最終更新:ID:yJScJ6i53A 2016年12月20日(火) 03:03:13履歴
登場キャラクター:カトリーヌ 玉藻
家を飛び出た時、財布をがめていかなかったのは大きなミスだったと今でも思う。
だから、今こうして自販機の下の小銭を弄るハメになっている。
あまりに効率が悪い。
ない時の方が圧倒的に多いし、あっても100円が最大程度だ。たまに500円があったりもするが、かなりのレアケースな上にうま味を感じられない。
私はとうの昔に人間として生きていくことをやめていた。元より人間ではないが魔法少女になっている間は人の形をしているわけであって、ならばそれに適応した生きる道があるのではないか、とも考えたりもしたのだ。
最近では、小銭探しもそうだが猫の姿で生活することも多い。私は猫の中では体はまあ大きい方だが、それでも人の子ども並の大きさで地面に這いつくばっているよりか、ましだ。
ふと。
私の後ろをついてきている者の気配を感じる。振り返ると、大人の女性が私を見下ろしていた。手には買い物袋を下げ、いかにも仕事帰りといった風体の女性だった。
にしてもこの者もよくやる。猫であるこの私を尾行するなんて。
!?
袋の中に手を入れる、何をするつもりだ。今の私は警戒心MAXの獣性秘める猫ぞ、何かしようものなら
「ほれ、猫はたしかチーズは食えるんじゃったかえ?」
チーズか、有難い……。
「ちょい待った」サッ
ナーオァーオ(なぜ引っ込めるんぬ、よこすんぬ)
「おぬし……儂の言葉わかるじゃろ」
ォアーオ(今重要なのはそこじゃないんぬ)
「…ほれ、食うたら儂についてきぃよ」
食パンに乗せて焼いて食べるタイプのものだ。昔、婆はこれをよくくれたものだ。別に焼かずとも十分美味い。
チーズの人は先へ歩き出す。ついて来いと言われたからにはついていくしかない。これでも私は義理堅いのだ。
着いたのは、山奥の社だった。
こんな場所でも住めば都、というやつなのだろう。小奇麗な印象をうける。社の中から灯りは見えるがとても電気が通ってるようには見えない。すごく不便そうだ、いや……もしかしたら通っているのかも。
残念ながら私は家の中に入れてもらうことはできなかった。代わりに彼女は奥から酒らしきものと、6ピースのチーズを持ってきた。
「さて、本題に入るとするかぇ」
そういうと、彼女は石段の上に腰かけて話始める。
「おぬし、魔法少女とかじゃないかの?」
……やはり、バレていたのか。言葉がわかるとか言っていた段階で、何となくそう聞かれるのではないかと予想と覚悟はしていたが、あまりにどストレートな質問に返す言葉が浮かばなかった。
ということは、彼女もまた魔法少女なのか。
「その首にかけているそれ、儂には変身するための端末に見える」
こうも見透かされては隠す意味もないだろう。それに特に悪意の類も感じられない。ただただ興味のみが先行しているような感じだ。首に下げていたマジカルフォンを下し、画面をこの私の愛らしい肉球で操作する。相手と同じ人型へと変化していく。
「おやまぁ可愛らしい姿だこと」
「なんぬ」
「したら、私も変身した方がいいかの」
「好きにすりゃいいんぬ」
同じく、端末を操作し変身する。
私よりでかい。浮揚する蝶、漂う妖艶さ、明滅する狐火とそれに違わぬ妖狐の姿、私とは何もかもが違う異質さを表していた。
「はー、強そうんぬ」
「まぁ実際儂は強いからの」
あっけらかんと言ってのける。余裕というものなのだろうか。
「そういえば名前を聞いていなかったかの、儂は玉藻と申す」
「カトリーヌ、ケイトと名乗っていた時もあったから呼びやすい方にしていいんぬ」
チーズの人こと玉藻は、落ち着き払った様子で答える。
「さて、用はこれだけなんぬ?自己紹介は終わったようだし」
「いんや、儂はおぬしと話がしたくての」
「はぁ、そう言われても人に語れるほど充実したキャッツライフを送ってるわけじゃないんぬ」
「いやいや、儂は興味がつきんぞ、例えば……何故野良猫が魔法少女になっている、とか」
当然の疑問ではあるが、変なところに目をつけてきた。
「他にも、色々聞きたいことはあるからの、まあ酒でも飲みながらゆるりと」
用というのはそれか、まあチーズがあるなら悪い気もしないかもしれん。
時間はまだある。少しだけ、この少女に付き合ってやろうではないか。
私は初めて呑む、酒というものに少しの興味を惹かれつつ、メインはチーズだ。がっつり御馳走になろう。
―――――
翌日。
―――――
ぐぇぇ。
飲みすぎた。
魔法少女の体にアルコールは効かんはず。
解除もされていない。
何を言ったかも、とんと思い出せん。
「あら、目が覚めたようで」
こいつ誰だっけ。
後でちゃんと謝った。
私はまだまだここにいないとならなそうだ。
家を飛び出た時、財布をがめていかなかったのは大きなミスだったと今でも思う。
だから、今こうして自販機の下の小銭を弄るハメになっている。
あまりに効率が悪い。
ない時の方が圧倒的に多いし、あっても100円が最大程度だ。たまに500円があったりもするが、かなりのレアケースな上にうま味を感じられない。
私はとうの昔に人間として生きていくことをやめていた。元より人間ではないが魔法少女になっている間は人の形をしているわけであって、ならばそれに適応した生きる道があるのではないか、とも考えたりもしたのだ。
最近では、小銭探しもそうだが猫の姿で生活することも多い。私は猫の中では体はまあ大きい方だが、それでも人の子ども並の大きさで地面に這いつくばっているよりか、ましだ。
ふと。
私の後ろをついてきている者の気配を感じる。振り返ると、大人の女性が私を見下ろしていた。手には買い物袋を下げ、いかにも仕事帰りといった風体の女性だった。
にしてもこの者もよくやる。猫であるこの私を尾行するなんて。
!?
袋の中に手を入れる、何をするつもりだ。今の私は警戒心MAXの獣性秘める猫ぞ、何かしようものなら
「ほれ、猫はたしかチーズは食えるんじゃったかえ?」
チーズか、有難い……。
「ちょい待った」サッ
ナーオァーオ(なぜ引っ込めるんぬ、よこすんぬ)
「おぬし……儂の言葉わかるじゃろ」
ォアーオ(今重要なのはそこじゃないんぬ)
「…ほれ、食うたら儂についてきぃよ」
食パンに乗せて焼いて食べるタイプのものだ。昔、婆はこれをよくくれたものだ。別に焼かずとも十分美味い。
チーズの人は先へ歩き出す。ついて来いと言われたからにはついていくしかない。これでも私は義理堅いのだ。
着いたのは、山奥の社だった。
こんな場所でも住めば都、というやつなのだろう。小奇麗な印象をうける。社の中から灯りは見えるがとても電気が通ってるようには見えない。すごく不便そうだ、いや……もしかしたら通っているのかも。
残念ながら私は家の中に入れてもらうことはできなかった。代わりに彼女は奥から酒らしきものと、6ピースのチーズを持ってきた。
「さて、本題に入るとするかぇ」
そういうと、彼女は石段の上に腰かけて話始める。
「おぬし、魔法少女とかじゃないかの?」
……やはり、バレていたのか。言葉がわかるとか言っていた段階で、何となくそう聞かれるのではないかと予想と覚悟はしていたが、あまりにどストレートな質問に返す言葉が浮かばなかった。
ということは、彼女もまた魔法少女なのか。
「その首にかけているそれ、儂には変身するための端末に見える」
こうも見透かされては隠す意味もないだろう。それに特に悪意の類も感じられない。ただただ興味のみが先行しているような感じだ。首に下げていたマジカルフォンを下し、画面をこの私の愛らしい肉球で操作する。相手と同じ人型へと変化していく。
「おやまぁ可愛らしい姿だこと」
「なんぬ」
「したら、私も変身した方がいいかの」
「好きにすりゃいいんぬ」
同じく、端末を操作し変身する。
私よりでかい。浮揚する蝶、漂う妖艶さ、明滅する狐火とそれに違わぬ妖狐の姿、私とは何もかもが違う異質さを表していた。
「はー、強そうんぬ」
「まぁ実際儂は強いからの」
あっけらかんと言ってのける。余裕というものなのだろうか。
「そういえば名前を聞いていなかったかの、儂は玉藻と申す」
「カトリーヌ、ケイトと名乗っていた時もあったから呼びやすい方にしていいんぬ」
チーズの人こと玉藻は、落ち着き払った様子で答える。
「さて、用はこれだけなんぬ?自己紹介は終わったようだし」
「いんや、儂はおぬしと話がしたくての」
「はぁ、そう言われても人に語れるほど充実したキャッツライフを送ってるわけじゃないんぬ」
「いやいや、儂は興味がつきんぞ、例えば……何故野良猫が魔法少女になっている、とか」
当然の疑問ではあるが、変なところに目をつけてきた。
「他にも、色々聞きたいことはあるからの、まあ酒でも飲みながらゆるりと」
用というのはそれか、まあチーズがあるなら悪い気もしないかもしれん。
時間はまだある。少しだけ、この少女に付き合ってやろうではないか。
私は初めて呑む、酒というものに少しの興味を惹かれつつ、メインはチーズだ。がっつり御馳走になろう。
―――――
翌日。
―――――
ぐぇぇ。
飲みすぎた。
魔法少女の体にアルコールは効かんはず。
解除もされていない。
何を言ったかも、とんと思い出せん。
「あら、目が覚めたようで」
こいつ誰だっけ。
後でちゃんと謝った。
私はまだまだここにいないとならなそうだ。
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