パーキンソン病
【概念】
30歳代〜80歳代まで幅広く発症する。中年以降の発症が多く、高齢になるほど有病率は増加する。20歳代の発症はまれである。40歳以下で発症した場合を若年性パーキンソン病と呼ぶが、症状に差はない。 日本における有病率は10万人当たり100〜150人といわれる。欧米では10万人当たり150〜200人といわれており、日本の有病率はやや低いが、明らかな人種差や地域差があるかは不明である。【病因・病態】
主に中脳黒質緻密質のドーパミン分泌細胞の変性が主な原因である。 ほとんどの症例が孤発性である。孤発例のほとんどについては、神経変性の原因は不明である。遺伝による発症もあり2007年現在いくつかの病因遺伝子が同定されている。現在わかっている原因遺伝子
- Parkin
- DJ-1
- α-synuclein
- PINK1
- UCHL-1
- LRRK2/dardarin
中脳黒質のドーパミン神経細胞減少により、これが投射する線条体(被殻と尾状核)においてドーパミン不足と相対的なアセチルコリンの増加おこり、機能がアンバランスとなることが原因と考えられている。しかしその原因は解明に至っていない。このため、パーキンソン病は本態性パーキンソニズムとして、症状の原因が明らかでないパーキンソニズムに分類される。また腸管におけるアウエルバッハ神経叢(Auerbach plexas)の変性も病初期から認められており、本疾患が全身性疾患であるとの再認識をされるようになっている。
【症状】
1.安静時振戦(ふるえ resting tremor)指にみられることが多いが、上肢全体や下肢、顎などにもみられる。安静にしているときにふるえが起こることが本症の特徴である。精神的な緊張で増強する。動かそうとすると、少なくとも一瞬は止まる。書字困難もみられる。指先のふるえは親指が他の指に対してリズミカルに動くのが特徴的であり、薬を包んだ紙を丸める動作に似ていることからpill rolling signとも呼ばれる。
2.筋固縮(筋強剛) (rigidity)
力を抜いた状態で関節を他動させた際に抵抗がみられる現象。一定の抵抗が継続する鉛管様固縮(lead pipe rigidity)と抵抗が断続する歯車様固縮(cogwheel rigidity)があるが、本疾患では歯車様固縮が特徴的に現れる。純粋なパーキンソン病では錐体路障害がないことが特徴である。すなわち四肢の麻痺やバビンスキー反射などは認められないのが普通である。
3.無動、寡動(akinesia, bradykinesia)
動作の開始が困難となる。また動作が全体にゆっくりとして、小さくなる。仮面様顔貌、すくみ足、小刻み歩行、前傾姿勢、小字症、小声症など。ただし床に目印となる線などを引き、それを目標にして歩かせたり、障害物をまたがせたりすると、普通に大またで歩くことが可能である。
4.姿勢保持反射障害(postural instability)
バランスを崩しそうになったときに倒れないようにするための反射が弱くなる。加速歩行など。進行すると起き上がることもできなくなる。
【認知症との関連】
認知症を伴うパーキンソン病・疫学パーキンソン病は、高率に認知症を合併する。 27の研究のメタアナリシスによると、パーキンソン病の約40%に認知症が合併していた。約30%というメタ解析データもあり、その研究では全認知症症例の3.6%がパーキンソン病であった。パーキンソン病患者は、認知症を発症するリスクは、健常者の約5~6倍と見積もられており、パーキンソン病患者を8年間追跡調査した研究では、78%が認知症を発症した。
【治療】
運動療法
患者は進行性に運動が困難になっていくが、放っておくと廃用によって二次性の筋力低下や関節拘縮をきたすことがあるため、極力運動を行うように心がけることが大切である。またそのことによって少しでも症状の進行を遅らせることができるともいわれている。薬物療法
レボドパ(L-dopa) ドーパミンの前駆物質。主に3主徴に対して、きわめて有効に働く。薬物治療のゴールデンスタンダードだが、長期にわたる服用によりon - off現象(突然薬の効果がきれ体が動かなくなる)やwearing off現象(内服直後や時間がたった時に効果が突然切れる)といった副作用が現れるため、現在では少しでも内服開始時期を遅らせる治療法が一般的となっている。ドーパミン受容体作動薬(麦角系としてカベルゴリン、ペルゴリド、ブロモクリプチン。非麦角系としてプラミペキソール、ロピニロールなどがある)
ドーパミン放出薬(アマンタジン)
MAO-B阻害薬(セレギリン)
COMT阻害薬(エンタカポン)
抗コリン剤(トリヘキシフェニジルなど)
ノルアドレナリン作動薬(ドロキシドパは日本で開発されたノルアドレナリンの非生理的前駆物質)
ドーパミンを直接投与しないのは、ドーパミンが血液脳関門を通過できないためである。
手術療法
脳神経外科学領域において視床下核部定位脳手術が著効する例もあるが、侵襲をともなう治療法であるために慎重な適応が必要である。メディカル・リハビリテーションへ戻る
2008年03月08日(土) 00:37:45 Modified by medireha_jiten