The Japan Association for Transnational Studies

第2報告

ドイツにおける若年失業防止施策とキャリア教育
 報告者:岩井 清治氏(桜美林大学大学院教授)
 司会者:山内 清史氏(神奈川大学)

報告要旨

 中国では、改革開放以来高い経済成長を維持している。それに伴い、エネルギー消費が急速に増加している。近い将来米国を越えて最大のエネルギー消費国、CO2排出国になると予想されている。
なお、石炭に依存し、無駄遣いがひどいエネルギー消費は深刻な大気汚染やエネルギー供給不足といった問題を引き起こしているだけではなく、世界のエネルギー安定供給にも影響している。
 このような状況の中で、第11次五ヵ年(2006〜2010年)計画では、「エネルギー消費効率を2010年まで20%改善すること」という省エネの目標値が設定されている。こ1999年の報告書においてイギリスで使用されたNEETなる表現が現在各国において大きな課題を与えている。つまり学校にも通わず、就職もせず、職業訓練もうけていない若年者の存在と救済施策の問題である。

 ドイツにおいては、NEETとしてよりも若年失業者救済としての方策が採用されているが、その対応は、まずどのような過程を通してこうした無業者が生じてしまうか、に応えることから開始される。そしてその過程は以下のいくつかのハードルを越えさせられるかに絞られる。

一つのハードルは、普通学校修了後から二元制職業訓練制度への移行上のハードルである。同世代人口のおよそ60%がこの制度で職業訓練を受けるのであるが、その条件は企業内職業訓練の契約を結ぶことによって与えられる訓練口の確保である。ここでつまずくと失業者になる可能性が高いのである。ここでの対応は普通教育段階でのキャリア教育、準備教育の充実によるミスマッチの防止施策である。
次のハードルは、上の職業訓練修了後に取得した職種資格で就職できるかどうかのハードルである。
取得した資格での就職先が決定されない場合には就職しやすいように短期研修等々による救済施策によって対応がなされる。

 第3のハードルは、大学修了資格取得が見込めない学生(約30%)への対応である。そのまま退学であればきまって失業者となるからである。この場合の施策は、大学修了よりも取得容易な、通常はたとえば専門学校修了による職種資格などの取得を実現させることによる就職斡旋である。そのほかの若年失業者発生防止施策は、普通学校段階から生じる学校中途退学者(約10%)、二元制職業訓練中途退学者(約25%)の救済である。

この場合は、まず企業での短期職業訓練の実施や職業学校への出席奨励等々によって対応がなされる。つまり、若年者失業救済は、職業資格取得のための救済、キャリア教育上での救済によっているのである。
 このことは我が国の場合と異なり企業にまず就職という可能性が資格取得なしにはなしえないドイツ的硬直性によるものでもあるが、常に職業能力習得を優先させる制度的受け皿が伝統的に構築されているドイツの姿勢を物語るものでもある。
(岩井 清治記)


関連ページ:2008年度研究会第2回-12008年度研究会第2回-3

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