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【定義】

道元禅師に仮託された文献で、貞応2年(1653)に開版され、世に広まった。「業識図」と題されるが、人がただの人から徐々に仏道へと進んでいく様子を10の段階で示し、その一々の末尾に頌と図を提示したもの。江戸時代の学僧面山瑞方禅師の段階で既に偽撰と判断されているが、『曹洞宗全書』「宗源(下)」巻に収録されている。

【内容】

『永平和尚業識図』の全10節は、以下の通りである(原漢文)。

・儒教に依りて孝悌を行ずる篇 第一
・道教に依りて情欲を離るる篇 第二
・二乗に依りて生死を離るる篇 第三
・十地に依りて仏教に入るる篇 第四
・正覚に依りて魔境を出づる篇 第五
・成仏に依りて法界を定むる篇 第六
・遺教に依りて仏乗を論ずる篇 第七
・般若に依りて仏性を顕はす篇 第八
・教内に依りて禅法を示す篇 第九
・教外に依りて宗門を立する篇 第十

なお、世俗の二教から徐々に仏教に入り、その中でも徐々に二乗から大乗へ、教宗から禅宗へ、という流れを組み合わせて人が修行で成長していく様子を示し、最終的には宗門の宗旨を顕した。その意味では弘法大師空海『秘密曼荼羅十住心論』『秘蔵宝鑰』や、鈴木正三麓草分』などに類似した内容だと判断出来る。

【批判】

江戸時代の学僧面山瑞方禅師は、本書について偽撰だと批判している。
永平業識図〈已下四條弁偽〉 世に永平業識図と題号せる平仮字の書、二冊あり、これは暦応改元開炉前一日、丹山隠子毒海叟宗性と云僧の所述なり。参州龍渓院室内に、明暦年中の写本あり。末に作者の名及年号を載たり。古来右の本、祖師正法眼蔵と、一篋に納たり。龍渓の本も爾り。今印版の本に、作者の名字等、疎脱せるゆへに誰の作としれず、正法眼蔵と一篋にありしゆへに、祖師の作かと思ひ悞て、無知の者、題号の上に永平の二字を加へしなるべし。一部の始末を読校するに、邪悟の禅僧の少少台家の判釈を知りたる分の述作なり。祖師の法語と天地懸隔、比擬の論に及ぶ品にはあらず。一睡して放擲すべし。 『訂補建撕記図会?』巻下「附録」

以上の通り、面山禅師は三河龍渓院(現在の愛知県岡崎市内に所在)に輪住で赴いた際に、同院内で本書の写本を見出し、その巻末から本来の著者などを示している。暦応改元開炉前一日とあるため、1338年9月末日に書かれたものと推定される。

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