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自転車の写真です。去年の写真なんですが、夏らしく海をバックに。
でもやはりまだ使いこなせないな。。

サイクルモード'07(その1)

CYCLE MODE international 2007 その1

(ヨーロピアンバイク編 1/3)



一年ぶりの更新ということで大変ご無沙汰しておりました。

当初、このレポートはOchaさんのメインサイトで公開して頂くことも考えていたのですが、調子に乗って書き進めているうちにかなりの量になってしまい、全て纏まるまでしばらく時間がかかりそうな状況に陥っています。ということで、書き上がった分からこちらにアップしていくことにしました。

さて、今年のサイクルモードですが、今回も試乗は控えました。理由は昨年と同じです。でも、今年は事前に出展者などを調べておき、それなりにメモも取りながら見て回りましたので、多少はマシな取材になったかと思います。最後までお付き合い頂ければ幸いです。



■ PINARELLO


今年のツールで若きスペイン人、アルベルト・コンタドールが華々しく総合優勝を飾ってから約2ヵ月後、昨年のツール総合優勝者がオスカル・ペレイロに正式決定しました。



ツールを制したスペイン人ということでは、ピナレロを駆ったあのミゲル・インドゥライン以来11年ぶりとなりますが、ピナレロがツールのチャンピオンバイクとなったのも1997年のヤン・ウルリッヒ以来、9年ぶりということになります。ま、こんなに後味の悪い優勝決定はこれっきりにして欲しいところですね。





世界で初めてアルミフレームにカーボンバックを採用したあのプリンスもフルカーボンになって帰ってきました。カーボンバックの元祖であり、マグネシウムにも力を入れてきたピナレロは、それ故フルカーボン化では遅れが目立っていましたが、今や全開といったところでしょうか。

このプリンス・カーボンは東レからピナレロへ独占供給される50tグレードのハイモジュラスカーボンを使用、昨年ご紹介したパリ・カーボンと比較して剛性は15%増強されているそうです。しかし、ハイグレードのカーボンファイバーゆえ繊維の使用量を減量でき、ピナレロのフレームとしては史上最高の剛性でありながら、重量は900gに抑えることができたと謳っています。

もっとも、いまどきはスコットやサーヴェロ、ストークなど800gを切るフレームは幾つもありますし、50tグレードならリドレーも採用していますし、アマンダに至っては50tどころか80tグレードなどというとんでもないスペックのハイモジュラスカーボンですし、独自のアイデアで何か革新的な構造にトライしてきたわけでもありません。スペック的に突出した印象がないんですよねぇ。

アマンダのように零細なオーダーフレームビルダーは「何でも有り」みたいなところがありますので別格としても、同じマスプロダクションのタイムやルック、スコットなどのようなカーボン先発メーカーがリリースしてくる最新フレームほどの凄みを感じさせないのはまだ致し方ないところでしょうか。

ところで、昨年のレポートで私は以下のように書きました。

「最近までフルカーボンはオペラブランドに任せ、ピナレロブランドはメタル+カーボンバックといった具合に、ブランドの棲み分けが明確でした。マテリアルの区別が取り払われた今後、両ブランドをどのように展開させていくのか注目ですね。」

実は、あの直後に開催された「東京サイクルショー2006」で私はその方向性を察しました。というのも、スポーツ車より実用車が主体といえる東京サイクルショーでピナレロのブースを彩っていたのはオペラブランドのオシャレなシティサイクルが中心だったからです。



そんなわけで、今年のサイクルモードにもオペラブランドのカジュアルバイクがズラリと並びました。ロードバイクも依然として残されてはいますが、その位置づけはかなり微妙な感じになってきたと思います。2005年にはイリェスバレアルス・ケースデパーニュ(現在は冠スポンサーの順番が逆になっています)に供給されていたオペラですが、レーシングブランドとしての役目はそろそろおしまいといったところでしょうか。



■ DE ROSA




今年のデ・ローザの目玉は何といってもキングが2回目のフルモデルチェンジを受け、キング3としてリリースされたことでしょう。デ・ローザの最高級フレームの座はプロトスに譲られましたが、コンチネンタルプロ(UCIプロの下位カテゴリー)のアックア・エ・サポーネへは山岳ステージ用軽量フレームとしてプロトス、通常ステージはキングX-ライトが供給されていました。デ・ローザのトップレーシングスタンダードは依然としてキングであり、そのフルモデルチェンジには興味が尽きません。



ご覧のように流れるような曲面で構成されたダウンチューブは非常に太く、時流に逆らわない素直な設計がなされています。既に2007年モデルでインテグラルシートポストとスローピングトップチューブも選べたキングはコルナゴや昨年までのトレックと比べても革新的なトレンドに柔軟でした。デ・ローザはトップグレードのレーサーに対して構造や素材など意外に保守的ではないメーカーなんですよね。

でも、デ・ローザは別なところで実に頑固です。デ・ローザにあるカーボンフレームの焼成炉は1度に2本しか処理できないのですが、さらにキングは1日に2本しか作られません。品質管理を徹底するにはそれが限界とのことですが、彼らの頑固さを物語っていると思います。

カテゴリーは女性向けのコンフォートモデルからTT専用のエアロフレームまで、マテリアルもクロモリ、アルミ、チタン、カーボンがあり、現在20数車種のラインナップを持つデ・ローザですが、その規模は年産6000本、日産わずか20本前後といったレベルでしかありません。(台湾のビッグメーカーは日産でデ・ローザの年産に匹敵します。)

ピナレロやコルナゴのように台湾のOEMメーカーに廉価モデルを委ねることは可能でしょうし、そうしたビジネスを展開すれば収益も上がって資金面も余裕が生まれ、UCIプロへの機材供給も楽々こなせるようになるでしょう。しかし、それをやってしまうとデ・ローザはデ・ローザではなくなってしまうのだと思います。



■ COLNAGO




何ともゴージャスなデコレーションです。こうした趣味はフェラーリにも通じるものがありますが、日本やアメリカやドイツなどのブランドでは絶対にサマにならない雰囲気ですね。

ハイエンドメーカーたるコルナゴはプロ供給モデルを幾つも用意しています。アレッサンドロ・ペタッキらによって勝利を量産したエクストリーム・パワーは昨年ご紹介したとおりです。ミカエル・ラスムッセンがラボバンクを追放され、エクストリームCは幻のツールチャンピオンバイクとなってしまいました。

ちなみに、ラスムッセンは「チームに対して虚偽の所在報告をしたという疑いがかけられた」「それで抜き打ち検査を回避した」とか「薬物を提供したという証言者が現れた」という状況証拠だけで、大会中10回以上にも及ぶ血液検査で1度も陽性は出ておらず、物的証拠は何もありません。つまり、ルール上は黒といえない状況でリタイヤさせられたわけですね。真相がどうなのか私には解りませんけど。





今季限りで引退したマイケル・ボーヘルトはこれと大きく違わないC50でツールを完走しました。トレックがホリゾンタルトップチューブとノーマルヘッドに見切りをつけた今、トップレーシングモデルでそれらを死守するのはコルナゴくらいになってしまいました。こうしたクラシックなスタイルを貫くのは老舗としての意地なのでしょう。

廉価モデルの製造をジャイアントに委ねるなど、ビジネスには柔軟なコルナゴですが、フレームそのもののスタイルはデ・ローザ以上に保守的です。これもやはり彼らの強烈な個性なのでしょう。こういうメーカーが数多存在するイタリアの懐の深さは頼もしい限りですね。



■KUOTA




私は別の機会でこのカルマ105に試乗させてもらったことがあります。その感想は「タイムやルックにも重量以外は見劣りしないこのバイクをこの値段で売って商売になるのか?」というものでした。

イギリスの『サイクリング』誌で今年のパフォーマンス・オブ・ジ・イヤーに選ばれるなど、世界的にも非常に高い評価を得ているようですが、シマノの105で組まれた完成車は2007年モデルで262,500円という驚異的なバーゲンプライスでした。石油価格や為替レートの影響もあるのか、2008年は16,800円値上げされますが、それでも十二分に安いといえるでしょう。とりあえず30万円以下で高性能なカーボンフレームの完成車が欲しいという向きにはこのカルマ105がイチオシです。

私の勝手な思い込みかもしれませんが、完成度の高いカーボンフォークを作れるメーカーはカーボンを扱う総合的な技術力も高いのではないかと思います。

フォークは路面からの振動を適度に吸収しつつ、しかし制動時や旋回時など大きく荷重が変化する際にも撓まない高い剛性を確保しなければならないという、相反する要求を同時に満たさなければなりません。さらに、直進安定性や旋回性といった性能、あるいは乗り味といった感覚に訴える部分もフォークの素性によって大きく影響されます。

しかし、フォークの構造は極めて単純です。2本のレッグチューブと1本のコラムチューブを1つの接合部で結びつけただけですから、それだけに制約も少なくないはずです。

カーボンフレームの老舗と呼ばれるメーカーは例外なくフォークも自前です。タイム然り、ルック然りですね。殊にタイムは他社へのOEMも数多く手がけており、ピナレロの「オンダ」と称するカーボンフォークも実はタイム製であるというのは業界通の間で公然の秘密です。同様にカーボンフレームの後発であるキャノンデールも以前からずっとタイムのフォークを採用してきました。そもそも自社工場を持たないスペシャライズドもそうです。BMCもイーストンに切り替えるまでタイムでした。

翻って、クォータはカーボンフォークで非常に定評のあるシンテマのバイクブランドです。フレーム全般の歴史は浅いかもしれませんが、彼らの技術力はカーボンフォークの生産で培われてきたのではないか? というのが私の推測です。

いま、日本国内市場でクォータに足りないものはズバリ、「ブランド力」だけでしょう。かつてのサーヴェロがそうであったように、どれだけトライアスロンで活躍しても、その最高峰であるハワイ・アイアンマンを制しても、日本のユーザーには(恐らくヨーロッパのユーザーにも)さほど訴求力がありません。

UCIプロに供給し、グランツールやクラシックレースで活躍してみせれば、状況は大きく変わるでしょう。もっとも、そのためには日本円にして億単位のコストがかかります。デ・ローザもコンチネンタルプロとの契約がせいぜいという時代ですから、商業的な判断としては難しいところかも知れません。



■ Bianchi


かつてはマルコ・パンターニのバイクとして話題に事欠かなかったビアンキですが、リクイガスへの機材供給をキャノンデールに取って代られ、UCIプロから遠ざかってしまったせいか、すっかりレーシングモデルの話題が少なくなってしまったような気もします。メディアもカジュアルバイクはともかく、レーシングモデルを取り上げる機会がグッと減りました。

日本市場はそれだけプロ供給機材という錦の御旗が威力を発揮するマーケットなのかとも思いましたが、どうやらそうとばかりは言えないようです。



通路の向こうにあるGTのロゴのほうが目に付きますが、ここはビアンキのブースです(厳密に言えばビアンキを輸入している日本代理店のブースですが)。ビアンキファンの方には申し訳ないと思いつつもはっきり言わせて頂きますが、この貧相なブースが日本市場でのビアンキの状況を物語っているような気がします。

私はロードの旗艦モデルである928カーボンSLや、MTBのプロチーム、ゲウィス・ビアンキへの供給モデルを楽しみにブースを訪れました。が、展示ブースと呼べるような状態ではなく、ただの試乗待合所ですね。(昨年見逃したのもこんな感じだったからかもしれません。)

奥に見えるチェレステブルーのパーティションとそこに下がっている2枚のフラッグがなければ、ここがビアンキのブースということさえすぐには気付けそうもない感じですが、120年を超える歴史と伝統あるブランド、ダブルツールを成し遂げた最後の英雄パンターニを支えたブランドとしては寂しい限りです。

芸能界はタレント本人の力量より事務所の力量みたいなケースもありますが、スポーツサイクルのマーケティングにも同様のことは言えるかも知れません。ビアンキのイタリア本社はいい加減にサイクルヨーロッパとの代理店契約を見直した方が良いのではないか? というのが個人的な感想です。



その2・ヨーロピアンバイク編 2/3へ続く)


(C)石墨
2007年12月09日(日) 21:59:02 Modified by ishi_zumi

添付ファイル一覧(全9件)
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