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ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ
ゲーム性
ストーリー
�ー膺邑�の特殊能力
��伏線
ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ 
ゲーム性
言いたいことのほとんどはストーリーの部分に集約されるので、まずはゲーム性の話を片付けておきます。ゲーム性は、これまでのシリーズ作と変わりありません。ムービーを見る時間が長めのビジュアルノベル風ゲームです。ムービーの合間合間に、主人公をアクションゲーム的に動かして周囲にある物や人を調べたりする展開が挟まります。この時にシリーズ恒例の主人公の特殊能力も使うことができます。本作ではこの「アクションゲームパート」が全体的に少なくなっていた印象です。そして、こういったことをゲームとしてやらされても大しておもしろくないということも何度も言っているので、やっぱり重要なのはストーリーになってきます。
ちなみにPS5版をやりましたが、グラフィックもあんまり進歩していません。シリーズ過去作と同じで髪の毛が固まりに見えます。
ちなみにPS5版をやりましたが、グラフィックもあんまり進歩していません。シリーズ過去作と同じで髪の毛が固まりに見えます。
ストーリー
�ー膺邑�の特殊能力
まずシリーズ恒例の主人公の特殊能力なのですが、今作のものは「他人の感情が色の付いたオーラのようなものとして見える」というものです。といっても全ての感情が見えるわけではないようで、私が作中で確認したのは、怒り（赤）・悲しみ（青）・恐怖（紫）・喜び（黄）の4種類だけです。驚きや嫉妬とかまでは見えません。この他人の感情についての共感覚のような能力は、逆転裁判5でも似たようなものがありましたから、フィクションでは結構こすられているかと思います。そのうえ、時間を少し巻き戻せる1作目の能力や、アメコミヒーローみたいに人や車を吹っ飛ばせる2作目の能力と違って、どうにも地味な印象は否めません。これを使おうにも大したことはできない気がするので、ゲームというフィクションを成立させるにはお話の展開をかなりの程度練る必要があると思います。にもかかわらず、案の定作り手にもこの地味すぎる能力は手に余ったようで、ゲームを進めていくとだんだんとできることが増やされていきます。本当にしれっとステルス的に増やされます。まず、人の感情を読むのみならず、その感情の原因となっている過去の出来事を覗き見ることができるようになります。この情報があれば、渋る他人を説得できるということですね。ここまではまだギリギリ「感情を読む」の範疇に収まっているとは思うのですが、その後更に人の感情を吸収して消すことができるようになります。これで説得にさえ応じない人を変心させることができるようになるのですが、能力の成長描写的なものは全くありません。本当に、「いつの間にか」できるようになっているんです。この能力に関する設定のグダグダさは、これだけに止まりません。序盤、主人公アレックスの自宅にマックという男が怒って赤のオーラビンビンでやってくるという展開があります。アレックスは、このマックを見て自分自身の能力に飲み込まれ、キレてマックをマウントで殴ってしまうのですが、能力が暴発して困ったことになる描写はこの1回きりです（アレックスが能力を発動させるたびに苦しむ描写は何度も見ますが、本人が苦しむ以上のことは起こりません）。そのため、このシーン自体が何のフリだったのかがよく分かりません。この「作り手が自分たちで考えた能力を持て余している感じ」は肝腎のクライマックスでもそのままです。クライマックスでは、大した証拠も用意できないままアレックスが黒幕に対峙することになるのですが、最後はアレックスが言葉で黒幕を説得するだけでお話が終わってしまいます。もしかしたら自分の能力を使ったのかもしれませんが、演出上そういうようには全く見えません。それなのに黒幕が観念してしまうので、今まで何をやっていたのだろうという気分になります。証拠がない中で黒幕の良心に訴えかけるという展開はまさにアレックスの能力の使いどころだと思うのですが、それをちゃんと見せてはくれないのです。
��伏線
まず大前提として、私が「張った方がいい」と言っている伏線は、ゲーム中でインタラクトできる諸々に張られているのかもしれません。私が見つけられなかっただけかもしれません。でも、本当に必要な伏線は、ストーリー展開上プレイヤーに強制的に見せることが必要だと思います。「プレイヤーがアクセスできるけどしなくても進められる」という部分に張られた伏線は、伏線とは言わないと思います。
そのうえで、本作の主人公アレックスの大まかな生い立ちを順を追って説明します。ストーリーで見る順ではなく、作中の時系列順です。ここからは本当にネタバレに入るので、まっさらな状態で本作をプレイしたい人は読まない方がいいです。
A.母が病死
↓
B.そのせいで父ジョンが荒れ気味になり、アレックスとその兄ゲイブの育児を放棄する形で単身家を出ていく
↓
C.兄ゲイブも荒れて少年院に入る
↓
D.アレックスは11歳で児童養護施設のようなところに預けられる。この施設時代に前述の能力が発現
↓
E.アレックスが21歳になり、施設を出て兄ゲイブのいるヘイブン・スプリングス（以下、長いのでHS）にやってくる。HSは天然の鉱山を持っており、経済的には、その鉱山で何かを採掘しているタイフォンという大企業に依存している街である。
↓
F.ある日アレックスとゲイブは、ゲイブの友人のライアンも一緒に、HSの山中に迷い込んだイーサンという子供を捜索することになる。このイーサンを救出中に、タイフォンが鉱山で何かを爆破し、それよってに生じた落盤によりゲイブが死亡する（ここがエピソード1）。
↓
G.ゲイブはタイフォンに対し、「子供が山に迷い込んだから爆破を延期しろ」と連絡をしていた。にもかかわらずなぜタイフォンは爆破を強行したのか。アレックスは自分の能力を使って兄の死の真相を探ることになる。
さてこの「兄の死の真相を探るストーリー」というのは、PS5版のパッケージの裏にも書いてあることです。なので、ここまでは作り手側も本作のストーリーの肝（というか、序盤の原動力）として推している部分です。そういう意味では、本作は1作目のようなサスペンスということになります。
細かいことを言うとゲイブは落ちてきた岩の一つが当たって谷底に落ちただけなので、誰も死体を確認してはいません。そのため、厳密には「死亡」ではなく「行方不明」の状態です。それなのに妹のアレックスや友人のライアンも含めて町中の人間がすぐに「死んだ」という前提で動き出すことに違和感はありますが、そこは些細なことです。
さて上記の時系列を読むと、大企業のタイフォンがアレックスの活動を色々と邪魔をしてくるのだろうなあというストーリーラインが想定はできると思います。それはそうなのですが、まずタイフォンの実態が全然分かりません。「何か」を採掘していると書きましたが、本当に何を採掘しているのかすら分かりません。「世界企業だ」という台詞での説明はエピソード4の中盤でようやく入りますが、それっぽい描写もなく、そもそもHSにいるタイフォンの人間はダイアンという女性一人なので、全然タイフォンの規模が伝わってきません。街をウロウロしている鉱山労働者はタイフォンから雇用されている可能性もあるでしょうが、そもそもほとんどがモブなので印象に残りません。そしてそのダイアンも決定的な証拠の入ったUSBを外から見える形で自分のバッグに入れているなど情報管理が結構緩いので、龍が如くシリーズでよく対峙するような「時に法も枉げてくるスーパーパワー」と対峙している緊張感が全くありません。もっとDetroit: Become Humanのサイバーライフみたいな「分かりやすい大企業感」を演出として見せた方がいいと思います。それこそでっかい本社ビルを見せてもいいですし、でっかい採掘機械を見せてもいいです。何百何千という従業員が並んでいるシーンを見せてもいいでしょう。そういうシンボリックな画が、ないのです。
本作はシリーズの過去作と同じくエピソード1から5までの構成です。タイフォンが分かりやすく邪魔をしてくるのはエピソード4の中盤からであり、そこから一気に緊張感やサスペンス感が出てきますが、エピソード3ではイーサンのために街ぐるみでRPGごっこみたいなことをやっており、プレイヤーもこれをやらされるので、かなり展開が間延びします。牧歌的なほど退屈な展開が続いた後に、エピソード4の中盤から将棋倒しのように駆け足でアレックスの危機とネタバラシが訪れるので、かなりバランスが悪いのです。そして肝腎のイーサンも、クライマックスの展開にはほとんど関わってこないので、中盤でRPGごっこに付き合わされる必要性も感じません。
クライマックスも噴飯物と言っていいです。前述の通り証拠がないのにアレックスから言葉責めをされただけで黒幕が観念してしまうのもそうなのですが、そもそもあの場は、チャプターセレクトでのタイトルを見る限り「HS町議会」だったようなのです。ところが西部劇で出てきそうな汚いバーの一室に人を集めているだけなので、日本語で「町議会」と聞いた時にイメージするものには全く見えません。誤訳なのかなとも思いましたが、原語は"town council"だったのでそうでもなさそうです。ちなみに黒幕は議長をやっているのですが、その点についての事前説明もありません。そもそも議員の一人にパイクという保安官がいるのですが、保安官が町議員を兼ねてもいいのかという疑問も芽生えます。とはいえ、本作を最大限フォローすれば、クライマックスで行われていたのは日本語の「町議会」のような公的決定をする場ではなく、単なる話し合いを比喩的に"town council"と称していただけなのかもしれません。また、アメリカの田舎町ではあのような形での町議会が普通であるという可能性もあります。でもそれにしたって、「町議会」についての説明が足りなさ過ぎます。少なくとも日本人向けには、町議会はあのバーで開催しているという事前説明（伏線）が必要だと思います。
町議会についてのそれ以上に大きな問題は、議題についての伏線がないことです。ゲーム中の町議会の場面は、まずダイアンが何かを「議員」たちに説明し、その後何かの決を採ろうとしていた段階で、黒幕の手によって坑道の地下深くに突き落とされていたアレックスが乱入するという展開なのですが、何の決を採ろうとしているのかすら分かりません。ちゃんと丁寧に伏線を張って、プレイヤーに「●日後に町議会があって何かしら重要な決を採る」という情報を与えておけば、それまでに証拠を集めて町の人たちを説得しなければならないということがプレイヤーにも分かるので、そこに至るまでの緊張感も、アレックスがその場に乱入することのドラマチックさも生まれるものだと思うのですが、それが全くないのです。議場でタイフォンに忖度しかねない議員たちを説得するなんてのはアレックスの能力の一番分かりやすい使い所じゃないですか。ちゃんと伏線を張れば存分に活かせる展開なのに、伏線がないから拍子抜けになってしまっているのです。
ちなみに前述したアレックスの父ジョンは、アレックス自身が突き落とされた坑道をさまよっている時に、ゲイブとアレックスを捨てて出ていった後にHSで鉱山労働者となり、黒幕が鉱山で引き起こした爆発事故で死んでいたことが明らかになります。この事実は、終盤のこの段階で急に明らかになります。すなわち、サスペンスでは大事な「情報の小出し」ができていないのです。例えば、まずジョンの死のことは隠して「ジョンがHSに来ていた」という情報だけを中盤で明らかにすれば、「なぜ父がここに？」という新たな謎が増えてそこからまたサスペンスが展開できるのです。RPGごっこで時間を潰している場合ではありません。ちなみにそんな街になぜゲイブがやって来たのかも作中ではよく分かりません。
それからアレックスが鉱山に落とされたエピソード5では、ちょいちょいアレックスの生い立ちを振り返るスピリチュアルな展開が挟まります。これは、「もしかしてHSでのことは全てアレックスの妄想ではないか」というミスリードまでしてくるので一瞬ワクワクするのですが、終わってみれば洋ゲーでよくあるスピリチュアルな展開（登場人物を、その精神世界の中でアクションゲーム的に動かす展開）そのものでしかないことに気が付きます。このシーンは、アレックスの過去を知ることができる内容なので退屈さはそこまでないのですが、もっとバラしてストーリーの全体にポツポツと組み込んだ方が良かったと思います。終盤の展開が窮屈になっているのは、最終エピソードにこのスピリチュアルがまとめて入っているから、というのも理由にあります。
あとはまあ、本作ではアレックスの子供時代も描いているので、彼女に能力が発現した「理由」の方にも迫ってくれるのかなと一瞬期待してしまうのですが、結局「理由」の方はプレイヤーの想像で補わなければならない部分が多いです（アレックスは母の死後に父と兄が絶え間なく喧嘩するようになった家庭で育ち、施設に預けられてからも里親候補としてやって来た大人たちに「里子として相応しいか」の品定めをずっとされてきたので、他人の感情に敏感になったのかな、程度です）。まあ本シリーズは能力発現の「理由」には着目せず、その「結果」の描写に一貫して注力してきたシリーズなのでそれはいいのですが、あんな風に期待させるぐらいで終わるなら、「理由」の方ももっとガッツリ描写して本筋に絡めた方が良かったと思います。
そんな感じです。ボリュームもいつもどおりで少なめ（ちゃっちゃかやれば10時間もかからずに終わります。エンドコンテンツもなくトロコンも簡単です）なので、1000円以上出すと損した気分になると思います。これはもう、4作目で巻き返してもらうしかないですね。
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そのうえで、本作の主人公アレックスの大まかな生い立ちを順を追って説明します。ストーリーで見る順ではなく、作中の時系列順です。ここからは本当にネタバレに入るので、まっさらな状態で本作をプレイしたい人は読まない方がいいです。
A.母が病死
↓
B.そのせいで父ジョンが荒れ気味になり、アレックスとその兄ゲイブの育児を放棄する形で単身家を出ていく
↓
C.兄ゲイブも荒れて少年院に入る
↓
D.アレックスは11歳で児童養護施設のようなところに預けられる。この施設時代に前述の能力が発現
↓
E.アレックスが21歳になり、施設を出て兄ゲイブのいるヘイブン・スプリングス（以下、長いのでHS）にやってくる。HSは天然の鉱山を持っており、経済的には、その鉱山で何かを採掘しているタイフォンという大企業に依存している街である。
↓
F.ある日アレックスとゲイブは、ゲイブの友人のライアンも一緒に、HSの山中に迷い込んだイーサンという子供を捜索することになる。このイーサンを救出中に、タイフォンが鉱山で何かを爆破し、それよってに生じた落盤によりゲイブが死亡する（ここがエピソード1）。
↓
G.ゲイブはタイフォンに対し、「子供が山に迷い込んだから爆破を延期しろ」と連絡をしていた。にもかかわらずなぜタイフォンは爆破を強行したのか。アレックスは自分の能力を使って兄の死の真相を探ることになる。
さてこの「兄の死の真相を探るストーリー」というのは、PS5版のパッケージの裏にも書いてあることです。なので、ここまでは作り手側も本作のストーリーの肝（というか、序盤の原動力）として推している部分です。そういう意味では、本作は1作目のようなサスペンスということになります。
細かいことを言うとゲイブは落ちてきた岩の一つが当たって谷底に落ちただけなので、誰も死体を確認してはいません。そのため、厳密には「死亡」ではなく「行方不明」の状態です。それなのに妹のアレックスや友人のライアンも含めて町中の人間がすぐに「死んだ」という前提で動き出すことに違和感はありますが、そこは些細なことです。
さて上記の時系列を読むと、大企業のタイフォンがアレックスの活動を色々と邪魔をしてくるのだろうなあというストーリーラインが想定はできると思います。それはそうなのですが、まずタイフォンの実態が全然分かりません。「何か」を採掘していると書きましたが、本当に何を採掘しているのかすら分かりません。「世界企業だ」という台詞での説明はエピソード4の中盤でようやく入りますが、それっぽい描写もなく、そもそもHSにいるタイフォンの人間はダイアンという女性一人なので、全然タイフォンの規模が伝わってきません。街をウロウロしている鉱山労働者はタイフォンから雇用されている可能性もあるでしょうが、そもそもほとんどがモブなので印象に残りません。そしてそのダイアンも決定的な証拠の入ったUSBを外から見える形で自分のバッグに入れているなど情報管理が結構緩いので、龍が如くシリーズでよく対峙するような「時に法も枉げてくるスーパーパワー」と対峙している緊張感が全くありません。もっとDetroit: Become Humanのサイバーライフみたいな「分かりやすい大企業感」を演出として見せた方がいいと思います。それこそでっかい本社ビルを見せてもいいですし、でっかい採掘機械を見せてもいいです。何百何千という従業員が並んでいるシーンを見せてもいいでしょう。そういうシンボリックな画が、ないのです。
本作はシリーズの過去作と同じくエピソード1から5までの構成です。タイフォンが分かりやすく邪魔をしてくるのはエピソード4の中盤からであり、そこから一気に緊張感やサスペンス感が出てきますが、エピソード3ではイーサンのために街ぐるみでRPGごっこみたいなことをやっており、プレイヤーもこれをやらされるので、かなり展開が間延びします。牧歌的なほど退屈な展開が続いた後に、エピソード4の中盤から将棋倒しのように駆け足でアレックスの危機とネタバラシが訪れるので、かなりバランスが悪いのです。そして肝腎のイーサンも、クライマックスの展開にはほとんど関わってこないので、中盤でRPGごっこに付き合わされる必要性も感じません。
クライマックスも噴飯物と言っていいです。前述の通り証拠がないのにアレックスから言葉責めをされただけで黒幕が観念してしまうのもそうなのですが、そもそもあの場は、チャプターセレクトでのタイトルを見る限り「HS町議会」だったようなのです。ところが西部劇で出てきそうな汚いバーの一室に人を集めているだけなので、日本語で「町議会」と聞いた時にイメージするものには全く見えません。誤訳なのかなとも思いましたが、原語は"town council"だったのでそうでもなさそうです。ちなみに黒幕は議長をやっているのですが、その点についての事前説明もありません。そもそも議員の一人にパイクという保安官がいるのですが、保安官が町議員を兼ねてもいいのかという疑問も芽生えます。とはいえ、本作を最大限フォローすれば、クライマックスで行われていたのは日本語の「町議会」のような公的決定をする場ではなく、単なる話し合いを比喩的に"town council"と称していただけなのかもしれません。また、アメリカの田舎町ではあのような形での町議会が普通であるという可能性もあります。でもそれにしたって、「町議会」についての説明が足りなさ過ぎます。少なくとも日本人向けには、町議会はあのバーで開催しているという事前説明（伏線）が必要だと思います。
町議会についてのそれ以上に大きな問題は、議題についての伏線がないことです。ゲーム中の町議会の場面は、まずダイアンが何かを「議員」たちに説明し、その後何かの決を採ろうとしていた段階で、黒幕の手によって坑道の地下深くに突き落とされていたアレックスが乱入するという展開なのですが、何の決を採ろうとしているのかすら分かりません。ちゃんと丁寧に伏線を張って、プレイヤーに「●日後に町議会があって何かしら重要な決を採る」という情報を与えておけば、それまでに証拠を集めて町の人たちを説得しなければならないということがプレイヤーにも分かるので、そこに至るまでの緊張感も、アレックスがその場に乱入することのドラマチックさも生まれるものだと思うのですが、それが全くないのです。議場でタイフォンに忖度しかねない議員たちを説得するなんてのはアレックスの能力の一番分かりやすい使い所じゃないですか。ちゃんと伏線を張れば存分に活かせる展開なのに、伏線がないから拍子抜けになってしまっているのです。
ちなみに前述したアレックスの父ジョンは、アレックス自身が突き落とされた坑道をさまよっている時に、ゲイブとアレックスを捨てて出ていった後にHSで鉱山労働者となり、黒幕が鉱山で引き起こした爆発事故で死んでいたことが明らかになります。この事実は、終盤のこの段階で急に明らかになります。すなわち、サスペンスでは大事な「情報の小出し」ができていないのです。例えば、まずジョンの死のことは隠して「ジョンがHSに来ていた」という情報だけを中盤で明らかにすれば、「なぜ父がここに？」という新たな謎が増えてそこからまたサスペンスが展開できるのです。RPGごっこで時間を潰している場合ではありません。ちなみにそんな街になぜゲイブがやって来たのかも作中ではよく分かりません。
それからアレックスが鉱山に落とされたエピソード5では、ちょいちょいアレックスの生い立ちを振り返るスピリチュアルな展開が挟まります。これは、「もしかしてHSでのことは全てアレックスの妄想ではないか」というミスリードまでしてくるので一瞬ワクワクするのですが、終わってみれば洋ゲーでよくあるスピリチュアルな展開（登場人物を、その精神世界の中でアクションゲーム的に動かす展開）そのものでしかないことに気が付きます。このシーンは、アレックスの過去を知ることができる内容なので退屈さはそこまでないのですが、もっとバラしてストーリーの全体にポツポツと組み込んだ方が良かったと思います。終盤の展開が窮屈になっているのは、最終エピソードにこのスピリチュアルがまとめて入っているから、というのも理由にあります。
あとはまあ、本作ではアレックスの子供時代も描いているので、彼女に能力が発現した「理由」の方にも迫ってくれるのかなと一瞬期待してしまうのですが、結局「理由」の方はプレイヤーの想像で補わなければならない部分が多いです（アレックスは母の死後に父と兄が絶え間なく喧嘩するようになった家庭で育ち、施設に預けられてからも里親候補としてやって来た大人たちに「里子として相応しいか」の品定めをずっとされてきたので、他人の感情に敏感になったのかな、程度です）。まあ本シリーズは能力発現の「理由」には着目せず、その「結果」の描写に一貫して注力してきたシリーズなのでそれはいいのですが、あんな風に期待させるぐらいで終わるなら、「理由」の方ももっとガッツリ描写して本筋に絡めた方が良かったと思います。
そんな感じです。ボリュームもいつもどおりで少なめ（ちゃっちゃかやれば10時間もかからずに終わります。エンドコンテンツもなくトロコンも簡単です）なので、1000円以上出すと損した気分になると思います。これはもう、4作目で巻き返してもらうしかないですね。
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