最終更新:ID:Zrv9NoHM3w 2016年12月19日(月) 05:56:18履歴
登場キャラクター:カトリーヌ スッピーちゃん
魔法少女の役割は、人の助けになることをすることである。
私はそれが億劫でしょうがなかった。
「どうしたの?行かないの?ついてこないなら置いてっちゃうよ!ねぇねぇ!」
今ここに、その億劫な人助けに積極的な魔法少女がいる。
名前はスピネルと言うらしい。本人はスッピーちゃんと名乗っている。背丈は私と同じくらい、両の手足に動物を模したような手袋とブーツをしている。
私と違う点は、私が猫のセットであるのに対し、彼女は犬の
「ねぇ聞いてるの!?置いてっちゃうよ!ぺろぺろぺろぺろ」
「ぬあああああああああああああ!!!!!!!!!11」
「やっとこっち見た、ねぇボク先行っちゃうよ?」
「分かっていますから…私も後で追いつきますから、やめ、や、やめるんぬ!!!11」
「あれ今ぬって言った?」
「…言ってませんわ」
……彼女は犬の特性をモチーフとしたセットらしい。身体能力も高く、時折驚くような察しの良さを見せることがある。
スッピーは元は犬なのだと、彼女から直接聞いた。魔法少女において、正体を知られることはタブーだとあの団子は言っていた。私はそういうものなのだと理解はしたが、スッピーはどうなのだろう。それとも、分かっていて敢えて打ち明けたのだろうか。そこまで私を信頼していると、会って一、二週間の付き合いしかないこの私を。
今日の人助けの内容は、落し物探しだった。小学生くらいの男子が鍵をなくしたらしく、泣いていたのをスピネルが見つけたらしい。
スピネルの専門分野だろう、私はその後ろからついて行って様子を見た。
「すんすん!すんすんすんすん!」
でも過剰に落とし主の匂い嗅がせるのは止めておいた方が良かったかもしれない。不審者だアレ。
「あの……本当に見つかるんでしょうか?」
「大丈夫ですよ、やりますよ彼女は」
心配するのも無理はない。しかし、子供の歩きそうな範囲、通常親が子供に鍵を持たせることを考慮した上での大体の大きさ、そういうことを考えればわりと近くにあるんだろう。
「あったよ!鍵が!」
「ね?」
こうして、彼女の一日一善は終わった。一方私は何もしていない。
……まあいいか。
その後、着いたのは河原だった。今の時間帯は昼、傍から見てこの状況はどう映るだろうか。女子二人がじゃれてるように見えるのだろうか。
魔法少女と一緒に遊ぶ機会なんて滅多にない、とスピネルの方から一緒に遊ぼうと提案してきた。私も夜になるまで暇だったので、それを受け入れた。
「行きますよー、それっ」
ボールを高く投げる。
「わんわぁーん!!」
それを跳んでキャッチするスッピー。5mくらい。
前言撤回、やっぱり異常な光景かもしれない。
「はっ、はっ、もう一回!!」
「はいはい、行きますよ……はいっ」
これが延々と繰り返される。
人通りの少ない下流の方とはいえ、こんなのを繰り返していると誰かに見つかる危険の方が高い。私はそっちの方がちょっと不安だった。
「ねぇ、別のことをしません?」
「じゃあ穴掘り!」
専門外だった。
「うんと…じゃあかけっこ!」
まあまだ大丈夫そうか。
「じゃあそれにしましょ」
「わかった!よーいドンで追いかけるからね!!」
私は、この軽い発言をちょっと後悔している。
「よーい……ドン!!」
速い。こっちもそれなりの速度で逃げてるのについてきている。
川の下流から上流へ、時折川の上を跳んで揺さぶりをかけるが難なくついてくる。
「キャッチー!!ぺろぺろぺろ」
「ぬああああああああああああ」
……これだけはどうにかならないものか。
「……うぅ」
「あっ!もうこんな時間だ!ボクもう帰るね!」
すっかり空は暗くなっていた。周囲に時間を指し示せるものはないが、彼女は本能的に自分が帰るべき時間がわかっていたのだろう。
「じゃあまた明日!」
「さて、どうですかね」
「?」
「私は宿無しの放浪の身です、明日また逢えるかどうかは別問題ですからね」
スピネルには、帰るべき場所がある。
私には、それがない。
「えー!?明日も一緒に遊ぼうよー!せっかく魔法少女ともだち一号になったんだからさー!」
ともだち。
有難いことだ。
こうして誰かの記憶に残って、生きた証を残せるのならそれも悪くないかもしれない。
「逢いたければ……そうですね、探して御覧なさいな、私を」
「むー!」
「私はいずれこの街から離れて、どこか遠くへ行きたいなって……そう考えていますから、今はその下準備」
「下準備?」
「お金がね……?今足りなくて」
自販機の下を弄ったり、善行を成したらたまに金銭をくれる婆の類がいることは知っていた。地道にお金を稼いで、旅費の足しにしようとしているところだった。
「じゃあ明日になったら見つけてやる!また遊んでもらわなきゃなんだから!」
好かれているんだろうか私は、彼女の純真な心が伝わってくる。魔法じゃなく心で。
「それじゃまた!ここで逢おうね!」
「ええ、また」
口をついて出てしまった台詞。また明日逢えるかは別問題、言うべきではなかったのだと今では反省している。あんないい子を、悲しませるようなことを言うなんて。
明日逢ったら謝らなければ、そう思った。
まだ、私はこの街にいる。
魔法少女の役割は、人の助けになることをすることである。
私はそれが億劫でしょうがなかった。
「どうしたの?行かないの?ついてこないなら置いてっちゃうよ!ねぇねぇ!」
今ここに、その億劫な人助けに積極的な魔法少女がいる。
名前はスピネルと言うらしい。本人はスッピーちゃんと名乗っている。背丈は私と同じくらい、両の手足に動物を模したような手袋とブーツをしている。
私と違う点は、私が猫のセットであるのに対し、彼女は犬の
「ねぇ聞いてるの!?置いてっちゃうよ!ぺろぺろぺろぺろ」
「ぬあああああああああああああ!!!!!!!!!11」
「やっとこっち見た、ねぇボク先行っちゃうよ?」
「分かっていますから…私も後で追いつきますから、やめ、や、やめるんぬ!!!11」
「あれ今ぬって言った?」
「…言ってませんわ」
……彼女は犬の特性をモチーフとしたセットらしい。身体能力も高く、時折驚くような察しの良さを見せることがある。
スッピーは元は犬なのだと、彼女から直接聞いた。魔法少女において、正体を知られることはタブーだとあの団子は言っていた。私はそういうものなのだと理解はしたが、スッピーはどうなのだろう。それとも、分かっていて敢えて打ち明けたのだろうか。そこまで私を信頼していると、会って一、二週間の付き合いしかないこの私を。
今日の人助けの内容は、落し物探しだった。小学生くらいの男子が鍵をなくしたらしく、泣いていたのをスピネルが見つけたらしい。
スピネルの専門分野だろう、私はその後ろからついて行って様子を見た。
「すんすん!すんすんすんすん!」
でも過剰に落とし主の匂い嗅がせるのは止めておいた方が良かったかもしれない。不審者だアレ。
「あの……本当に見つかるんでしょうか?」
「大丈夫ですよ、やりますよ彼女は」
心配するのも無理はない。しかし、子供の歩きそうな範囲、通常親が子供に鍵を持たせることを考慮した上での大体の大きさ、そういうことを考えればわりと近くにあるんだろう。
「あったよ!鍵が!」
「ね?」
こうして、彼女の一日一善は終わった。一方私は何もしていない。
……まあいいか。
その後、着いたのは河原だった。今の時間帯は昼、傍から見てこの状況はどう映るだろうか。女子二人がじゃれてるように見えるのだろうか。
魔法少女と一緒に遊ぶ機会なんて滅多にない、とスピネルの方から一緒に遊ぼうと提案してきた。私も夜になるまで暇だったので、それを受け入れた。
「行きますよー、それっ」
ボールを高く投げる。
「わんわぁーん!!」
それを跳んでキャッチするスッピー。5mくらい。
前言撤回、やっぱり異常な光景かもしれない。
「はっ、はっ、もう一回!!」
「はいはい、行きますよ……はいっ」
これが延々と繰り返される。
人通りの少ない下流の方とはいえ、こんなのを繰り返していると誰かに見つかる危険の方が高い。私はそっちの方がちょっと不安だった。
「ねぇ、別のことをしません?」
「じゃあ穴掘り!」
専門外だった。
「うんと…じゃあかけっこ!」
まあまだ大丈夫そうか。
「じゃあそれにしましょ」
「わかった!よーいドンで追いかけるからね!!」
私は、この軽い発言をちょっと後悔している。
「よーい……ドン!!」
速い。こっちもそれなりの速度で逃げてるのについてきている。
川の下流から上流へ、時折川の上を跳んで揺さぶりをかけるが難なくついてくる。
「キャッチー!!ぺろぺろぺろ」
「ぬああああああああああああ」
……これだけはどうにかならないものか。
「……うぅ」
「あっ!もうこんな時間だ!ボクもう帰るね!」
すっかり空は暗くなっていた。周囲に時間を指し示せるものはないが、彼女は本能的に自分が帰るべき時間がわかっていたのだろう。
「じゃあまた明日!」
「さて、どうですかね」
「?」
「私は宿無しの放浪の身です、明日また逢えるかどうかは別問題ですからね」
スピネルには、帰るべき場所がある。
私には、それがない。
「えー!?明日も一緒に遊ぼうよー!せっかく魔法少女ともだち一号になったんだからさー!」
ともだち。
有難いことだ。
こうして誰かの記憶に残って、生きた証を残せるのならそれも悪くないかもしれない。
「逢いたければ……そうですね、探して御覧なさいな、私を」
「むー!」
「私はいずれこの街から離れて、どこか遠くへ行きたいなって……そう考えていますから、今はその下準備」
「下準備?」
「お金がね……?今足りなくて」
自販機の下を弄ったり、善行を成したらたまに金銭をくれる婆の類がいることは知っていた。地道にお金を稼いで、旅費の足しにしようとしているところだった。
「じゃあ明日になったら見つけてやる!また遊んでもらわなきゃなんだから!」
好かれているんだろうか私は、彼女の純真な心が伝わってくる。魔法じゃなく心で。
「それじゃまた!ここで逢おうね!」
「ええ、また」
口をついて出てしまった台詞。また明日逢えるかは別問題、言うべきではなかったのだと今では反省している。あんないい子を、悲しませるようなことを言うなんて。
明日逢ったら謝らなければ、そう思った。
まだ、私はこの街にいる。
コメントをかく