花開院兄妹〜宵闇桜if〜

904 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】:2012/03/24(土) 17:17:57.05 ID:+EF5TZPv
注意:
性格改変・捏造設定の多い竜二×ゆら
花開院兄妹・義兄妹前提で分岐ありのif
IF《もし羽衣狐の呪いが継続していたら》で、がっつり死にネタ鬱展開。
続編とはっきり書いたら、以後花開院兄妹物が 一切書けなくなるので、分岐ありのifに逃げる。

恐山行きの最中に書いたので時期や設定がズレている。
エロ少なめ。少女マンガ展開で一時期没にしたが、 桜前線も近いし、もったいなくなったので投下。

分岐a《バッド回避小ネタ
分岐b《メインはこちら



905 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:19:53.48 ID:+EF5TZPv

◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ 


花開院本家の庭にも、桜が咲きはじめていた。
昔、「弾けたポップコーンに似てるなぁ」と言ったら、竜二兄ちゃんに食い意地がはってるとバカにされた。
花開院本家の庭には、何本か桜の樹がある。
去年は羽衣狐との壮絶な戦いがあった。
お爺ちゃんも亡くなり、分家の陰陽師のおじさんたちもたくさん亡くなった。
そんな悲しいコトが沢山あっても、四季は巡って、花は毎年咲くんやなァ。
そんなコトを、うちはのんきに考えてた。


久しぶりに花開院本家に戻ってきた竜二兄ちゃんは、なんか、とても疲れているようだった。
確かに最近の竜二兄ちゃんは、忙しかった。
東京でも、秋房義兄ちゃんのいる恐山でも、奴良くんにからんだ事件が立て続けで大変だったらしい。
当主代行をしていたうち――その実は13代目の秀元と雅次兄ちゃんら補佐役に任せっ放し――とは違って。


906 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:20:24.29 ID:+EF5TZPv

「――ここはもう桜が咲いてるのか…」

庭の桜の樹を目にして竜二兄ちゃんが少し、固まった気がした。
少し長く北に居すぎたか…と、一人愚痴る。

「なに? お兄ちゃん、そんなところでボーッとして?」
「――なんでもない」

なんや、イヤな予感がした。
その夜。
夕飯が終わった後。
案の定、竜二兄ちゃんに捕まり、部屋にくるように言われた。

「――ゆら」
「…なに?」

ビクビクしてるうちに竜二兄ちゃんは、当然のよーに言った。

「ヤるぞ」
「!? 竜二兄ちゃん!? 疲れてるんやないんか?!」
「疲れてるからヤるんだよ。房中術の名前を、耳にした事もないのか、お前は?」
「――房中術ッ…!」
「ほほう。知ってるようだな。手間が省けて助かる」

太一。陰陽和合。呼び名は他にもある。
古来より伝わる由緒正しい医学術…らしい。
不老長寿の術とも言われたりするが、基本的にごく親しい間柄で性交し
互いの気を活性化させたり、譲り受けたり、譲り渡したりする事ができる。

「疲れてるお兄ちゃんに、お前の、その無駄にありあまる精神力を寄越せ」
「…イヤや」
「……疾(チ)ッ!」


907 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:20:56.92 ID:+EF5TZPv
踵を返して逃げようとした足が、急に萎えた。

「――ッ!?」

畳の上に崩れ落ち、這いつくばる。
下半身に――物凄い違和感と刺激を感じた。
うちの体内のあらゆる体液が振動し、或いは渦を巻いて、うちを責めたてた。

「――ひ、やッ…コレ…はッ…ああァッ…?!」

竜二兄ちゃんの言葉と所作と共に暴れ出した、ソレ。
うちの体の中に仕込まれた竜二兄ちゃんの水の式神“言言”。
それはうちの体内の体液を自在に操る。そう、あらゆる体液を。
苦しみを与えるだけではなく、性的興奮を煽ることだってできる。
耐えきれない程の性的な刺激。快感。官能が波のようにうちに襲いかかる。

「――あ!あ!あ!あぅ…ッ?!」

端的に言えば、うちは――竜二兄ちゃんの、この術に堕とされた。
あまりの快感と気持ちよさに翻弄され、何度となくイって、何も考えられなくなってしまった。
そして、自分一人では決して得られない最後の欠けた部分を――竜二兄ちゃんに求めた。
竜二兄ちゃんは、うちの最初の異性で…それ以来、ないしょの禁断の関係…や。

「ひぐッ…ああッ…! 竜二兄ちゃんッ…!…やあッ…もぉ…堪忍してぇッ…!」
「女が男に“気”を譲り渡す場合、女の方が十分に興奮している必要がある。これは必要な手順だよな、ゆら?」

涙を浮かべて、たまらずコクコクと頷く。
すると猫の子のように式服の襟首を掴まれて、竜二兄ちゃんの寝床に放り投げられた。

顎を取られて、唇が奪われた。
「ンンッ…竜二…兄ちゃ…ん…」

口孔を陵辱されるような、一方的な激しい口づけ。
抵抗しようとした両腕は、竜二兄ちゃんに取られた。


908 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:22:11.27 ID:+EF5TZPv
そうして、次第に得られる快感に負け、うちからもおずおずと舌を絡ませ、求めはじめる…。
体から力が抜け、竜二兄ちゃんの体にしなだれかかった。
その頭を抱え込んで、竜二兄ちゃんが耳元で囁く――。

「――オレが生きている限り、おまえは一生、オレの玩具だ――ゆら」

何度となく聞かされ、耳にした台詞。
そう。うちは竜二兄ちゃんのオモチャ――そうなるコトをしばらく前から受け入れていた。

胸のふくらみに手を伸ばされ、その先端を摘まれ扱かれると。
次第におかしな気分になってくる。
頭ん中が痺れて、なにも考えられんようになってしまう。
――あの時の、ように。

「あッ…こんな、うちら――兄妹なんにぃ…」
「兄妹? 最初にオレを竿に欲しがったのは、おまえの方だぞ。ゆら」

竜二が嘲笑する。

「――それは…!」

竜二兄ちゃんが、うちの体を煽ったからや。今みたいにぃッ…!

『お願い。お兄ちゃん…うちを…犯してぇ…!』

言言に体内の体液を妖しく操られ何度もイき、蕩け麻痺した頭で、切なさと苦しさに叫んだ言葉。

『自分で、オレのモノを取り出して舐って見せろ。それができたら、考えてやってもいいぞ。ゆら』

渇した者が水を求めるように、うちは朦朧とした頭と熱い体を持て余し
竜二兄ちゃんの着物をたくしあげて、竜二兄ちゃんのモノを取り出して、
自分の口と手で扱いた――はじめてやったのに…。


909 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:22:58.54 ID:+EF5TZPv
『――な、おっきくしたで? ――竜二兄ちゃんの…ほしい…』
『……兄妹だってのに面倒なコトだ。――まあいい。よくできたな、ゆら。ご褒美に挿入(い)れてやるよ』

立ったまま、竜二兄ちゃんに挿入されてから、草むらに押し倒された。
欠けた部分に竜二兄ちゃんのモノを受け入れて、至福を覚え、
そして同時に、うちは禁断の蜜の味を知った。


体が押し倒され、白いシーツに濡れ羽のような黒髪が広がった。

式服を脱がせられ、足を開かされ――繋がる。
ズンと、竜二兄ちゃんのモノが腹の奥に収まる。
ずずッと、中途まで引き抜かれ、また突き入れられる。
竜二兄ちゃんに組み敷かれて、苦しさと気持ちよさに、ぽろぽろと涙を零して泣く。
罪悪感と快感で濡れながら、いつものように気持ちが流されていく。


「――これも“愛”だぞ。ゆら?」
「…そんなん、嘘や…」

愉しそうに鬼畜な兄を見上げて、恨めしげに、上気して赤くなった唇を震わせる。
お兄ちゃんが、そういうセリフを愉し気に言う場合には、たいてい裏がある。
――あるはずだ。

「そうだな。――そう、思っておけ」

桜色に上気した首筋から耳の付け根に、唇を這わせる。
逃げない。逃れられない。
ただ喰われるままになる。

「…あッ――竜二兄ちゃんッ…」

赤く勃起した花の蕾のような乳首を、竜二が口に含む。
発展途上にあるふくらみに手を添えてそっと揉みしだき、その先端を大切に舐め、転がし、啜る。


910 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:23:27.68 ID:+EF5TZPv
「ふ…ンッ…ンッ…」

しかし、そうして優しくされていた愛撫が――…一変する。
腰は、ゆらの奥、より奥を削るかのように乱暴になり、
竜二の手が、ゆらの首を絞めるかのように巻きつけられた。
緩い指は次第にキツくなり、少し息苦しくなってきた頃――

「――なあ、ゆら。おまえ、オレと一緒に死んでみるか?」

そう言いながら、竜二はゆらの唇に、己のものを重ねた。
ゆらの喉を絞める手と同じ。
軽くも強くもない、どこか躊躇いのある中途半端なくちづけ。竜二の唇が離れると、ゆらは疑問を口にした。

「――なんや、竜二兄ちゃんらし…ないな。なにがあったん?」
「――…なんでもない。死にたくなる程、疲れてたんだろ…」

そう言うと、ゆらの首を絞めていた指を解いた。
隠そうとしたらしいその表情が、お兄ちゃんらしくなく、とてもつらそうに見えた。
だから――

「――わかった。やる…」
「ん?」
「房中術」

竜二兄ちゃんが、おかしくなる程、体調が悪いなら。
うちにやれることがあるなら――それは、全力でするべきことや。
充分に高められたカラダ。
されるがままだったカラダを起こす。

「確か“房中術”はうちが“上”にならんといかんかったはずやな?」
「――なんだ知ってたのか」
「竜二兄ちゃん。疲れて…るんやろ? …なら、うちが“気”分けたる…」

反対に竜二を寝かせ、竜二の上に跨る。


911 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:24:11.75 ID:+EF5TZPv
竜二の胸に両手を置いて、愛しげに愛撫する。

「…うまくいくか、わからへんけど…」

繋がりあって――竜二兄ちゃんの胸に両手を置く。

体を重ね、心をからませて。互いに感覚を高めあう。
正しく――陰(女)と陽(男)が――繋がり合う感覚。

竜二兄ちゃんの“気”に、竜二兄ちゃんらしくない躊躇いと戸惑い、
萎縮が感じられて――本当に魂が“傷ついて”いるようだった。
うちの術で活力を分け与えられるといいんやけど…。


何十分かたった頃。
もういいと声をかけられ、腕を取られて引き寄せられ、抱きすくめられた。
抱き合ったまま、体を反転させられ、下にされる。

「…やはり、お前に“上”に乗られるのは腹がたつ…」
「…そんな無茶な」
「…まぁいい」

続きをヤるぞ、と。
竜二兄ちゃんは、うちの“上”になり、性的な責めを再開した。

「もっと…もっと、兄ちゃん…」
と、甘ったるくねだる声。

「――欲張りには、お仕置きが必要だな…?」

竜二兄ちゃんが“言言”を繰る。

「ああッ…!…お兄…ちゃん……竜二兄ちゃ…ん…っ…」

より深く、より強く。より酷く。
お兄ちゃんが責めれば責める程、うちはお兄ちゃんに助けを求めて、その体に縋りつく。


912 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点〜竜二視点:2012/03/24(土) 17:25:16.30 ID:+EF5TZPv
うちの体を、竜二兄ちゃんが、ゆらゆらと揺らす。
ゆらされる度に体内が接触する箇所に、快感を与えてくれる。
冷静さを装っていても、肌に触れる竜二兄ちゃんの吐息は熱くて、それがとても嬉しかった。

妹の体は、ゆらゆらと震える。
幼いくせに桜色に上気して男の情欲を挑発(そそ)るその体を竜二は汚し、蹂躙する。

「竜二…兄ちゃんッ…!」
「――少し、黙ってろ…」

余裕がなくなり、本当はもっと聞いていたかった甘いその声を、口を塞いで閉じさせた。
しなやかなゆらの体の最奥で、竜二の白濁が溢れだし、子宮の奥深くに染みいった。

ナカに出されて…竜二兄ちゃんがモノを引き抜くと、うちのナカから、太ももの内側を濡らし、ボタボタと白濁液が床に滴った。
竜二兄ちゃんは必ず、うちのナカでだす。
避妊は認めてくれへん。
…それでも妊娠せんのやから、うちの体は妊娠しにくいのかもと、思ってたコトもある。
――そうやない。
竜二兄ちゃんは“いつでも堕ろせる”から、
あえて避妊しなかったんやと、後になって、そう思った。
でも、もう避妊は必要ない。
うちが竜二兄ちゃんの子を産んでもいいと、決めたさかい。
陶然として、うちは竜二兄ちゃんがくれた熱さを感じ続けた…。


ゆらが眠りについてから。ようやく――竜二はゆらと手を繋いでいることに気がついた。
騙されても騙されても懲りない、バカな妹。
しかしそれでも竜二に残された最後の、唯一の血を分けた兄妹。
【破軍】の使い手として。
次代を担う女として、花開院家の希望の象徴だった。
大事に慈しんできた、ただ一つの手中の宝玉。
憎み、愛さずにはいられない。
それは絶対に――こんな男女の意味合いではなかったはずだが…。なあ、ゆら?

手を繋いだまま。
妹の寝顔を眺め、その肌の温かさに癒やされながら、溜息を一つ吐いた。

「――“愛してる”ぞ。ゆら?」

ゆらが完全に寝入っているのを確認して、嘘をつく。
嘘のふりをする。
――できるならば、最後まで。



913 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:26:18.99 ID:+EF5TZPv

◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ 


朝方にふと、ゆらの目が覚めた。
まだ、外は昏く。陽は昇っていない。

体はまだ情事の余韻を残して、疼いている。
甘い溜息をひとつ吐いて、小さく伸びをした。
寝床の中。
隣には竜二の姿がある。
普段は皮肉気な表情も、目を瞑って眠っていれば年相応に若く、いつもより整って見えた。

竜二兄ちゃんは、なんか、とても疲れているようだった。
確かに最近の竜二兄ちゃんは、忙しかった。
東京でも、恐山でも、事件が立て続けだったのは聞いた。

気をつかい、夕飯のあとで部屋に帰ろうとしたのに
なんだかんだ理由をつけられて、結局捕まり…竜二兄ちゃんの部屋で一夜を過ごしてしまった。
忙しくて、疲れてるくせに。
竜二兄ちゃんは、けっこう独占欲が強いんよ。
お気に入りのオモチャ――うちのコトや――を、誰かに盗られまいとするようなトコがあるしな。
それでいて、うちを嫁にいかせるつもりがないのかと思うと
「お前が誰のモノになろうと構わん」とか、突き放す言動をするし。


915 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:28:53.37 ID:+EF5TZPv
竜二兄ちゃんの考えてる事は、あまりよくわからへん。


「竜二兄ちゃん…」

小さく名前を呟いて、その頬にふっと唇を触れさせた。

「………」

反応がない。
(…起きへんなァ。…お兄ちゃんらしくないなぁ…)
小鳥が啄むような、軽く触れるだけのキスを繰り返す。
普段、うちの方から、お兄ちゃんにキスをすることは滅多にない。
いつも場を支配するのは、ドSで鬼畜な竜二兄ちゃんの方が多かったし、
うちの方から鬼畜な兄ィに積極的に甘えるのは、なかなか出来ひんかった。
仮にも実の兄妹やしな。
こんな関係は間違ってる――そう思う。
そう思うけど、離れられへん…。
竜二兄ちゃんが、うちをこんなえっちぃ体にしたさかい…。

そのうちが、折角キスしてやってるのに。

(――なんで起きひんの?)

上半身を起き上がらせて、竜二の顔を真上から覗きこむ。
鼻の頭に、そっと口づける。
……まだ、起きない。
思いきって、小さく音をたててキスしてみた。

――チュプッ…。

さすがにもう起きる!反撃される!と、身構えたんやけど――反応がなかった。

「なぁ…いつまで寝てるん?、バカ兄ィ」

不満げに囁きながら、再び顔を寄せる。



916 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】ゆら視点:2012/03/24(土) 17:29:44.73 ID:+EF5TZPv
竜二兄ちゃんは本職の“陰陽師”として、
寝ている間も、隙をつくることを嫌がってたんになァ…。
よっぽど、疲れているんやろか?
それともうちの“房中術”が失敗してしもたんやろか?
アレは失敗すると“気”を譲り渡せず、逆に気を損耗すると聞いている。

柔らかさと温度を確かめるようにゆっくりと。静かに、唇を合わせる。
確かな温もりを求めるように――眠る竜二兄ちゃんの頬に触れた。

眠りに落ちる前に竜二兄ちゃんが、笑みを浮かべたのを思い出す。

『――ゆら、お前は幸せになれよ?』
何、いきなりけったいなコトを言い出すのかと、不審な目を向けた。
『…お兄ちゃん?』
『あー。お兄ちゃんは少し寒いな。悪いが、もうちょっとこっちに寄れ、ゆら』

投げかけた問いは煙に巻かれて、そのかわり寝床の中で体を引き寄せられた。
体をくっつけると、互いの体温で温かかった。
花開院の庭には、艶やかに桜が咲き誇っている。
けれど夜気は冷たく、花冷えがする。
――そのせいなんやろと、思った。思ってた。



919 :【花開院兄妹〜宵闇桜if】竜二視点:2012/03/24(土) 18:35:08.78 ID:+EF5TZPv

◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ 


――××村の噂を聞く、少し前のコトだ。


花開院本家の庭に、一匹の白狐が現れた。
それは、オレの兄が死んだ時にも、弟が死んだ時にも現れていた――。
だから、そう思ったとしても仕方のないコトだった。

「――とうとう、オレの所に現れたか…死神め…」

「え? 竜二兄ちゃん? なにゆうてるん?」

ゆらは、きょろきょろと広い庭と、竜二の顔を交互に見回す。
ゆらには“見えていないらしい”それを、睨みつけた。

白い玉砂利の上に白狐は大人しく座り、竜二を見上げる。
その白狐の姿に、透き通る白拍子のような姿形の女の影が重なる。
――妾は伏目稲荷の神使。
――死神ではない。使いじゃ、陰陽師。
――狐の一族が悪さをしたゆえせめてもの詫びに、時を告げに参った。
――時が近い。未練を残すまいぞ。陰陽師の男子(おのこ)。


《分岐選択》
分岐a:竜二は鼻で笑った。
分岐b:竜二は眉を顰めた。
2012年03月26日(月) 21:10:54 Modified by ID:P3EJOw3Z0Q




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