img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:プリムラ ジャック・R ゼノちゃん クレインダンス

同じ陣営に所属するプリムラからお茶会に誘われた。
まだ直接味わったことは無いが、確か彼女の魔法は紅茶とお菓子を出現させるものだったはずだ。
やはり同じ陣営のゼノちゃんやジャック・Rがその美味しさを褒めているのを聞いたことがある。


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月の光に蒼く満たされた街並みの中、金属のヒールでアスファルトやコンクリートを穿つように蹴り
しじまを縫いながら自慢の白銀の装甲を煌かせて私は指定の場所へと向かう。
時間は午前1時頃、魔法のティーセットを設えたテーブルと椅子を整えて彼女は待っていた。
降り立った私は彼女の促すままに椅子に腰を下ろした。
…正直に言えば機械人形のような見た目の私が優美なティーセットが並べられたラウンドテーブルに向かい
席についているというのは何とも不釣り合いな光景に思える。
けれどもそんなことなど気にも留めずに目の前のプリムラは穏やかに微笑んでいた。
自然と私も顔がほころぶ。なんとなくゼノちゃんもジャック・Rも彼女に懐くのが分かった。


だが、互いに面と向き合うとそんな彼女の笑みが突然消えた。
代わりに深刻そうな、何か心配事を抱えているような表情が支配する。
今日はお茶会という名目でその実何かの相談が目的だったのだろうか?
私も思わず雰囲気に飲まれてしまう。
「実は…クレインダンスさんに聞きたいことがあるの」
やはり、と思いつつ彼女が尋ねてくる内容を待つ。
す、と間をおいて彼女の唇からその質問は飛び出した。



「 クレインダンスさんはお茶を飲んだりお菓子を食べたりできるのかしら? 」



…?
質問の内容が予想外過ぎて一瞬フリーズしてしまった。
ああ、そうか。
私がサイボーグ(こんなみため)だから飲食可能なのか彼女は心配したのか。
疑問に思うのももっともだ、確かに私のアバターは金属装甲に覆われていて、
自分で考えた設定もサイボーグ兵器系魔法少女というものになっている。
だけど生体と機械の混じり物がサイボーグだし、設定はあくまで設定。
この姿でも普通に食べたり飲んだりは出来る。
「安心してくださいプリムラ、この体でも食事は可能ですから。」
そう伝えると彼女はホッとしたらしく、ようやく深夜のお茶会が始まった。


私の金属の指が細く繊細なティーカップの取っ手にかかり少し硬質な音がした。
これが普通のカップなら簡単に砕けてしまいお茶会は台無しになってしまっただろう。
しかしこれはプリムラの魔法によって生み出された品、嫌味の無い装飾が施されたカップは
同じ魔法少女である私が扱っても壊れたりしないため気兼ねなくこのお茶会を楽しめた。

注がれた紅茶をふうふうと吹いて少し冷ましていると「クレインダンスさんは猫舌なの?」と聞かれた。
それに対して私は「ええ、内部機構は熱に対してデリケートなので」などと嘯く。
そんな冗談に彼女はあらあらと笑ってくれている。私もくすりと笑った。

心地好い温かさの紅茶と程よく甘い焼き菓子は心を和ませてくれる。和んだ心は舌を軽くする。
彼女とのとりとめのないお喋りはどこまでも続いた。とりとめがなさ過ぎて却って何を喋ったかは覚えていない。
けれども、覚えてない程度の四方山話ならそんなに大したことは言ってないのだろう。


私たちを真白く照らしていた月も、文字盤上の時計の針もその位置を少しずつ変えていき、今宵のお茶会はお開きとなった。


プリムラに別れを告げ、背中に装備された小型スラスターによる加速も手伝い私は跳ぶように家路を急ぐ。
その道中で彼女と話すと時折抱く違和感の正体について考えていた。
自分よりも幼い見た目であるはずの彼女から、それに見合わぬ老獪さをちらと感じることがある。
あるいは、ひょっとしたら彼女は私よりも年上なのかもしれない。
だけど魔法少女に変身している時ではない元の素性、姿の詮索は互いに御法度だ。
であればこそ私たち魔法少女はこの一時を謳歌できるのだから。
帰宅し変身を解くと共に考え事をストップさせて布団へと潜り込む。
プリムラの紅茶のおかげかぐっすりと眠れそうだった。


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今日のクレインダンスとのお茶会も収穫があった。
私のもてなしで気が緩んだのだろう、何気ない雑談の中で彼女自身の事をぽろぽろと話してくれた。
さりとて重要でない話もあったが興味を惹かれる事柄もその中には含まれていた。
彼女の趣味嗜好、それに合わせてあの姿を選んだというコト。
そして何より誰かに機械のように使われたいという欲求を秘めているというコト。
最後の欲求、上手く誘導すれば私を守るいい駒の一つになってくれるだろう。
…その上で彼女の願望も満たされるのだからお互いに損は無いはずだ。
カップの緑茶を啜って一息吐くと、私は誰ともなく尋ねる。

「ねえ、次のお茶会は誰を招こうかしら?」

好きにすればいいぽん。と白黒のマスコットの返答は相も変わらずつれなかった。

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