スカルオーネの戦いに歴史的大勝を収めた
アルビス国軍は、急ぐことなく堂々と進軍を進め、
リヴォル帝国帝都リヴォルへ向かっていた。
これは、地盤を固めながら確実に帝国を追い詰めつつ、時間を与えることで相手側から和平なり降伏なりを持ちかける猶予を与えてのことであるが、
三魔王の一人である
シャラダンには、最初から降伏という選択肢は存在していなかった。
そんな最中、これまで「双方との繋がり」を維持したまま、日和見を決めていた
フェングランド国が、突如
リヴォル帝国との同盟を破棄し、
アルビス国軍の援軍として到着する。
静観に静観を重ね、勝者がはっきりとした段階で同盟国さえも見限る。露骨すぎる選択だが、彼らには大義名分があった。「
ティファーナの戦いにおいて(誤解からとはいえ)、送り込んだ援軍をリヴォル帝国将軍
アスタルによって壊滅させられている」というものであり、その遺恨を建前上の理由としたのだ。
アルビス国上層部は、この露骨な態度に嫌悪感を抱いたものの、それを表情には出さず、援軍を受け入れてリヴォル帝国帝都へと進んでいった。
スカルオーネの戦いにおいて
イズ、
ガミランをはじめとする多くの将軍と兵士を失ったリヴォル帝国だが、もう一つの主力部隊、
アスタル、
ベルンハルト達は、はるか海の彼方
アディス国の首都を包囲したまま、追い詰められて牙を剥いたアディス国軍必死の抵抗によって釘付けにされたいた。
本国の危機を知り、急ぎ帰還したい彼らだが、包囲を解けば敵の猛追撃を受ける、憎悪が渦巻きすぎ既に停戦の使者すら斬られるという、動きたくても動けない膠着状態を迎え、ついに損害を無視した力攻めを決意する。(
アディスの戦い)
リオネティアの戦いにより、アディスの様な小国は放置してよいと決断したリヴォル帝国、その決断が、ここにきて彼らに強烈な復讐をしてきたのだ。
三魔王として君臨した
シャラダン、そして、彼が帝位についてから、ついこの前まで敗北というものを知らなかった大帝国
リヴォル帝国。
その帝都を完全包囲した
アルビス国軍に対して、シャラダンの陣営はあまりにも寂しかった。
シャラダンは、攻勢においては強さを誇ったが、支配下とした領土に対してのさして興味を示さず、「領土の空洞化」が進んでいた。膨らみ続けた風船に、同時に数本の針を突き刺され、一瞬にして崩壊したリヴォル帝国。
その針こそが、
ドラグゥーン作戦であったといえる。