img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ルエ=ルエ 猫ノ鈴音(ねこのすずね) ジャック・R ゼノちゃん プリムローズ スカイブルー

一体どこで間違えてしまったのだろうか
ルエ=ルエは、月明かりが差し込む暗い廃墟の中で壁に寄りかかりながら虚ろな目で天井を見つめていた
少女の腹部は大きく切り裂かれ大量に出血している
致命傷だ
体から急速に熱が抜けていき、長くない事が自分でもわかる
ここまで運ばせた猫耳の魔法少女がおろおろとこちらを見ている
「いやー…完全に私の魔法の上位互換だとは思わなかったですよねー」
誰ともなしに呟く
数で勝るなら勝てると思った
だが相手も同じような魔法を使い、しかもこちらより数が多いというのは完全に意表をつかれた
数を増やせてもあの程度…と油断したのがまずかった
結局防戦で手一杯になり最後は乱戦
鉤爪の魔法少女か分裂する魔法少女かどちらにやられたのかすら覚えていない
ギリギリで足の速い猫耳の魔法少女のカードで撤退し今に至る
死ぬのは怖くない
目的を探す過程でいつだってこうなる覚悟はできていた

最初は理想とする魔法少女を目指してみた
正しい行いはそれなりに満足感を得られ、そういう生き方もいいかと思っていた
他の魔法少女が持ってきた案件を手伝い、時には魔法少女同士の戦闘にも巻き込まれたりなんだりしたがそれはそれで楽しめたし感謝されるのも悪くはなかった
そんな時に、私はあの猫耳の魔法少女と出会ってしまった
その魔法少女はどこまでも真っ直ぐだった
彼女のおどおどしつつも真っ直ぐに生きる姿はそれこそ私の目指したものに一番近い少女だったのかもしれない
私はこんなに真っ直ぐ生きられるのだろうか
そう思ってしまった時点で理想の魔法少女に私は向いていないのだろうと考えた
私は彼女にはなれない
そしてそんな彼女もあっけなく逝ってしまった
その事実は思いの外私の心に衝撃を与えた
友達を亡くしたという喪失感も大きかったが、良い魔法少女も簡単に殺されてしまうのが現実なのだと

理想の魔法少女にはなれそうにない
では悪い方向性も試してみてはどうだろうか
だがそれは前向きだった彼女の意志に反するだろう行いだ
この身はできそこないの人形のようなものだが、せめて友達には胸を誇っていられる人間になりたい
あの子が生きていたのなら共に肩を並べて困っている人を助ける未来があったかもしれない
迷っても止まってもきっとあの子は前向きに私を…
「ifはないって寂しいですよねぇ〜」
生きる目的を見つけるのって難しいと空を仰ぎ見る
そんな時だった

「アタシの獲物はっけーん!悪戯開始!」
漆黒のマントをたなびかせ、巨大な鉤爪を持つ魔法少女が現れたのだった

結果としてはこれを撃退
相手を助けに来た魔法少女諸共なんとかして悪者ぶってキャンディを奪おうとしたところで相手の魔法で逃してしまった
そこで素直に放っておいて自分のキャンディ集めに精を出せばよかったのだが、周辺警戒のため使っておいたカード、プリムローズが見つけてしまったのだ
偶に本当に魔法を使えないはずだよね…?と思うぐらいに探し物を見つけてくるので頼りになる
魔法少女に襲われた、ならそんな悪い魔法少女からは飴を奪ってしまっても構わないだろう
少しだけ…悪い事を試すのには良いチャンスが巡ってきてしまった
これこそが魔法少女として決定的な間違えだったのだろう

「ふふふ…トドメを刺しに行くなんて良い魔法少女の発想じゃないですよね〜…」
どこか楽し気に呟き猫耳の魔法少女を見る
あっちに逝ったら彼女にしこたま怒られるんだろうなと思う
試せることは試した
最期はお世辞にも良い終わりとは思わないが、それでも自身がなにをできるかなにを目指すか最期まで試してこの終わりなら上場だろう

ザッっと足音
猫耳の魔法少女が警戒態勢に入る
ルエ=ルエはトドメを刺しに来たのかなと思ったが現れた魔法少女は戦闘した2人ではなかった
青色のふわふわな髪の毛をし、どこかファンタジーの制服チックな衣装を着た魔法少女
彼女はルエ=ルエを見て言った
「なにか言い残すことはあるかい?」
誰かは知らないけれど看取ってくれるらしい
言い残す事はなにがあるだろうか
私ができる事、残さなくてはならない事
結局私はなにも見つけられなかった半端者だ
そんな私に残さなくてはならないものなんて…
そう考えた時、猫耳の少女が目に入る

「そうですねぇ…そうだ、この子もらってくれますか…?」
気が付いた時にはそんな言葉が出ていた
魔法のカードは固有のアイテム
ルエ=ルエが死んでも残り続けるだろう
渡してしまった結果、その後どうなるかはわからない
わからないが彼女が生きた証は残したかった
カードを差し出す
今はそんな動作だけでも辛い
「良い子…だったんですよ…私はなんにもなれなかったんです…でも彼女みたいになりたかったんですよ…」
相手は差し出されたカードを受け取った
カードがうっすら発光し、猫耳の魔法少女の姿が消える
「わかった」
短い返事
「ありがとう…これで心置きなく…いけますよ〜…人としても…魔法少女にもなりきれなかった…私はなんの…ために生きてきたんでしょう…ねぇ〜…」
だんだんと目が霞んでいく
「君の人生は僕にはわからない」
最期に声が聞こえた
「けれど君は友達想いの女の子だと僕は思うよ」
ルエ=ルエの意識はそこで途絶えた

目の前の魔法少女は元の人間の姿に戻っていた
制服を着た高校生ぐらいの女の子
(僕より少し歳上かな…)
スカイブルーは彼女と周りの血痕を魔法の布で綺麗にしながら思った
魔法少女なんてヤクザな商売だ
無給で私生活を削って活動するか運よく…かはわからないが魔法の国の下で給料を貰い荒事や後始末を回されるか
どちらにせよ夢も希望もありはしない
そんな中最期まで憧れるものがあった彼女は幸せだったのだろうか
託されたカードを眺める
笑顔の猫耳の少女の顔が眩しかった

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