俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「……冗談じゃねえ……」
肩を動かしながら荒く呼吸する二人の男。
それも無理はない、数時間ほどずっと走りっぱなしだったのだから。
赤碕は放送の後、地図と周りの景色を照らし合わせ、現在地を割り出した。
するとどうだ、自分たちのいる場所は見事に禁止エリアの奥深くだったのだ。
もちろん、ぼうっとしている時間はない。
そのまま残っていれば禁止エリアで死んでしまう、だから一直線に禁止エリアから脱出しなければならなかった。
自由を手にする前に、命を手にしなければいけない。
そんなある意味でのデスレースを繰り広げ、二人はようやくそこから抜け出したといった所だ。
「完全者め……」
まだ呼吸が落ち着かないながらも、クールは空を睨みつける。
自由を奪った上、行動を束縛される。
クールがもっとも忌み嫌う事に、あの女は干渉してくる。
一分一秒過ぎれば過ぎるほど、クールの自由が奪われて行くほど、クールの怒りと恨みは貯まっていく。
無論、初めから許すつもりなど無いのだが。
いつか、いつか自分から"自由"を奪ったことを後悔させる。
それだけを胸に留め、その場は呼吸を落ち着ける事に専念していく。

「しかし……ミュカレ……何を考えてる?」
呼吸を落ち着けている途中、赤碕は一人呟く。
こんな殺し合いを開いて、人々の自由を奪うような奴の考えなんざ、知りたくもない。
クールは心の中でそう思っていたが、口に出すのも面倒なので黙っていた。
「海に囲まれた孤島……その孤島の海岸を囲うような禁止エリア……。
 まるで中心部に人間を集めるかのよう……」
そんなクールをよそに、赤碕は一人話を進めていく。
まるで興味のないクールは、完全にそっぽを向いている。
「戦いを起こすのが目的……? それによる何かが……」
「そんなことは、今はどうでもいい」
放っておけばずっと喋りながら考えこみそうだった赤碕を、クールは一声だけかけて中断させる。
「今は、完全者を探す事と首輪の事だけを考えろ」
そう、今重要なのは完全者をしとめることと、この首についた命の枷を外すことである。
こんなふざけた殺し合いを開いた理由や、あの基地外が何を考えているのかどうかなどは、どうでもいい。
しかし、赤碕はクールに言われても思考を続けていた。
「クール、その完全者の居場所なんだが――――」
そして、たどり着いた一つの答えを赤碕が口にしようとした時。
荒っぽく木の枝を折りながら邁進してくる一匹の"猿"が現れた。
こんな殺し合いに猿? などと疑問に思いながらも、冷静にその存在へ対処していく。
二人があることに気がついたのは、ほぼ同時。
猿が柄にもなく服を着ていること、そしてその服は。
「……聖堂騎士」
赤い航空兵、テンペルリッターのものだった。
奪ったにしては綺麗に整いすぎている、そもそもあんな知恵の足りなさそうな猿に遅れをとる存在とは思えない。
と、なれば。
「……なるほど、な」
細かい理由は分からないが、テンペルリッターが猿になった。
差し詰め、襲いかかった旧人類に予想外の反撃を食らった、とかいった所だろう。
空を飛ぶ航空兵ならばともかく、ただ地面をかけずり回る猿に恐れを抱くことはない。
何の考えもなく突っ込んでくる猿に対し、クールは華麗なサマーソルトをお見舞いしていく。
「……ふん」
地面を滑る猿を見て、鼻で笑う。
その目は冷たく、鋭く、突き刺さる。
「不自由だな、お前らは」
クールから飛び出したのは、皮肉の言葉。
大空というこの上ない自由を手にしておきながら、地面を這いずりまわって人を殺している。
その気になれば、どこにでも飛び立てるというのに。
使われない自由には、何の価値も無い。
いや、ずっと地を這いずり回っていた存在なら、今の姿の方がお似合いなのだろうか。
それもまた、どうでもいい。
「行くぞ、翔」
「待て……」
トドメを刺すことすら億劫に感じ、その場から立ち去ろうとするクールを赤碕が呼び止める。
「……オレに考えがある。まあ、待ってな……」
その言葉と同時に、赤碕は飛び出していく。
地を這う炎の後ろにぴったりとくっつきながら、猿へと一直線に向かう。
当然、猿は男の攻撃を避けようと横道にそれる。
だが、それが赤碕の狙い。
「そらっ」
即座に脇に抱えていたネットガンの引き金を引く。
逃げることに集中していた猿は、その網を避けることが出来ない。
為すすべもなく、銃から放たれた網に包まれていく。
ギャア、ギャアと獣らしい声を上げながら、猿は網の中で暴れている。
「器用なもんだな」
「EDENじゃこれくらいできなきゃ……だろう?」
EDENではいつ何が起こるか分からない。
あらゆる物の使い道と使い方くらいは、頭に入れておいても損はない。
現にEDENよりもクソッタレたこの場所で役に立った。
特殊銃の使い方を学んでおいたのも、悪くはない選択だったと言える。
「さて……」
赤碕は一つため息をつき、もう一つ持っていた鉄球を投げつける。
猿の体にズシリとめり込んだそれは、猿の動きをさらに縫い止める。
そこにすかさず近寄っていき、赤碕は手早く注射を打ち込んでいく。
「……まさか、こんな形で使うとはな……」
打ち込んだのは、異形化が解けるとされる秘薬。
以前、一度だけ目にしたときにも猿が人間に戻っていた。
だから、人間を越えると自称する存在ならば。
簡単に元に戻ってくれるだろう、と踏んだわけだ。
「フンッ」
元に戻った姿を見て、クールはもう一度笑う。
「そら、"飛んでこいよ"」
親指突き立て、拳を振り下ろす形で挑発する。
だが、元の姿に戻ってからずっと呆然としている聖堂騎士は、クールの挑発にも動じない。
それどころか、静かにくつくつと笑い始めた。
「ふふっ、あ奴から生まれし複製體も、あ奴のように強いと言うことか。
 猿であったという状況から、判断力と冷静さを欠いた拙者も悪いがな……」
聖堂騎士は笑う。
殺すのではなく、あえて元に戻すという"強者ならでは"の選択。
それほど自分の技量に自身があるという事だ。
その片鱗は、確かに先ほど見届けた。
この殺し合いに放り込まれる前に一目見た、草薙京の複製體。
初めのうちは全く興味も関心もなかったが、まさかその複製體に見下されることになるとは、思いもしなかった。
「これでは、オリギナールに勝てるわけがないな」
絡まった網を引きちぎる事もせず、黙って地面に座り込んだまま、空を見上げる。
けたけた、と壊れた人形のように笑うことをやめない。
「どうした、殺さぬのか? 拙者は貴様等を死に追いやる存在だぞ?」
にぃっ、と笑い、今度は聖堂騎士が赤碕達を煽る。
元より相手にしていないクールは、依然として無反応を貫いている。
だが赤碕は、少し黙ったあとに聖堂騎士へ語りかける。
「俺たちが倒すのは……完全者…………アンタじゃない。
 これから……アンタがどうしたいか……重要なのはそれだけさ……」
自分で決めろ、という言葉を、少し遠回しに投げかける。
いつか、自分がそうであったように。
どうしたいか、何が知りたいのか。
掴んだ命をどう使うべきなのかは、自分で決めなくてはいけない。
「拙者も落ちたな……たかが一人の旧人類の複製體にここまで見下されるとはな。
 草薙京……どこまでも拙者の心を奪ってゆく……」
空を見つめ直し、この場のどこかに居るであろう"草薙京"に思いを馳せる。
あの極上の甘みを味わったあの日から、ずっと心にこびりついて離れないモノ。
願うならばもう一度味わいたいと思っていたが、自分が"この程度"ならば、彼を楽しませることも出来ないだろう。
何かを諦めたような表情のまま、聖堂騎士は赤碕たちに告げる。
「複製體に負けたのならば、オリギナールに負けたも同然。
 拙者の命は貴様等に預けてやる、好きにしろ」
何もかもを諦めたかのような表情で、聖堂騎士はただ笑っている。
「そうか、じゃあ……」
一息、飲み込んでから赤碕が言葉を続ける。
「俺たちと……自由を手にするために戦おう」
「ッ!? おい!」
突然の提案に驚いたのは、聖堂騎士ではなく傍にいたクールだ。
元より彼は群れることが好きではない。
人一人が増えると言うことですら嫌悪感があるのに、よりによってその人間が先ほどまで自分たちを見下していた"新人類"だなんて。
とてもじゃないが、許可できる事ではない。
「大丈夫さ……もう、彼女は俺たちに危害は加えない」
怒るクールを、赤碕は静かに宥めていく。
「そして何より……完全者を倒しに行くなら……この上ない協力者だろう?」
彼女を同行させる最大のメリット。
それが自分たちの最大の目的と合致していることを告げる。
「チッ……」
もっともらしい赤碕の話に、クールは思わず舌打ちをしてしまう。
確かに、主催側である彼女なら多くのことを知っているかもしれない。
完全者を倒しに行くという目的に近づくには、この上ない近道であることは、誰の目でもわかる。
「……旧人類と手を合わせて、新人類を斬る。
 あの無法者と似通った道を歩むことになるとは……」
クールが一歩退いたと同時に、聖堂騎士が再び自嘲めいた笑いをこぼす。
大罪である同胞斬り、それを為した同胞の目。
その目がとてもギラついていて、満たされていた事を知っている。
「まあ、悪くはないだろう。もう私は新人類ではなく、猿から変わった只の生き物なのだからな」
完全者を斬れば、剣を交えれば、あんな満たされた目になれるのだろうか。
少しの期待が胸に宿ったことに対し、今度は期待の笑みを浮かべる。
そんな一人の世界に入り始めていた彼女に、赤碕が呼びかける。
「……なんて呼べばいい」
「む?」
「アンタの……名前だ、なんて呼べばいい」
「……複製體に名前など無い」
名前、それは人一人の個人の証明でもある。
しかし、"生み出されし"もの達にはそれがない。
名前など名乗らずとも役目は果たせるし、特に不自由することもない。
名前を呼ばれることも、呼ぶこともない。
ひとまとめで扱われることしか、無いのだから。
「じゃあ……これで名乗ればいいさ……」
だが、これからは違う。
完全者を相手にする、一人の"人間"に彼女を変身させるために。
赤碕はずっと持っていたドッグタグを投げて寄越す。
彼が"赤碕翔"を名乗るきっかけとなった日、もう一つだけ拾っていたタグがあった。
そこに記された名前は、"ロサ・ギガンティア"。
どんな人間がそれを身につけていたのかは知らないが、赤碕はなんとなくそのドッグタグをずっと持っていた。
いつか、使う日が来るかもしれない、拾った時にふとそう思ったから。
そして今、そのドッグタグが役に立つ日が来た。
投げ渡されたドッグタグを掴み、聖堂騎士――――ロサは笑う。
「おい、本題に入るぞ」
そんなやりとりの中、少し蚊帳の外の感覚を味わっていたクールが、口を挟む。
ちんたらとしている暇はない、刻一刻と時間は過ぎようとしているのだから。

「――――完全者は、どこだ」

核心へ、迫る。

【E-3/西部/1日目・日中】
【赤碕翔(クローン京A)@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:生き抜き、自由を知るために完全者を倒す

【クール@堕落天使】
[状態]:健康
[装備]:クールのダーツ(残り本数不明)@堕落天使
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:自由を取り戻すため、首輪を解除し完全者を殺す。

【ロサ(テンペルリッター・一番部隊隊長)@エヌアイン完全世界】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:"人類"として自由を掴むために完全者を斬る
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065:見えない目覚めの刻
時系列順
067:アンリミテッド モノクローム
投下順
051:旧人類見下した結果wwwwwwwwww
テンペルリッター(一番部隊隊長)
076:自由自在の者たち
056:自由を掴め 〜最初で最後の放送〜
クール
赤碕翔

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