『愛の挨拶』
横光利一/著
金星堂/刊
昭和2年6月15日発行
概要 
体裁:/厚紙装/函/本文
装幀:吉田謙吉
定価:1円50銭
金星堂から刊行された横光利一の最初にして、唯一の戯曲集。
吉田謙吉の装幀で「ゴールデンバット」の意匠を汲む装幀が印象的。
同年には中川一政装の『春は馬車に乗って』（改造社）も刊行されており、この二冊の古書価は拮抗している。
但、『春は馬車に乗って』は重版や、コンディションを問わなければよく見かけるのに対して、『愛の挨拶』は余り見かけない。重版も未見。
収録作品
恐ろしき花
活を入れる男
現はれた相手
貴族の結婚
閉らぬカーテン
幸福を計る機械
港
愛の挨拶
ノート
「恐ろしき花」は全四幕で、二幕が「活を入れる男」、三幕「現はれた相手」、四幕「貴族の結婚」と、続く。軽快な会話劇と恋愛模様からは、『寝園』以後の長篇小説の萌芽が垣間見える。
「閉らぬカーテン」は喜劇。「幸福を図る機械」もまたそうであるが、天邪鬼な夫婦の口喧嘩が展開される。『春は馬車に乗って』で書かれるお互いを貶し合う夫婦のそれと近しいものがある。ただ、「閉らぬカーテン」の方は、なんとなくストリンドベリの「死の舞踏」が想起されてくる。尚、宇野浩二は本作と岸田国士との類似性を同時代評で指摘している。
「港」は「帆の見える部屋」（昭和三年『新選横光利一集』に収録）の第一幕部分に当たる。
最後に収められているのは本書のタイトルにもなっている「愛の挨拶」である。
これらは戯曲編である『定本横光利一全集第十二巻』に全て収録されている。
また、「愛の挨拶」「幸福を図る機械」は講談社文芸文庫『愛の挨拶・馬車・純粋小説論』にも収録されている。
同時代評
「閉らぬカーテン」評
宇野浩二、北村小松、久保田万太郎、三宅周太郎、北村喜八、關口二郎
（「演劇新潮」大正15年10月号）
「愛の挨拶」評
林房雄、片岡鉄兵
（「新潮」昭和2年4月号）
どちらも『定本横光利一全集月報12」に再録されている。
参考文献
『定本横光利一全集第十二巻』河出書房新社（昭和57年6月30日発行）
紅野敏郎「横光利一・吉田謙吉装幀の戯曲集」
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