img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ナハト=クレーエ ぷっしーきゃっつ



人のいない夜更けの静けさは、私が活動するにあたって最適な状態だった。
舞い踊らせた羽根で落ち葉やゴミをかき集める片手間で、私は直前に読んだ小説の内容を反芻する。
地味極まりない奉仕作業ではあるけれど、精神はお気に入りのフィクションに没入できるため、割かし好きな時間なのだ。

それなのに。

「痛い痛い痛いにゃ!もっと、もっと優しく♡あぅ…やっぱ痛ッ、いに゛ゃあ゛ーいっ!!」
夜気を裂くように響き渡る悲鳴――いや、嬌声?
ねっとりと、鼻にかかったその声には聞き覚えがあって、
そして何より身に覚え――忘れもしない恥辱の記憶があり、
適うことなら耳を塞いで、さっさとその場を飛び立ちたかったけれど、
魔法少女としての使命感がそれを許さなかった。
「あなたはもっと悪逆とした魔女を目指しているのではなくて?」
そんな自問自答もしてみるが、一応は知人の、ともすれば危機を知りながら無視するというのは寝覚めが悪いだろう。
私は巨翼を翻して声の方へ向かう。


路地裏の、ただでさえ街灯の届かない空間にその痕跡はあった。
無骨で重厚そうな罠と辺り一面の半透明な液体、それに僅かに混じる赤――血。
声の主はいない。
「……この粘液だもの、案外するりと抜け出たのかしら?」
杞憂だったわね、と呟き、もう用もなく、鼻孔をくすぐるような饐えた匂いが漂うその場から離れようとして、
ポタリ、と。
私の頭上から肩へと、滴る液体があった。
私は基本的にモダンホラーやゴシックホラーを好むのだが、突飛な怪物が大暴れする類のものを知らない訳ではない。
だから、それが何を意味し、次に何が描写されるのかも直感できる。
「――ッ!」
旋回して回避――間に合わない。
路地裏という場所が両サイドを阻み、制限し、翼の展開が遅れる。
「にゃははーっ♡」
高濃度の粘液と共に落ちてきて、私を組み伏せる彼女――ぷっしーきゃっつ。
「犯人は現場に戻るというけれど、これは思わぬ収穫だにゃ♡はぁーい、ナハトにゃんにゃん♡」
「離、しなさ――」
「これだけスケベローションを浴びたら抵抗するだけ無駄無駄にゃ♡それで――何時ぶりかにゃ?ご無沙汰だったかにゃ?もしかしてわざわざ会いに来たのは、ぬるぬるが恋しくなったのかにゃーん?うにゃふふふ♡…って、あ、ちょ…ぐえー!」
私は肩甲骨辺りから第三の翼を繰り出し、彼女を弾き飛ばした。
鴉に限らず鳥類の羽根には高い撥水性がある。
私と彼女の間に羽根をありったけ放出し敷き詰めれば、粘液との接触は減り、即堕ちは免れ、反撃の余地が得られる。
もちろん、嫌というほど浴びせられたことには変わりなく、一瞬の間を置いて私の理性は茹だってしまうのだけれど。
それに伴って火照る肉体、その奥。
ふうぅ、と自分でも驚くほど悩ましげな吐息が漏れる。
深追いは当然に無理。
熱が私の少女の部分を苛み、疼く。
あの悪猫は他の子に任せるとして、
私は早く、一刻も早く、猛る性感を鎮めなくては――

「……あっ♡」

不味い。駄目かもしれない。
先ほど無理に生み出した翼がコスチュームを突き破ったため、私の背中は今、くびれの辺りまでむき出しになっていた。
そこに夜風が吹きつける度、腰が浮くような感覚が脊髄を迸る。

「く、くぅ――♡」

噛み締めても口の端から、悶えるような呻きがはしたなく零れた。
私は慌てて両手で口を塞ぎ、周囲を警戒する。
誰かに、聞かれただろうか――?

「あ、あの――」

背後から、男の声。
スーツに身を包んだ、見るからに帰宅途中の一般人男性。

「大丈夫ですか――」

彼が今にも崩れ落ちそうな私に一歩近づいて、肩に手をかけようとする。
やめて――
今、異性に触れられたら――
それでもナハト=クレーエには為す術なく、親切心から彼女に触れた男性もぷっしーの粘液、その残滓にあてられて情欲は膨れ上がり二人は野外であることも構わずなし崩し的に深く交わりその一晩を経て少女から女、魔法少女から魔女への転換を不本意に遂げてしまうと私はいいと思う――にゃ♡

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