img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ドルイド・ミステール ウルフファング カトリーヌ


☆ウルフファング


ほとんど葉の落ちた木々に囲まれた、とある郊外の森の中。
ウルフファングは一人の魔法少女と対峙していた。

緑色のローブに鹿のような耳と尻尾を持つ魔法少女──ドルイド・ミステールは、
手に持つ杖をくるりと回し、こちらに突きつける。


「…行きます!」

杖に絡まる蔦が緑色の光に包まれ、こちらへ向かって急成長を始める。
植物を操るミステールの魔法だ。
魔法により強化された蔦に全身を絡め捕られれば、ウルフファングとて行動不能に陥る恐れがある。

(まあ、この程度で私を捉えることはできませんが)

ウルフファングがその場で一回転したかと思うと、
複数に分岐し、多方向から迫りくる蔦が鋭い爪に一瞬で切り裂かれる。

「さて、今度はこちらの番…」

「いえ、捉えました…!」

攻勢に出ようとしたウルフファングだったが、踏み出そうとした足が動かない。
見ると両足が蔦で縛られている。

(これは先程切り落とした…!)

切断し地面に散った蔦が再度成長し、ウルフファングの足に絡みついていた。
燃やすか朽ちさせるでもしない限り、植物はミステールの魔法の制御下に置かれ続けるということか。


「まだまだです!」

更にこの隙を突き、杖から伸びた蔦がウルフファングの右腕を捉える。
足と腕に絡みついた蔦は、体の方へ侵食し、数秒で全身を縛り上げるだろう。
だが、

「甘い!」

「え…?きゃああああ!!」

ウルフファングは思い切り右腕を引き、上体の力だけでミステールの体を振り回す。
ミステールは予想外の反撃に、受け身も取れずに近くの木の幹に叩きつけられる。



「う、うう…」

「もう終わりですか、ミステールさん?」

制御の緩んだ蔦を引きはがし、ウルフファングはゆっくりと距離を詰める。

「い、いえ…これからです…!」

よろめきながらも立ち上がったミステールは、再度杖を構えウルフファングに飛び掛かる。

一見すると迎撃して下さいと言わんばかりの直線的な突撃。
しかし、ウルフファングの鋭敏な感覚は、地面を伝わる振動を感知していた。

(下ですか!)

地中から木の根が突き出し、ウルフファングを捉えようと迫る。

ミステールが魔法で植物を操るには一度触れる必要がある。
彼女は先程叩きつけた木の根を操っていた。

ウルフファングはバックステップでこれを回避。
更に足元に出現した2本目、3本目の根を蹴り飛ばし──

(ミステールさんはどこへ…!?)

「やあああああ!」

ウルフファングの真上に、今まさに杖を振り下ろさんとするミステールの姿があった。



───────



☆ドルイド・ミステール


目を開けると、朝の陽射しが差し込んできた。

(あれ…私は確かウルフファングさんの上を取って…)

ミステールは仰向けに倒され、首筋にはウルフファングの爪が突き付けられていた。


「そこまで、勝負ありですわ」

木の上から誰かが飛び降りて来た。

「来てたんですね、カトリーヌさん」

一見すると体操服姿の小学生だが、その頭には猫の耳が生えている。
彼女もまた、この街の魔法少女だ。


「下に意識を向けさせて、自分は根っこを踏み台に上から仕掛ける…。
 動きは悪くないですけれど、目を瞑っていたら意味がないですわ」

「うう…」

「まあまあ、今回は惜しかったですよ」

ウルフファングに差し伸べられた手を取ると、優しく引き起こしてくれた。

「始めた頃よりも、ずっと強くなっています」

「ほ、本当ですか…?それならいいのですが…」

「最初は杖の方に振り回されていましたものね」

「そ、それは言わないでください…」

カトリーヌの茶々に、ミステールの耳と尻尾がしゅんと垂れる。
思えば、彼女と初めて会ったのはこの訓練を始めて間もない頃だった。

今でも気まぐれに見に来ては、今回のようにアドバイスを言ってくれる。


「しかし…シープさんの方はよいのですか?反対されていたと思いますが」

「そうですね、今は…わかってくれています」

この街には多くの魔法少女がいる。その中には魔法で悪事を働く者も少なからず存在する。
そんな魔法少女を見て、逃げることしかできないのは嫌だった。

私が襲われた時、ウルフファングが助けてくれたように、
私も誰かを守ることができるように、強くなりたいと思った。

けれど、一度命を落としかけた私がまた他の魔法少女と戦おうとするのに、
私の指導役の魔法少女──リープ・シープが簡単に賛成するわけにはいかないだろう。

「まあ、私自身が彼女にあまり好かれていないようですし」

「狼と羊だからって、捕って食べようなんてしたのではないでしょうね?」

「そんなことしませんよ!きっと私の強さに恐れをなしているのでしょう。
 …なんですかカトリーヌ、そのまた始まったみたいな顔は」

「冗談は置いといて…貴方が強くなれば、貴方の先輩も認めてくれると思いますわ」

ウルフファングを華麗にスルーしながら、カトリーヌはそう言ってくれた。

「そうですよね…私が一人前になれば、きっとシープも安心してくれますよね」

今はまだ半人前の魔法少女だけれども、早く一人前の魔法少女になってリープ・シープやウルフファング、
他の魔法少女達と、肩を並べて活動できるようになりたいと思う。

一つ思いついた。一度リープ・シープにもこの訓練を見に来てもらうのはどうか。
もっと強くなったら、いつか私の成長を見てもらいたい。
それに、ウルフファングやカトリーヌとも仲良くしてほしい。

聞いてもらえるかはわからないけれど、提案してみよう。




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