃、主犯の群れは栄養たっぷりの枝豆を大量にゲットして繁殖しまくってるはずだ
…何なら冬に備えて備蓄もできる量だろう…

依頼人はまさかの「春山の枝豆」の春山重一（シゲカズ）その人。ということは、盗まれた枝豆は文句なしの、世界一の品質…裏を返せば、ずんだもんを過剰繁殖させる程の栄養を蓄えているということでもある。

それを、農家の持つ大規模な畑から…根こそぎ…か。

人間からの略奪を厭わない攻撃性のある群れが、栄養たっぷりの枝豆を携えて大繁殖…

それは一般的に、脅威と言わないか…？

いづれにせよ、まずは春山氏の畑に向かうとしようか…。』

この時点での社長の考えは、まだ仮説の域を出ていなかった。

しかしこの後不幸にも、仮説は立証されてしまうことになる。

―――――――――――

ｶﾞﾁｬｯ

『春山重一様、遅くなってしまい申し訳ございません。カカシの社長、さくらです。』

『いえいえ、こんな濃霧の中、ご足労頂きありがとうございます…。』

社長は春山の畑に到着した。
早速、辺りを見回すも畑らしきものは「無かった」。

そう、そこには本当に「土地」しか残っていなかったのだ。

『では、早速現場を調べさせていただきますね。』
『ええ、よろしくお願いいたします。』

（…ここが畑か…電話で聞いた通り、確かに妖精の足跡が複数残っている。

問題は…足跡がここまで沢山残っていることにある。何かあったとしても、妖精なら飛んで逃げれるはず…

…待てよ、この足跡の向き…！）

『…間違いない。この件の原因は…春山氏と共生していた群れとは「全く別の群れの襲撃」…でしょうね。

着眼点は爪先の方向です。

…枝豆の生えていた場所に向かっている。つまり、この足跡は襲撃してきた妖精が、枝豆を持ち去る際に一度着陸してついたものでしょう。

そして春山氏と共生していた群れは…恐れながら、殺されている可能性が高い。

我が子を信頼できる人間に預けた後で親がやることなんて…1つですよね…。』

『……そんな…』
春山は愕然とする。

『…心中、お察しします。』

『しかしそうなると遺体は…？』

『…問題はそこなんですよ。

春山氏の妖精が畑に到着した時点で群れに遭遇したなら、もっと抵抗の痕跡があっても良いはず…それが、全く無い。

戦いの痕跡が……

…！

……春山さん、突然すみません。靴の裏を見せてください。』

『…え？…はい、どうぞ…？』

社長は、靴の裏を観察する。
そして自分の靴も片方脱いで、靴の裏を見始めた。

『あの…何を…』

社長が畑に目線を落とす。

そこには、人の靴の足跡があった。

『…この足跡、我々のモノではない…』
『バカな！ありえない…こんな山奥で人の気配など…昨晩、車の気配はありませんでしたよ…！？』
『ええ、有り得ません。ですのでやはり、ずんだもんが主犯でしょう。』
『では、この靴跡は…？』

社長が振り向く。

『…遂に、現れました。何処かにいるのではないかと思ってはいましたがね。まさかね…。


これ程の規模の畑を一瞬で蹂躙する統率力。間違いありません。』


社長は深く息を吸った。







『「人型」のオカシラです。』

襲来

『…春山さん、ここ回線は繋ががりますか？』

『山奥とはいえ、回線は通してあります…何故です？』

『私の予想がただしければ、畑を襲撃した群れは山を離れて人間界に降りるはず。

…人型のオカシラがいるなら、躊躇なく都心に向かうでしょう…。

ということは、今頃ニュースにでもなってる可能性が高いですね。』

『なるほど…わかりました。』

社長が、スマホの電源をつけて検索する。

『…！？これは…』

画面に写る冗談のような光景。

ビルが、道路が、空が、碧の斑点で染まっていた。

『覚悟しておいた方が良さそうですね…
これが春山の枝豆の栄養に起因するものなら、全国から誹謗中傷が来ますよ…。』

春山が振り向く。

『そんな…！』

しかし、社長は冷静に切り返す。

『ひとまず、すぐにでもずんだもんが発生した都心部に向かいます。春山さんは…残された子ずんを守っていてください。

…いざとなったら、春山さんを誹謗中傷から守る方法も…あることにはあります。

…最終手段、ですがね。

では、後程。』

――――――――――――――

『何だこりゃ！？』『おいおい、夢でも見てるのか？』『Twitterにアップしなきゃ……』


蠢く緑色の体。ずんだもんだ。

その何十万匹の斑点の中心。ビルの頂上に、ソイツはいた。

［…あの枝豆、やっぱり凄いのだ…！思った以上なのだ…！

農家の枝豆で増殖して、人間界に出てくる作戦は成功なのだ！

さて、次の命令を出すのだ！食料を奪ってさらに繁殖するのだ！

冬に備えて保存食も欲しいのだ！人間から盗んだ機械…カメラ…だっけ？…それを使って盗む対象を「絵」にしてあるから、それを盗むのだ！］

《オカシラ！わかったのだ！これをぬすむように、みんなにつたえるのだ！》

［行ってらっしゃい！］

見てくれは、完全に人間。しかし、緑色の髪と頭部の枝豆が人間である事実を否定する。
―――――――――――

携帯が鳴る。速報が入ったようだ。
車を脇に停めて、電源をつける。

『…ずんだもんの群れ、各地の卸売市場、並びに食料を強奪か…

倉庫の棚が倒壊し、人身事故…その他、物品の落下等により各地で被害多数…

合計死者12人、重傷者30人、軽傷者推定50人…警察、自衛隊が出動…

SNSにも写真が沢山上がっている………春山の枝豆…ずんだもんの食い散らかしの写真から民衆にバレてる…畑の枝豆を成長状態ごとに識別するためのラベルに、春山の枝豆のロゴが入っていたのが原因か…

…不味い、考えうる最悪の事態だ。もうやるしかない。』

体が震える。
『本当に…やるのか？』

これをやったら私は…これから先、きっと無駄な殺生に手を染め続けることになる。

命を、極限まで冒涜しないといけなくなる。

『…覚悟を決めろ、さくら社長。君がやらなきゃ、依頼人の春山さんが同じ道を辿るだけだ…！

……マトモに愛されたことなんて無いのに……こんな形で何処の誰とも知らない人を守らないといけないなんて……

ストレスを、擦り付けられたことしかないのに…擦り付けてきた人間達を守らないといけないなんて…私は守られたことなんてないのに…

嫌だなぁ……帰ろうかなぁ……』

社長は車を停め、道具を取り出そうと、取手に手をかけた。










『……仕方無い。生まれてきたのがたまたま地獄だったと諦めようか。


よし、やるぞ。



やるぞ…









…やるぞ！！！！』

周囲の人間が、奇声を上げる社長に好奇の目を向ける。

それは、これから始まる永遠の苦痛に対する、覚悟の咆哮だった。

ｶﾞﾁｬｯ

――――――――――――
数分後…


xxx市、大規模商品倉庫

『…はい。はい。もう、この倉庫の食料は全滅でしょう…商品にはなりません…。

はい、かしこまりました。許可いたします。あの倉庫は自由に使ってください。なるべく、他の商品と倉庫を守るためです。致し方ありません。

よろしくお願いいたします。』

ガチャッ

『…カカシ…ですか…。

頼みましたよ、さくら社長。』




《のだ！のだ！》
《くちょにんげんがしんだのだ！これでたべものをうばいやすくなったのだ！》
《あれもくちょにんげんにおとせば、たぶんしぬのだ！やるのだ！》
《わかったのだ！》

ﾋｭｯ!
ガシャン！

『うおっ！危ねぇ！』『くそ！キリがない！死者まで出しやがって、この豆畜生め！』

自衛隊が駆除に当たるも、駆除のスピードに繁殖スピードが追い付いてしまう。

そこに桜色の影が走って乱入してきた。

桜色の人間…いや人型のずんだもんの色違いは何も言わずに、アタッシュケースを開き…

銃の形状をした音叉とメガホンを取り出した。

同時に、倉庫の職員が遺体を退かす。

それを確認した社長は、メガホンの口と音叉を取り付けトリガーを引く。

『…覚悟ｯ!』


ガンｯｯｯｯ！！！

ｷｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨﾝ↑↑

《うごごご！なん…のだ…あたまがガンガンする…のだ…》
《からだにちからがはいらないのだ…》

ﾄﾞｻﾄﾞｻﾄﾞｻッ！

何百匹ものずんだもんが、宙から、棚から、一斉に落ちてきた。

社長は拡声器を音叉から外して口にあてがう。

『今です！自衛隊の皆さん！棚を倒して！ずんだもんを一気に潰して！遺体は予め移動しております！責任者からの許可も降りてます！』

『お…う？いや、そんなこ』『話は後です！早く！この音、不意打ちだから効いただけで、長くは持ちませんよ！』

一瞬戸惑ったが、流石は自衛隊。連携を取り戻し、あっという間に端の棚を倒して…

次の棚に当てた。

文字通りのドミノ倒し。ずんだもん達は大質量の下敷きになった。

《う…うごご…ごフッ》
《くちょにんげん…あふっ…なにをする…の…だ…》

時間にして20秒。推定600匹に登るずんだもんが、逃れた数匹を除いて駆逐された。

すかさず、社長は次の行動に移る。

『…よし、次。

皆さんの上司から伝達です。読み上げます。

「現時点をもって、この部隊の担当する妖精掃討作戦の現場監督は、株式会社カカシの社長とする。」

…私がその社長、さくらです。指示を受けて、ここに来ました。これから、次の作戦を伝えますので、B3の棚の前に来てください。倒壊しておりますので十分気をつけて！』

『現場監督か！わかった！
各員！集合！』『了解！』

ｻﾞｯ!

『点呼！』『1！』『2！』…

『安否確認完了！
では、指示をお願いします。』

（…凄い連携…。これなら…………）

『…まず皆さんに、私の知っている情報を全て伝えます。』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『人型の司令塔がいる…聞いたこともありませんね…』

自衛隊の一人が首をかしげる。

『ええ、前例はないと思います。

しかし……よいしょ…

この5つの箱を見てください。これは、先程棚を倒す前に棚からランダムに拝借したものです。中身を見てください。

倉庫と箱についた番号から、ここに何が入っていたのかを教えて頂きました。

この倉庫には、基本的にお菓子や非常食が収納されていたみたいなんです。

…盗まれたものは全て、カンパンやクッキーなんですよ。

挙げ句に…食い散らかしが、全く無い。一切のつまみ食いをしなかったんです。
あの妖精が、ですよ？

確かに、これから来る冬や人間との戦いに備えたければ、カンパンやクッキーはかなり効果的です。

しかし、妙に作為的だ。

しかも通常、カンパンは固い缶に入っています。妖精は、缶切を使える頭脳も缶切自体も持ち合わせていません。盗んだところで意味がない。

ならば過去に類を見ない頭脳を持った司令塔…そう、人型のオカシラが居ると考えるのが自然です。』

社長は深く息を吸った。

『……しかし、ただ駆除するだけではキリがない。

オカシラが殺られる様をずんだもん達に見せつけなければ、この統率は崩壊しません。事態は絶対に収束しません。

…ならばもう、これしかない。』

社長は、深く息を吸った。

『…人型オカシラを見つけ出して、ずんだもん達の目のつくところで殺害します。

それを見たずんだもんは、リーダーを失ったことで大混乱に陥り、一気に駆除しやすくなります。』

社長は震えていた。
今から、人に近い何かを「殺す」と宣言したのだから。

『人型の位置に関しての、心当たりは？』

『ある…というより』

ﾋﾟﾋﾟｯ

『もう見つけました。』

『え！？まさかGPSを…！？…あんな数の中から、この短時間で、一匹に絞って…！？』

隣で見ていた倉庫の職員が驚く。

『これだけの数を偵察＋作戦伝達部隊無しで統率するのは無理でしょうから。

その偵察部隊を見つけて、私の仲間に追跡させています。

仲間に、GPSをつけています。…場所は…このビルです。』

社長は地図を取り出し、1ヶ所をマークをした。

『対象が移動したら、都度連絡いたします。まずはここにいきましょう。気付かれないように、解散して各自ここに向かいます。

作戦は以上です。解散。』

『了解！』

―――――――――――――

ﾌﾟﾙﾙﾙ…ﾌﾟﾙﾙﾙ…

『…GPSが止まったけど、見つけたかい？』

《見つけたのだ。人型は今、ビルの頂上にいるのだ。僕は鉄骨の上に隠れているのだ。

ザ…ｻﾞｻﾞ…

風が強いのだ。こっちに来るなら気を付けて！》

『分かった。ありがとう。見つかったら不味いし、君は撤退して良いよ。

…心配しなくても、あと数分で全て片付ける……』

《やっぱり…殺すの？》

『それしかない。

「ワトソン君」、君も覚悟を決めろ。』

《…分かったのだ。》

ピッ

『…さて、行こうか…。』

逆襲

《くちょにんげんから、たべものをぬすんだり、ぶっころちているのだ！じゅんちょうなのだ！》

［良いね。うまくいってるのだ…！人間達もこれで僕たちの奴隷なのだ！］

《とうぜんなのだ！》《ぼくたちにさからうからなのだ！》

人型のオカシラは、顔が綻ろんでいた。
森の木をむやみやたらに切り倒し、自分達の住み処を潰しに潰してきた人間が、今や自分達に対して手も足も出ない。

ざまぁみろ、とでも言いたげだった。

妖精の数は、春山の枝豆のお陰で数百万匹に膨れ上がっていた。もう、勝利は目前、そう考えていた。



［あはは…！うまくいﾊﾞﾝｯ!


ｷｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨン


桜色の髪をなびかせ「廃ビル」の頂上に立つ影。

オカシラをGPSでとらえてから、実に数分。
恐ろしいスピードで現場に到着していた。

右手にはナイフ、左手には先程の音叉が握られていた。

《うごご…なんなのだ…この、おと…》

ﾄﾞｻﾄﾞｻﾄﾞｻﾄﾞｻ

妖精達が爆音で不意を突かれて落下する。

暗殺者は猛烈なスピードでオカシラの背後を取る。

ﾄﾞｽｯ!

［…………………………………え？］
ﾌﾞｼｬアアアアアアアアアア！

［アアアアアアア！！］
背中から緑色の噴水が吹き出た。

左手の音叉を耳に、ゼロ距離で構える。

［！？］

ﾊﾞﾝｯ!
ｷｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨン

ﾌﾞﾂｯ!

人型の鼓膜が破けて何も聞こえなくなった。

［この…！何するのだ！］
この人型もバカではない。懐に隠していたナイフを取り出し、逆手に持って、後ろにいる暗殺者に突き刺そうとした。

しかし暗殺者は、左手の音叉で籠手を打ってナイフを無力化した。
メガホンは外してあった。全て計算していたとでも言うのだろうか。

［いだっ！］
金属棒が籠手に突き刺さる。

背後をとった影は、そのままナイフを引き抜いた。

ｸﾞｼﾞｬｯ!

［ゴフッ！］
緑色の血が口から吹き出る。

ﾄﾞｽｯ!

抜いたナイフを次は、右膝の裏に突き刺した。そしてすかさず左足を少し引っ掻けながら、体を回り込ませる。

オカシラはあっという間に倒れこんだ。
［うわっ！］

目の前には何故か音叉があった。
そのまま左目に突き刺さる。

ﾄﾞｽｯ!
［うぁああああああ！］

暗殺者は、すかさず引き金を引いた。

ﾊﾞﾝｯ!
ｷｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨｨン

［あ…うご…］
頭蓋骨と脳みそが振動する。

オカシラは、そのまま倒れた。

倒れた隙に、ナイフをゆっくり拾い上げ、

ザクッ！ザクッ！

両肩に一回ずつ、深々とナイフを突き刺した。

［あ…あ…］

暗殺者は…

社長はオカシラの首もとにナイフを当て、耳栓を外した。

ザ…ｻﾞｻﾞ…

『…各隊員に連絡。無力化完了。繰り返す、無力化完了。事前に伝えた通り、例の準備を頼む。』

ｻﾞｻﾞ…

（バカな…速すぎる…！我々はまだ例のビルに到着すらしてないんだぞ…！？）
『り…了解…』

ｻﾞｻﾞ…ﾌﾟﾂｯ

『…さて、君がこの群れのリーダーだね？
……鼓膜が破れて聞こえないか。』

［あ…ぐ…オマエ…何者なのだ…］

『私が誰なのかよりも、今の状況を質問したまえよ。その方がよっぽど建設的だ。

…私はさくらもん。
忘れたのかい？

…聞こえるわけないか。
しょうがない、筆談にしよう。右目は見えるはずだ。』

ｶｷｶｷ…
ﾋﾟﾗｯ

【ごめんよ、こっちの都合で君をズタズタにして。】

ﾋﾟﾗｯ

【でも、人間を大勢殺しちゃったのは不味かった。悪いけど、惨たらしく死んでもらう以外の解決策は無い。】

［…え…やめて…もう退くのだ…だから］

社長は、人型ずんだもんのズボンを下ろした。

ずんぽが露になる。

ナイフがそこに近付く。

［え…ちょ…やめるのだ！やめ

バ



ス



ッ






［ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…］
《オカ…シラ…》《まずいのだ…》《でもすこしずつからだがうごくようになってきたのだ！みんな、オカシラをたすけにいくのだ！》
《ぼくはなかまたちをよんでくるのだ！》



社長は、何故か大粒の涙を流していた。


『……ごめん………』
腰のスプレーを、震える手で構える。

カチャ
【飛行鈍化剤】

妖精が宙に浮き、体制を整えたその刹那、

ｼｭｰｰｰｰｰｯ!

《うわ！からだがおもいのだ！…あ…ここ…そういえば、すごくたかいところだったのだ……！》
《やだ…！やだ！からださん！うごいちぇ！とんで！とんじぇ！》
《ふぐ…ふぐぐぐ！…うわ…》

《《《《ああああああああああああああああああああああああああ……………………》》》》



ﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬﾄﾞﾁｬ

ずんだもん達の生涯は、スプレーの噴射1回で、呆気なく地面に叩きつけられて終わった。


［…みん…な………………］

『……………君には、更なる地獄が待ってるんだ……本当にごめん…………………………

ずん之介（ずんのすけ）……………何でこんなことになってしまったんだ……』

社長は、発狂しかけていた。



株式会社カカシは、xxxがずんだもんのことが「大好き」だから設立した会社だった。
各地で迷惑をかけたずんだもんに捕獲依頼が来れば捕獲し、駆除依頼が来れば「こっそり捕獲し」駆除したと嘘をついて、連れ帰っていた。

そして会社の従業員として妖精を雇い、裏で他の仕事をさせながら更正させる。
これがカカシの、バイト要らずの労働力の秘密だった。

無論、どうしようもないくらい性格に難があるときや、人身事故を起こしてしまったときには泣く泣く駆除もしていた。
全て綺麗事で何とかすることは、出来なかった。

それでも、彼もまた、春山と同じく共生の道を選んだのだ。

そのきっかけは15年前に遡る。

人間に拒絶されたxxxにとって、学校帰りに畑で会う妖精達は友達そのものだった。

ある日出会った、群れのリーダーの人型ずんだもんとは、それはもう何年も親友だった。

…タバコの不始末で発生した山火事に、住み処の森が巻き込まれるその時までは。



xxxは気づいていた。このオカシラが、その親友であることに。

スッ転んで顔にできた顔の切傷が、山火事でできたであろう火傷が、

人間から分けてもらい、夕陽を見ながら分け合って食べたカンパンとクッキーが、保存食であるということを知っていた事実が、

その残酷な真実に、信憑性を持たせていた。




xxxが親友を背負ってビルの階段を下りる。

『………』

その目は、徐々に狂気に侵食されていた。

――――――――――――――
『…自衛隊の皆さん。この通り人型は無力化しました。これからこれを使って、町にいる数百万の妖精を大混乱させます。』

『了解…。』
作戦の概要を予め伝えられた隊員が眉を潜めながら準備をする。

それは、「残虐非道」を具現化したような作戦。

『…これから、彼を裸にして、車の上に立てた看板に括りつけて街中を走り回ります。

…晒し者です。

オカシラがやられた事実。これをもって妖精達を混乱させ、その隙に自衛隊のみなさんに妖精を駆除していただきます。…では、私はこれで。皆さん、くれぐれもお気をつけて。』

ブロロロ…

親友を乗せた車が、ゆっくりと発進し始める。

ヒラヒラヒラ…パタッ

その時、開けていた窓から一匹のずんだもんが車内に入ってきた。

《ただいまなのだ。》
『おかえり、ワトソン君。作戦は成功だ…

よくスパイをやってくれた。

人型に気付かれる可能性はあったが、何とかなったようだね。』
《そんな、僕は…何も………社長こそ、お疲れ様なのだ。》

『…う、む…』

ツー…

頬を、涙が伝う。

《……》
『……』



静寂。




先に口を開いたのはxxxだった。



『ワトソン君。人間はどうして、ずんだもんの駆除を我々に依頼するのだと思う？』
《…突然どうしたのだ。…僕に聞いてもそんなのわからないのだ。
僕が知っているのは、僕が覚えてる分の知識だけなのだ。》

『そうか…ならば教えようか。

人間はね、自分達が被害を被った怒りで、或いは単に邪魔だから、わざわざずんだもんに全滅してもらおうって考えるんだ。不思議だね。

捕獲じゃダメなんだって。ね。』

いつの間にか、涙は止まっていた。

『だから、惨たらしく殺してやる…それが人間達のイイブンらしい。

でもさ、そのイイブンは…妖精達がいっつもピーピーと語ってくる傲慢生意気な言い訳と何が違うのさ。

「自分達が許せないから、自分達が欲しいから、自分達が満たされないから、乱暴狼藉を働いても良い。関係ないやつも、同じ種族なら巻き込んで良い。」

どっちも言ってることとやってること、全く同じじゃん。

だからね、私は…

人間が、ずんだもんにしてきたことをそっくりそのまま受けても…なんの違和感も感じないね。』

ﾆｨ…

『君もそう思うだろう？ワトソン君。』
《…社長…？》

『勿論、その逆も然りさ…

……あははははははははははは……』
《…社長！しっかり！狂気に飲まれちゃダメなのだ！》

『あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは』









愛してるよ、ずんだもん。
ずっと親友だよ、ずん之介。

さぁ、殺し合おうじゃないか…君たちが望んだ通りに…





🍷

嗜虐






食後、笹で口を清めていると、社長の口笛が聞こえた。

『出張を頼みたい。出てきたまえ！』

《はいのだ！》《おはようございますのだ！》

開け放った窓から、事務所に妖精が2匹入ってきた。

この2匹は社長を知っているようだ。何故、逃げ出さないのだろうか。

その妖精は、いつもの緑色ではなく、薄茶色だった。

『貸した本は読んでるかな？』

《本は、昨日読んだのだ！参考になったのだ！》

『素晴らしい！
人型になれずとも、努力をすれば経験値が上がり、枝豆は大豆に昇華する。
通称「オオガシラ」…だいずもんはこうして誕生する。
これからの成長も、楽しみにしているよ…！』

《ところで社長、今日の仕事は…やっぱり屠殺なのだ…？》

『うむ。実はそうなんだ。君たちには少し酷な話だが…人身事故案件だから屠殺しかないんだ。

そうそう、そういえば春山さんがこの前…配信……
そう、画面越しに私に会いに来ていたよ。』

配信…？

《春山おとうちゃ………》
《社長、春山おとうちゃには、僕たちは元気に頑張ってるからって伝えて欲しいのだ。》

『賢明だ。

今、春山氏に近づいたら君たちは、暴走した嗜虐心の生贄になってしまう。

あの日彼は、頭をおかしくしてしまったからね。』
（私と同じように…ね。）

この2匹の「オオガシラ」は、僕と同じく社長に雇われているらしい。

『さて、例の町に繁殖しているずんだもんだが…
厄介なことに、オカシラが複数潜伏しているんだ。

私の噂はもう出回ってるだろうから…私は出向かずに、スパイを送って何とかしてみようと思う。

君達には、そのスパイ役をやって欲しい。

幸いにもオカシラ含めて、知能はそこまで高くない。潜伏は容易だろう。

オカシラの座標がわかったらその機械で猟友会に信号を送って離脱するようにね。

一応、猟友会には君達の存在を伝えてはいるけど…離脱が遅れると、駆除の巻添えになるかもしれないから気を付けて。

…では、解散。いってらっしゃい、無理はするな〜。』

《いってくるのだ！》《ラジャーのだ！》

スィ〜ー…

［…今までの妖精達より圧倒的に賢そうだったけど…彼らは…？］

『賢いとか…ソレ、君が言う？

…彼らは、人型になれるポテンシャルは無かったんだけど、育ちが良くてね。元々、春山氏の枝豆畑で共生していたずんだもん…

…その、子ずん達だね。
親ずんは色々あって全滅したんだ。

妖精の知能の限界はどの辺りなのかを知るための実験も兼ねて、仕事をしてもらっているんだよ。』

［驚いた。妖精が従業員なのか。］

『今に始まったことじゃないさ。

…そう、昔からさ。
…そうだろう？ワトソン君。』

社長が空を見上げる。

［…？］

『あぁ、君の事じゃない。
昔いたんだよ、ワトソンっていう助手が。君は二代目なのさ。

…さて、私も仕事を始めようか。無線で指示を出すから、受信機を準備しないと。』

そういうと社長はそそくさと裏手に歩いていった。

―――――――――――

《町に着いたのだ！皆！！ついてきてるのだ？》
《15匹全員揃ってるのだ！問題ないのだ！》
《のだ！》《のだ！》《のだのだ！》

《僕たち2匹はオカシラをマークするのだ。難しい仕事だから、これは僕達がやるのだ。
他の皆はそれとなくシモベ妖精に紛れて、群れを罠に誘導するのだ。
どうせ敵味方の見分けなんてつかないのだ！

「あんなところに、ずんだ餅があるのだ！」と叫んで、ずんだ餅が仕掛けられた罠に誘導するだけで良いのだ！

くれぐれも逃げ時は間違えちゃダメだよ！誘導したら、すぐ離脱するのだ！
話によると罠は毒系。僕達にも効き目があるのだ。気を付けるのだ！》
《それじゃあ、解散！気を付けて！》

《いくのだ！》《オオガシラも気を付けるのだ！》《お互い頑張るのだ！》

オオガシラ2匹を筆頭に、15匹は町の外れで散開した。


オオガシラが口を開く。

《僕達はまた、同胞を手にかける…皮肉なことに、同胞の死骸の上に僕達は生きているのだ。》
《しょうがないことなのだ。僕達ずんだもんは、残念ながら無知を具現化したような存在なのだ。

本で読んだことがあるのだ。難しいことはよくわからなかったけど…僕達の事情で人間さんの生活を脅かしてしまったから、ずんだもんは駆除されるようになったのだ。

僕達ずんだもんには普通、沢山家族さんがいるのだ。その家族さんのために人間さんを襲撃して、食料を盗んできた歴史があるのだ。》

《その心に、罪はないのだ。
…襲撃された人間さんにも、愛する家族さんがいた…それだけなのだ。
どっちが悪いとか悪くないとか無いのだ。強いていうなら、人間さんの家族に目を向けずに侵略しようとした僕達が悪いのだ。

かつて僕達の親が、春山のおとうちゃと成し遂げたように、共生の道も確かにあったというのに。》

《…辛いのだ…。》
《…一緒に乗り越えるのだ。辛くとも、明日はやって来るのだ。

それに、僕達は一人じゃないのだ。仲間も、社長さんもいるのだ。

僕達は僕達の愛するもののために、愛する日常のために、同胞を生贄にするのだ。

それがオオガシラの仕事なのだ…。》

――――――――



『フフフ…私考案の毒罠…味わいなさい…！

罠の近くにこっそりカメラも仕掛けましたし…この毒が発動する瞬間が待ち遠しい…ｯ!
アぁっ！待ちきれませんなぁ！』

画面には、檻型の罠が写し出されている。檻の中にはずんだ餅が大量におかれている。

《あっ！あそこにずんだ餅が沢山あるのだ！》

《えっ！ほんとなのだ！やったのだ！》《ぼくがぜんぶたべるのだ！》《くちょにんげんちょろすぎなのだ！》

スパイ役が到着した。うまく誘導したようだ。

スパイ役がこっそり上空に離脱していくのと同時に、100匹近いずんだもんが罠に入った。

《おいち！おいち！》《うめ！うめ！》《ずんだもち！ずんだもち！》《ちゅごいのだ！おいちいのだ！おいちいのだ！》《たべおわったらへこへこするのだ！》


『素晴らしい！100点です！

さて、メインディッシュといきましょうか。

…文字通りの、虐殺だ！！』

ポチッ
カシャン！
《…え？》《とじたのだ！》


檻の入り口が

地獄の門が、口を閉じた。



ボフッ！
《ケホッケホッ…なんなのだ！》

檻の上のノズルから何かが出てきた。

『…それはとあるキノコの胞子。
名前は妖精茸。妖精に寄生して繁殖することもできるキノコです。比較的短命なのが特徴ですね。
妖精の繁殖力を利用して、嵐のように増えるキノコです。』

ﾑｸﾑｸﾑｸﾑｸ…
《うわ！からだからキノコがはえてきたのだ！》

『…そう、妖精が胞子を浴びるとひとたまりもない。数分でキノコまみれになります。

全身をくまなく寄生されて、エネルギーをエグいスピードで奪っていきます。

…しかしそんなことは、どうでもよいのです。残念なことに、これだけじゃ死にませんから。』

ﾑｸｸｸｸｸｸｸ
《むおっ！？どんどんおおきくなるのだ！》
《あはは！おもちろいのだ！》
《きのこさんなのだ！》
《からだからずんぽがはえてきたのだ！》
《へこへこはしないのだ！》
《ずんぽからもはえてきたのだ！なんなのだ！》



ﾑｸｸｸｸｸｸｸ…
ﾑｸｸ…ﾑ…

キノコの笠は、急に成長をやめた。

『そう、すぐに成長に限界がが来る。

…重要なのはね、』

ﾆﾀｧ……

『キノコが体から離れて、本来の生息域である地面に帰る瞬間…！
体から抜け落ちる瞬間なんですよ！』

プチ…

《ギャッ！》《いだいのだ！》《きひっ！カヒュッ》

ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!

《《《ぎゃああああああああああああああああああああ！！》》》ﾋﾞｸﾝｯ!ﾋﾞｸﾝｯ!

ジョロロロロ…

ずんだもん達は失禁、脱糞しながら痛みに身を捩らせた。

汚物には、緑色の血も混じっていた。皮膚がズタズタになり、血が流れていたためである。


『…このキノコに寄生されたずんだもんの死骸を解剖した結果…驚くべき事実が判明しました。

死因の10割は、ショック死だったのです。

そう、エネルギーを吸いとられたことによる衰弱死じゃない！

キノコの根っこが、体から引き抜かれる痛みで死んでいたのです！
素晴らしい！素晴らしい！何と素晴らしい！

おお、愛しの妖精茸よ！食べても美味しい妖精茸よ！存在してくれて、どうもありがとう!
あはははははははははははははははははははははは！！』

ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁ
《《いたいいたいいたいいたいたちゅけてたちゅけていだいいたいいたいいたいいたいいい！！、あ！ー！、ー！あ！。！、！ー、！、！あーーーー！》》

画面の前のずんだもん達が、のたうち回りながら声にならない叫びを上げている。

四肢とお尻を、もぞもぞと動かして痛みから逃れようとする。しかし、キノコは根を介してしっかりと体に固定されていた。
宿主に激痛を与える瞬間を、心待ちにするかのように。

いつもの高音ボイスも、心なしか掠れ声に変わってきた気がする。

［……惨い…］

『ワトソン君にとっては、面白くないだろうねぇ…
でも…私は…好きで、しょうがない❤️

…素晴らしいですよぉ…！』

ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁ
《ギャッ！》《ひぎぃっ！》
《ゆる…ちて…》

ﾌﾞﾁｨﾌﾞﾁｨｯ
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁ

ﾌﾞﾁｨｯ
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁ

許しを乞うても、容赦なく抜け落ちる絶望。


その命と共に、茸は地面に落ちていった。

嗜好







《あ…………………………………》

ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞ………………………………

画面の前で力尽きるずんだもんの群れ。
妖精茸は容赦なく、罠にかかった全ての命を刈り取った。

『素晴らしい！素晴らしい！拍手喝采です！仕入れた甲斐がありました！』

社長が嬉しそうに手を叩く。

社長は、こんなことを毎日のようにやっているのか…？

『さて、次の仕掛けといきましょうか。
そもそも、妖精茸の胞子の拡散射程はそこまで広くないのでね。仕方無いですね。妖精に寄生して増えることは可能ですが、本来は土に根を張るキノコですから。』

と、ここで無線を受け取ったようだ。

ザザザ…

《小声。

こちらだいずもん。
オカシラの集会を発見したのだ。そのうち一匹は、シモベの様子を見に行った際に、一緒に罠にかかってキノコまみれになったのだ。

妖精茸の胞子とは、流石社長なのだ。相変わらずやり方は酷いけど、理には叶ってるのだ。罠から聞こえた大音量の悲鳴でオカシラ達とシモベ達が震え上がって怯んでいるのだ。

お陰で、統制が少し崩れたのだ。》

『計算通りだ。やはり悲鳴は効果抜群だったね。

さて、いよいよ本命中の本命だ。

だいずもん2匹はそこの座標を猟友会に伝え次第、離脱していいよ。索敵ご苦労様、残りの13匹は私に任せなさい。
帰りも気を付けてね。』

《ラジャーのだ》

ザッ…ザザ…
《社長！恐らくこれで、全ての罠が起動したのだ！》
《次はどうするのだ？》

『残りの13匹も上手くスパイをやってのけたようだ。迅速だね。どうりであっという間に統制が崩れるわけだ。素晴らしい！
さて、君達も大急ぎで町から撤退してくれ。

…耳栓を忘れずに。』

《お疲れ様なのだ！》《このまま上空から帰るのだ！》《では、帰るのだ！》

ｻﾞｻﾞ…
『猟友会に連絡。ムーさん、聞こえますか。私の従業員達はもうじき撤退します。例の道具は用意できてますか？』『スイッチ1つで発動できますよ。』『了解。押してください。』『かしこまりました。』

ボッ……ｼｭｰｰｰｰｰ


ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…ン

《うごっ…》《あたまが…クラクラするのだ…》《うげ…ﾊｷｿｳ……》

ﾄﾞｻﾄﾞｻﾄﾞｻﾄﾞｻｯ
妖精達がアスファルトの地面に叩きつけられる。


発動したのは専用音響兵器。

その音を、町の各地に設置された拡声器に伝える。
この兵器は、ずんだもんが苦手な音を出すように調節してある。

それは同時に、虐殺開始の大号令でもあった。

『さぁ…絶望の、始まりだ！！！』


ｳｩｰｰｰｰﾝ

次の瞬間ドローンが、家の敷地から、役場から、無数に出撃する。


ｷｭｲｲｲｲｲｲｲｲｲｲ…ｳｨｰﾝ

ｼｭﾊﾟｧｧｧ…
サラサラサラ…


《なんなのだ！》《まだ、からだがうごかないのだ！》《なにかやばいのだ！みんなにげるのd…ゴフッ！けほっ！からいのだ！いたいのだ！》《おぎゃー！おぎゃー！》《おとうちゃ！ぜんしんいたいのだ！ひりひりするのだ！》

町に蔓延るずんだもん達に、「辛味の雨」を降らせる。

『例えば…

ずんだもんに荒らされて使えなくなったスーパーから、被害にあった家庭から、辛味を集める。

デスソース、とうがらし、一味…

それを水に溶かしてドローンで散布する…猟友会も考えましたね。辛味は虫除けに使われたりしますし…所謂、激辛デスソースを散布するだけですので町への被害は最小限で済みます。下手に毒を撒いて土壌汚染するより、全然賢い。

この激辛液が、ずんぽに一滴でも垂らされれば、ずんぽがヒリヒリしすぎてヘコヘコできなくなる。中々賢いですね。

……でも、それだけじゃ無い。ドローンは少量の生石灰も散布している。

ｸﾌｯ…あはは…はははははははははははははははははｯ!

やった！やった！やっちゃった！
掃討性能はピカイチだったものの、あまりの残虐性に猟友会が封印してしまった駆除方法！！緊急事態故に、使わざるを得なかったんですねぇ！？嬉しいですよ！！！あはははははははｯ!』

―――――――――
町の中心部、市役所内。
臨時掃討作戦司令部にて。

猟友会員：村田義人
（むらた よしひと）

通称：『ムーさん』

『さくら社長、あの若さで、なんという狂気…なに食ったらああなるんだか。
底抜けに、悪趣味な人だ。

我々が「これ」を解禁する様子を見て、ゲラゲラ嗤っているんでしょうね、どうせ。

人身事故を引き起こした妖精とはいえ、今回ばかりはずんだもん側に同情したい気分です。』

『ムーさん、そんなにヤバイんですか？だって…たかだか「香辛料」と「発熱材」ですよ？』

『侮ってはいけません。画面を見てください。地獄が始まりますよ。』

『え……なんですかこれ…！！』

―――――――――


《からいのだ！いたいのだ！おとうちゃたちゅ けて！いぎゃー！》

ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸｯ!

《お…おちび！なんなのだ！からだじゅうにぶくぶくが！》

『基本的にずんだもんの体は、辛味を感じ取ると重度のアレルギー症状を引き起こすんですよ…！ふふふふｯ!
特に未成熟個体は…確実に餌食になります！

それだけじゃありません。

さぁ…「起爆」しますよ…！』



モゾ…もぞ…
《あぎゃーー！いちゃい！かゆい！からい！あついのだぁ！！》《いぎゃーーーー！！もうやめてぇぇ！からいのやめてーー！！》
うぞうぞ…フリフリ…

《やー！くちょにんげん！よくも！ふくちゅうちてやるのだ！》

ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸボフッ！

《からだがアヅイのだぁぁぁ！たすけてええええ！！いやぁぁぁ》

《おちびちゃん！なんで、こんなにふくらんで…あちっ！すごいねつなのだ！いや…いや！しんじゃいや！》

ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ

《いやぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁa

ボ ン ッ ！

《ブハッ！…………カヒュ…おちび…あぁ…ごめんなのだ……………まもれなかっ…………………………》

子ずんのすぐ近くにあった親ずんの顔は、子ずんに吹っ飛ばされた。

いや、違う。子ずんが親ずんを吹き飛ばす力など無い。


子ずんが…爆発四散したのだ。


『…まるでレンジでチンして爆発するように…アレルギーで皮膚がブヨブヨになった状態で急加熱された子ずんは、内部に蒸気を溜め込んだ「爆弾」と化し、周囲の仲間や親ずんを見境なく吹き飛ばす「兵器」となる。

「子ずん爆弾」…私が半年前に猟友会の前で披露した、禁断の駆除方法…まさか！やってくださるとはねぇ！』

［あ…ぐ…うあ………］
画面の向こうで無惨に爆発四散する子ずん達に、僕は言葉を失った。

《あああ！おちびぃ！だめぇぇ！！！》
《お…おkaあちゃ…ごmenなのd


ボ ン ッ ！
グキッ！


《ぶ！！！！！！…くびが…おちびが……ごめん…ごめんね…いまぼくもそっちにいくのだ…………………》

ボンッ！＼いやぁぁぁ！／ボンッ！＼だれかたちゅけてぇ！！／ボンッ！ボンッ！ボンッ！＼にげるのだ！／ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！ボンッ！

モニターのあちこちで、町のあちこちで、儚い命が仲間を巻き込みながら爆発四散していく。

地獄が、モニター越しに広がっていた。


『あはっ！もっと爆発してください！素晴らしい！

生石灰を散布するタイプなら、子ずんだけでなく、親のずんぽも爆発します！孕み袋は残念ながら爆発しませんが…

でも、是非とも見てみたいですねぇ！』



ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ
《おとうちゃ！たちゅ

ボ ン ッ！

《ああああああああああああああああああああ！！おちびがあああああああ！！》

ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ
《ずんぽがあちゅいのだ！！どんどんふくらんでいくの

ボ ン ッ ！

…………え゛？…

…………あああああ！！！ア。！、。゛ア、゛゛！、：｀´゜；ヾあ！！》



《み…んな…しっかり…かみさまがきっとたすけ…カヒュ…からい…のだ…うげ…………………》
《はぁ…はぁ…ｯ!なんとか…のがれた…のだ…ぜんしんヒリヒリするけど…たすか…カッ！
カヒュ！カヒュ！いきができない…カヒュ……ﾌﾞｸﾌﾞｸ…》


『アナフィラキシーショック…爆弾が不発でも、体にかかった時点でほぼ確実に死ぬ量の辛味成分を入れてますから…逃げ場は無いですよ…

うまく避けたとしても、音響兵器の第２波とサーモグラフィカメラがありますから、この町から逃げることは困難を極めます。

しかも町の外側には猟犬ならぬ猟あんこもんを解き放ってあります。逃げようものなら簡単に食べられますね。餌がちょっと辛いですが…あんこもんは甘味の化身なので辛味には強い耐性があります。大丈夫。


あぁ、もう十分です…作戦もほぼ成功しましたし、虐待も見れた…
今日はよく眠れそうです………幸せを過剰摂取しすぎて…大変です！』

社長はヨダレを垂らして狂喜していた。ケタケタ嗤いながら、肩を不気味に震わせて。



《へ…へこへこしてるときになんかふってきて、からいしあついのだ…もう…しぬのだ…》

《おとうちゃ！にゅいて！なんかからだがへんなのだ！あつすぎておかしくなりそうなのだ！》

《めちゃくちゃあついのだ…ぬけないのだ…あつすぎてくっついてるのだ…！》
ｼﾞｭｰｰｰｰ…

《あぁあぁあぁあぁあぁあぁ！おなかやけるぅぅぐぅぅ！いゃああああああa


ボ ン ッ ！



《…え》《…え？》






《《ヾdn゜´｀×々〆g4s〔〜〃ゞ9k´＿＾ゃああああああぁあ！！！！！！！

……………あ………………おなかも……ずんぽも……けしとんだ………のだ………あなあいてるのだ…あははははは…は………………………》》



『あっ…ええええ！？！？孕み袋とずんぽが同時に爆発！？まさか、ヘコヘコ中に！？サプライズですか！？良いんですか！！

モニター、録画モードにしておいて良かったぁ…！最高じゃないですか！！もう本当に！素晴らしい！記念日にしたいくらいです！！』

桜色の狂気は、人目を気にせず喜んだ。何がそんなに嬉しいのか全くわからない。


何が…

何が…そんなに…！おかしいんだ…！











ボンッ！

使








《ずーん…ずーん…》
《…のだ…》

［社長…2日に1回は必ず地下室に行くけど、何をしているんだろうか。］

子ずん爆弾の惨劇、掃討作戦完了から2日後。従業員として雇われている妖精達の協力もあり、町の後片付けも殆ど終わった。町に残った激辛液に触れないように、色々気を使いながら掃除をしていたためか、彼らは報酬の御馳走と「給料の代わり」を貰うことなく、防護服を着たまま数分で眠りに落ちた。

社長は、だいずもん率いる従業員達から防護服を脱がし、体を濡れタオルで拭いた後、御馳走を冷蔵庫に戻した。

野良ずんの扱いとは、まさに雲泥の差で、かえって寒気がした。

その後、社長は満足そうな顔を浮かべて地下室に向かった…。現在は、その数分後、時刻は18:00丁度である。

《お前さんも気になるのだ？》

群れのリーダーのだいずもんが僕に話かけてきた。

［起きてたのかい？

…社長は、2日に1回のペースで地下室に行くよね。その…君は気にならないの？］

少しカマをかけてみる。

《気にならないと言えば嘘になるのだ。

でも、絶対に知ってはいけない気がするのだ。今の僕達の日常を壊したくなければ、社長に探りを入れるのは得策じゃない気がするのだ。
直感がそう言ってるのだ。そこから先は不味い…と。》

だいずもんの目線は、地下室に通ずる扉に向いていた。

しかしその目は、好奇よりも警戒色に染まっていた。

―――――――――
『さぁ、今日も配信だ…』

ピッ

『皆さん、こんばんは。恒例のVIP配信だぜ〜。

2日前に仕事で、オカシラと通常個体を幾つか捕獲したから、そいつを駆除しつつ楽しんでいくよ〜。』

――――――
闇落ち農家：お見事！
ずん虐大好き：wktk
枝豆チャレンジ：ｷﾀｰｰ！
ずんだ餡：さくらさん、今日は何をしてくれるんだい！？
――――――

『ふふふ…今日は完全に自己満足、私の趣味なんだけれど…

酷使系、でいくよ…！』

《ここからだせ！くちょにんげん！》《ずんだもちよこすのだ！》《ちね！ちねちねちね！ちねちねちね！ちねちねちね！ちねちねち

ガシッ

『死ね死ねうるさいし元気だから、コイツからにしよう！さぁ加工開始だ！

ステップ1、当たり前のように四肢を切り落として分からせます。』

ザシュッ！ザシュッ！ザシュッ！ザシュッ！

《ぎゃあああああ！！いたいのだぁぁぁぁぁ！》

《おい！おまえ！だいじょうぶなのだ！？》《いきなりてあしをきりおとされたのだ！このくちょにんげん、ヤバイのだ！》

『ステップ2、ケツの穴に火薬の入ったカプセルを詰めます。このカプセルには…この通り糸が通してあります。この糸は「糸キャップ」という部品に繋がっております。

これでお尻の穴に蓋をします。』

ﾒﾘﾒﾘﾒﾘﾒﾘｮｯ!
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!

《んオオオオオオオ！！やめちゃ！いたすぎるちゃ！》

『ステップ3、糸キャップから出ている糸を尻尾に括ります。

あとは尻尾を思いっきり引くだけです。』

ｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞ…

《やめるのだ！しっぽちぎれるのだ！》


ﾊﾟｧｧｧｧｧﾝ！！！

《あぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあ！！！！！》

ブシャッ！！
ずんだもんが吐血した。

火薬が爆発し、内臓の一部が吹き飛んだのだ。

まるで、クラッカーのように…。

『ずんだもんクラッカー…完成です。後は死ぬまでこれを繰り返して楽しみますぞ🍷』

―――――
ずんだ餡：ｴｯｯｸﾞwwww
闇落ち農家：何という…！
妖精虐殺万歳！：おおおおおお！！良いねぇ！！
―――――

ﾒﾘﾒﾘﾒﾘﾒﾘｮｯ!
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!
ｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞ…

《もう…やめちぇ…しんじゃうのだ…あついのだ、いたいのだ、やめるの


ﾊﾟｧｧｧｧｧﾝ！！！
ブシャッ！


《ああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあ！！！！！》

《おい！やめるのだ！なかまにてをだすな！》
《あ…ぁ…もうおしまいなのだ…コイツあたまおかちいのだ…いままでのくちょにんげんとはくらべものにならないのだ…ぁぁ…》

『おめでとうございます…貴方は生贄に選ばれました…！』

ﾒﾘﾒﾘﾒﾘﾒﾘｮｯ!
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!
ｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞ…
ﾊﾟｧｧｧｧｧﾝ！！！
ブシャッ！

《お…おごっ…むごぉ…》
とうとう白目を剥き始めた。最早、放っておいても死ぬだろう。

しかしさくらもんという者に、慈悲など備わっていなかった。

『おっ、もう死ぬんですか。早すぎですねぇ…。しょうがない、最後は派手にいきますか…！』

ﾒﾘﾒﾘﾒﾘﾒﾘｮｯ!
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!
ﾒﾘﾒﾘﾒﾘﾒﾘｮｯ!
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!
ﾒﾘﾒﾘﾒﾘﾒﾘｮｯ!
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!

《お…ぎゃ………ぐお…》

火薬カプセルがずんだもんの腹に何度も詰められる。カプセルは、壊れた内臓を更に押潰し、押し広げ、壊しながら体を膨れ上がらせる。

『さぁて、いきますよぉ…！』

糸キャップで蓋をしてエリザベスカラーを装着させ、尻尾を摘まんだ。

その「銃口」は、オカシラの入った檻の方向に向いていた。

《…え…なにをするのだ…もうゆるちて…やめて…！》

『大切なお仲間さんに殺されるのも一興ですよね❤️

では、サヨウナラ。視聴者の皆様、音量注意です。』


ｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞｸﾞ…
《やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！やめるのだ！》《ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！やめちぇぇぇぇぇ！！》
《お…オ…ｵｺﾞｫ…》
《おかぁちゃ！たちゅけて！》《おちびちゃん！だいじょうぶなのだ！きっとかみさまがたすけてくれるのだ…！》《もう…おしまい…なのだ…》








ぱん。









ﾄﾞｯｯｯｯｯｯｯｯ



ﾊﾟｧｧｧｧｧァァァァァァァァァァァァァァﾝ！！！！！！！！


ガシャン！ガラン！！


『最早クラッカーというより、バズーカですね…🍷檻を吹き飛ばし、挙げ句ぺちゃんこにしてしまいました…！』

《…………………………………》《…………………………………》《…………………………………》《…………………………………》《…………………………………》《…………………………………》《…………………………………》



部屋に、静寂が訪れた。



―――――
妖精虐殺万歳！：うわぁ…❤️
ずんだもち：素敵…！
鬼威惨：甘美…！
―――――

酷使



『さーてさて。まだまだいきますよぉ。お次は、こちら！』

フリフリ…フリフリ…
《ゆるちて…もうゆるちて…どうせまた、おちびちゃんころしちゃうのだ…うみたくないのだ…》《う…うご…いちゃい…もうころちて…しにたいのだ…》

同時接続数3000人、今日も大盛況である。

ﾌﾟﾗｰﾝ…ﾌﾟﾗｰﾝ…

『前回、ずんぽテルテル坊主でオスずんとオカシラを惨殺したのは覚えておりますね？そうそのまさかです！今回は、メスの吊り下げです！見てください、普通にヒモで腰を縛って吊るしています！ずんぽを有刺鉄線でグルグル巻きにされていた、ぱぱずん共に比べたら…何て優しいんでしょうか…！
…なので優しい分、私が直に手を加えますね。』

手をバッと広げ、さながらショータイムのように解説を始める。

『実はこのメスずん共は、全て懐妊した個体…ままずんなんですよ。この前披露した「ずんだもん電池」を利用して、予め複数のぱぱずんと無理矢理ヘコヘコさせました。あっ、ぱぱずん共はその後でちゃんと、ずんぽテルテル坊主の餌食にしたのでご安心を。』

と、徐にグローブを装着した。

『今回はシンプルイズベストということで、腹パン出産といきましょうか🍷
とはいえ、私パンチ強めだからなぁ…どこまで本気でやれば良いのやら…まずは一発打ってみるかー。』

――――――
VIP初経験：初見です。遂に条件を満たして会員登録して、ウッキウキで入ってみたら一発目からエグすぎてドキドキが止まらない…

ずんだ餡：おっ、初見いるやん！こんばんはー

ずんち：初見で腹パンは刺激強すぎちゃうかww

ずんだもち：@ずんち 今更やな。
――――――

桜色の悪魔は、今日も命を使い捨てる気満々だった。


『んじゃ、早速脱力してーー。…ほい。』


《や…やめ…》

ﾋｭｯ






ドｯｯｯｯｯ







ツｯｯｯｯｯｽパｯｯｯｯｯｯツ

ァァァァァァァァン！！


ブチュッ！

それは、人命すら刈り取れる速度の右手だった。

《ゴ？！？！？！……カッ…カッ…カッ…がッ…ｶﾋｭ…ｶﾋｭ…ｶﾋｭ…》

プラーーン…ﾌﾟﾗｰﾝ…ﾌﾟ…ﾗｰﾝ…

――――――
VIP初経験：はっや！！？音、やっば！！

ずんだ餡：相変わらずとんでもねぇパンチで草。

後方腕組みおじさん：ずんだもんが一発で粉微塵にならないのが不思議。こりゃグローブに、緩衝材仕込んでるね。

闇落ち農家：速すぎて即死したかも…？これ、回線弱い人ともなると、残像しか見えないんじゃ？

あんこもん：✋️はーい。回線弱いのもあって残像すら見えねぇ人でーす。社長って確か20代前半よな。ホンマに何者…空手でもやってんのかな…。
――――――

『え？空手？ムリムリ、ゼーッタイムリ。素手で黒帯の人と戦ったら惨敗する自信しかないね。一発パンチ鋭く打てるだけだよ、ホント。

そもそも人を相手にはしたくないなぁ。やっぱり暴力はさ、ずんだ虫に使いたいじゃん…。』ﾆﾀｧ

《ｶﾋｭ………………………………》
そうこうしているうちにまたしても、ひとつの命が使い捨てられた。

『あっ……………やっちゃった…まずったなぁ。お腹の子ずんも多分潰れちゃったし…やらかした。強けりゃいいってもんじゃないよねぇ…。
えっと、あれ。ゲーセンとかにあるじゃん、パンチングマシーン…？だっけ？あれをやりたいんだけど…強すぎるとずんだもんが一撃で死ぬんだよね。』

桜色の髪の毛を不気味に揺らしながら語る。

『パンチで潰せば潰すほど得点になる…とか？
…あっそうか！ということは…！なるほど実に単純！
皆様、10分程くださいな。虐待セットを作り直して来ます…まぁ楽しみにしておいて！』
―――――――――――――
10分後。

『お待たせ！流石に音がなる機械は作れなかったけど…これを期にゲーセンのカラクリと虐待を組み合わせたりしていくのも一興かな？
というわけで、そんなカラクリの記念すべき第一作！
「ずんだもんスパーリング」だ！』

ウゾ…もぞもぞ…
《くちょ…にん…げん…》
《はなちて！やめちぇ！》
《ころちて…もういたいのいやなのだ…》
もぞもぞ…

無数のメスずんが、天井から吊るされたサンドバッグの表面に、四肢をホチキス留めされていた。

桜色の悪魔は、緑色の血と臓物がべっとり付着したグローブを、再び装着した。

『ちなみに、サンドバッグの中は子ずんがギチギチに詰まってるよ。直接は見えないけど、悲鳴は聞こえるようにしてあるから安心してね。
さぁーて、何処から叩くかな？
そうだ、直接聞くことにしようか。ままずんの皆さん、何方から地獄を見ますか？』

《やめちぇ…おちびちゃんが、おなかとサンドバッグのなかにいるのだ…》

《ぼくはまだ、にんしんしてないのだ…ぼくをやっていいからなかまはたちゅけてほちいのだ…》

『不妊個体でしたか、道理で中々生まれない訳です。
いやはや、素晴らしい自己犠牲…感動です！』

《いや…いや…いやなのだ…》
《やめちぇ…しんじゃうのだ…》
《ぼ…ぼくを…ぼくからやるのだ…おねがいな


ドｯｯｯｯｯ




ｽパｯｯｯｯｯｯ



ァァァァァァァン！！


ブチュッ！
《あぎゃぁぁぁぁがぁぁぁが！！》
《おにゃかがぁぁぁぁ》
《なくなったのだぁぁ！おなかからしたが、ないのだぁぁあ！》

たった一発。
刹那、3匹のお腹の「希望」は消え去った。

否、腹部ごと消し飛んだ。

《…え？…どう…ちて…ぼくが…ぶじ…なのだ……やめちぇ！ぼくをやるのだ！みんなをたちゅけて！！》

『3匹同時に、下半身だけ綺麗に潰せました…！やればできるじゃないですか私！我ながら素晴らしい！
次は内部にも力をしっかり伝えて…子ずんにも鳴いてもらいますか

…ねｯ！！』

ﾄﾞｯ!ｽンｯ！


ブチュッ！

《ぎにゃぁぁぁぁあ！》《もうやめちぇ！だちて！》《ずんぽがつぶれたのだぁぁぁ！》《おにぃちゃ！しっかりちて！》

サンドバッグの中からくぐもった悲鳴が聞こえてくる。

『フフフ…コメント欄がとんでもない速さで流れてますねぇ…そんなに良かったんですか…？
わかりました…ならば、ちょっと本気でスパーリングしますね…！グローブも外します。緩衝材なんて、無粋ですから…。
まずは脱力して…ふぅ…
………………………………………………………………。』

《コロ…チテ…ｺﾞﾌｯ》
《あ………………………》

《や…やめるのだ…》《ぼくをやっていいからおちびちゃんはたちゅけてほちいのだ…やめて…》





『スッ！』





ドｯｯｯｯｯン！！

ブチン！《ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！》
ドｯｯｯｯｯン！！

《いや…いy！ブチュッ！


ドｯｯｯ


ｯｯン！！


《やめブチュッ！

スパァァァン！！

ﾊﾞ ｽｯ ! ！

バシィッ！
ブチュッ！

一発叩く度に、ずんだもんの目が、鼻が、喉が、手足が、耳が、尻尾が、お尻が、ずんぽが、内臓が、心が、自分の子ずんが、お腹の中の希望が、粉々になっていく。

悪魔は、何度も、何度も、何度も、暴力を振るった。

―愉しそうに、嗤いながら―

『はははｯ!はははははははははははははははははははははははははははははははｯ!
もっと！(バシィッ！)泣いてくださいよ！(ﾄﾞｽｯ！)何時もの生意気な態度は何処に行ったんですか！（ドスンッ！）それが可愛くて、しょうがないから苛めてるんじゃないですか！(ﾄﾞｺﾞｯ!)何でそんなに！(スパァァァァァン！！)しおらしくなってしまったんです…かぁっ！(ドンッ！)』

悪魔は夢中になって拳を振るう。拳に伝わる臓腑の感触と温もりに、これ以上ない愉悦を感じながら。

そして…サンドバッグの下に、緑色の血の池が広がり始めた頃…

生き残りは…1匹だけになっていた。

《どう…ちて…ぼくを…うぅ…ひどいのだ…あぁ…》

唯一難を逃れた個体は…自らの身を最初に差し出した、不妊個体だった。

『おっ、もう残っているのはあなただけでしたか。
何とも残念ですねぇ、夢中で叩きすぎて悲鳴を楽しむ隙がありませんでした…反省です。
それで、君はどうしましょうかね。すぐに仲間と同じところに送ってあげるのは優しすぎますし…。』

悪魔は、不気味に笑った。

『そうだ、君はおちびちゃんを作ったこと無いんだよね？
不妊ってのも辛いよねぇ…なら私の手で懐妊させてあげよう！』

《…なにを…するのだ…》

『おちびちゃんの死骸でよければ、お腹に入れて差し上げますね…！』

ﾇﾁｭﾘ

悪魔は、サンドバッグの中からおちびちゃん「だったもの」を手に取り…

『そいっ』
ﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁﾌﾞﾁｯ!

《ごぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ！》

生き残ったずんだもんのお腹に無理矢理詰めた。


『さぁ、フィナーレだ。
懐妊おめでとう。そして』


スッ


『さようなら。』
















ﾄﾞｯ!パｧｧｧｧｧｧン！！
血桜 襲〜 - 【閲覧注意】ｺｯｼｮﾘ枝豆の地下牢【俊虐】 先頭へ
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「酷使」を追加しました。

5
Posted by  ne1107 ne1107 2023年01月01日(日) 11:08:59 返信

キノコといいアレルギーといいその着眼点が素敵です

5
Posted by  saiyan_party saiyan_party 2022年12月25日(日) 03:18:00 返信

人間と共存する優しいずんだもんもいるけどそれ以上に人間を襲撃するほど極悪で凶悪なずんだもん共のほうが大多数なのが恐ろしすぎる……!!!数百万もの大群で人間への｢悪意｣を持って都市を襲うとか、奴らは黙示録のイナゴか!?!?もはや怪獣や戦争並の大災害じゃないか!?……コイツら｢ずんだもん災害｣はもはや地球上から絶滅でもさせなければ根絶は不可能に思えてくる……(汗)

7
Posted by  bull17fal22 bull17fal22 2022年12月25日(日) 00:50:16 返信数(1) 返信

それにしても何匹が言ってたがなにが｢かみさまがたすけてくれる｣だ……神様がお前らみたいな｢悪魔｣を助けるワケねーだろーが!?本気でイカれてるわ!!なにが神様だよ!?虐殺と略奪の限りを尽くしている悪魔の蟲の大群がチョーシに乗りまくって人間も食糧を食い潰してるお前らを神様が助けてくれるだぁあ!?!?お前らみたいなのが仮に人類を滅ぼし地球の霊長になったとしても僅か数年で地球の動植物を喰い尽くし遊びで殺し尽くして地球を死の星に変えるに決まっている!!!!(怒)

3
Posted by  bull17fal22 bull17fal22 2022年12月25日(日) 01:26:18

農家と強制していたあの子ずん達は皆無事だったのですね。よかった
いつかは再会して欲しいですけど、闇落ち農家氏側の狂気をどうにかしないと無理ですね

この社長はかつての親友とのあまりに悲劇的な決別からここまでの狂気を抱えた鬼威惨になったのですね
それでも普段はその狂気を出すことなく今まで通りに生活できているようですね

それにしてもこの社長のずん生が気になりますね。学校に通っていたとは
それに先代の「ワトソン」のことも気になります

そしてあんこもん・・・こっちは辛味に耐性があるんですね
ずんだもあんこも同じ「甘味」でしょうにここまで違うとは


それにしても仕事での駆除方法や配信での虐まで、色んな方法が次々と出てきますな

4
Posted by 名無し(ID:UC06zPmkyg) 2022年12月25日(日) 00:02:48 返信数(1) 返信

今更ながら「強制」って酷い誤字を
「共生」でした

3
Posted by 名無し(ID:UC06zPmkyg) 2022年12月25日(日) 01:05:46

「襲」以降を掲載しています。
前のストーリーはこのページ上部のリンクから飛ぶことができます。

5
Posted by  ne1107 ne1107 2022年12月24日(土) 22:57:52 返信

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