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自転車の写真です。去年の写真なんですが、夏らしく海をバックに。
でもやはりまだ使いこなせないな。。

サイクルモード'07(その6)

CYCLE MODE international 2007 その6

(タイワニーズバイク編)




■ GIANT (捷安特)


トップチューブは水平なのが当たり前だった当時、スペインの強豪チームだったオンセに供給された台湾製のフレームは妙に後ろ下がりで「台湾人って何考えてんだかw」なんて思ったりしました。でも、本当はヨーロッパ・ジャイアントで設計されていたので台湾人が考えたわけではなかったんですよね。



そのスローピングフレームをデザインした張本人が写真左の人物です。右はヨーロッパ・ジャイアントの社長ですが、当時の資料はあまり残っていないので、彼らの名前や国籍などは解りません。悪しからず(ま、台湾人じゃないのは見た目にも明らかですが)。ちなみに、真ん中はオンセのマノロ・サイス監督です。TTなんかでいつも「ヴェンガ! ヴェンガ! ヴェンガ! ヴェンガ! ヴェンガ!」と監督車からまくし立てていたあの人です。

余談ついでにオンセのその後をざっとご紹介しておきましょうか。オンセがスポンサーから撤退したのはドーピングと無関係でしたが、例のオペラシオン・プエルトがらみでサイス監督が逮捕されたことで、オンセの後を引き継いでいたメインスポンサーのリバティセグロスが降りました(サブスポンサーのウルトは残りましたが)。サイスの影が消え失せた同チームが再興されてアスタナ・ウルトとなり、現在のアスタナへと至ったわけですね。

そのアスタナもドーピングにまみれて主力選手が次々と離脱することになりましたが、そこへ解散したディスカバリーチャンネルの監督や主力選手がゴッソリ移籍し、機材サプライヤーのトレックまでもが追随してきたということは以前にも述べたとおりです。

話を戻しましょうか。ジャイアントはロードのプロ供給機材としてスローピングフレームの先駆けとなりましたが、その当時は上の写真にもあるとおり、現在ほど深い傾斜ではなかったんですね。現在他社がやっているレベルと大差ないアングルでした。それでも当時は非常に違和感がありましたが、スローピングが当たり前になった現在、特に若い人などはホリゾンタルのほうがクラシカルで妙な姿に見えてしまうかも知れません(実際、私の知り合いにそういうことを言っている人がいます)。これも時代の趨勢というものですね。

ジャイアントがヨーロッパのトッププロチームに供給開始してから来年で10周年になります。早いものですねぇ。この10年で最も躍進したメーカーはジャイアントをおいて他にないでしょう。彼らがオンセに機材供給を開始した数年後には、そのスローピングフレームがUCIのレギュレーションで一時禁止されたり、色々ありました。日本への輸入開始当初はその品質が疑われて5年保証を付けるなど、大変な苦労もしたようですが、それも今は昔です。





オンセ供給モデルは「TCR ONCE-TEAM」でしたが、最新のこれは「TCR ADVANCED T-Mobile」ということで、「アドバンスド」という名称が入ったものの、大差なく引き継がれています。それだけTCRというモデル名も歴史を刻んできたということですね。この原稿の執筆中にT-モバイルはドイチェ・テレコム時代から17年にも及ぶスポンサー活動を終了するというニュースが飛び込んできました(またぞろドーピングの汚名が係わっていますが)。このカラーリングも今年で見納めですね。



こちらはシマノのブースにあったリーヌス・ゲルデマンの使用車です。ゲルデマンといえば、今年のツール第7ステージでは残り14.5kmのコロンビエール峠で独走態勢に入り、そのまま逃げ切ってマイヨ・ジョーヌを奪ってみせた大活躍が印象的でした(一日天下でしたけど)。山で活躍した選手だけに小柄なのかと思っていましたが、実車のフレームサイズは予想よりも大きいものでした。

なので調べてみると、彼の身長は182cmと思ったより大柄だったんですね。TTもまずまずの成績でしたが、この体格で山にも強くTTもこなせる選手はオールラウンダーとして良い素質を持っている場合が少なくありません。順調に成長していけば本人の望むウルリッヒのようなエース格の選手になるのも夢ではないと思います。





とほほメンバーにユーザーの多いエスケープの新型です。クロスバイクというジャンルが生まれた当初はロードバイクとMTBの中間的な位置づけとされていました。フラットバーロードとの棲み分けにやや曖昧な部分もありましたが、主流はスポーティなシティバイクといった方向へ落ち着いてきた感じです。それに加えて、昨今のピストブームの影響を受け、リヤハブ内装変速機でシングルスピードのようにシンプルな外観という新機軸を模索し始めたようですね。



このモデルにはスラムのi-モーションという内装3sが搭載されていますが、シマノのアルフィーネは内装8sですから、スペック的にはかなり見劣りします。もっとも、シマノの8sは遥かにゴツく、見た目重視でこのシンプル路線を進むなら、このコンパクトな3sのほうが正しいチョイスといえるでしょう。

チェーンは外付けのテンショナーで張りを調節するのが一番楽ですが、ディレイラーのガイドプーリーにも似たそれでピスト的な外観の演出は無理です。かといってピストエンドとそのアジャスアターでは左右均等に調整しなければ後輪が偏向してしまうという機構ですから、素人には少しハードルが高いかと思います。



ということで、このエスケープはチェーンテンション調整にエキセントリックBBを採用しています。オフセットされたBB軸がハウジング内を偏芯しながら回る構造ですので、これでBB軸とリヤハブ軸との距離を調整するわけですね。ま、これも以前からあった方式ですが、最近ではMTBでもシングルスピードが出てきたりして、このエキセントリックBBも見直されているようです。

余談になりますが、昨今のピストブームでブレーキレスを街中で乗っている莫迦も沢山いますが、その一方でコースターブレーキも見直されているようです。これは後輪のブレーキをハブに内装し、クランクを逆回転させることでブレーキが作動するという仕組みです。握力の弱い子供用に好都合とか、サーフボードを抱えながら片手運転するときに便利ということでビーチクルーザーに応用されたり、欧米では広く普及していました。

最近はピストのシンプルな外観を損なわずにブレーキも省きたくないといった向きにコースターブレーキが注目されるようになり、微かではありますが使用する人が出てきたようですね。もっとも、ブレーキは前後に装備しなければ違法になりますから、コースターブレーキだけというのも本当はマズイんですけど。



■ MERIDA (美利達)




メリダは昨年(といいますか、2007年モデル)からロゴデザインを一新してより精悍になりましたねぇ。

写真左のMTBはカーボンFLX900Dです。カーボンナノチューブも導入されたこのフレーム単体重量はわずか1,160gで、ロードバイクと比べても遜色ない超軽量です。「フレックス-ステイ」と称するシートステー/チェーンステーは横方向に扁平となる部分を設け、微細振動に対してはリーフスプリングのように働いて快適性を確保する一方、ダイレクト感は損なわれないといいます。

実は、カラーリングこそ異なりますが、このフレームはプロ供給モデルのカーボンFLXチームと全く同じです。メインコンポをXTとするなど、パーツのグレードをやや抑えたこれは完成車で32万円(税込)という驚異的なコストパフォーマンスです。

もちろん、このままでもホビーレーサーには十二分なスペックだと思いますが、コンポをスラムのX.Oへ、フォークもマニトウR7のトップモデルに変えるなどすれば、プロ供給モデルとほぼ同じスペックまで簡単に持って行けます。これは結構そそられますねぇ。とりあえず完成車を買って、後からパーツをグレードアップするというのは良くあるパターンですが、こうしたユーザーの消費行動を良く見据えたプロデュースだと思います。

メリダはスペシャライズド、スコット、GT、マングースといったそうそうたるブランドのOEMを手掛け、ジャイアントに次ぐタイワニーズバイクの雄として誰もがその実力を認めるところでしょう。しかし、メリダの自社ブランドはブリヂストンが日本代理店を務め、アンカーブランドとの競合を避けるためか、日本国内ではあまり積極的な市場展開が見られなかったように思います。

ところが、このところ同社のカーボンフレーム工場が日本のメディアでも相次いで紹介されたり、広告活動もいくらか強化されたり、いよいよ日本市場への梃入れに本腰を入れ始めたのかと思われるアクションが見られるようになってきました。



かつてはマグネシウムフレームも手がけており、またアルミのハイドロフォーミングやロボットによるTIG溶接など、メタルフレームのハイテクメーカーという印象が強かったように思います。が、カーボンのほうもBMCに続いてカーボンナノチューブを導入するなどメキメキと力をつけており、技術面では死角らしい死角がほとんど見当たらなくなってきたのではないでしょうか?

レース活動でもMTBのムルティヴァン・メリダへの供給でラルフ・ナフ(XCヨーロッパチャンピオン、世界選手権ではXC準優勝、同マラソン優勝など)、グン-リタ・ダーレ(世界選手権XCを4度制覇、アテネオリンピックのゴールドメダリスト、女子では実力ナンバーワンでしょう)等をサポートしています。

また、メリダもジャイアントに倣って開発拠点をヨーロッパに置いています。1998年にはドイツ・シュツットガルト(ポルシェやダイムラーの本社もここです)にメリダ・ヨーロッパを設立、デザイン・設計・開発部門を完全移管しました。言うなれば頭脳がドイツに根を下ろして間もなく10年になるわけですから、ドイツブランドに近いといえるかも知れません。

いえ、別に私はメリダの回し者ではありません。が、これだけの実力を持ち、ジャイアントと双璧を成すビッグメーカーが日本ではまだまだマイナーな存在で、魅力的なモデルもほとんど入ってこない現状が少々歯がゆいと常々感じていたものですから、少々筆(いやキーボードか)に力が入ってしまいました。

実は、ナンバーワンのジャイアントと、ナンバーツーのメリダは意外に仲良しなんですね。2003年に両社は「Aチーム」というプロジェクトを立ち上げ、工場を見学し合うなど、技術力や品質管理をお互いに高め合うための情報交換を行っています。ライバルを認め合い、切磋琢磨するというのは実に素晴らしい関係ですね。あるいは、彼らの底力が半端でないのはこうした姿勢に秘密があるのかも知れません。



■ Pacific (太平洋)


このパシフィックもGTやシュウイン、マングースなどのバイクをOEMしていますが、ドイツr&mのBD-1、クワハラ・バイクワークスのGAAP、スマートコグのKOMAタルタルーガといったミニベロやリカンベントなども手がけており、非常に守備範囲が広いメーカーですね。





自社ブランドで参考出品されていたトライアスロン用バイクです。デザインに関しては失笑を買いそうですが、それはまともなスタイリングデザイナーを起用すれば良いだけの話しであって、現段階で注目すべきはその設計開発能力と製作技能のほうでしょう。

TTやトライアスロン用バイクは空気力学的に優れていることが重要な性能となります。トップチューブやチェーンステーなど水平方向に張られるチューブを除き、涙滴断面ないし翼断面のチューブを用いるのはかなり前から常識でしたが、近年のトレンドとしてはダイレクトに走行風を浴びるヘッドチューブをどう料理するかが一つのポイントになっています。

パシフィックの設計陣が出した回答はこれを可能な限り短くすることで前面投影面積を減らすというものでした(そういう説明書きがあったわけではなく、私が見た目から判断したものなので確証はありませんが、自信はあります)。スプリンター御用達のロード用フレームでは剛性不足で問題になりそうなくらい、思い切った短さに抑えられています。が、DHバーで上半身を据えるライディングフォームが基本となるこの種のバイクでは特に問題ないのでしょう。

ヘッドチューブが極端に短くなったことで、この種のバイクには珍しく厚めのコラムスペーサーが噛まされていますが、これはしっかり涙滴断面になっています(ついでにステムのクランプ部後方も同様の形状になっています)。ま、見た目にはこのコラムスペーサーとヘッドのデザイン的な脈絡がなく、かなり野暮ったい印象もありますが、構造上は問題ありませんし、空力的にも間違いではありません。また、こうした新興ブランドにありがちな模倣ではなく、独自性を打ち出してきたところは大いに評価すべきでしょう。

一方、製作技能についてはこれまでのOEMの実績からして充分であることは解っていますが、このバイクでもそれは遺憾なく発揮されています。

湾曲したシートチューブとタイヤとのクリアランスは申し分ない精度ですし、いささかキャノンデールチックではありますが、美しい曲線を描くシートステーもなかなかのものです。接合部の仕上げもスムーズで文句なく、小悪魔をデザインしたセンスはともかく、塗装の質も最高レベルといって差し支えないでしょう。モノとしては一級のクォリティにあると思います。ま、販売予定価格が50万円を超えるので、これくらいは当然でしょうけど。

私も所有しているアルミモノコックフレームのBD-1も上述の通りこのパシフィックで生産されていますが、これはプレス成型した左右2つのエレメントを中央でTIG溶接しています。乗車姿勢でふと視線を落とせば、真直ぐな溶接ビードが背骨のように走っているのが見えますが、規則的でブレのないビードはむしろ心地良いとさえ思います。こうした確かな仕事は所有する喜びにもつながるものです(ま、ロボット溶接かも知れませんけどね)。

現在はコストとクォリティが高次元にバランスした最高のフレームを求めると、必然的に台湾製になってしまうというようなところがあります。さらにコストを優先すると中国製やベトナム製になるわけですね。

もはや台湾メーカーのOEM抜きにスポーツサイクルは語れない時代ですが、ジャイアントやメリダのように自社ブランドでも世界に通用するメーカーが台頭しています。パシフィックも実力は充分ですから、彼らに続く存在になっていくのかも知れませんね。まずは優秀なデザイナーが必要でしょうけど。



その7・ジャパニーズバイク編へ続く)


(C)石墨
2007年12月21日(金) 23:27:10 Modified by ishi_zumi

添付ファイル一覧(全9件)
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