日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


成都飛機工業集団公司傘下の成都飛機設計研究所では、J-10戦闘機の発展型であるJ-10B戦闘機の開発から量産までの一連の過程と並行して、J-10Bをベースにした改良発展型の開発に着手していた[1]。J-10Bを開発中にもかかわらずさらなる発展型の開発を行ったのは、中国の航空電子産業の技術発展によりAESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダーをはじめとする新型アビオニクスをJ-10発展型に搭載できる目途が立ったことが大きいとされる[1]。新技術の導入により、J-10シリーズに持続的な改良を加え、次世代戦闘機J-20を補完する機体として現代戦闘で要求される作戦能力を確保する戦闘機にアップグレードすることが目指された[1]。

【性能】
  • アビオニクス
J-10Cの機体設計は基本的にはJ-10Bを踏襲しており、設計変更はアビオニクスが中心となっている。主な相違点としては、1.レーダーをPESA(パッシブ電子操作アレイ)レーダーからレーダーに換装。2.キャノピー後方に短型アンテナを1つ追加。3.垂直尾翼付け根のドラッグシュート収納部にあった尾灯を廃止。4.キャノピーの色合いが少し濃くなっている。などが挙げられている[1]。最も確実な外観上の識別箇所は、キャノピー後方のアンテナ数の違いで、J-10Bは1本だったのに対し、J-10Cは3本に増えている。[1]

AESAレーダーの搭載は、J-10Cの最大の特徴と言える。AESAレーダーはレーダー波の発進効率に優れ、アンテナ直径が同じPESAレーダーと比較すると、探知距離や精度、レーダーの目標同時処理能力、多機能性などの面で優位に立つ[1]。J-10Cでは、最大射程が150kmを超える中国第二世代のアクティブレーダー誘導空対空ミサイルであるPL-15の運用能力が付与されているが、PL-15の長射程を有効に活用する上でも、レーダーのAESA化は不可欠の処置であった。

AESAレーダーは半導体化された送受信モジュール(T/Rモジュール)をアンテナ表面に多数配列するが、従来の中国電子産業ではT/Rモジュールの量産と歩留まりに課題があったとされていた。J-10CやJ-16、そしてJ-20などがいずれもAESAレーダーを搭載しているのは、電子産業の技術革新によりこの面での制約が解消されたからとみてよいだろう。

コクピットの風防前にはオプティカル電子捜索センサーと赤外線捜索追跡センサー(EOTS/IRST)が設置されているが、この配置はJ-10Bと共通[4]。J-10Cは、EOST/IRSTを使用することでレーダーを使用する事なく目標の捜索・追跡を行うことができるので、相手に気づかれることなく攻撃に入ることが可能。

J-10Bではコクピットに三枚の多用途液晶パネルを配置していたが、J-10Cでは、第5世代戦闘機のコクピット技術が応用され、一枚の大型液晶パネルとその下に小型パネル一枚という配置に変更された。各種センサーから得られた情報は統合処理されて表示されるセンサーフュージョン化がなされており、パイロットは自機およびデータリンクを経由して得られた各種情報を、コンピュータにより整理された形で受け取ることができる[2]。

  • エンジン
J-10Cに搭載されたエンジンは、J-10Bと同じくロシア製のAL-31FM1(AL-31FN-M1もしくはAL-31FNシリーズ3の表記も)[2][3]。AL-31FM1は、J-10A/Sが搭載するAL-31FNの改良型で、最大推力が12.2tから13.2tにアップされている。エンジン出力の強化は、飛行性能を改善し、アップグレードに伴う重量増加による性能低下を抑える効果がある[2]。

2019年には、AL-31FM1ではなく中国製のWS-10系エンジンを搭載している機体が確認されている[3]。J-10Cが搭載するWS-10系エンジンは、ノズル形状がこれまでのWS-10A/Bとは異なっており、新しいタイプであることが見て取れる。WS-10系エンジンは信頼性の問題から、これまではもっぱら双発戦闘機(J-11B/J-11BS/J-16)に搭載されていたが、量産と運用の経験蓄積が進み改良を重ねたことで、単発戦闘機であるJ-10への装備が可能となった形。今後の生産型はWS-10系エンジン搭載型に移行するものと思われる。
  • 兵装
J-10Cは主翼下面に六箇所、胴体下面に五箇所、計11箇所のハードポイントがある。その内、500〜1000kg級の大型兵装を搭載できるのは、主翼の内側二箇所と胴体中心線上の一箇所の合計五箇所。主翼外側パイロンは赤外線誘導空対空ミサイルの搭載が主で、胴体四隅のパイロンは100〜250kg爆弾程度の兵装しか搭載できず、いずれも使用可能な兵装は限定される。この問題を解消するため、複数のミサイルの搭載が可能な並列パイロンが開発され、空対空戦闘では、PL-12/PL-15×4、PL-8/PL-10×2、増加燃料タンク×1〜3と、相応の搭載数を確保している(並列パイロンを4基に増やせばPL-12/15×8発の搭載も可能。しかし、この場合は増加燃料タンクが1基のみとなり、航続距離が短くなるので現実的な選択肢ではない)。なお、この並列パイロンはPL-12/15 BVR-AAM専用で、その他の任務ではパイロンを換装する必要が生じる[1]。比較的航続距離の短いJ-10は、中〜遠距離目標に対する対地/対艦攻撃の際には増加燃料タンク3基を搭載する必要があるため、対地/対艦ミサイルを装備できるハードポイントは二箇所のみとなってしまう。

J-10Cと同クラスの戦闘機である米F-16と比較すると、ハードポイント数は11箇所とJ-10と同数であるが純デルタ翼のJ-10よりも翼幅が広いF-16では、ハードポイントの搭載数を増やすマルチイジェクターを並べて装備してもそれぞれが干渉しない幅が確保されており、実際の搭載兵装数ではF-16の方が優位に立っている[1]。さらに、J-10には無い翼端パイロン(AMRAAM BVR-AAMの搭載も可能)、増槽の替わりとなるコンフォーマルタンクの存在もあって、兵装搭載の自由度では大きな差をつけられている[1]。

胴体に直接装着する形のコンフォーマルタンクは、貴重なハードポイントを開放するための重要な手段である。実はJ-10でもその搭載が検討され、2008年頃には模型による風洞試験も実施されていた[1]。しかし、試験では超音速飛行の際の抵抗増加、飛行性能や機動性への悪影響、機体重心の移動などの問題の存在が明らかとなった。特に問題となったのは、J-10は機体制御にカナード翼を採用しているが、コンフォーマルタンクは丁度カナード翼の後流がくる場所に装着されるため後流を乱してしまい、それが飛行性能に与える影響は無視できないものになったとされる[1]。(通常配置のF-16ではこのような問題は生じない。)F-16に比べて推力の少ないエンジンを積んでいるJ-10では、コンフォーマルタンク搭載に伴う空気抵抗の増加は、それだけ性能への影響も大きくなる。これらの問題点が判明したことから、J-10へのコンフォーマルタンク搭載は断念された[4]。

もちろん、J-10Cは空中給油プローブを装着すれば、空中給油により航続距離を延伸することが可能であるが、そのためには空中給油機との連携が必要となり、全ての任務においてそれを準備することは現実的ではない[1]。そのため、増加燃料タンクを用いた航続距離延伸が最も一般的な方法として活用され続けている。

多用途戦闘機としての能力向上もJ-10C開発の上で重要な課題であった。これに対応するため、J-10Cは、YJ-91超音速対レーダーミサイル、JG-500B精密誘導爆弾、KD-88/88A空対地ミサイルYJ-83K空対艦ミサイルなどの多用な空対地、空対艦兵装の搭載能力が付与されており、多用途戦闘機としての能力を大きく向上させている[3]。インテーク直後のハードポイントには、KL-700A ECMポッドとK/JDC01A FLIR /レーザー照準ポッドの搭載が可能で、空対地/空対艦任務での自己防御能力の改善と目標の探知照準に用いられる[3]。固定武装としてはインテーク直後の胴体下部に23mm二銃身機関砲を装備しているが、これは前タイプのJ-10Bと共通。

自己防御システムとしては、新世代の統合型電子戦システムが採用された[1]。これは各種センサー、電子戦装置、警告システムなどを統合したもの。胴体後方に内蔵されているチャフ・フレア発射機4基はJ-10/J-10B譲りであるが、J-10Cになって新たに装備されたものとしては、前述のKL-700A ECMポッドのほか、機体の4か所に配置され全周からのミサイル接近を探知・警告を発する紫外線空対空ミサイル警告装置を挙げることができる[2]。これは従来の赤外線空対空ミサイル警告装置と比較して、小型軽量で、高精度・より遠距離での脅威探知を可能としているとのこと[1]。

【生産状況】
J-10Cの開発は、モデルとなるJ-10Bの存在もあったことから順調に進展し、2016年には量産を開始[1]。それに伴い、J-10Bは2年間で量産を終え、その生産数は50機程度にとどまった[1]。J-10Cは2018年にはFOC (Full Operational Capability完全戦闘能力)を確保したことが報じられ、瀋陽飛機工業集団公司のJ-16戦闘機と共に、中国第3.5世代戦闘機(西側の4.5世代戦闘機に相当)の中核を形成する戦力として部隊配備が進められている。

J-10Cは毎年、一個戦闘機団分(西側の中隊に相当)の機数が部隊配備されており、2019年までの累計生産数は150機を超える可能性があるとされている[1]。

成都飛機工業集団公司の親企業であるAVIC(中国航空工業集団有限公司 Aviation Industry Corporation of China, Ltd.)は、J-10Cの輸出に積極的で、各国で開催されている国際兵器ショーで同機の売り込みを進めている。輸出用名称としては、J-10CE、FC-20CEなどの名称が用いられている[4][5]。

▼動画「China's fighter jet J-10C starts combat duty」
報道で伝えられたJ-10Cの訓練風景


J-10C/J-10CE性能緒元
重量
全長16.9m
全幅9.8m
全高5.7m
エンジンLyulka-Saturn AL-31FN-M1/別名AL-31FN SER3(A/B推力13.5t)×1
最大速度M1.8
戦闘行動半径1,240km(空対空任務)/2,600km(同左、空中給油使用)
フェリー航続距離2,950km(800L入り増槽×1と1600L入り増槽×2搭載状態)
上昇限度 
機内燃料搭載量 
武装23mm連装機関砲×1
 PL-15中距離空対空ミサイル(霹靂15)
 PL-12アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(霹靂12/SD-10)
 PL-10短距離空対空ミサイル(霹靂10)
 PL-8赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂8/パイソン3)
 YJ-91高速対レーダーミサイル(鷹撃91/Kh-31P/AS-17C Krypton)
 KD-88/88A空対地ミサイル
 YJ-83K空対艦ミサイル
 LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)
 JG-500B誘導爆弾
 LS-6滑空誘導爆弾(雷石6)
 FT-1/3誘導爆弾(飛騰1型/3型)
 各種爆弾/ロケット弾/電子戦ポッドなど約4.5t
乗員1名
機体サイズと性能は[6]を元に作成(一部推測あり)。兵装は[1][2][5]を参照。

【参考資料】
[1]银河「”猛龙”的进化 浅析歼10战斗机的多用途发展」『舰载武器』2019.03/No.309(中国船舶重工集团公司、26〜46ページ)
[2]银河「”猛龙”的进化 浅析歼10战斗机的多用途发展-歼10战斗机图示」『舰载武器』2019.03/No.309(中国船舶重工集团公司、巻頭5〜9ページ)
[3]Chinese Military Aviation「J-10C Vigorous Dragon/Firebird」http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/fi... (2020年1月16日閲覧)
[4]搜狐网「歼10CE战斗机单价只有4000万美元,巴铁正在讨论是否要引进」(2019年11月26日)http://www.sohu.com/a/355970639_99900839(2020年1月16日閲覧)
[5]李剑「歼-10C出口型首次亮相,能否打破歼-10出口零的记录?」(『兵工科技』2020.01号、兵工科技杂志社、33〜36ページ)
[6]腾讯网-腾讯新闻「彻底爆发,歼-10外贸机亮相重大航展,第一个购买的国家是谁」(2019年11月18日) https://new.qq.com/omn/20191118/20191118A04XOG00.h... (2020年1月19日閲覧)

【関連項目】
J-10戦闘機
J-10B戦闘機

中国空軍

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