日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




【導入の経緯】
Su-30MK2は、スホーイ社が開発し沿海州のコムソモルスク・ナ・アムーレにあるKNAAPO工場で製造されたSu-30シリーズの1つである。NATOコードネームはSu-30MKKと同じくフランカーGになると思われるが変更の可能性もある。Su-30MKK2との記述もあるが、メーカー公式サイトではSu-30MK2の記述が採用されているので、以下ではこれに従う。ロシアと中国は2003年1月にSu-30MK2 24機の輸出に関する契約に調印。第一バッチの12機は2004年3月に、第二バッチの12機は2004年8月に中国に引き渡された。これらの機体は東海艦隊の節制下に置かれ、浙江省にある中国海軍航空隊の航空第4師団第10戦闘機連隊に配属された。

【Su-30MK2の特徴】
Su-30MK2の開発は2002年に開始された。既に中国空軍に輸出されていたSu-30MKK戦闘機をベースとして、C4ISTAR能力の付与と精密誘導兵器の運用能力改善が行われ、長距離戦闘攻撃機としての性格がさらに強まったが、特に中国海軍に配属されることから、対艦攻撃能力の向上に意が払われた。

Su-30MK2は、基本構造ではSu-30MKKと大きな差は無い。主要な改造箇所は以下の通り。レーダーは、N011PHパルスドップラー・レーダー(4目標同時交戦可能)に換装されており、これにより長射程・超音速の対艦ミサイルYJ-91(Kh-31P/AS-17 Krypton)の運用能力を持った。またEW/ECMシステムも最新型のものが装備されている。赤外線捜索・追跡(IRST)システムもOEPS-27の改良型であるOEPS-31-MKが搭載され、新たに装備されたSapsan-E赤外線・レーザー測距離装置との組み合わせでSu-27よりも大幅に性能が向上している。さらにSu-30MK2が搭載するM400偵察ポッドは、100kmの距離で2mの分解能をもつ対地SLAR(側視機上レーダー)、70kmの距離で30〜40cmの解像度を持つFLIR/可視光カメラ、さらにこれらをデータリンクで地上管制にリアルタイムで送信するという高度な偵察能力を持つ。

Su-30MK2には、最大10機のSu-27/Su-30による相互データリンクを管制する能力が付与されており、限定的な空中管制任務を行うことも可能。また、Kh-31A、Kh-35E、Kh-59MKなどの空対艦ミサイルに、目標となる水上艦艇の位置情報を提供する能力を有している。Su-30MKKと同じく空中給油用ブロープを装備しているが、現時点では中国軍にはSu-30MK2に給油できる空中給油機が無いため空中給油は出来ない。空軍のSu-30MKKとの外見上の相違点は、レドームが白色になった点で、中国のフランカーに共通していたレドーム基部の切れ込みが無くなっている。


【海軍航空隊におけるSu-30MK2の位置づけ】
海軍航空隊では、1990年代以降、洋上における制空権の確保と遠距離打撃能力の欠如が問題とされてきた。しかし、空軍に比べて装備の近代化では遅れを取っており、Su-27戦闘機J-10戦闘機といった新世代戦闘機は、いずれも海軍には配備されていなかった。Su-30MK2の導入により海軍航空隊はようやく空軍の新世代戦闘機と対等の能力を有する機体を手に入れたことになる。

Su-30MK2の導入前、海軍航空隊で対艦攻撃任務を担っていたのはJH-7攻撃機「飛豹」(殲轟7/FBC-1)であったが、JH-7はあくまで攻撃機であり空戦能力は限定的なものに留まっていた。そのため、対艦攻撃任務においては、戦闘機による護衛が不可欠であった。JH-7の護衛に当たっていたのはJ-8II戦闘機(殲撃8B/F-8II/フィンバックB)であったが、J-8IIの航続距離はJH-7の3分の2程度であり、JH-7を十分に護衛するには問題があった。

Su-30MK2は、強力な対地・対艦攻撃能力を有すると同時に、Su-27譲りの空戦能力も兼ね備えた多用途戦闘機であり、対艦攻撃任務と制空任務の双方をこなす能力を有している。複座であり、充実した電子・航法装置を装備していることも、長距離打撃任務にとっては有利な要素である。空軍で使用されているSu-30MKK戦闘機は、攻撃任務においてはJ-11戦闘機(殲撃11/Su-27SK/Su-27UBK)の護衛を受けて作戦を行うが、予算配分の少ない海軍航空隊においてはSu-30MK2一機種で、空軍のSu-27とSu-30MKKの二機種分の役割を果たしてもらう必要があった。そのため、海軍航空隊のSu-30MK2は、空対空兵装と対地/対艦兵装を混載し作戦状況に合わせて兵装を使い分ける方法を採用している。また、Su-30MK2の優れたデータリンク機能は、各軍種間での情報共有による連携作戦能力を強化している中国軍の情報化推進の流れにも合致したものである。

海軍航空隊では、Su-30MK2とJH-7/JH-7Aを対艦攻撃の主力機として運用している。Su-30MK2は、取得費用や整備・維持費用においてはJH-7/7Aよりも高額であるが、アビオニクスや機体性能、航続距離、兵器搭載量では大きく上回っており、攻撃機であるJH-7よりも多用途戦闘攻撃機であるSu-30MK2の方が戦術的柔軟性が高いと評価されている。ただし、海軍航空隊では予算的な制約や複数の兵器供給体制を維持するとの観点から、比較的低コストでコンポーネント供給に不安の無いJH-7Aの購入も継続しており、Su-30MK2とJH-7Aでハイ・ローミックスを行う体制を構築している。

スホーイ社は、Su-30MK2の改良型であるSu-30MK3を中国に提案している。Su-30MK3は捜索距離300kmの新型アクティブ・フェイズドアレイ・レーダーを装備し、エンジンもAL-31の改良型が搭載される予定。ただし、ロシアからの戦闘機の輸入はSu-30MK2の輸入を最後にここ数年行われておらず、J-11B戦闘機をめぐる中露の対立もあって、Su-30MK3の輸出の見通しは立っていない。

性能緒元
重量17,700kg
離陸重量34,500kg、最大38,000kg
全長21.94m
全幅14.70m
全高6.36m
エンジンLyulka-Saturn AL-31F A/B 122.6kN ×2
最大速度M2.0
戦闘行動半径1,500km
上昇限度17,300m
燃料搭載量9,720kg
兵器搭載量8,000kg
ハードポイント12箇所
武装GSh-301 30mm機関砲×1(150発)
 R-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(AA-12アッダー)
 R-27中距離空対空ミサイル(AA-10 Alamo)シリーズ
 R-73赤外線誘導空対空ミサイル(AA-11 Archer)
 Kh-59テレビ誘導中距離空対地ミサイル(AS-13 Kingbolt)
 Kh-29テレビ誘導短距離空対地ミサイル(AS-14ケッジ)
 Kh-31A空対艦ミサイル(AS-17 Krypton)
 YJ-91高速対レーダーミサイル(鷹撃91/Kh-31P/AS-17C Krypton)
 KAB-500Krテレビ誘導爆弾
 各種爆弾/ロケット弾
乗員2名


▼インドやマレーシアのSu-30と違い、カナード翼と推力偏向ノズルは装備していない

R-77空対空ミサイルR-73空対空ミサイルを装備したSu-30MK2

Kh-31超音速対艦ミサイル(もしくはYJ-91対レーダーミサイル)を装備したSu-30MK2


▼Su-30MK2の訓練動画。空戦機動、HUD表示のアップなど


【参考資料】
Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
世界の艦船(海人社)
武装力量 2005年1月「龍之翼-中国蘇-27系列飛機全史 軍購編:中国龍的側衛之翼」(康成毅/内蒙古人民出版社)
中国尖端軍事力量-戦略研究 総第75-76期、2007年6-7月合刊「中国海航蘇-30MKK2戦機-使用価値及選型分析」(王軍/中国戦争史研究会)

Chinese Defence Today
KNAAPO公式サイト

【関連項目】
J-11戦闘機(殲撃11/Su-27SK/Su-27UBK)
J-11B/BS戦闘機(殲撃11B/殲撃11BS/Su-27)
Su-30MKK/MKK2戦闘機(中国)
中国空軍
中国海軍

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