読書を続けているとその過程で気になる人物が、かならずといっていいほど登場してきます。それがまた読書の楽しみでもあると思います。今私が気になっている人はアンリ・コルバンというフランスのイスラーム哲学史家です。平凡社から出版されているエラノス叢書(全10巻 別巻1)で好きな学者の箇所だけ読んでいたのです。その中に未知のアンリ・コルバン(1903年―1978年)という名前を見つけました。読みはしなかったのですが、拾い読みをしました。わたしの読書スタイルは乱読ではなく、一人の作家を完璧とはいきませんが網羅的に読むスタイルです。最初からではなく40代過ぎてから徐々にそのようになってきました。そのようなことで気になる人になったとしても、すぐに読み始めるということにはなりません。読む順番を待たなければならないのです。わたしは速読術など身につけていないので、牛歩の速さなのです。数年間待ってようやくアンリ・コルバンの順番に近くなってきたところです。エラノス叢書第6巻「一なるもの多なるもの(1)」の中のアンリ・コルバンの著作「一神教のパラドックス」と第1巻「時の現象学(1)」のなかの「マズダー教およびイスマ―イ―ル派思想における巡回する時間」を拾い読みをしたのです。
   アンリ・コルバンは大学生となってから、中世哲学史家の碩学 エティエンヌ・ジルソン(註:1)に師事します。コルバンはジルソンのもとで中世カトリック神学に多大な影響を与えたアヴィケンナ(註:3)の研究を始めます。その後彼の研究はイスラーム哲学史全般からイラン・シーア派が保存する預言者の哲学の研究と歩を進めてゆきます。イランのイスラム哲学は「コーラン」を正しく読むための体系的な哲学なのです。聖なる書であるコーラン抜きには存在しない哲学なのです。アンリ・コルバンはイスラーム哲学を研究する過程でドイツの哲学者マルティン・ハイデッガー(註:2)の著作から研究のヒントをもらいます。一見別なもののように思えますがイスラーム哲学とハイデッガーの哲学をつなぐものがあったのです。それは古代ギリシャの哲人アリストテレスです。

註:
(1)Étienne Henri Gilson 1884年6月13日 - 1978年9月19日

(2)Martin Heidegger 1889年9月26日 - 1976年5月26日

(3)Avicenna 980年 - 1037年 (イスラーム名:イブン・スィナー ibn sīnā。全名:アブー・アリー・アル=フサイン・イブン・アブドゥッラーフ・イブン・スィーナー・アル=ブハーリー Abū 'Alī al-Husayn ibn Abdullāh ibn Sīnā al-Bukhārī)
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