『月天心』

305 『月天心』sage 2009/02/07(土) 00:02:45 ID:gy4B4XoR
前に漫画で男が女に口紅塗ってやるシーンを見た事あるけど、下手なキスシーンよりエロっぽかった。
前スレで  >331 ふと カナちゃんと夜若様が何度も逢瀬を重ねる中で
      夜若様にあの手この手の変態プレイを強要され、カナちゃんもカナちゃんで夜若への想いから断りきれず
      次第に順応していくという鬼畜純愛モノを夢想した……夢想、したんだ……

という書き込みを見ましたが、なんか今頃になってさわりだけ考えつきました。ぬるめ表現ですが、良かったらどうぞ。

『月天心』

「ふう」
お父さんが商店街の集まりとかで忘れ物をしたのを届け、帰り道。
近所とはいえ、夜に出歩くのは危険だって知っている。でも、今夜は急いで帰るのがちょっと惜しいと思えるほどの。
「きれいなお月さまー…」
夜空にはまん丸の満月。月のまわりに細い雲がたなびいているのがうっすら見えて、とても綺麗。
こんな綺麗な月を見ていると、ふと「あの人」のことが浮かんでしまう。いや、人じゃないんだけどね。
「本当になあ。いい月夜だ」
ふいに聞こえた声に気を奪われた。
今まさに思い出していた人の声がした気がしたけれど、辺りに人影はない。幻聴だろうか?
「こっちだよ」
笑いを含んだ声に頭上を見上げると、逆さになった綺麗な顔が間近に浮かんでいた。
そのままふわりと一回転して着地した姿も、幻のように綺麗で、ぼうっとしてしまう。
「いけねえなあ。こんな夜中に出歩いてるなんて、タチの良くないのに引っ掛かっても知らないぜ?」
見とれていたことに気づいてはっとした。
「別に…、ここ家の近所だもん」
「知ってる」

幼い頃から何度も訪れている。お互い大きくなってからは足が遠のいていたが、今夜に限ってなぜか足が向いてしまったのはただの気まぐれ。
それとも虫の知らせだろうか。今夜であれば彼女に会えると。

「あなたこそ、どうしてここに?」
「さあなあ。オレが出歩いてちゃいけないかい?」
「い、いえそんなことは…、ありませんが…」
いきなりこんなふうに会ってしまうと、どうしていいかわからない。今までも、なんでかいきなりやってくる人だったし。やっぱり、よくわかんない人。
どきどきしてるこっちの気も知らず、この人は空を見上げている。
「まあ、こんな夜なら月に魅入られるのも無理はないか」
オレも同じクチだしな、という言葉にああと思った。そっか、この人もなのか。
「これも縁かもな。なんなら一緒に月見と洒落込むかい?」
誘いをかけられているのだとわかって首を縦に振った。もっと一緒にいたい。近くで見ていたい。
「そうか。ならしっかりつかまってな」
いつかのように抱きあげられて、そのままふわりと浮かび上がった。
「う、わーー…!」
浮遊感に目を見張れば、トン、と軽い音がして屋根の上に着地した。
「近場だけどここでいいか。帰るにも早いしな」
なんか気を遣われてしまってる。でも、遮るもののない夜空に浮かぶ月は本当にきれいで、他になにもいらないかも。
「座りなよ」
言って自分の羽織っていた上着を下に敷いてくれた。…まさか、その上に座るの?
ほら、と促されてそおっと座った。わーどうしよう。
あの人も側に座っている。そのまま何も言わずに二人並んで月を見上げていたけれど。
ふいにごそごそとあの人が懐に手を入れて何か取り出した。って、それ…。
「ああ、なんだ?飲むかい?」
「お、お酒ーー!?」
取り出したるは徳利と漆塗りっぽい盃。…どうやって入れてたのこの人!?
未成年だという気持ちはあったけど、この人に誘われては嫌なんて言いたくない。それに、…お酒ってものにも興味がある。
こっくり頷くと、「じゃあ」といってもう一つ盃を取り出した。…やっぱり、どうやって持ってきたのかとか、聞かない方がいいのかな?
注いでもらったお酒にそっと口をつける。うっ…、辛っ。
「はは、そいつは辛口なんだ。初めてじゃちょっと呑みづらいかもな」
なんとなく思ってたけど、この人、実は結構意地悪なんじゃ…?
じとりと横にいる人を見上げる。月光に照らされて、盃を口に運ぶ仕草も綺麗で、悔しいけれど見惚れずにはいられない。
あ、でも。


「…おつまみ」
「ん?」
「あの、お腹すいてるときにお酒飲むと良くないっていうから、おつまみ、持ってきますね」
「別にいいが、カナちゃん?」
屋根から梯子を伝って下りて家の中に入る。台所や下の店を探しておつまみになりそうなものを見つくろって引き返した。
早く戻らないと、あの人がいなくなっちゃってたらどうしよう。

「あ、あのー…、おいしいですか?」
自分で勧めといてなんなんだけど、早くも後悔していた。
何の躊躇いもなく柿ピーなんかをぽりぽり食べる夜の主。…本人はまったく気にしていない様子だけど、すっっごい違和感。
おつまみと考えてそんなのしか思いつかなかったさっきの自分を思い出して自己嫌悪中。うう、家にはこんなのしかなかったのよ…!
「ごめんなさい、そんなおつまみしかなくて…」
これからはもっといいもの揃えよう、と思ってしょんぼりしていると「別に?いけるぜこれ」とのこと。あー、でも優しい人だなあ。
「自分で持ってきたんだ。カナちゃんも食べりゃいのに」
言われてそっと柿ピーを差し出される。手で受け取ろうとすると、そっと口元に向けられた。え…?このまま食べるの!?
おずおずと口を開くとそっと柿ピーを差し込まれる。口を閉じようとすると指がより深くまで差し込まれ、軽く噛んでしまった。
「っっ!!!」
「痛いよ。カナちゃん」
言葉とは裏腹に表情は笑っている。指は口に差し入れられたまま、ゆっくりと歯をなぞり、舌を辿っている。
どくんどくんどくんどくん…
心臓が早鐘を打つ。いきなりこんなことをされると、どうしたらいいかわからない。
「カナちゃんにもお返ししてやろうか?ホラ」
断るなんて考えも浮かばず。言われるがまま、うっすらと開けられた口にそっと指を差し入れた。
こんなにも綺麗な人にそんなことをするなんて、ものすごくイケナイことだと思う。でも、止まらない。
ぬる、という生暖かい感触。人ではないはずなのに、温もりを感じる。
「つっ!」
指を噛まれた。実際はそんなに痛かったわけじゃないけど、歯が当てられている箇所がびりびりと痺れる。
「あ、う…っ、ぁ…」
差し込んだ指があの人の舌に絡め込まれ、ざらりとした感触が徐々に指先から手のひらまで伝えられていく。
私の口に差し込まれたあの人の指も緩やかにうごめき、2本、3本と数を増やして差し入れられる。
わななく口の端からつう、と雫が垂れた。その垂れる感触がとてもはしたなく思えてぬぐいたい。
「ぬぐってやろうか?」
不意にあの人がこちらの気持ちを見透かしたように問いかけてくる。
問いかけに合わせて口が動くたび、あの人の口に入れたままの指に感触が伝わる。
こんな体験は、今まで他の誰ともしたことがない。
「え…?」
もう一方の手が顎に当てられて、ついと雫をぬぐった。どうしようぬぐわせてしまったと焦りを感じていると、指を自分の口元に運び、
「あっ!!」
私の指ごと舌を這わせ、雫を舐めとってしまった。うそ、嘘。どうしよう。
そのまま私の指に手を添え、更に口の奥まで誘われる。ぢゅう、という音がして指が吸われた。
「っっ!!!!」
ぱくぱくと声にならない衝撃に口が意味もなく開閉する。完全には閉められない口からふたたび糸を引いて雫が垂れる。
「やれやれ。また、ぬぐってやろうか?」
首を振る。指を入れられたままなので、あまり激しくは動かせない。それに頭を動かすと指が歯に当たって、それだけで目の前がくらくらする。
顔にさっきより深い笑みを浮かべたこの人に「じゃ、こんどは自分でぬぐってみる?」と問われて、考える間もなく頷いていた。




「ふ、ぅん…。ちゅう、ぁ、ちゅるっ…」
左手で自分の顎をぬぐって口元に運び、舐める。
普段であれば自分の指を舐めるくらい気にしないけど、この人に見られていると思うだけで背筋がゾクゾクする。
更に、自分の唾液に濡れたこの人の指に、そっと舌を這わせた。
かああ、と顔が赤くなるのが自分でわかる。なんてことしてるんだろう。
私の指よりも硬くて、長い指。でも意外と細くて、爪の形も綺麗。その指先から少しずつ、自分の唾液を啜りとっていく。
最後にこの人の手のひらに辿りついたとき、ふとこの人の顔が見たくなって眼を上げた。
一見したところ、表情は何も変わっていないように見える。
「あの、…変じゃないですか?」
「いや?可愛いぜ」
平然たるもの。何だか悔しくなって、手のひらの真ん中に辿り着いたとき、ちゅうっと音を立てて思い切り吸い上げた。
「っ!?」
流石に驚いてくれたらしい。初めて声を上げて動いた表情に、思わず嬉しくなってしまった。
「…やってくれたな」
…どうも調子に乗りすぎてしまったかも知れない。表情は元に戻ったものの、目の色がちょっと真剣みを増したように思えるのはきっと気のせいじゃない。

ゆっくりと顔がこちらに近づけられていく。どうしよう、と思ったとたん、ふとこみ上げる感覚に気づいて慌てて顔をそらした。
「くしゅん!」
なんでこーゆー時に限ってくしゃみなんかするの。ああ、私の馬鹿。ムード台無し。
またも自己嫌悪に陥る中、あの人も苦笑いを浮かべて「そういやだいぶ冷えてるな」と言った。そういえばこの人、ずっと上着を脱いでいて着物1枚なんだっけ。
むしろこの人のが寒かったんじゃないだろうか。そう思って腕に触ってみる。…やっぱり、すごく冷たい。
「帰ろうか」
この問いかけにも素直に頷いた。でもこの時間は名残惜しくて、つい顔を見上げた。
「あ」
月はそろそろ西に傾いている。
もう少しだけ、二人で月を眺めていた。






「夢じゃ、なかったんだよね」
夢だ、と言われればそうと思えるほど現実感のない夜だった。
こうして自分の部屋でいつも通り起きてみると改めて思う。そろそろ学校に行く支度をしなければいけない時間だ。
自分の手を、昨夜他者の温かい粘膜に包まれたはずの指先を見つめる。
いつもとなんら変わりのない指。本当にこれが人の口の中に入っていたのだろうか。

そっと、指先を口に含んだ。
とたん覚えのある温もりと感触を感じ、ああ、やっぱり昨夜のことは夢じゃなかったんだと再確認した。
「ん…」
胸を焦がす、この衝動の行き先はまだ知らない。


【後書き】

「やって見せ 言って聞かせて させてみて 褒めてやらねば 人は動かじ」
山本五十六の言葉です。せっかくの名言になんつー文章妄想したのやら。
                                             (変態紳士&淑女に堕っこちていきゃ)
これからこの二人は徐々にエスカレートする模様。…や、なんとなく同い年なんだし、二人して 大 人 の 階 段 登 っ て き ゃ いいんじゃないかと。
……書いててつくづく思ったこと、指ちゅぱって変態行為になるんだろうか?

柿ピーネタは赤丸から。ゆら、立派に性少年だったのな。



2009年02月21日(土) 03:46:06 Modified by ID:GxVBfDnx8g




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