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自転車の写真です。去年の写真なんですが、夏らしく海をバックに。
でもやはりまだ使いこなせないな。。

サイクルモード'07(その8)

CYCLE MODE international 2007 その8

(シマノ編)




今回のシマノのトピックはセカンドグレードのコンポですね。MTBのディオーレXTやロードのアルテグラSLといったニューモデルをリリースしてきました。また、ホイールのニューモデルも目白押しですし、既にツールでもテストされヨーロッパの自転車ショーでも公式にお目見えしていたシマノ初のカーボンクランクも参考出品されました。



■ Deore XT


世界初のMTB専用コンポ、ディオーレXT(以下XT)の発売から25周年ということで、初代が発売された当時のMTBも展示されていました。



実に懐かしいですねぇ。チェーンリングなんてパイオペースですよ。え? バイオペースなんて知らない? ま、アレはシマノにとってAXデュラ同様に負の遺産みたいなものになってしまいましたからねぇ。シマノは幾たびもエポックメイキングで業界を牽引してきましたが、時々それが空回りに終わることもあるということなんですね。

でも、最近はTT用機材としてオーバルチェーンリングを見直す動きも いろ いろ ありますので、着想自体は間違っていなかったのだと思います。ま、ここで深入りしてしまうと話が進まなくなるで割愛させて頂きますが、興味のある方は「バイオーペース」で検索するとそれなりの情報がヒットすると思います。





ということで、25周年を迎えてリリースされた新型XTです。昨年のXTRに続いてフルモデルチェンジされたXTは、リヤディレイラーに「シャドー」と称する横方向への張り出しが抑えられた構造が採用され、昨年のXTRからさらに進歩しています。



張り出し量を12mm抑えることでどれだけ障害物との接触を避けられるようになり、どれだけトラブル回避に役立つのか、といった疑問もあります。が、リヤディレイラーなど基本的なメカニズムはやり尽くされている感じのパーツでは、現実的にこういう細かいところで差別化するしかないのでしょう。

なお、このシャドーディレイラーはXTRにも追加されました。個人的には1年ほどで発売できるなら、XTRのフルモデルチェンジに間に合わせておけば良かったのでは? と思います。ビジネス的に後出ししたほうが儲かると判断したからなのか、新しいメカニズムは小出しにしたほうがメディアなどへのネタ供給という意味でも都合が良いからなのか、勝手な憶測は尽きませんが、正直なところあまり感心しないやり方ではあります。

チェーンリングはミドルがカーボン/スチールのハイブリッドとなり、カーボン/チタンのXTRほどではないにせよ、軽量化を意識したものになりました。残念だったのは左クランクの構造がXTR方式(という呼び方は正式ではありませんが、シマノ自身も「左クランクアームはXTRと同様の取り付け方式」といった表現を使っていますので、以下も「XTR方式」と称します)が採用されなかったことですね。

元々、ホローテックIIのクランク軸一体という考え方は、アヘッドステムに構造的な規範を得ているのがありありと解るもので、左クランクの取付方法はアヘッドステムのトップキャップに相当するキャップを締めてベアリングの当たりをつけ、左クランクのクランプボルトで固定するという方式もアヘッドステムに倣ったものでした。

これが昨年リリースされたXTRは取付方法がかなり変わりました。クランク軸にはかつてのオクタリンクに似た深めのセレーションが加工されており、ここに左クランクをかましてオクタリンクのときと同様に取付ボルト(下図の赤で示した部品)で固定します。



クリアランスの調整はクランクアーム内側にあるアジャストナット(上図の青で示した部品)を専用工具で締めて調整し、M3×9mmのボルトでこのアジャストナットを固定するいう方式になっていたんですね。(昨年のレポートで言及しなかったのはこうした仕様変更に私が気付いていなかったからです。)

従来のホローテックIIでは左クランクのクランプボルトを12〜15N-mの指定トルクで締め付ける必要があります。しかも、ネジ山はアルミに直接加工され、サイズのわりにかなり高めのトルク設定ですから、トルクレンチを使用しないとトラブルの元になります。もちろん、XTR方式にも指定トルクはありますが、取付ボルトはサイズ的にかなり余裕がありますから、従来のクランプボルト方式ほどナーバスではないでしょう。

こうしたXTR方式のほうが合理的な構造だと思います。殊にMTBはダートを走って泥や埃にまみれますから、頻繁にクリーニングしなければなりません。そういう意味でもXTR方式の方が好ましいでしょう。また、個人的な趣味の問題ではありますが、見た目もスッキリしていて良いと感じます。これが採用されなかったのは非常に残念ですね。



■ ULTEGRA SL




アルテグラSLはデュラエースとアルテグラの中間を埋めるような位置づけで追加された新グレードと理解して良いようです。そもそも、プロ供給モデルでもあるデュラとその下位のアルテとの間には1.5〜2倍くらいの価格差がありました。構造的な差や使用感の差は大したものではありませんが、素材面でも仕上げレベルでも相応の差がありました。実用上は重量に関する部分がデュラと大きな差として感じられると思います。また、アルテと105との価格差は1.2〜1.5倍程度、重量差はデュラとの差を考えると僅かですから、従来のアルテグラ(これは今後「アルテグラ6600」と呼ばれるようです)の位置づけはやや微妙では? といった印象もありました。

今般追加されたアルテグラSLでは従来のアルテグラ6600に対してフルコンポで100g程度の重量軽減となり、コンパクトクランクが設定され、ヌードカーボンとのカラーコーディネイトに良さそうな「アイスグレイ」というカラーがトピックになっています。が、逆にそれ以外に目新しいものはないようです。XTR方式の左クランク取付方法も採用されませんでしたし。

それにしても、シマノのセカンドグレードも贅沢なコンポになったものです。思えば、私が中学生のとき初めて買った安価な入門用ロードレーサーにアッセンブルされていたのはアルテグラの祖先である600EXでした。当時はレース向けロード用/トラック用のグループコンポーネンツだったデュラと、ホビー向けロード用/ツーリング用のグループコンポーネンツだった600の2つしかラインナップされていませんでした。

600EXはカンパもどきのアラベスクパターンが刻まれていたこともあり、「唐草模様」とも呼ばれました。いまのラインナップでいえばティアグラか、贔屓目に見ても105に届くかどうかといったクォリティだったように思います。アルテグラSLは当時のデュラと比べても数段上の贅沢なコンポに仕上がっているというのが個人的な印象ですね。



■ FC-7800C




ツールでもテストされ、「ユーロバイク2007」でも一般公開されていたデュラエースのカーボンクランクです。参考出品で発売時期は2008年春、価格は未定となっています。

シマノは「メタルとカーボンのラミネート構造」と公表しているため、従来のような中空アルミのアームの上にカーボンを積層させたように勘違いしそうですが、パテントの関係でこうした構造には出来ません(もちろん、ライセンスを取得すればその限りではありませんが)。カンパがクランク軸一体のウルトラトルククランクでシマノのパテントに抵触しないようクランク軸を分割式にしたように、シマノも構造をアレンジしています。



ご覧のように、スパイダーアーム基部とペダル取付部は中空アルミになってますが、クランクアームそのものは6割方カーボンのみの中空構造になっています。つまり、キセルのように両端部だけ中空アルミが仕込まれているといった感じですね。

左クランクの取付方法はXTR方式が採用されています。新型XTやアルテSLで採用されなかったのは最高級モデル専用として差別化するといったビジネス上の理由があるからなのでしょうか?

いずれにしても、現行のアルミ製に対して10%の剛性アップとなっているそうですが、目標重量は709gと現行のアルミ製に対して4.4%減、たったの31gしか軽くなっていません。ボトルに詰めるドリンクを1口分ほど減らせばこれくらいの重量差はすぐに吸収できてしまうわけですから、個人的にはちょっと食指が動きませんね。

といいますか、そもそも「デュラエース」のクランクがカーボンとなったこと自体に猛烈な違和感があります。

「デュラエース」の「デュラ」はアルミ合金である「ジュラルミン」に由来します。「デュラエース」の名は、このジュラルミンを用いた最高級クランクに与えられたのが最初だったんですね。発売当初の約1年はもろに「ジュラエース」と称していましたし。個々のパーツに用いられていた各々の名称が消え、コンポーネンツとして統合されて「デュラエース」はグループ名となりました。

つまり、「デュラエース」の原点はまさに「アルミ合金クランク」そのものだったのです。これをカーボン化するということは、「デュラエース」の名が形骸化への道を本格的に歩み出してしまったということになるでしょう(ペンタプリズムを持たないペンタックスと同様ですね)。「デュラ」は「durability(耐久性)」という意味も併せ持つということになっていますが、ありがちな後出しの由来付けでしかないのは明白です。

他社は従来の構造のままカーボンを用いることでクランクの軽量化を進めた中にあって、シマノは根本的な構造を見直すことでホローテックIIへと進化させ、アルミ合金のまま大幅な軽量化と剛性アップを実現しました。これは「デュラエース」という名に対するこだわりから「アルミで何とかしてやろう」という技術陣の意地があり、こうした縛りが技術陣に創意工夫を求め、故に生まれた技術革新だったのでは? などと私は勝手な想像を巡らせていました。それだけに原点であるクランクのカーボン化には非常に複雑な想いがあります。

デュラエースのモデルナンバーは2003年のフルモデルチェンジで7800番台となり、もうすぐ5年が経過します。次のモデルチェンジ時期もそう遠くはないと思いますが、7900番台を使ったらその次はナンバリングのやり方を見直す必要があるでしょう(単純に8000番台へ行くのかも知れませんが)。ならば、既にカーボンやチタンといった素材を次々に導入しているこの期に及んで「デュラ」を名乗るより、いっそのこと新たなグループ名を与え、「デュラエース」の名は伝説にしてしまったほうがむしろ潔いような気もします。

あるいは、アルミの最高級モデルとしてデュラエースも(例えば細身のクロモリフレームにも似合うオールドテイストな高級コンポとして)存続させ、最新マテリアルをふんだんに用いた縛りのない最高性能レーシングコンポには別のグループ名を与えるほうが望ましい在り方ではないかと個人的には思います。こうしたマーケットを構築し、ビジネスとして展開するのは極めて難しいことでしょう。が、アルテを2グレードに分けてラインナップさせるよりは遥かに意味のあることのように思うんですけどねぇ。



■ Complete Wheels




ホイールは上の写真のMTB用、下の写真のロード用とも、主に上位モデルが大幅に刷新されました。



昨年発表されたロード用チューブレスのように技術的なトピックは特にありませんが、リリースされたバリエーションの多さはなかなか圧巻です。





チューブラー用50mmカーボンディープリムのWH-7850-C50-TUです。当初の発売予定は今年9月初旬だったのですが、その9月初旬になってみると12月中旬へ変更となり、サイクルモード開催期間中も公式には12月中旬出荷となっていました。ところが、ファーストロットはとっくに出回っていたんですね。予約販売で入金済みのカスタマーもいたわけで(私もその一人でしたが)、3ヶ月以上もお預けを食わせるのは良くないと悟ったのか、真相は解りませんが、8月に予約を入れていた私のところへは10月5日に届きました。

最も変わった点はハブニップルをやめたことでしょう。シマノサイドは「ハブニップルではリム側にワッシャーを用いており、それが不要となったことで外周重量はさほど重くなっていない」といった主旨の説明をしています。

しかしながら、そうした説明ではハブニップルを売り込んだときのあの宣伝文句は何だったんだ? ということになりますから、苦しい言い訳に聞こえます。ま、情報誌のインプレ記事などもそうですが、「新モデルが出ると旧モデルの本音も出る」というのは世の常なんでしょう。個人的にはあのクソ扱いにくい(ある程度は慣れの問題かもしれませんが)ハブニップルより、こちらのほうがメンテナンス性が遥かに良いので大歓迎ですが。

さらに、7800系ではフリーボディがアルミ製で10s専用でしたが、この7850系は7700系のときと同じチタン製に戻り、例の1mm厚のワッシャーをかませて10sにも対応できる8/9s互換に戻りました。逆にいえば、10s専用のアレも何だったんだ? ということになります。

こうしてみると、シマノのホイールはハブニップルや10s専用フリーボディをやめ、オマケに7850系の発売時期が右往左往するドタバタが重なるなど、何だか落ち着きがなく、印象が良くありませんでしたね。

なお、私が購入したWH-7850-C50-TUについてインプレッションなど詳しく書こうか迷いましたが、ここまででかなりのボリュームになってしまいましたので、またの機会に譲りたいと思います。



その9・パーツ-用品編 1/2へ続く)


(C)石墨
2007年12月23日(日) 00:29:41 Modified by ishi_zumi

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