前:森に入るならモスキートプスに気を付けろ。この辺りのは大きいからな。

35無題Nameとしあき 20/07/22(水)00:56:56No.13303729そうだねx10
私は自然観察のフィールドワークを趣味としている。自然の中を歩き、動植物とふれあい観察するのが何よりの楽しみだ。仕事の都合で海外に行く機会が多いのも打ってつけで、今回も出張で寄った国の山を歩くことにした。
山に入る前、運転手として雇った現地の男が声をかけてきた。

「まゆマジロに気を付けろよ」

まゆマジロと言えばあのまゆマジロだろうか。どこから見ても無害としか思えない姿のどこに気を付けなければならないのか。私は一瞬困惑したが、過去の経験が閃きを導いた。

36無題Nameとしあき 20/07/22(水)00:57:17No.13303731そうだねx11
「ここのまゆマジロは大きいのか?」
「ああ、でかい。1〜2mはある」

やはりだ。環境によって生物の姿が変わることはよくある。以前大型のモスキートプスに襲われた経験が生きた。私は気を付けると告げ、そのまま山に分け入った。できれば現地民に同行してもらいたかったが彼は山に入る気はないらしい。過去に失敗して以来、できるだけガイドを連れて歩くようにしているが、この時はフィールドを歩きたい欲求が勝ってしまった。

どれほど歩いた頃だろうか。必要最低限整備された山道を進んでいると前方からごろごろと音が聞こえた。何かが転がってくる。その姿を目にとらえてすぐに理解した。まゆマジロだ。話に聞いた通り、直径2mはあろうかという巨大な玉が坂道を転がり落ちてくる。いくつも。……いくつも?

38無題Nameとしあき 20/07/22(水)00:57:38No.13303733そうだねx11
私の視線の先では次から次へと湧き出るように、大量のまゆマジロが転がってきていた。それはまるで土石流のように道いっぱいに広がり、どこにも避けるスペースはなかった。


目を覚ますと私は三輪のタクシーのシートに寝かされていた。それを見て、運転手の男が呆れたように笑った。

「あんたが入ってから少ししてまゆマジロの転がる音が聞こえたからな。もしかしてと思って行ったら案の定だ。気を付けろと言ったろう」

気を付けろといったってどうすればよかったのだと私が聞くとこともなげに運転手は言った。

「なんでもいいから声をあげればよかったんだ。連中は転がってる時前が見えてないからな。音で知らせるしかない。10mも離れていれば勢いがあっても止まってくれる」

恐がって立ちすくむ奴ほど潰されるんだ。という運転手に私は冷静だったから声をあげなかったのだと反論したが、取り合ってはくれなかった。

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