img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ガーディアン・コマ ”結晶宮殿”リスタール パープル・S


「魔王塾で使っている演習場を使わせてもらえることになった。ここなら遠慮はいらないだろう?」

リスタールに連れられてやってきたのは何もない荒野だった。
あるのは向こうにぽつんと建っている廃屋ぐらいか。
ここは魔王塾のメンバーが模擬戦などの演習で使用する場所らしい。

「さあ、始めようか」

突き出したリスタールの拳が結晶に包まれる。
自らの身体、あるいは触れた場所に結晶を生成するリスタールの魔法だ。
こっちだけ魔法の詳細を知っているのはフェアじゃないと先程教えてもらった。

「ま、お手並み拝見といこうじゃないか」

対してパープル・Sの方は構えもせずに立っている。
ただし、油断や隙は全く見当たらない。
彼女の魔法についてはそれくらい自分で見切ってみせろ、とのことで教えてもらえなかった。

(やるしかないみたいですね…)

覚悟を決めて、ガーディアン・コマも自身の魔法を発動した。
『身体を石に変える』魔法により彼女の両腕の肘から先が石へと変化する。
狛犬がモチーフのためか、石化した腕は元より一回り太くなり、爪や毛皮など獣の要素を持つ。

コマは石化した両の拳をガチン、と打ち付け構えを取る。

「…よろしくお願いします」


一度深く呼吸をし、リスタールに向かって一直線に突進する。
魔法少女の身体能力で十数メートルの距離を一瞬で詰め、
助走の勢いを乗せた右ストレートを繰り出す。

リスタールもコマの一撃に合わせて同じく右ストレートを放つ。

「「はぁっ!!」」

石の拳と結晶の拳が激突する。
衝撃波が生まれ、荒野に舞う砂塵を吹き飛ばす。

(なんて力…!)

痛みを感じることのないコマの石の腕にビリビリとした振動が伝わる。

二人は一度拳を引き、右、左、右とさらに拳を打ち合う。

「大したものだ、私と素手で殴り合える奴はそうそういないぞ」

「それは…嬉しい…です……ねっ!」

両者の拳の硬度は同じくらいか。だが重さが全然違う。
打ち合う度にコマの方が少しずつ後ろに押されている。

(このままでは…!)

単純な打ち合いを続けているだけでは押し負ける。
そう判断したコマは、踏み込む足を石化させ思い切り地面を踏み割る。

振動と衝撃、飛び散る土塊により、リスタールの動きがほんの一瞬止まる。

(ここです!)

さらに一歩踏み込み渾身の一撃を放つ。
このタイミングならば、リスタールがコマの攻撃を迎え撃っても不十分な力しか込められないはず───


「狙いは悪くない」

「…っ!?」

コマの拳が外側へと弾かれる。
リスタールの鋭いショートフックがコマの一撃をあっけなく逸らした。

「が、予備動作が大きいな。狙いが読まれるぞ」

「ぐうっ!?」

がら空きになったコマの胴体に掌底が撃ち込まれる。
ギリギリで石化は間に合ったものの、後方に大きく吹き飛ばされゴロゴロと地面を転がる。

「どうした?もう終わりか?」

「ま、まだまだです…!」

強い。これが魔王塾卒業生の実力か。
まだ打つ手はあるが、果たしてリスタールに通用するのか。




「なあ、そろそろ私も動いていいよな?」


パープル・Sの声だ。見るとその両手にはいつの間にか2本の長剣が握られている。

「上手く防げよ、死ぬぞ」

パープル・Sが長剣をコマとリスタール、それぞれに放り投げる。
軽く放った程度のようだったがそこは魔法少女、かなりの速度で回転しながら飛んでくる。

コマは迎撃すべく身構えるが───


「…え?」

投げつけられた長剣が突如急加速を始めた。

「なっ…!?」

恐ろしい速度で飛来する刃は、既に目の前に迫っている。
とっさに両腕を交差し受け止めるが、回転は止まらずガリガリとコマの腕を削っていく。

「そんなっ…!?こ……のおっ!!」

全身を思い切り捻ることでなんとか後方へと逸らすことができた。


「おいおい、殺す気か?」

リスタールはというと、信じられないことに飛んできた長剣の刃の部分を鷲掴みにしている。
結晶を腕に纏っているとはいえ、不意打ち気味に飛んできた剣を片手で止めるとは。

「遅い」

しかし、パープル・Sはこの時点でリスタールの斜め上方に移動している。
その手には再び2本の長剣。

まるでスケート選手のように回転しながら跳躍したパープル・Sは空中で体を捻り、
平行に重ねた2本の長剣を打ち下ろす。

「くっ…!?」

リスタールは先程のコマのように交差した両腕で受け止めるが、
魔法少女の怪力に遠心力が加えられた斬撃の威力に耐え切れず腕の結晶に亀裂が入る。

「やるな…!だが…」

コマは結晶ごとリスタールの腕が叩き切られる様を想像したが、


「"結晶宮殿"を甘く見るなよ!」


次の瞬間、パープル・Sが結晶に飲み込まれた。

いや、コマにそう見えたのはリスタールが腕の結晶を爆発的に成長させたためだ。
成長した結晶が剣を伝い、パープル・Sの身体を覆っていた。
そして───


「これは…!」

「はああああ!!!」


リスタールは結晶に固定され、空中で身動きできなくなったパープル・Sを思い切り地面に叩きつけた。



轟音と共に砕けた結晶の破片が舞い散る。
コマは暢気にも綺麗だ、と思った。

舞い散る結晶の中に見えるのは2本の長剣だけ。
そこにパープル・Sの姿はない。

「クソッ…やってくれる…」

彼女は後方へと見えない何かに引かれるように飛んでいる。

リスタールはパープル・Sを追撃するべく駆け出す。

「寸前で脱出したか…だが逃がしはしない!」

「させるか」

パープル・Sが腕をリスタールの方へかざす。

「何を……!後ろか!?」

長剣がリスタールの後方から空を裂き飛来する。

リスタールはこれを回し蹴りで弾き飛ばす。
さらにその場で一回転、左右より飛んできた剣を龍の尾を使ってまとめて打ち払う。
そして真上に結晶の拳を突き上げ、上空より降ってきた剣を殴り飛ばす。


「話には聞いていたが…"見えざる手"、大したものだな」

襲い掛かる4本の剣を全て跳ねのけ、リスタールはパープル・Sへと向き直す。

パープル・Sはふわりと着地、その周囲に弾かれた4本の剣が集う。


「実際に目にするのは初めてだが、面白い魔法だ」


「チッ、攻防一体…厄介な魔法だ」


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