コラム
リーマンショックを契機とした未曽有の金融不況で、金融市場は直接的な打撃を受け、収益の減少にリストラや事業閉鎖等、財務状況の急速な悪化に陥る金融会社も少なくありません。昨年当たりから、財務体質の弱い中小の業者は、事実上過払い金の返還ができなくなり倒産する業者もでてきました。商工ローン最大手のSFCG、ナンバー2のロプロも昨年あいついで、破綻しました。原因は過払い金の発生も大きな要因でした。
消費者金融大手4社(アコム・プロミス・武富士・アイフル)の2007年から昨年8月までの過払い金の返還総額は1兆円を超えており、過払い金返還請求により貸金業者の財務状況は更に悪化しています。
過払い金の返還請求権は、ある一定の期間が経過すると「時効消滅」といって、権利の行使ができなくなります。つまり、返還請求することができなくなります。
具体的には、最終取引日より10年経過してしまうと、返還請求ができなくなります。
しかし、金融業界の現状では、時効で権利が失くなる前に、貸金業者が無くなってしまい、若くは事実上過払い金の返還ができなくなることのほうが早いかもしれません。
私が、過去債務整理業務で扱った事例で、過払い金に関して明暗をわけた2つの事例があります。
1、 Aさんは金融会社から資金を借りていましたが、平成11年全額返済しました。司法書士事務所のホームページを見て、過払い金のことを知り司法書士事務所を訪ねてきました。Aさん「もう、10年くらい前に完済したんだけど、過払い金の返還てできるんですか?」「完済して取引終了時から10年経ってしまうと、「消滅時効」といって返還請求できる権利がなくなってしまうので、早く請求した方がよさそうですね。いつごろ完済したか覚えていますか?」Aさん「実は、正確に覚えてなくて・・・多分10年前くらいだと思ったんだが・・」早速、取引履歴を取り寄せたところ、時効消滅の時期は21年3月末でした。訴訟も含めた債権者との交渉後、Aさんにはほぼ全額の過払い金が返ってくることになりました。
2、 Bさんも資金を借りていましたが、平成11年に完済しました。
Bさんは、過払い金のことを知りましたが、「そのうち、請求しよう」と思いつつ、なかなか相談にいくことができませんでした。ある日、友人のCさんから「過払い金には時効がある。早めに請求した方がいいよ」といわれて、「そういえば、完済してから10年近くなるな。」と考え、司法書士に相談にきました。Bさんの請求権は、時効期間満了までには、まだ少しあり問題はなかったのです。
ところが・・過払い金の返還請求先である「SFCG」は既に東京地裁が破産手続きの決定を下したときだったのです。
結局、Bさんには、過払い金の全額の数%しか戻ってこない見通しになりました。
(破産手続きになると、債権の一部しか払われません)Bさんは、過払いの時効を知り、急いで相談にきました。そして、時効期間満了にも間に合ったのです。
しかし、過払い請求先である貸金業者が倒産していて、戻ってくるべき金額が戻ってきませんでした。Bさんと同じ条件だったAさんは、たまたま早く相談したため過払い金のほぼ全額を返還させることができたのです。僕は、AさんとBさんの明暗を分けたのは、運だろうか・・と当時つくづく考えたものです。とにかく、今の時代何がおこるかわからないということもあり、金融業界も未曽有の大不況です。現在、過払いが払えずに倒産していく中小の貸金業者も出てきています。
時効で権利が消滅する前に、消滅する貸金業者がでてきてもおかしくないのが現状です。
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