img街の魔法少女の素質ある「」を集めてるポン

登場キャラクター:ジャック・R ゼノちゃん ウィールー



誰が言いだしたのだったか。「魔法少女みんなで集まって七夕をしよう!」と。
最初はどうなんだとかそもそも七夕だったことを忘れてた人とかもいたけど、賛成が集まって開催されることになった。
誰かが魔法で用意したかなり長い笹に短冊に願い事を書いた人が続々と短冊を取り付けている。
見ていると結構壮観だ。まあ魔法少女のほとんどが来ているので当たり前といえば当たり前なのかもしれないけど。

「じゃあ、私も取り付けに行こうかな」

もう願いは決めて書いてある。取り付けたらすぐに帰ろーーーー

「わっ!」
「ひゃあ!?……ゼノちゃんじゃないですか、何か用ですか」
「相変わらずつれねえなジャックちゃんはよォ。なんか考え事してるからちょっと脅かしただけなんだからいいじゃんか」

と、いいつつ馴れ馴れしく話しかけてきたのはゼノちゃんだ。
初めて会ってからもう何日、何週間、いや何か月経過しただろうか。
img街の魔法少女として十分やっていけるようになった私は教育係のゼノちゃんから卒業認定(と、悪役の弟子第一号認定)を受け、一人で活動することが多くなった。
そのため、最近はあまりゼノちゃんと顔を合わせることもなかったのだが…………

「…………まさかこれだけ人が集まってる今なら悪戯し放題だと思って来たとかじゃないですよね」
「最初はそのつもりだったんだけどなァ」
「だったんですか………」
「でもこんなすげェ光景見てそんなこと言えねえよ。ある程度場の空気を読むってのも悪役には必要な能力だぜェ?」

それもそうだろう。
ゼノちゃんじゃなくてもこのような素晴らしい光景を邪魔しようという物はほとんどいないだろう。

「まあでも個人に悪戯する分には問題ねえよなァ!」
「だと思いましたよ。一応言っときますけどやめてください」

そしてよさそうなことを言った瞬間台無しにするのもゼノちゃんだ。
本当に何故自分の教育係がこの人だったのだろうか。

「で、ジャックちゃんは願い事は決まったのか?」

と、おもむろにゼノちゃんは聞いてきた。

「ええ、決まってます。というよりもう書いたので今から結びに行こうと思ってたところだったんですけど」
「あー、そうだったの?じゃあ呼び止めて悪かったなァ」
「脅かしたくせに何言ってるんですか」
「だから悪いって!…………でもどうせ答えが見つかりますように、じゃねえのかァ?」
「……………」

まあ、そう思うのも無理はないだろう。
そう、私は教育係が終わったときにゼノちゃんに話したのだ。
自分の過去を。自分が犯した過ちを。そして今それらに折り合いをつけるための答えを探していることを。
なぜ話したのかはわからない。だがなぜか、悪役としての矜持を持つゼノちゃんにならば話してもよさそうな気がした。
いつも何か企んでそうな顔をしているゼノちゃんが、真面目な顔で聞いてくれていたのを思い出す。
もちろん、話したところで解決するようなものではなく、今も私は答えを探している。

「いえ、違います。なんなら短冊を見せましょうか」
「いいねェ。なになに…………『家族と仲良くなれますように』…………?」
「七夕にはよくあるなにも思いつかなかったときの方便ですよ」
「………でもたしかジャックちゃんの家族は………」

その通りだ。
私と家族の仲はそこまでいいわけではない。
もちろんあの事件が原因だろう。今思い返せばそうなって当然かもしれない経緯だが。
あの事件からしばらくしてーーー私の行動が引き金とはいえーーーあのような状態になったのはマスコミのせいだということで母とは仲直りした。
だが、それでもいまだに壁を感じる。一人暮らしをしている最近だとなおさらだ。
たまに帰ってみても、元々物静かな父と母の性格もあり、会話を交わすこともあまりない。
結局、あの日から私は心の整理をつけられず、どう接していいか分からないのが一番の原因かもしれない。
ともかく、一般家庭の雰囲気ではないのは確かだろう。

「…………私は今も答えを探しています。自分が殺人鬼なのかどうなのか」
「そりゃあアタシも知ってるよ」
「ですがそれは、願いで叶えるものだとは私は考えていません」
「なんで?」
「答えを探すという行為は………私にとって人生の目標、といってもいいものです。いつかは見つけなければならないものです。
 だからこそ妥協してはいけない。自らが学んで、見て、感じたことをもとに、自分の心の奥底を見定める。自分の力で見つけなければどのような答えを得ても意味がないんです。
 なら、それ以外で、今自分がしたいと思っていることを書くのは道理でしょう?」
「んー、まあジャックちゃんが決めたことならアタシは口出ししたりしねェけどよォ、いいとは思うぜェ」
「……………ありがとうございます」

なんだかうれしかった。自分の考えに理解を示してくれたからだろうか。
まあ、ゼノちゃんはなんだかんだでいい人だ。教育係として付き合ってもらった中で気づいたことだ。
だからこそこういう話をしてしまうんだろうか。

「あ、そうだ、笹に結んできますね」
「おう、行ってらっしゃい!アタシはその間に悪戯しまくるから見とけよォ!」
「やめてください、分身で見張りますよ?」
「だから冗談だってのォ!」

こういう場で会った時のお決まりの会話をしながら、私は笹に短冊を結び付けた。
願わくば、この願い通り、母さんと父さんともっと仲良くなれますように、と念じながら。


























































同日、とある家の部屋。
そこでは、少女が願い事を書いていた。
そして書き終えた短冊を見て間違っていないか確認するかのように読み上げる。

「お兄ちゃんを殺した女が見つかりますように」

短冊を置いて、彼女は吐き捨てるようにつぶやいた。

「今年こそ、絶対に………!」







「その願い、私が聞き届けたわ!」
「え?」




謎の声が聞こえた方向を見ると青いコマドリが窓にとまっていた。

「ねえ、あなたには才能があるのよ!よかったら魔法少女をしてみない?あなたの願いもかなえられるかもしれないわ!」
「魔法……少女………?」

しばらく彼女は何が起こっているのかわからなかったが、ついにチャンスが来たのだと思った。
だから、コマドリに向かってうなずいた。




七夕の夜、img街にまた一人、新たな魔法少女が生まれた。

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