img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ENIGMA クレインダンス ドリクラ ばんばん! ペープル ヤグ(二週目)? †ヴァレンタイン† ミュウ

【ドリームメモリーズ 2】


秋の気配を運ぶひんやりとした空気の漂うあくる日の朝
時刻を知らせるアラームがけたたましく騒ぎ立てる
「んんーー……むにゃ」
寝ぼけまなこでスマートホンに指を這わせると、少女はもぞもぞと起き上がった
「は〜、ちょっと寒くなってきたなー」
ぷるぷると身体を震わせながら制服に着替え、姿見の前で整える
この場所を出る時、群小路詩絢は自分を捨てて、家元の娘としての仮面を被らねばならない
それは自分が決めた誓約
「今日も一日頑張ろ〜」
机の上に置かれた思い出の詰まった写真立てを一瞥し笑みを浮かべると、静かに部屋を後にした


「おはようございます、お母様お父様」
「おはよう、詩絢。今日は少し冷えるねえ」
「おはようございます、詩絢さん。さ、朝ご飯を食べましょう」
既に起床していた両親と顔を合わせ、挨拶を交わすと机の上におかれた封筒が目についた
「はい、いただきます。あら、これは……?」
ふと机の上におかれた封筒が目についた
「ああ、これですか? 遊園地のチケットを頂いたのよ、なんといったからしらね
 詩絢さん、折角ですからお友達と遊びにお行きなさいな」
"遊園地"という言葉に記憶が引っ張られる
あれは何時だったか、遠い昔に感じられるが確かに覚えている

「はぁ? お前の分があると思うなよ、掃除でもして留守番してろ」
「そうよ、冷蔵庫の物にも絶対に手をつけるんじゃありませんよ」
「こんなやつ置いといて早く行こうよ"遊園地"!」

目の前が真っ暗になりそうな所を、察した義母に抱きしめられる感触で現実に引き戻された
「ごめんなさい詩絢さん、私の配慮が足りませんでしたね」
心配そうに義父も様子を伺っている
「すみませんお母様お父様、もう大丈夫ですから」
決して明かす事は出来ないけれど、掛け替えのない友人が沢山出来たから
皆と一緒なら、こんな仄暗い記憶も消し飛ばしちゃうくらいの眩しい思い出がきっと作れる
そんな気がするから
「お母様、お願いがあります」




日が早々と落ち、寒空が広がる夕方
8人の魔法少女達が見据えるのは絢爛な世界
広大な敷地にそびえ立つ城、そして山、大小さまざまな建造物が乱立する様子は、一つの城下町のようだ
img街が擁する最大規模クラスのテーマパーク、ソダネーランド
ネズミのような何かやアヒルのような何かが練り歩き、踊り狂い、人々を熱狂の渦に巻き込んでいる
「ほう、この時世にここまでの城を建てているとは……中々やるではないか人間」
ヴァレンタインが感嘆の溜息を漏らす
「アルル、キャラ作りちょー完璧すぎー!」
「これぞ吸血鬼って感じですネー」
あまりにも自然だったのでつい噴き出してしまった
「む……いや、我は」
偉大なる王が訂正しようと口を開こうとした時
ひと際存在感を放つ使い魔筆頭がドリクラに飛び掛かる
――貴様!主に対して無礼な!
「いたたた、ベルルめっちゃお怒りなんですけどー!」
――おのれ!貴様というやつは!
翼でべしべしと頭を叩くアルベルトを王は厳かに制止した
「よい……やめよ」
――しかし!
「アルベルト」
――はっ
主の命とあらば致し方ないとばかりにおとなしくはなるが
これ以上の無礼は許さんとばかりに、頭の上から動こうとはしなかった
「あたしの上から動かないんですけど〜」
「気に入ったんじゃないか?」
「そうかもな!」
「止まりやすそうッスもんね」
「も〜! みんな適当すぎだよー!」
はたから見ていたばんばん!とヤグ、ペープルが笑いながら肩を叩いてくる。もう、他人事だと思って!
「しかし、確かに見事なものですね」
「…………(こくこく)」
そんな中クレインダンスも驚嘆し、連れられたミュウも共感の意を示す
それ程までに幻想的かつ魅力的な場所、思わず見惚れてしまう程に
「よ〜し。とりあえずみんな揃ったねー、じゃあそろそろ行こっか〜」
「夕闇に悠久の光を灯せし魔都よ、いざ」
「割と乗り気なんですよネー」
普段は落ち着いた言動をしているENIGMAも今日は少し違うみたいできょろきょろと視線を巡らせている
「今日も撮って撮って撮りまくるッスよー!」
「おう! 遊びまくるぞ!」
「フッ、これにはお姉さんもちょっとご機嫌だな!」
否応なしにテンションが上がる一同だが、一人静かに少女は見つめていた
「どうかしましたかミュウ?」
気にかけたクレインダンスが問いかけると、指をさす
「ドリームクラウンですか?」
「ん〜?みうみうどうしたのー?」
名前を呼ばれたドリクラが目線を合わせるようにしゃがみこみ、首をかしげるが
視線の先に彼女はおらず、一匹の蝙蝠が佇んでいた
「…………(じっ)」
――何だ、小娘。ぬあ!何をする!
「…………(むふー)」
徐にアルベルトを掴んで抱きしめる
「ベルルの事気に入ったのかな〜?」
「ぬいぐるみみたいだもんな!」
暴れる使い魔筆頭を見ながら笑い声をあげるヤグ
――主!慈悲を!
「小さき者に自らをもって施しを与えるのも、たまにはよかろう……アルベルトよ」
――そんな!
「…………(なでなで)」
動じる事なく頭を撫でてくるミュウに、抵抗する気を削がれたのか再びおとなしくなる
「ミュウちゃんかわいいッス〜」
「さあ、行こう。ミュウ、はぐれないようにな」
「…………(こくこく)」
ばんばん!とミュウが手をつないで歩き出すと各自続いて歩を進め
これから巻き起こる体験への期待に胸を膨らませるのであった。




門をくぐるとそこには別世界が待ち受けていた
各所に優美な灯りが瞬き、各所に設置されたアトラクションからは歓喜や驚愕の声が上がる
湧き上がる66組メンバー
「すげーなー! どんだけ広いんだよ!」
「やはり見事ではないか、我が王国に引けを取らぬ」
「アルルの国ちょーすごいねー!」
「食いつくのそっちですカ!」
口々に感想を漏らしながら園内の地図を眺め
「うーんと、どうしようか〜」
「テーマパークと言えばやっぱ絶叫ッス!絶叫マスィーンッスよ!」
「よーし、異論はないね! どんとこいだ!」
「ワタクシは皆サマにお任せしますヨ」
「ほう……この我に畏怖を与えようと言うのか? 実に面白いではないか」
興奮する面々に苦笑しながら言葉をかけるばんばん!
「私はこの娘と一緒に居よう、まだこういうの乗れないだろう」
「では、私もともに居ましょう」
ペープルはハッとした表情でかけより謝罪する
「迂闊だったッスー……ミュウちゃん、ごめんなさいッス」
しょんぼりとする彼女の手を握って首をふるミュウ
「…………(きにしないで、のってきていいよ)」
「ミュウちゃん〜優しいッスね〜……」
「そうだねー、じゃああたしも暫くみうみう達と居よ〜っと、また後でそっちに行くねー」
「では、絶叫マシンチームとほのぼのお散歩チームの連絡はワタクシが」
本当に心強い。感謝の心を形に変えて、すっぽりとENIGMAの頭にカチューシャを載せた
「何ですカ? コレ」
「マッキーの耳! ちょー似合ってるよ〜エニー!」
「イラネー」
かくして絶叫マシン巡りチームとほのぼのお散歩チームは目的のエリアを目指すのだった




ほのぼのお散歩チームの大冒険は、ばんばん!たっての希望で
まず開拓時代の西部をモチーフとしたエリアに向かうところから始まった
「ん〜! 赤い岩山! 流れる河! 響く汽笛がどこまで届いていきそう
 乾いた砂に転がるタンブルウィードもたまらない!」
「あははー、ばんばん嬉しそう! ねー、みうみうー」
「…………(こくこくこくこく)」
相変わらず蝙蝠を抱きかかえながら、静かに当たりを見回す少女の頷きも勢いを増している
少なからずも興奮しているようだ
「私も流石に心が躍りますね」
ペープルの代わりにこちらの撮影担当になったクレイダンスも頬を上気させながら
皆の姿をファインダーに収めている
「クレクレ実は結構素直だもんねー!」
「貴女は! もう、知りません」
そんな反応が可愛くてちょっと悪乗りし過ぎてしまったかも、ぷいと顔を背けられてしまう
「わーんクレクレごめんね〜」
「…………」
「クレクレ〜?」
「……冗談です」
「もー! びっくりしたよ〜」
悪戯っぽい微笑みを浮かべる彼女につられてにっこり笑い親愛を現すハグ
夜風を受けてひんやりとした装甲なんて気にもならない、その位大切な友達なんだ
「ばんばんもみうみうも手を繋ご〜!」
「フッ、仕方ないな」
「…………(こくこく)」
微笑ましい提案で四人並んで手を繋ぐ。ドリクラの心は幸せに満ち溢れていた
「じゃー! 改めて〜、ウエスタンエリアにレッツゴー!」

生い茂る森の隙間を抜けると、木造の小屋が並び立つ街並みが広がっていた
「おおー、いかにもって感じだね〜」
「西部劇と言えば銃! 銃といえばこの私、ばんばん!だ!」
目を輝かせながら辺りを見回すばんばん!
「おや、あちらに射撃場があるようですね」
「本当か!?」
「ばんばんの腕の見せ所だー」
「…………(けいひんもあるよ)」
射撃場の看板を見つけたクレインの言葉で一同場所を移す
腕まくりをして気合じゅうぶんなばんばん!が銃を手に取り狙いを定める姿はとても様になっている
「行くぞ!」
短い間隔で銃声が六発、弾ける様に的が粉砕される
「見えませんでした、お見事です」
「わーー、あたしも全然見えなかったよー! すごーい!」
「…………(ぱちぱち)」
ふっ、と銃口に息をふきかけポーズを決めるばんばん!
「まだまだ行くぞ!」
今度は両手に銃を持ち、回転させながら的確に的を撃ち抜いていく
「かっこいいー! あたし全然当たらないよ〜」
「私も全ての的は無理でしたね、少し悔しいです」
「悪いが、ここの的は私が全ていただくぞ!」
結局ばんばん!がほとんどの的を撃ち抜き、大量の景品をゲットしたのであった。





一通りエリアを散歩チームと踏破して楽しんだ後
ドリクラは絶叫チームと合流するために一人鼻歌交じりに歩いていた
「楽しいな〜、本当に楽しいな……」
今やすっかり冷たくなった夜風も、今の火照った身体には気持ちがいい
忌まわしい記憶も少しずつ拭われていく気がする
「あ、きましたネ! おーいドリクラサン、こちらですヨー!」
「遅いぞードリクラー!」
「いやー半端ないッスよここの絶叫マシン!見てくださいッスこのヴァレンタインさんを!」
見ると、王は口元を抑えて蹲っていた
「ヤグりん、みんなーごめんー! ってアルル大丈夫ー!?」
尋常ではない様相のヴァレンタインに慌てて駆け寄り、背中をさする
「ぐっ……よもや人間の技術力がここまでとは、我が漆黒に濡れる螺旋のうぷっ」
「あらら〜、じゃあ少し休もっかー?」
「そうですネー、この状態だとリバースしかねませんヨ」
「王たる我がこのような無様を曝す事になろうとは……フハハハ! 覚えているがいいスペースうぷぅ」
「へこたれねーなー、流石は闇の帝王だ」
ヤグも肩を貸しながらベンチに移動すると、その病的までに白い表情を苦悶に歪ませながら
ぐったりともたれさせた
「アルルー、ひっひっふーだよー」
「それは妊婦さんッス! でもいい表情してるッスよヴァレンタインさん!生きてるって感じッス!」
「ヒッヒッフー……」
「やるのかヨー」
その後、至る所にある出店を回って美味を楽しんだりちょっとしたお土産を買ってみたり
散策を進める頃にはすっかりヴァレンタインも復調していた
「待たせたな皆の者、我は深淵より舞い戻った……以前の我と思うなフハハハハ」
「マジッスか! じゃあとっておきのやつ行くッス!めちゃくちゃ楽しみだったんスよー!」
「よかろう! 進化を果たした我に恐れる物などどこにあろうか!」
「で、どんなやつなんだそのアトラクション」
ヤグが横から説明を求めると、自信満々とばかりに地図を指さす
「これッス! 超高層マンションの最上階から高速落下! 適度に外の様子も見えて怖さ倍増ッス!」
「ひえー、正しく絶叫マシンだよ〜、首取れないかなあ」
「首取れたら大騒ぎですヨ、勘弁してくだサイ」
「あはは〜」
一行の眼前にそびえる、天を衝く建造物に息をのむ
「本当に大丈夫かな〜、流石にこわくなってきたよー」
「ここまで来て何言ってんスか! 私達はもう一蓮托生ッスよ!
 ね! ヴァレンタインさん!」
「……う、うむ。であるぞ」
「ちょっとびびってね?」
「シー」
覚悟を決めて踏み込んだドリクラ達が落下を迎える時
ひと際大きな叫び声が天まで届く事になるのだが、誰のものかは定かではない。



幻想の宴も終わりを迎える頃
煌びやかな輝きを携えたフロートが行進してくる
刻々と変化する光と軽快な音楽に合わせ様々なキャラクターが夜を彩っていく
「きれーだねー!」
今日も沢山皆と遊んだ、その満足感からか自然と伸びをしてしまう
何だかお礼を言いたい気分になる
「ロクメンのみんなー、いつもありがとーだよ〜」
「何だよ改まってよー!」
「そうですヨ、もう皆慣れちゃいましたカラ」
「よい、王とは寛容でなければならない」
本当に温かい、一度失った温かさを心の底から実感する
「あたし、みんなと友達になれて良かった〜!」
「何言ってるんスか! ドリクラさん、そんなの私も同じッスよ!」
「私もです」
本当の自分を受け入れ、居場所をくれる仲間達の顔を笑顔で見ていたら
一筋の涙が頬を伝った
「どうしたドリクラ……?」
「あ、あれー……どうしたんだろ〜、楽しいのになー」
「…………(ぎゅっ)」
心配そうな顔で覗き込むばんばん!と慰めるように抱き着いてくるミュウ
「みうみうー……」
ドリクラの心のつかえが解きほぐされていく
笑顔だけは崩すまいとするも、大粒の涙が堰を切ったようにあふれ出してしまう
「あははー、こんなんじゃあ、ドリームクラウン失格だね〜」
「んー、なんつーかさ、いいんじゃねえの?」
「そうッスね! 我慢は身体によくないッスから」
「その不浄、我らと共に浄化するが良い」
ダメだよ、道化師は何時でも笑ってなきゃいけないのに
「ワタクシは機械なのでよく解りませン。と言いたいところですがネ
 そういう時は思いっ切り泣く事も必要なのでハ?」
「そうだぞ、お前には私達が居るじゃないか」
「ええ、その通りですよドリームクラウン。それとも私達が頼れないとでも?」
逆だ、あたしにとって頼りになり過ぎる。初めてのチームが66組で良かったって
「うえーーーん、みんなだいずぎだよーーー」
限界だった、みんなの胸に飛び込んで泣いた
今までずっとしまい込んでいた暗い感情が爆発した、勿論今まで一緒に遊んだ時も楽しかったのは本当
初めて会った頃は少し不安な気持ちはあったけど、いっぱい話しかけたら仲良くしてくれたし
今日はちょっと場所が悪いんだ、今まで勝手に嫌っていたこの場所に居るせいだ
変な事思い出したせいなんだから

「落ち着いたようだな、ドリクラよ」
「うん……ごめんねアルルもみうみうも、本当は二人の歓迎会も兼ねてたのになー」
「…………(ふるふる)」
「この者の言う通りだ、我らは十二分に楽しませて貰ったぞ」
優しく見守ってくれた皆に囲まれながら、涙を拭う
心なしかアルベルトも心配してくれていた気がする
「ベルルもありがと! ……いたーい」
――調子にのるな!道化め!
「ベルルってばツンデレさんー」
翼ではたかれた鼻を抑えながら笑顔に戻る
「みんな本当にありがとう! もう大丈夫だよ!
 超スーパーすごーいドリームなクラウン! 略してドリクラ! ふっかーつ!」
くるくると回りながら名乗り、深くお辞儀をする
つらい記憶も涙と一緒に流れ果てたと言わんばかりに、その顔には今までで一番の笑顔が浮かんでいた
「くーっ! いい笑顔ッスー!」
「フッ、やはり笑顔でなくてはな」
写真を撮るペープルに微笑むばんばん!
「そうでなくてはデス、こっちの調子も狂ってしまいますヨ」
「全くですね」
持ち味であるほんの少しの毒気を、照れ隠しに練りこみながらもどこか嬉しそうなENIGMA
かすかに笑みを浮かべ同意するクレインダンス
「なんだよさっきはめちゃくちゃ心配してたくせに、素直じゃないなー」
「…………(こくこく)」
茶化して場を和ませるヤグにミュウも同意する
「どうやらそちの心に巣食う不浄も幾らか霧散したようだな、喜ばしい事である!」
相変わらずの王様っぷりを見せつけながらも気を配ってくれるヴァレンタイン
個性豊かで春の日差しのように温かい66組のメンバーに囲まれて
閉園まで初めてのテーマパークを楽しんだのであった。


別れを惜しみながらも解散し帰路につく中、思う
ごめんなさいお母様、もう少しだけこの夢に浸らせて下さい
私は、あたしは、みんなとまだ一緒に居たいから
わがままをお許しください……


その日、群小路詩絢の嫌いな場所がひとつ減り、好きな場所がひとつ増えたそうだ。

ドリームメモリーズ 2 終わり

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