img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:スカイブルー ノスタルジア・トト センテンス・オブ・デス 猫ノ鈴音(ねこのすずね)


魔法少女は高い所を好む
理由は様々あるだろうが一番は街を見渡せ、なにかあればすぐに駆け付けられるというのが大きいだろう
スカイブルーもその例に漏れずその地区で一番高いビルの屋上で街を見下ろしていた
(今日も何事もなし…ん?)
ポケットに入れてあるカードに微弱な魔力反応を検知する
なにかあった合図だ。もうすぐ年も明けるという時期、大きな事が起こっていないといいのだけれどと内心溜息をついた


「これは…」
山奥にある普段は人気の全くない公園
時刻は夜11時を回ろうとしているのに数十人の子ども達が遊んでいた
近くに保護者の姿もなく異様としか言いようがない光景だ
「なるほど、確かにこれはおかしいね」
傍らにはこの異常を発見した猫耳の少女が立っている

彼女は名は猫ノ鈴音。本物ではなく魔法カードの効力で生み出された魔法少女である。オリジナルとなる本物もいたのだが、ある事件に巻き込まれ既に死亡している
その後始末と調査のためスカイブルーが派遣され、調査中別件で魔法少女…ルエ=ルエの死を看取る事となり魔法のカードを託されたのだが、驚く事にそのカードの能力は魔法こそ使えないものの猫ノ鈴音の分身を使用できるというものだった
当初、ルエ=ルエが猫ノ鈴音の事件に深く関わっているのではないかと関連性を疑ったが、死に際の発言や生存者の言う『赤い脩道服を着た女』という情報と合致しないので、調査は続けるが関連性は低いと考えている
それらをひっくるめて魔法の国に報告はしたが『その件も調査しておくように』と一言あっただけに終わってしまった。カードを自由に使えるのもこのためだ
杜撰だなとスカイブルーは思うが考えるだけ無駄なのですぐに忘れることにし、使い方を把握してからは街の巡回と異常があれば伝えるように命じていたので今回の発見に至った
殺された子の調査で殺された子の分身を使う事になるとはなんとも皮肉な事である
なにかあったらよろしくと猫ノ鈴音に一言伝え子ども達の中に入り込む

その途端脳裏に過去の光景がフラッシュバックする
幼少期、部屋の隅で妹を抱え震えていた日々…母の姿妹の姿…急いで頭を振って考えを切り替える
(苦手な類の魔法だなこれ)
この原因は最初に見回した時に既に当たりはつけてある
まるで童話から抜け出してきたような金髪のランドセルを背負った少女、この騒ぎは彼女の仕業だろう
「こんばんは。魔法少女は君かな?」
「こんばんは。うん、当たり。それがわかる貴女も魔法少女ね。なんてお名前なの?」
「失礼、魔法の国監査部門所属のスカイブルーっていうんだ。君のお名前を聞いてもいいかい?」
「ボクはノスタルジア・トト!スカイブルーも一緒に遊ぶ?」
「ああいや、ボクは遊ぶのは遠慮しておくよ。これはどうなってるのかなって聞きに来ただけなんだ」
「スカイブルーもボクっていうんだ!仲間仲間ー!!ねぇねぇ、お友達になりましょ?」
「はは、奇遇だね。ボクなんかでよければ是非」
「やった!じゃあ何してたか教えてあげる。えっと、大人ってみーんな辛い顔して疲れて大変でしょ?だから子どもに戻っておもいっきり遊んでもらって普段のストレスなんかを発散させてあげてるの」
「そうなんだ。つまり子どもに戻す魔法なんだね。皆のストレス発散になるならそれは良い事だと思うよ」
「でしょでしょ?みーんな子どもに戻っていっぱい遊んだら最後はいい笑顔で戻っていくよ。でも今日はそろそろおしまい」
「なんでだい?」
「電車やバスが終わっちゃったら皆帰れなくなっちゃうから。じゃ、みんな帰るよー」
ノスタルジア・トトが魔法を解除する
意外と現実的なんだなと思っていると、スカイブルーの頭の中の不快な記憶は息を潜め、周辺から子ども達が消失し代わりにサラリーマンやOLの姿が現れる
一様に当たりを見回して不思議そうな顔をする。そのうち伸びをしてにこやかな笑顔でこの場を離れていった
「珍しいものが見れたよ。ありがとう」
「どういたしまして。今から一緒に遊んでもいいけど…スカイブルーはどうする?」
「もう年末だから何事も起こらないようもうちょっと巡回するよ。そのうち遊ぼう。約束だ」
「うん!」


「面白い魔法少女だったね」
担当区域に戻りながら傍らにいる猫ノ鈴音に話しかける
「そういえば魔法少女になって久しく遊んでないなって思ったよ。色々忙しかったしね」
ここでふと我に返る
魔法で生み出された猫ノ鈴音は別に生きているわけではない
これも独り言になるのかな?と考えたが別にそれでもいいかと思い直す
「君も喋れたらいいのにね」
猫ノ鈴音は曖昧な表情で頷いた


「ふふ、次はスカイブルーと約束したしいつ一緒に遊べか楽しみだなー」
知らず知らずのうちにぴょんぴょんスキップしていた
「ブランコ?鬼ごっこ?缶蹴り?迷うなー」
あれでもないこれでもないと唸っていると
「面白いもの見せてもらったわ」
「うっひゃあ!?」
ノスタルジア・トトが驚いて飛びのく
背後には黒い羽根がついた漆黒の魔法少女がいた
「えーと…誰?」
黒衣の少女はふふふと笑い
「私の名前はセンテンス・オブ・デス。私、貴女に少し興味があるの」





ノスタルジア・トトと別れて一週間ほど経ったある日、カードに魔力が走る。その魔力量から緊急事態を伝える
「なんだ…?」
流れてくる場所は一週間前の公園と全く一緒
嫌な予感が走る
あの魔法少女がなにか面倒ごとに巻き込まれているのだろうか
無事である事を祈り現場へと飛んだ


スカイブルーが異変に気が付く少し前
ノスタルジア・トトは以前の公園に5人程の子どもを集めていた
「皆集まったかなー?今日は皆で鬼ごっこやろー!」
ノスタルジア・トトの顔は酷く歪んでいる
泣いているような笑っているような歪な表情
心の中で子ども達にこの場から逃げて逃げてと叫び続ける。だがそれは届かないし届かせない
だって楽しみな事ができてしまったのだから獲物を逃がすような事を言えるはずがない
我慢は今日この瞬間まで。これからは欲望を全力で開放しようと思うと心が躍る
集めた子どもたちは無邪気に喜んでいる
ノスタルジア・トトは子ども達と遊ぶのが大好きだ
そしてそれを壊してしまうのもまた好きだ
嫌そんなのは好きではないと心の中で葛藤するがもう手遅れだ
「鬼はボクがやるからねー!皆はボクに『絶対』捕まっちゃダメだよー!指定した範囲からも出たら酷い罰ゲームが待ってるからねー!」
ノスタルジア・トトがそう言うと、はーいと元気よく返事する子ども達
「十秒待つからねー。いーち」
逃げ出す子ども達
10までのカウントを終えゆっくり振り向き品定めを始める
『ああ、あの子にしよう』
ダメだダメだダメだという心の声が聞こえる
やってはダメだ。でもやれば絶対に楽しい
相反する感情が渦巻くがもう手遅れ。もう抑える事はない
芽生えた感情に抗う事は実際とても大変な事だった。一週間持ちこたえた事こそ賞賛されるべきものだと自己弁護をする
だから開放してしよう
ノスタルジア・トトは狙いを定めた子に一気に近づいて胸を貫いた
返り血がトトの顔を赤く染め、それをペロッと舐め取り恍惚とした表情になる
何故楽しいかはわからない
自分のしてしまった行為に嫌悪する。だがそれ以上に楽しいという感情がそれを凌駕する
こんな事考えた事もなかった。ましてや楽しいだろうなと考える事だって絶対になかった
なんでこんな事になってしまったのだろうと、疑問符が頭に浮かぶが楽しいから良しとしよう
周りから悲鳴が聞こえ、定めた範囲を超えて逃げ出そうとする子どもが殺到した
酷い罰ゲームがあると伝えたはずなのに…
ノスタルジア・トトは指定した範囲を超えた子どもの1人に詰め寄ると一気に殺さないよう手足を引き千切った


辺り一面を見渡せる木に黒衣の少女の姿があった
この一週間は実に楽しめた
ノスタルジア・トトの人間体が冴えない中年だというのにもお腹を抱えて笑ったし、だんだんと自分に余裕がなくなっていく姿も笑わせてもらった
一週間前ノスタルジア・トトとの会話の中で魔法を掛けた「貴女は子どもと遊ぶのが好きなのよねぇ。でも、『それを壊してしまうのもとても好き』になるわぁ」と
効力は強すぎず弱すぎず調節をする
強すぎるとただの殺人鬼と化し、苦悩する姿を見る事はできないだろう
弱すぎると理性でそれを押しとどめ一生隠し通すだろう
この絶妙な魔法の調整は自分にしかできないと自負している
そもそもこの魔法を使えるのは自分だけだが
葛藤し葛藤し結局折れてしまうところを見るのが好きだ。最高の暇つぶしと言っていい
「さて、役者も揃い始めたようねぇ」
視線をチラッと横方向に向ける
そこには草葉の陰からこの殺戮を見守る猫耳の魔法少女
今にも飛び出しそうな形相でこの虐殺をじっと見ている
「どんな楽しいパーティになるのかしら♪」


絶命した子どもを満足気に一瞥すると次の獲物を求め辺りを見回す
残り3人
皆散り散りに逃げてはいるがすぐに追いつける距離だ
引き千切ると長く遊べないので次は折るだけにしようと考えながら次の獲物に向かって走りだした
「…っ!」
直後ノスタルジア・トトは横ばいから迫るなにかを察知し後方へと跳躍する
光が走り先ほどの進路上に鋭い爪の跡が残る。そこに一人の猫の耳を生やした魔法少女が現れる
「君は誰?」
少女は答えない。だがその表情は怒りに満ちている
逃げた子達はもうすぐ範囲外に出る。目前の魔法少女がいる限り子ども達を追う事は不可能だろう
子ども達が無事逃げてくれたと安堵の気持ちがある。だがそれ以上に獲物を逃がされて不快な気持ちがそれを上回る
いなくなってしまった子の変わりは目前の少女にしてもらうとしよう
「次は君が遊んでくれるんでしょ?」
少女は答えない。ノスタルジア・トトはニコっと笑いかけると魔法を全力で展開した
「子どもになって一緒に遊ぼう!」
だが少女は意に帰さず真っ直ぐ突進し爪を突き出す
驚き反応が遅れたが間一髪でそれを躱す
少女の追撃は続きちょこちょこと逃げ回りなんとか距離を取る
ノスタルジア・トトの魔法は子どもに戻りたくないと思っていたり強靭な精神力があると効きにくい。効きにくいが絶対に効力は出るはずだ。それが全くでないというのはよほどの精神力なのか
大振りの一撃を回避し、このままでは不利と判断し距離を取ったところで魔法を解除する
「君凄いね。ボクの魔法で子どもにならないなんて」
相変わらず少女は答えない
「口ぐらいきいてもいいと思うんだけど…まぁこんな事の後だしね」
再び戦闘態勢を取ろうとした時
「これは…どういう事なのかな?」
蒼い魔法少女、スカイブルーが現れた


現場は酷い光景だった
胸を貫かれ絶命した男性が1名、手足をもがれ絶命した男性が一名
おまけに様子見を命じたはずの猫ノ鈴音がノスタルジア・トトと戦闘に入っている
ここで何があったかは話を聞かなくてはならない
ノスタルジア・トトは悪い魔法少女という印象は全く受けなかった。話し合いの場はなんとか持てるだろう
「これは…どういう事なのかな?」
スカイブルーが尋ねる。ノスタルジア・トトは困ったように顔を傾げ俯いた
「わかんない。わかんないけど前スカイブルーと別れたあと急に、『これを壊したら楽しいだろうな』…って想い初めて。今日はで我慢しなきゃ我慢しなきゃってずーっと我慢してたんだけど…無理だったみたい」
「…ボクがなにかしてしまったかな?君がこういう事を好むとはあまり考えにくいんだけれど」
「ううん。ボクだってこんなのは大嫌いだよ。その後なにかあって…思い出せないけどなにかあって…それから…」
「わかった。一旦ボクと一緒に来てほしい。何者かに精神を弄られた可能性もある。」
ノスタルジア・トトは黙って首を振る
「ダメなんだよスカイブルー。一度やったらとてもとても楽しくて。もうボクはボク自身を抑えられないんだ」
俯いた顔がゆっくりと上がる。満面の笑みでこちらを見て笑いかける
相手の表情が変わった直後スカイブルーはノスタルジア・トトを蹴り飛ばし全速力で後退する
直後頭の中に昔の記憶が蘇り溢れてくる
小学校の記憶、幼稚園の記憶。それはスカイブルーにとっては好ましくない想い出だ
スカイブルーの子ども時代は破綻していた
常に助けを求めていた子ども時代、どれだけ上手く小賢しく立ち回ろうと根本が変わる訳ではない
一瞬だろうが戻らされ、判断を遅れさせられるというのはいつだって致命傷になりえる
それに数秒なら持ちこたえられても十秒以上持ちこたえるのは無理だろう
スカイブルーにとってノスタルジア・トトとの相性は最悪だ
態勢を立て直し、追撃しようとするノスタルジア・トトの前に猫ノ鈴音が立ち塞がる
「なんで君はボクの邪魔ばっかするの!!2体1なんてズルい!!」
ノスタルジア・トトのパンチを避け猫ノ鈴音は爪を繰り出す。ノスタルジア・トトは肉球の部分を受け止め蹴りを放ち吹き飛ばす
キッとスカイブルーを睨み接近するノスタルジア・トト
その途端子ども時代の想い出が蘇る
咄嗟に地面を蹴り魔法を使い後ろ手を地面に着いて滑りながら後退する
現状を頭の中で急いで整理する。今回の犯人はどうやらノスタルジア・トトで間違いないようだ
そして以前スカイブルーと別れた後に、何者かに精神を弄られた疑いがある
なんとか拘束し魔法の国の専門家に見てもらうというのが最善だろう
そのためにはノスタルジア・トトをどうにかしなければいけないが近づく事を封じられるあの魔法はスカイブルーとは絶望的に相性が悪い
だがカードから生まれた猫ノ鈴音にあの魔法は通用しないのでその点でイーブンと考えておく
猫ノ鈴音の戦闘力は大して高くはない。それで抑え込めるのなら…作戦の方針は決まった
「ボクの魔法は君とはどうも相性が悪いみたいだ。一度引かせてもらうよ。鈴音は時間稼ぎを!10分したら戻ってくるんだ!」
…逃げる?
それを聞いてノスタルジア・トトはカッ怒りが湧き上がる。このまま自分を放置して己の身可愛さに逃げ帰るなんて魔法少女としてありえないと
このまま自分を放置すれば怒りに任せ手あたり次第に街の人間を殺すかもしれないというのに。いや、殺しに行く
それを止めてくれると期待したのに
救援を呼んで来るというのなら10分などと言わず数時間足止めをさせろというのだ
スカイブルーが去った後を憎々しげに見つめながら猫ノ鈴音に語りかける
「君はボクをとめてくれるよね?」
少女は答えない
もうなにもかも構うものかと猫ノ鈴音に殴りかかった


「これでいいかな」
仕掛けの用意を整える
流れ的には過去の試験の時と変わらない。暴走するのであれば無力化するまでだ
ただ今回の方が厄介なのは間違いがない
近づけない魔法少女相手はスカイブルー単独では分が悪い
もしあの瀕死の魔法少女に出会っていなければノスタルジア・トトを相手に勝てただろうか
「ダメだね。もう勝った気でいる。驕っちゃダメだ」
パンと頬を叩き気合を入れた


「…!」
猫ノ鈴音が蹴飛ばされすぐに体勢を整える
気付けば元いた場所からどんどんと後退するようになっている
「もう10分は経ったね。けど絶対逃がさないから」
ノスタルジア・トトがパンチやキックを連続して繰り出す
防戦一方の猫ノ鈴音は必死にガードするが相手の手数を防ぎきる事ができず顔に一撃を食らい吹き飛ばされ廃工場の手前まで吹き飛ばされる
起き上がろうとするが力が入らず思うように体が動かないようだ
「残念だったね。誰だか知らないけど君を壊して少しでも楽しい気分を味わう事にするよ」
ゆっくりと猫ノ鈴音に近づくノスタルジア・トト
「手足折ってからどうしようかなー…あ、その猫耳千切っちゃおう!あとは…」
そこまで言ったところで不意に足元が滑る
あれ?と思った時には地面に転がっていて目の前の少女の姿がなくなっていた
衝撃を受け吹き飛び廃工場の中に叩き込まれる
「え?なに?なにが?」
急いで立ち上がろうとするが立てない
床が滑って力が入らない。
そして扉が閉じられる
廃工場の中に掴まるような物もなく壁も床と全く同じ状態になっている
そこで初めて自分が罠に誘いこまれたのに気が付く
よくよく考えたら初手の相手の俊敏性を考えたら自分が追い詰めていくというのがまずおかしかったのだ
なにもない公園から廃工場まで300メートルほど
頭の中をスカイブルーの姿が浮かぶ。逃げ帰ったと思っていた魔法少女はこれを用意していたのだと
「こんなの…!こんなの…!」
何度立とうと試みても結果は全く一緒だ
地面を殴りつけようとしてもその手が滑ってしまう
「うう…ううう…」
悔しい気持ちと良かったという安堵の気持ちが入り混じる
これで人を殺すことはなくてホッとした。これで人を殺せなくなってしまってイラついてしまう
いつしかなにも考えず大の字になり滑る地面をただ流されるだけになった


「成功だね」
廃工場の中を徹底的に綺麗に磨いた
スカイブルーの魔法は『魔法の布で物を綺麗に磨く事ができる』というもの
内部を全て拭いてツルツルにする。飛行可能な魔法少女ならそんなものは大した意味はないが飛べない魔法少女であれば自由に動き回る事はできない
相手を子どもに戻すという彼女の魔法もあの内部では意味をなさないだろう
後は魔法の国に連絡を取り捕縛のための人員を確保し聴取後専門家に様子を見てもらわなければならない
工場の様子を見るが魔法を展開させている様子はない
端末から魔法の国に連絡をし今回の件を伝えて端末をしまう
その時、パトカーのサイレン音が近づいてくるのがわかった。生存者が連絡したのだろうか
元いた公園の手前でパトカーが止まり、先ほどの生存者と思われる3名が手錠を掛けられた姿で降ろされる
「…なんだ?」
明らかに様子がおかしい
警官二人が先ほどの生存者を跪かせ拳銃を突きつける
「なんで!」
スカイブルーが駆ける
その直後カードの猫ノ鈴音の反応が消失する
困惑しがまずは目の前の事態を収拾しようと警官に向かって駆けるが間に合わずパンパンと乾いた発砲音が響き2人が倒れ、もう一発パンという音が響き3人目が倒れた
警官たちはケラケラと笑い、お互いの眉間に銃を突き付ける
「やめろ!!!」
叫ぶ、だがあと数歩というところで2人の警官は同時に発砲し地面に倒れ伏した
ぐっと、気持ちを切り替える
猫ノ鈴音の反応が消失した方向、廃工場の方を見ると一瞬漆黒のなにかが飛び去るのが視界に入った気がした
廃工場の中、ノスタルジア・トトを見ると
首を掻き切って死んでいた


ノスタルジア・トトはあっけなかった
あの程度で魔法少女などと良く名乗れるものだ
暇つぶしになったのはほんの一瞬
あのまま無力化されて魔法の国の聴取でこちらの存在に気が付かれても面倒だ
敵は2人、こちらは戦闘向きではないし2人相手では逃げる事は出来てもノスタルジア・トトを始末する事もできない。まずは分断させなくては。そのための仕込みはもうできている
交番に駆け込んだ生存者達を縛り上げ、警官のほうには『人を殺して仲間と一緒に殉職したい』という想いを埋め込んでおいた
場所や殉職の仕方など軽く伝えるとよくわからんがそれはいいとパトカーに生存者を押し込み始めた
後は奇襲のタイミングだ
案の定1人は警官と生存者の方へ向かった
上空から廃工場を警戒していた猫耳の少女へ真っ直ぐ高速で降り立ち、即首を叩き切る
消えていく少女を無視し廃工場の扉を開いて一歩踏み出そうとしてノスタルジア・トトが床を滑りながら大の字になっているのを見てやめる
ノスタルジア・トトまでの距離は10メートルもないので十分射程内だ
「あれ…ボク君を知ってる…」
こちらを見つめながらノスタルジア・トトが言った
「すぐに忘れるわ。前にかけた『壊してしまうのもとても好き』というのは解除してあげる。でもとても残念、貴女は『これから全力で首を掻きむしりたくなる』のよぉ」
ノスタルジア・トトはああああ…と呟きながら首に手を掛けた
公園の方から発砲音がした
うかうかしていると面倒だ
もう一人の魔法少女も適当に誑かしてもいいが戦闘態勢に入っている魔法少女を相手にするのも面倒だろう
首を掻きむしり始めたノスタルジア・トトに投げキッスをし
「つまらない人生だったわね。でも最後の最後に少しだけ私を楽しませてくれたのだから少しは誇っていいわよ」
くすくすくすと笑いながらセンテンス・オブ・デスはその場を後にした


ノスタルジア・トトの死体はは中年男性の死体へと変化していく
目を見開いた形相は悔しさが溢れている
スカイブルーはそっと男性の目を閉じる
「優しい方たったんでしょうね。貴方が悪い人であればあんな魔法にはならないでしょうから。貴方の魔法は皆を笑顔にしていました。それができなかったボクは貴方に最大限の敬意を表します。最後は無念であったでしょうがどうか安らかに」
廃工場から出て夜空を見上げる
一瞬視界に入ったあの影が犯人なのだろうか
魔法の国の関係者が到着するまでただただ夜空を見上げていた


事件は全て事故死という事で片づけられた
この街の警察関係者にも魔法少女は入り込んでいるのでフルに活用させてもらった
そのおかげでなんとか事が公になる前になんとか食い止められただけよしとしてほしい
魔法の国からはその街には他にも魔法の国関係者の少女がいるので協力して事にあたれという連絡のみ
やる気のなさが伺える内容に辟易しつつ以前の公園に足を運ぶ
ノスタルジア・トトと会ったのは2回
ちゃんと話せたのはたったの1回だ
『もし』最初に会ったときに一緒に遊んでいればこの結末は違ったものになったのではないか
「よくないねこういうの」
もしはないのはよく解っている
だからこそ彼の無念を晴らせるよう少しでも頑張ろうと思う
傍らにいる猫ノ鈴音の頭を撫で今日も調査を開始する

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