※18歳未満の方、二次創作小説の苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

なでなで、なでなで。

僕のひざの上でうつぶせに寝転ぶネロを、きるだけ、優しくなでる。

ふわふわとした髪の毛が、手のひらに心地よく感じられる。

「ふわ……むふー……」

リラックスした様子で身をよじる。なで方なんて良く分からなかったけど、これで良いみたいだ。

「きもちいいー……」

心底気持ちよさそうに、そうつぶやくネロを見て、僕も自然と頬が綻ぶのを感じる。

「そんなに気持ちいいかい?」

「うん……すっごくきもちいいよぉー、こばやしぃ……」

気だるく答える。ぽかぽかとした陽光が差し込む部屋は、程よい暖かさと静けさに包まれており、のんびりするには絶好だ。

「ごめんね、こばやしぃ……急に、変なお願いして……」

少し照れた様子で、ネロは言った。

今より数刻前、コーヒーを飲みながらくつろいでいたところ、突然ネロが来て、僕に「変なお願い」をした。

――頭、なでて欲しい。

(まあ、ちょっと驚いたけど――)

「僕は別にかまわないよ。これくらい、お安い御用さ」

軽く微笑みかけて、話しかけられて一旦とめていたなでなでを再開する。

僕の手の動きに合わせて、ネロがもぞもぞと反応するのを、しばらく手のひらとひざ上で楽しんだ。

ひどく穏やかな、落ち着く行為。

「ねえ、こばやしぃ……もういっこだけ、お願い、いいかな?」

「ん、なんだい?」

「その……トイズでさ、こばやしのこと、触ってもいい?」

彼女のトイズ、「トライアセンド」。その能力は電子機器の制御で、応用すると――。

「別に構わないよ」

「……んっ」

ごろんっ。

寝返りをうって、ちょうど僕がネロに膝枕をしているような体勢になる。

向き直ったネロの、熱っぽい、潤んだ瞳が、僕を見つめている。

すっ。

僕の頬に向かって両手を伸ばす。

潤んだ瞳に異能の光が灯り、電子の手のひらが、僕の心に触れる。

「……んー、んんー」

そのまま、ネロは僕の頬の感触を確かめるように、むにむにとなでさすった。

「どうかしたかい、ネロ?」

「ううん、ただ、落ち着くなぁって思って」

「落ち着く?」

むくり。

起き上がり、僕のひざの上にちょこんと座って、真正面から僕を見据える。

「小林の心を感じると、すごく落ち着くんだ」

ぎゅうっ。

「!」

言いながら、ネロは僕にもたれかかるように抱きついてきた。

「お願い、ちょっとだけ、このままで……」

「ネ、ネロ、ちょっと……」

触れていいとは言ったが、身体を密着させていいとは言ってない。

ネロの細い身体を全身で感じてしまい、さすがに慌てる。

「だいじょーぶだよ、僕のトイズじゃ、人間の思考までは読めないから」

「そういう問題じゃ……」

「だから、ちょっとくらいならえっちなこと考えてもいーよ」

「え、ええぇ!!?」

え、えっちなことって!!

「……んんー?なんだか、小林の心が『ざわざわ』してきたよー?ひょっとして、今えっちなこと考えてる?」

「も、もうおしまい!離れなさい、ネロ!」

「んふふー、へーきへーき、僕は気にしないからさ〜」

ぎゅうぅ。

僕の願いとは逆に、ネロは腕の力をさらに強めた。

「ぼ、僕が気にするんだー!」

それでも、力ずくで引き剥がすことは多分できるけど……今は、僕自身このままでいたかった。

時もゆるく流れる、このあたたかな空間を、少しでも長く味わいたかったから。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

管理人/副管理人のみ編集できます