img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ドリクラ 猫ノ鈴音(ねこのすずね)

ドリームメモリーズショート 鈴音さんのおもてなし sideドリームクラウン

登場人物:群小路 詩絢(ドリクラ) 義母 セーラー服の少女




猫ノ鈴音という魔法少女に出会ってから幾日か過ぎた
彼女に悩みを抱えている事を悟られ、図らずも相談に乗って貰う形になった私は
また一歩踏み出す勇気を貰えたのだ


そして今、私は何冊もの雑誌を目の前にしてうんうんと唸っている
書店の動物関連が並ぶコーナーにて、群小路詩絢はかれこれ数十分は睨めっこしていた
雑誌を手に取っては戻しを繰り返しながら独り言をこぼす

「うーん……猫は好きだけど、ちゃんとした知識って何にもないのよね」

鈴音と出会ったきっかけは猫だった、それも大量の猫
視界を埋め尽くす程に集結したその様は圧巻で、猫好きの人間にはさぞたまらない空間と化していたはず
大雑把に猫、としか頭になかった私でも多大な幸福感を味わう事になった位だ
思い出すと頬が緩む

「いけない……こんな事では。 私は家元の娘、私は家元の娘」

返しきれない程の恩がある両親の顔に泥を塗るわけにはいかない
自分の部屋や変身中以外では、しっかりと相応な立ち居振る舞いをしならければならない
そう決めた
二度、頬を軽く張って視線を雑誌郡に戻す

今度遊びに行く時には鈴音は勿論、猫達とも楽しく過ごしたい
幸いドリームクラウンの固有アイテムには色々な物が入る袋がある
きっと私が望んだ力の一端なのだろう、これにはとても助けられていて
思い出作りにはぴったりの自慢の一品なのだ
猫達が喜びそうな遊具やおやつ、鈴音と食べるお菓子を沢山つめてまたあの空き地に行こう
あの時の返事を貰ってちゃんと友達になるんだ
そのために

「うん、決めたわ。 全部買おう」

自然と漏れた決心の言葉とともに、良さそうな猫雑誌を片っ端からかき集めた
貯めこんだお小遣いも友情の糧に消えるなら本望であろう
さようなら諭吉、だがその選択にきっと後悔は無かった
それに次はお土産のおやつも見に行かねば、後悔してる暇なんて私にはない
夕飯の買い物ついでに見ていこう…………なるべく安く買えるところを探して





両手に書店とスーパーの袋をさげて足早に道を往く
すっかり馴染みの風景となった交通整理に励む騎士風少女の指示に従い
歩道を渡り、街中の花壇を世話して回るローブの少女と挨拶を交わす
鳥のような少女達が翔ぶ空も何だか慣れてしまった
この街には何故か魔法少女が集まるという噂も聞いた事がある
かく言う自分もその一人ではあるのだが
なんてぼんやりと考え事をしながら歩いていたら、丁度死角から歩いて来た少女にぶつかってしまった
衝撃で持っていた袋もばら撒いてしまう

「っ! ごめんなさい! 私の不注意で……」
「もう! 気をつけなさいよね」

セーラー服を着ているつり目がちなロングヘアーの少女。 中学生位だろうか
仕方ないわね、と取り落とした雑誌を拾い集めて渡してくれた
ばら撒かれた雑誌の表紙が目に入ったのか、それとなく尋ねてくる

「はいこれ。 その、あんた、好きなの……?」
「ありがとうございます、助かりました。 好き……えっと?」
「猫よ! 猫……!」
「ああ、猫の事ですか。 ええ好きですよ、お友達とのきっかけになりそうですし」
「ふーん……そう、お友達か」

心なしか少女の表情が緩む。 似たような事があったのかな

「貴女も猫、お好きなんですか?」
「えっ、そ、そうね、好きよ、猫」
「ふふ、お仲間ですね。 それではこれを」

ぶつかったお詫びと、拾うのを手伝ってくれたお礼に
猫缶を数個、同じ猫好きであるという少女に手渡す

「よかったらどうぞ。 お仲間さんにお詫びとお礼です」
「えっ、いいわよ、そんなの」
「いいえ、私の気が済みませんから」
「でも、悪いし……」
「はい、これもどうぞ」

追加の猫缶を手に乗せ、有無を言わさぬといった笑顔を見せると
少女が折れた

「……解った、いただくわ」

時刻を知らせる時計のベルが夕暮れに響く
ハッとした表情で腕時計を見た少女が慌てたように駆け出した

「ごめん私もう行かないと!」
「いえ、こちらこそ引き留めてしまってごめんなさいね」
「それじゃ!」

雑踏を巧みに避けて消えていく少女の背中を見送りながら
私も再び帰路についた
名前聞けば良かったな、猫の事教えて貰えそうだったし
今度会ったら私から自己紹介してみよう
猫好きの娘に悪い子は居ないものね





帰宅後、着替えを済ませて早速買ってきた雑誌類を広げていく
それなりに大きいダイニングテーブルを埋め尽くす圧巻の光景
とりあえずおおまかにでも種類から覚えようと図鑑を開いてみる

「色んな猫が居るのね、あの時私が抱いてたのはどの子なのかしら……
 ブリティッシュショートヘアー……マンチカン……」

人気のあるメジャーな猫から聞いたことのないような猫まで
膨大な量が載っていて、中々骨が折れそうだ
温かいお茶を啜りながらページを眺めるのに夢中で背後の気配に気付くのが遅れる

「詩絢」
「……お母様?」

普段は穏やかで柔らかい雰囲気を持つ義母の様子がどこかおかしい
私は何か粗相をしたのだろうか、記憶を必死に手繰り寄せる
だが、特に思い当たることはない
まさか、この雑誌……? 確かに家でペットは飼っていない
もしかしたら動物がお嫌いなのかも
だとしたらやはり

「それは……?」
「えっと、これは……猫の、雑誌と、図鑑です……」

日舞の指導中にも劣らない鋭き眼光を雑誌に向ける
やっぱりこれが原因なのだろうか、だがこれは友情を育むための大切な本
お叱りは甘んじて受け、なんとか許しを請うしかない……
私が葛藤している間にも義母は雑誌に視線を注いでいる
数巡行き来した後、唐突に彼女の表情は崩れた

「私も猫ぉ好きなのよお〜!」
「お母様!?」

今まで見た事ないような反応に思わず変な声が出てしまった
携えた気品をかなぐり捨てて、純真な少女さながらに舞い戻った義母が雑誌を手に取る

「ねえ詩絢、私も見ていいかしら? ああ、もしかして猫ちゃん飼いたいのかしら?
 いいわねえ……猫ちゃん可愛いわねえ、でも私アレルギー持ちなのよね……
 ごめんなさいね、私も本当はとても飼いたいのよ猫ちゃん
 お日様のよく当たる縁側あるでしょう? あそこでね猫ちゃんと一緒に日向ぼっこするの
 本当はそうしたかったのよ。 でも、アレルギーがね……本当に残念だわ
 詩絢は平気なのよね、羨ましいわあ、もしかして猫喫茶、と言う場所に行った事もあるのかしら?
 でしたらお店の事教えてちょうだいね、そうだわ写真なんかも撮れるのかしら?
 詩絢と猫ちゃんのツーショットなんて最高の宝物になりそうね、今度お願いしようかしら
 頑張ってお母さん携帯電話の待ち受けにするからね」
「お母様、落ち着いて下さいお母様」

かつてない程猛烈な勢いで捲し立てる義母に気圧されながらも何とかして落ち着かせる
普段はどちらかというとのんびり屋な彼女をここまで狂わせてしまうとは、猫の持つ魅力恐るべし

魔法少女である事は当然言えない、出来るだけぼかして伝える事にした
知り合った娘が心を通わせる程の猫好きなので、友達になるために自分も勉強しているのだと
大体間違ってないだろう。 知り合った経緯の話を聞いた義母も大層興奮していた
しっかり友達になっていずれ家に連れておいでなさい、私も是非お話してみたいわなどと

魔法少女にとって普段の姿を晒す事は大きなリスクを伴う
私としては今まで友達になった子達と、詩絢としても付き合いたいという思いはあるが
それはやはり難しいのだろう。 ごめんなさいお母様、猫だけの写真で我慢してくださいね

夕飯の支度をする義母の背中を眺めながら心の中で詫びつつ本を閉じ、手伝いに席を立つ

その後も義父そっちのけで、猫と鈴音の話で盛り上がる群小路母娘であった


ドリームメモリーズショート 鈴音さんのおもてなし sideドリームクラウン おわり

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