最終更新:ID:f/uw8ooEeA 2017年06月25日(日) 22:16:23履歴
登場キャラクター:ドルイド・ミステール ウルフファング カトリーヌ
☆ウルフファング
ほとんど葉の落ちた木々に囲まれた、とある郊外の森の中。
ウルフファングは一人の魔法少女と対峙していた。
緑色のローブに鹿のような耳と尻尾を持つ魔法少女──ドルイド・ミステールは、
手に持つ杖をくるりと回し、こちらに突きつける。
「…行きます!」
杖に絡まる蔦が緑色の光に包まれ、こちらへ向かって急成長を始める。
植物を操るミステールの魔法だ。
魔法により強化された蔦に全身を絡め捕られれば、ウルフファングとて行動不能に陥る恐れがある。
(まあ、この程度で私を捉えることはできませんが)
ウルフファングがその場で一回転したかと思うと、
複数に分岐し、多方向から迫りくる蔦が鋭い爪に一瞬で切り裂かれる。
「さて、今度はこちらの番…」
「いえ、捉えました…!」
攻勢に出ようとしたウルフファングだったが、踏み出そうとした足が動かない。
見ると両足が蔦で縛られている。
(これは先程切り落とした…!)
切断し地面に散った蔦が再度成長し、ウルフファングの足に絡みついていた。
燃やすか朽ちさせるでもしない限り、植物はミステールの魔法の制御下に置かれ続けるということか。
「まだまだです!」
更にこの隙を突き、杖から伸びた蔦がウルフファングの右腕を捉える。
足と腕に絡みついた蔦は、体の方へ侵食し、数秒で全身を縛り上げるだろう。
だが、
「甘い!」
「え…?きゃああああ!!」
ウルフファングは思い切り右腕を引き、上体の力だけでミステールの体を振り回す。
ミステールは予想外の反撃に、受け身も取れずに近くの木の幹に叩きつけられる。
「う、うう…」
「もう終わりですか、ミステールさん?」
制御の緩んだ蔦を引きはがし、ウルフファングはゆっくりと距離を詰める。
「い、いえ…これからです…!」
よろめきながらも立ち上がったミステールは、再度杖を構えウルフファングに飛び掛かる。
一見すると迎撃して下さいと言わんばかりの直線的な突撃。
しかし、ウルフファングの鋭敏な感覚は、地面を伝わる振動を感知していた。
(下ですか!)
地中から木の根が突き出し、ウルフファングを捉えようと迫る。
ミステールが魔法で植物を操るには一度触れる必要がある。
彼女は先程叩きつけた木の根を操っていた。
ウルフファングはバックステップでこれを回避。
更に足元に出現した2本目、3本目の根を蹴り飛ばし──
(ミステールさんはどこへ…!?)
「やあああああ!」
ウルフファングの真上に、今まさに杖を振り下ろさんとするミステールの姿があった。
───────
☆ドルイド・ミステール
目を開けると、朝の陽射しが差し込んできた。
(あれ…私は確かウルフファングさんの上を取って…)
ミステールは仰向けに倒され、首筋にはウルフファングの爪が突き付けられていた。
「そこまで、勝負ありですわ」
木の上から誰かが飛び降りて来た。
「来てたんですね、カトリーヌさん」
一見すると体操服姿の小学生だが、その頭には猫の耳が生えている。
彼女もまた、この街の魔法少女だ。
「下に意識を向けさせて、自分は根っこを踏み台に上から仕掛ける…。
動きは悪くないですけれど、目を瞑っていたら意味がないですわ」
「うう…」
「まあまあ、今回は惜しかったですよ」
ウルフファングに差し伸べられた手を取ると、優しく引き起こしてくれた。
「始めた頃よりも、ずっと強くなっています」
「ほ、本当ですか…?それならいいのですが…」
「最初は杖の方に振り回されていましたものね」
「そ、それは言わないでください…」
カトリーヌの茶々に、ミステールの耳と尻尾がしゅんと垂れる。
思えば、彼女と初めて会ったのはこの訓練を始めて間もない頃だった。
今でも気まぐれに見に来ては、今回のようにアドバイスを言ってくれる。
「しかし…シープさんの方はよいのですか?反対されていたと思いますが」
「そうですね、今は…わかってくれています」
この街には多くの魔法少女がいる。その中には魔法で悪事を働く者も少なからず存在する。
そんな魔法少女を見て、逃げることしかできないのは嫌だった。
私が襲われた時、ウルフファングが助けてくれたように、
私も誰かを守ることができるように、強くなりたいと思った。
けれど、一度命を落としかけた私がまた他の魔法少女と戦おうとするのに、
私の指導役の魔法少女──リープ・シープが簡単に賛成するわけにはいかないだろう。
「まあ、私自身が彼女にあまり好かれていないようですし」
「狼と羊だからって、捕って食べようなんてしたのではないでしょうね?」
「そんなことしませんよ!きっと私の強さに恐れをなしているのでしょう。
…なんですかカトリーヌ、そのまた始まったみたいな顔は」
「冗談は置いといて…貴方が強くなれば、貴方の先輩も認めてくれると思いますわ」
ウルフファングを華麗にスルーしながら、カトリーヌはそう言ってくれた。
「そうですよね…私が一人前になれば、きっとシープも安心してくれますよね」
今はまだ半人前の魔法少女だけれども、早く一人前の魔法少女になってリープ・シープやウルフファング、
他の魔法少女達と、肩を並べて活動できるようになりたいと思う。
一つ思いついた。一度リープ・シープにもこの訓練を見に来てもらうのはどうか。
もっと強くなったら、いつか私の成長を見てもらいたい。
それに、ウルフファングやカトリーヌとも仲良くしてほしい。
聞いてもらえるかはわからないけれど、提案してみよう。
☆ウルフファング
ほとんど葉の落ちた木々に囲まれた、とある郊外の森の中。
ウルフファングは一人の魔法少女と対峙していた。
緑色のローブに鹿のような耳と尻尾を持つ魔法少女──ドルイド・ミステールは、
手に持つ杖をくるりと回し、こちらに突きつける。
「…行きます!」
杖に絡まる蔦が緑色の光に包まれ、こちらへ向かって急成長を始める。
植物を操るミステールの魔法だ。
魔法により強化された蔦に全身を絡め捕られれば、ウルフファングとて行動不能に陥る恐れがある。
(まあ、この程度で私を捉えることはできませんが)
ウルフファングがその場で一回転したかと思うと、
複数に分岐し、多方向から迫りくる蔦が鋭い爪に一瞬で切り裂かれる。
「さて、今度はこちらの番…」
「いえ、捉えました…!」
攻勢に出ようとしたウルフファングだったが、踏み出そうとした足が動かない。
見ると両足が蔦で縛られている。
(これは先程切り落とした…!)
切断し地面に散った蔦が再度成長し、ウルフファングの足に絡みついていた。
燃やすか朽ちさせるでもしない限り、植物はミステールの魔法の制御下に置かれ続けるということか。
「まだまだです!」
更にこの隙を突き、杖から伸びた蔦がウルフファングの右腕を捉える。
足と腕に絡みついた蔦は、体の方へ侵食し、数秒で全身を縛り上げるだろう。
だが、
「甘い!」
「え…?きゃああああ!!」
ウルフファングは思い切り右腕を引き、上体の力だけでミステールの体を振り回す。
ミステールは予想外の反撃に、受け身も取れずに近くの木の幹に叩きつけられる。
「う、うう…」
「もう終わりですか、ミステールさん?」
制御の緩んだ蔦を引きはがし、ウルフファングはゆっくりと距離を詰める。
「い、いえ…これからです…!」
よろめきながらも立ち上がったミステールは、再度杖を構えウルフファングに飛び掛かる。
一見すると迎撃して下さいと言わんばかりの直線的な突撃。
しかし、ウルフファングの鋭敏な感覚は、地面を伝わる振動を感知していた。
(下ですか!)
地中から木の根が突き出し、ウルフファングを捉えようと迫る。
ミステールが魔法で植物を操るには一度触れる必要がある。
彼女は先程叩きつけた木の根を操っていた。
ウルフファングはバックステップでこれを回避。
更に足元に出現した2本目、3本目の根を蹴り飛ばし──
(ミステールさんはどこへ…!?)
「やあああああ!」
ウルフファングの真上に、今まさに杖を振り下ろさんとするミステールの姿があった。
───────
☆ドルイド・ミステール
目を開けると、朝の陽射しが差し込んできた。
(あれ…私は確かウルフファングさんの上を取って…)
ミステールは仰向けに倒され、首筋にはウルフファングの爪が突き付けられていた。
「そこまで、勝負ありですわ」
木の上から誰かが飛び降りて来た。
「来てたんですね、カトリーヌさん」
一見すると体操服姿の小学生だが、その頭には猫の耳が生えている。
彼女もまた、この街の魔法少女だ。
「下に意識を向けさせて、自分は根っこを踏み台に上から仕掛ける…。
動きは悪くないですけれど、目を瞑っていたら意味がないですわ」
「うう…」
「まあまあ、今回は惜しかったですよ」
ウルフファングに差し伸べられた手を取ると、優しく引き起こしてくれた。
「始めた頃よりも、ずっと強くなっています」
「ほ、本当ですか…?それならいいのですが…」
「最初は杖の方に振り回されていましたものね」
「そ、それは言わないでください…」
カトリーヌの茶々に、ミステールの耳と尻尾がしゅんと垂れる。
思えば、彼女と初めて会ったのはこの訓練を始めて間もない頃だった。
今でも気まぐれに見に来ては、今回のようにアドバイスを言ってくれる。
「しかし…シープさんの方はよいのですか?反対されていたと思いますが」
「そうですね、今は…わかってくれています」
この街には多くの魔法少女がいる。その中には魔法で悪事を働く者も少なからず存在する。
そんな魔法少女を見て、逃げることしかできないのは嫌だった。
私が襲われた時、ウルフファングが助けてくれたように、
私も誰かを守ることができるように、強くなりたいと思った。
けれど、一度命を落としかけた私がまた他の魔法少女と戦おうとするのに、
私の指導役の魔法少女──リープ・シープが簡単に賛成するわけにはいかないだろう。
「まあ、私自身が彼女にあまり好かれていないようですし」
「狼と羊だからって、捕って食べようなんてしたのではないでしょうね?」
「そんなことしませんよ!きっと私の強さに恐れをなしているのでしょう。
…なんですかカトリーヌ、そのまた始まったみたいな顔は」
「冗談は置いといて…貴方が強くなれば、貴方の先輩も認めてくれると思いますわ」
ウルフファングを華麗にスルーしながら、カトリーヌはそう言ってくれた。
「そうですよね…私が一人前になれば、きっとシープも安心してくれますよね」
今はまだ半人前の魔法少女だけれども、早く一人前の魔法少女になってリープ・シープやウルフファング、
他の魔法少女達と、肩を並べて活動できるようになりたいと思う。
一つ思いついた。一度リープ・シープにもこの訓練を見に来てもらうのはどうか。
もっと強くなったら、いつか私の成長を見てもらいたい。
それに、ウルフファングやカトリーヌとも仲良くしてほしい。
聞いてもらえるかはわからないけれど、提案してみよう。
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