The Japan Association for Transnational Studies

第1報告テーマ 


エージェンシー理論分析から見る日中のコーポレートガバナンスの比較
 ―中国企業のコーポレートガバナンスを踏まえて―

 報告者:柏木 理佳氏(嘉悦大学付属産業文化観光総合研究所客員主任研究員)
 司会者:金山 権氏(桜美林大学教授)

報告要旨

中国の企業統治・独立取締役の先行研究を踏まえプリンシパル・エージェンシー理論を応用し、その実態解明とともにアンケート・ヒアリング・年報分析結果等に基づき、国資企業、私営企業の独立取締役の機能と政府の関与を分析した。

多重・政治性エージェンシトが存在し大株主支配が存在する国資企業では、企業統治は機能せず独立取締役の独立性は低い。

私営企業においては、限定利己的経営者に近づくが、独立取締役の監査・監督の役割は設置当初の目的の期待ほどではない。分析した農業関連の私営上場企業では企業内の影響力の大きい指名委員会等に政府組織所属の内部者は少ないという結果がでた。

しかし、一般的には私営企業家の政府組織所属者の増加や企業内の党組織の拡大により政治性エージェンシーの存在が増していることが問題視されており、その影響は今後も増すことが懸念されている。

独立取締役の報酬を直接支払い、透明性の高い情報交換の可能な独立取締役協会を設置することにより独立取締役の独立性と情報量の平等性が改善する。また、監査・監督機能の強化のために具体的な役割、機能を公司法に記載することが必要である。
(柏木理佳)


関連ページ:2012年度研究会第2回-32012年度研究会第3回-2

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