奴良若菜の密やかな楽しみ

「納豆ちゃん、ちょっとちょっと」
「はい?」
廊下をちょこちょこと歩いていた納豆小僧は、呼び止める声に振り向いた。
見ると、若菜が自室から手招きしていた。納豆小僧はやれやれとため息をつく。
「またですか、若菜様」
「いいじゃなーい、お風呂くらいつきあってよ」
「はいはい、わかりましたよ」
屈託の無い笑顔だが、言い出したら頑として後に引かない彼女の性格はよく知っている。
納豆小僧は観念し、鼻歌混じりに風呂場に向かう若菜の後を追った。

奴良家の家族や、奴良組の幹部クラス専用の浴室は、古風な檜造りであった。
湯船も床板も高級な檜材でできており、さわやかな木の香りが鼻腔をくすぐる。
その浴室に、早々に着物を脱ぎ捨て、手ぬぐい一枚だけ携えた若菜が入ってきた。
手桶に湯を汲んで床板に流す。自分の体にも二度三度と湯をかけた。
その肌はまるで十代の娘のようにつやつやと輝き、湯をはじく。
形の良い乳房も、ひきしまった腰周りも、張りのある尻も、どこを見ても
とても三十路とは思えない。中学生の息子がいるなどとは誰も信じないだろう。

体を軽く清めた若菜は檜の床に横たわった。脱衣所に控えていた納豆小僧に声をかける。
「さあ納豆ちゃん、来てちょうだい」
「はいはい、失礼いたします」
浴室に入った納豆小僧の目に、足を大きく広げた若菜の姿が飛び込んできた。
黒々と生えた股間の艶やかな茂みの中に、ピンク色の花弁がぱっくりと口を開けている。
納豆小僧は人間の裸など見ても別に何とも思わないが、人間や人間に近い妖怪なら
きっとこれを見て興奮するんだろうな、などと人ごとのように考えた。
まあ、そんな自分だからこの『お役目』に選ばれたのかもしれないが……。

「それじゃ行きますよ」
納豆小僧は小走りに走りながら、一つ目と胴体・手足を引っ込めた。
その姿は普通の納豆が入っているものと何ら変わらない、一本の藁苞(わらづと)になる。
そして藁苞は若菜の右手に飛び込んだ。
若菜は顔を上気させ、握った藁苞を自分の秘部にゆっくりと差し込んでいく。
藁の先端が若菜の膣の中を刺激した。
「はううっ……チクチクして……気持ちいいっ……!」
そして彼女は藁苞を自分の中に出し入れし始める。藁が彼女の愛液に濡れて湿ってくる。

「はっ!……はっ!……はぁぁっ……!」
若菜の息遣いが荒くなってきた。藁苞の動きに合わせて腰をくねらせ、
左手は自らの乳房を愛撫する。全身が汗ばんできた。
「はっ!……はああっ!んっ!」
そして彼女は藁苞をぎゅっと握った。中身の納豆が飛び出し、彼女の膣内に溢れた。
そのねばねばする感触と納豆独特の発酵臭で、若菜はますます興奮した。
「ああっ、臭いっ…!ネバネバいってるっ!私の中で…納豆が暴れてるぅ!」
彼女が勢いよく藁苞を出し入れする度に、納豆がその秘部から泡を立てて溢れ出てきた。
檜の床板は納豆まみれになるが、若菜は狂ったように腰を振り悶え続ける。

「お、お願いっ!もう一本、もう一本ちょうだいっ!」
「はいな」
若菜の要望に応え、納豆小僧は空中に新たな藁苞を出現させた。
彼女はそれをひっつかむと片足を持ち上げ、自分の菊門にずぶりと差し込んだ。
そして藁苞をぎゅっと握り締める。肛門の中に納豆がぶちまけられた。
「はぁぁんっ!おっ、おしりっ!お尻の穴までっ!……納豆が溢れてる!
 グチャグチャいってる! 納豆にお尻の穴、犯されてるうぅぅ!!」
卑猥な言葉を自分自身に浴びせつつ、納豆まみれの床板の上で全身ドロドロになりながら、
若菜はひたすらに快楽を求め、前の穴と後ろの穴を責め立てながらのた打ち回った。

しかしこれこそが若菜の真の姿であった。若くしてリクオを儲けたものの
夫の鯉伴に先立たれ、二代目未亡人として気丈に振舞い続けてきたが、
時々どうしようもなく体が疼くことがある。
しかし木魚達磨や牛鬼などの組幹部は、鯉伴に対する忠義から彼女に指一本触れようとしない。
かといって人間の男と浮気しようものなら、たちまち組の連中に抹殺されてしまうだろう。
行き着くところは自慰しかなかった。それもとびきり変態な自慰行為によってのみ、
彼女の激しい肉欲の炎は鎮められないのであった。

「あああっ!お腹の中、納豆で一杯! あっ、あっ! 納豆で、納豆でイクうううううっ!!」

狂乱の時間が終わった。納豆小僧は元の姿に戻る。納豆を相当放出した為、体が縮んでいる。
若菜は、納豆が溢れかえる床板の上で寝そべったまま、荒い息をついていた。
だが全身ネバネバの、見るに堪えない凄まじい裸身になっているにも関わらず、
その口元には満足そうな笑みが浮かんでいた。

「はあっ……はあっ……ああ、気持ちよかった。ありがとうね、納豆ちゃん。
 お礼にいつも通り、最高級の大豆注文しておいたから、またいい納豆熟成させてね」
「そりゃどうも……っていうか若菜様、そろそろやめといたほうがよくありませんか?
 リクオ様が『母さんが入ったあとのお風呂って、何か納豆臭いなあ』って言ってたし…
 こんなことバレたら、若菜様よりオイラがたたじゃ済まないんですけど」
「だーいじょうぶ大丈夫、私が無理やりあなたを脅してつき合わせたことにしとくから。
 それにねえ、こんないい女をほっといてあの世にいっちゃった鯉伴さんも悪いし、
 遠慮して手を出さないみんなも悪いのよ。私だって、まだ現役の女なんですからね。
 あ、そーだ! リクオも巻き込めばなし崩しに……」
「えええええ!? そ、そんな無茶な!」
「うふっ、冗談よ、冗談」

無邪気な笑顔に、納豆小僧はほっと胸を撫で下ろした。
(でもこの人なら、本当にやりかねないよな……)
奴良組二代目・奴良鯉伴が、なぜこの人間の女に翻弄され、なぜ夫婦になったのか。
そして鯉伴亡き後も、なぜ奴良組の面々に愛されているのか。
なんとなくわかったような気がした納豆小僧であった。

(了)
2012年10月14日(日) 13:50:49 Modified by ID:99wFBwRdlQ




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