img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:深衝 ミュジコ
名前だけの登場:コットン・アイスキャンディ "剣帝"カミイズミ ヒトミ-2 人吉さん

すっかり暗くなり、人通りも見なくなった深夜の住宅街。

私とミュジコちゃんは、今日も一緒に魔法少女活動。

屋根から屋根へ飛び移り、不審なものがないか調べたり、道路脇の清掃をしたり。

一区切りがついたので適当な家の屋根の上に腰かけ、世間話でも振ってみる。


まぁ私の場合は……


「でね、結局出ないで出走取消だったの!怪我なんてしたら大変だってのは思うけど、せっかく海まで渡ったのに残念よねぇ……」

「はぁ……そりゃ残念だったね……」


競馬の話をする。

世間話というより、完全な自己満足のような気もしている。

軽く流されている気もしなくはないが、案外話の内容は理解してくれてるようで少しうれしい。

魔法少女活動中以外にも、リアルで競馬場通いに付き合わせていたら嫌でも覚えるものだからなのかもしれないけど。


「それで、本当に大丈夫なの?その……戦いのことは」

思い出したかのように、ミュジコちゃんは私のことを心配してくれていた。



つい先日、私は一人の魔法少女と戦った。

コットン・アイス・キャンディ。

私の競馬話に付き合ってくれた、数少ない人物。

死んだはずの彼女が、突如私の前に姿を現した。

あらゆるものを凍らせる魔法を使う彼女と戦い、私は敗北した。

全身を氷漬けにされて、動けなくなっていたところを、その後に発生していた剣帝君の戦いの余波を受けてなんとか脱出。

漁夫の利となる形で、『ディープインパクト』を食らわせて、難を逃れることができた。


魔法少女の特性で、戦いの傷自体はすでに癒えていて、身体も自由に動く。

なにも心配することはないのに、と思った。


「……大丈夫よ。これくらいのこと、慣れっこだからね」

「そう……ならいいけど。……ところで、どんな相手だったの?深衝が手こずったてことは相当な強者なんだろうけど」


「…………」


ミュジコちゃんは、「私が誰かと戦った」ことしか教えていない。

私の戦った相手は、この子に知られるのは不都合だと思ったから。



――私は一度死んだ、そして今はここにいる……でも、あの時の私は死んでなくなったんだ……――


戦いのときのキャンディの言葉が頭を駆け巡る。

そもそも、なぜ彼女が蘇ったのか。

これに関してはどうやっても想像がつかないから置いておくとして。

次の疑問は、なぜ私に襲い掛かってきたのか。


私はあの子のことをよく知っているわけではない。

けれど、あのような襲撃をするような子ではなかったはずだ。

おそらく、彼女をあそこまで変えてしまうような出来事があったはずだ。例えば……



身内の不幸。



以前から、ミュジコちゃんと仲のよいヒトミ-2という魔法少女が、キャンディらしき人物を探していたことはよく聞いていた。

当時はキャンディという名前すら思い浮かばなかったのだが、とても深刻な様子だったのは把握している。

そして、今彼女は行方不明だ。


仮に、あの二人が家族関係にあったとしよう。

死から立ち直ったキャンディはまず家のことを思い出すはず。

もし、家族がいなくなっているなんてことになれば、真っ先に情報を集めに走るだろう

けれど、それだけなら話し合いでかまわないはずだ。


けど、

もし、

なんらかの手段で、

「家族はもういない」と知ったとすれば……?


不確定要素が多すぎる上に、あまりに主観的な妄想であるが、万が一ということがある。

競馬師のカン、ってやつだ。

最も、それだと予感はハズレの方が多いような気もしなくはない。

が、今回のは外れていた方がいいとさえ思う。


なにより、当たっているなら……。


「どうしたの深衝?」

「あ、んー……何でもないわよ!さぁ、続きとしましょうか!」


とにかく、このことはミュジコちゃんにあまり知られないようにしたい。

こんなオカルト馬券のような理屈で、振り回したくないし。


それに、キャンディが本当にあれで終わったのかも気がかりだ。

あの仮説が当たっているとしたら、いつかこの子がターゲットになるかもしれない。

確かにミュジコちゃんの実力も、鍛えた甲斐あってめきめきと上がっている。

けど、まだあのレベルを相手するのは無理だ。

3歳でクラシックを取るような馬だって、歴戦の古馬を相手にすれば、よほどでない限り跳ね返される。

ただ跳ね返されるだけならまだいい。

そこで、闘志、下手すれば競走馬人生すら終わらせてしまうことだってある。

それでも馬ならば、そこから先の余生を保証されてる馬もいる。


しかし、魔法少女の場合はそこで終わりだ。

あの時のような奇跡は、そう何度も起こらない。


私はあの子を守り続ける。

あの地獄の中で、必死に生き続けてくれたあの子を。

そのために私も強くなる。

私の憧れの『彼』だって、一度負けてからもう一段強くなった。


だから、次に戦えるのなら、



「また、私の衝撃を伝えてやるんだから!!」

「いきなりどうしたの深衝?」


……声に出てしまったようだ……少し恥ずかしい。

こうして、日曜の夜も更けていくのだった……。








日 曜 ?

明日、大学、課題は



レポート―――!?







しまったああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁ!!!!!





「ごめんミュジコちゃん!!先帰る!!」

「えっ、ちょ、深衝!?」


勢いよく飛び出したせいで、屋根の瓦が割れたような音がしたが、気にしている余裕はなかった。

大丈夫!今ならまだ間に合う!もう直線向いて7馬身くらい離れてそうだけど!



翌日、なんとかレポートは間に合った。

が、別のレポートの返却の際、人吉さんにレポートが荒い、と言われた上に、先週の欠席について問い詰められた。

言えない、その日は競馬だったなんて。

ははは、と笑っていたら、倍のレポート提出を要求されてしまった。


ペース判断は、競馬でも、人生でも大事だなと、嫌でも実感することになった私だった……。



「これが競馬の恐ろしいところ!ね……とほほ……」

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