img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:デッドカンパニー USA-P

 平素では、デッドカンパニーは、自宅では変身を解いている。一人暮らしだから同居人に見られるといった心配もないのだが、特に深い意味はなく、この家では元の姿でいるのが習慣であったからだ。
けれども、その日は変身を解く気にはなれなかった。
一人用の小さなテーブルには、同じimg街の魔法少女USA-Pから貰ったチョコレートの入った包みが置いてある。これと向き合うには、変身前の男ではなく、魔法少女デッドカンパニーでなくてはならない。と思う。

包みを開ける。一粒取り出し、包装を解く。光沢のあるそれは、口に含むと舌触りは滑らかで、ふわりと溶ける。自分でも作った経験からわかる、これは温度に気を付けて、成形に気を配って、丁寧に作られたチョコレートだ。
(美味しいな……でも……)
口に含んでいれば当然、チョコレートは溶けて、やがてなくなってしまう。
(口の中にあるうちはいいけれど、溶けてしまえば不安になる)
チョコレートを食べている間は、幸せを実感できる。しかし、なくなってしまえば、次に来るのは喪失感。それは今の心境にも似ていた。

チョコを貰った瞬間こそ戸惑ったが、すぐ喜びへと変わった。しかし、時間が経つにつれ、不安へと変わっていった。
人に好意を向けられることに慣れていない。信じられないと言い換えても差し支えない。このチョコレートに込められた思いが好意か厚意か、どちらかはわからないけれども。
自分なんかが、という思考が常に頭をもたげる。私の、心の芯まで染み付いた思考だ。何かの間違いではないか、白昼夢ではないかと錯乱染みた考えまで湧いてくる。
……まあ、有体に言ってしまえば、「幸せ過ぎて怖い」のだ。我ながら弱っちい心である。

そして。この不安を解消する術を、たぶん私は知っている。彼女と、USA-Pさんと確固たる繋がりを築けばいいのだ。この逃げ腰で弱い心に、逃げ道さえ残さずに幸福になればいい。
ただ、そんな勇気があれば、こんな卑屈な人間はやっていない。こうやってチョコをちびりちびりと舐めつつ、情けなく思いを募らせていたりはしない。



USA-Pさん。兎モチーフの魔法少女。背は私より高い(たぶん)。兎耳や、兎っぽい手足が愛らしい人。けっこう明るく愉快な性格だけど、その実繊細な人。
お淑やかとかではないけど、意外と女の子らしい一面を持つかわいい人。笑わせてくれる楽しい人。そこはかとなく自虐的で、勝手に親近感を抱いてしまう人。
そして、勇気のある人。……彼女は、私と似て悲観主義者だ。と思う。私は、人にチョコを渡すなんて、気持ちを伝えるなんて、相手の迷惑を考えてしまうと足が竦む。
では、USA-Pさんもそうだったのだろうか? 仮にそうだしたら、彼女はその躊躇いを振り切って、私にチョコレートを贈ってくれたということになる。



おもむろに立ち上がる。チョコの包みを手に取った。USA-Pさんがくれたそれではなく、私が万が一にと作っておいて、結局誰にも渡すことのなかったそれだ。世話になった魔法少女に親愛を情を示すためのそれだ。
マジカルフォンを取り出しながら自宅を後にする。まだ連絡も入れてないけど、先に身体が動いてしまう。まだ会って貰えるかもわからないまま、屋根伝いに飛び移る。そして、彼女へとメッセージを作成する。送ろうとして、身体が震える。

──彼女が私のために出してくれた勇気は、私にはとても眩しい。私はああいう風にはなれないだろうなって思う。
けれど、だけど、私は彼女と同じようにしたい。同じ場所に立ちたい。何故なら、私は彼女の隣に立ちたいから。だから、私も勇気を出さなくては。

「遅れてごめんなさい……まだ許されるなら、私の気持ちも、受け取っていただけますか……?」

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