【佳人薄命?】

173 【佳人薄命?】1 sage 2008/12/23(火) 23:10:14 ID:mhuQzmkF
『触手…触手か』の方新作GJです。
鳥居ちゃんと巻ちゃんの友情にうるっときました。泣いていいですか?

コチラは前スレに落とした毛倡妓×リクオの続編。リクオNTR??なSSです。
皆様それでもよろしかったらご覧ください。


【佳人薄命?】


ふと、夜中に目が覚めた。

何かに誘われるようにむくりと起き上がり、そのまま上着を羽織って部屋を出た。
外に出たとたん、冷えた夜気が衣のようにまといつく。

この屋敷では夜でもそこかしこにうごめく気配がする。妖怪屋敷なのだから当たり前だ。
それでも昼間に活動しているボクの部屋のある一棟は、基本的に静かだ。

頭は冴えているのに妙にふわふわとした、現実感のない夜。
もう一度眠れる気がせず、足はこんな時に思い出してしまった人の元へと向かっていた。


おねーさんこと毛倡妓と、閨の修練という理由で夜を過ごすようになってしばらくたつ。
最近やっと少し要領がつかめるようになってきたが、まだまだ振り回されっぱなしだ。

今夜はその予定の日ではないのだが、なんだかぬくもりが恋しかった。



毛倡妓の部屋の前に立つ。ふと、

「………っ…」

中から物音がしてきた。まだ起きているのだろうか。

「ちょ、っっな、にしっ、てるの…こ、な時に…っ」

ぎく。一瞬こちらのことを咎められたのかと思ってひやりとした、けど。


「え?だってこっちも可愛がっておきたいからね」
「あ、あんたねぇっ う、くっ」
「ほらほら、姐さんだってココ、いつもいい感じに悦くなるんでしょ?」
「ばっ… ちょ、コイツッ 最悪」
「やだなあ、ボクとしては姐さんに最高に気持ち悦くなってほしいと思っているんだよ」


こ、の声、って…。

まさかまさかという力ない否定は、次の瞬間紙きれの如くひっぺがされた。


「いいかげんにしなさいよっ …まったく、こーゆーときだけやったら性質悪い男だね、首無…!」
「ひどいなあ、毛倡妓姐さん」


普段聞きなれた、自分の世話係の声である。






「や、ちょっ!う、後ろからも、ってひきょ、よっ」
「うーん。やっぱりこれはボクだけの特権だしね。ほら、ここも」
「ふっ、ゃんっ!」
「ここも、…ここまで届く。ねえ姐さん、せっかくだからこのまま、さ…?」
「こぉんのおぉ〜!そっちがそんな気だっていうならねえ…!」

ざわわ、ざわ、ざわ…

「わっ!?ちょっと姐さんっ、髪っ、髪は勘弁して!うわ、くすぐったいって!」
「そーいってられんのも今のうちだけよ…!」
「え?…うわわっ、わかったよ。も〜、姐さん冷たいよ」
「おだまり」
「しょーがないな…。でも姐さん、こっちはいいよ、ね…?」
「…わかったわよ。でも、下手だったら承知しないわよ?」
「やだなあ。それこそ誰に言ってるの?」

ばさり

「ふっ、あぁん…」
「ねえ、姐さんのココ、びくびくしてるよ」
「あんたもね」
「っ!ホントに、姐さんは…」

ずちゃっ、ぐちゅ、ぶちゅっじゅっ!

「ひゃ、あ、ああ、ん、ぁああっ」
「はっ、はっ、ねえさ、…毛倡妓!」

「や、ああっ、ああああああああーーーっ!!!!」


―――――――――


いつ毛倡妓の部屋の前から去ったのか覚えていない。
気づけば自分の部屋で呆然と座り込んでいた。
そのまままんじりともせず夜を明かしてしまったらしい。

あんな、身も世もないといった風の嬌声など、聞いた覚えはない。
そんなにも悦かった、ということだ。
自分がまだまだ及びもつかぬほど未熟であることは承知していたつもりでいたが、実際違いを見せつけられて心が波立たないわけはない。

いつの間にやら、下着の前が汚れていた。
なので朝一番にしたことといえば、家人に見つからぬよう自分の下着を洗うことなのだった。



その日一日、まるでうわの空で過ごした。
カナちゃんやクラスメートは何事かと心配して様子を聞いてくれたり、いっそ早退したほうがいいんじゃと言ってくれたけど、
正直帰ったところで悩みの種が消える訳ではない。
さすがに「普段おねーさんと呼んでる人と、お兄さんのように思ってた人が同衾する仲なのを知ってショック受けてます」なんて言えないよ…。





帰宅後、廊下でばったり首無と出会ってしまった。
「リクオ様、お帰りなさい」
いつものように、見慣れた柔らかい笑みで話しかける首無に、ボクは内心ひどくうろたえてしまった。
いつもと何ら変わらない、優しげな風貌、少し小柄な身体。
この腕で昨夜、毛倡妓を抱き、あんなにも追い詰め悶えさせていたなどとは信じられない。

「リクオ様、どうなさいました?私の顔に何かついていますか?」
はっと我に返った。どうやらずっと首無の顔を見つめていたらしい。
「ううん、何でもない」慌てて首を振った。
「そうですか?失礼ですが、お顔の色が優れていらっしゃいません。お体の具合でも悪いのですか?」
再度首を振った。なおも心配げに見つめる首無だが、正直こればかりは、…あ!

ふと、閃いたことがあった。

「首無。実は体の方は何ともないんだけど。ちょっと悩んでることがあるんだ。
今夜、仕事が終わったらボクの部屋まで来てくれる?」
「リクオ様のお悩み事、ですか…?はい、私でご相談に乗れることでしたら何なりと」


その夜

「あ、んんっ!こ…う?」
「はい、そして…んっ、ぁ…ふふっリクオ様、どうなさいました?」
「ちぇー…。ここじゃないんだ」
「?何がですか」
「毛倡妓のさ、弱いトコ、って。なかなかわかんないんだよね」
「そうですか?」
「うん。…でもさ、どうやったら見つけられたのかな?やっぱり経験の差?」
「リクオ様?」
「なんだろうね。ボクも不思議なんだけど、別に嫌だった、とかじゃなくて、ただ、悔しかったんだよね。
ボクがどうしてもわかんなかったのに、君が知ってるって言うのがさ…ねえ、首無」

ぎょっとしたように毛倡妓が背後のふすまを振り返るのと、そっと離れつつあったかすかな気配が揺らぐのは同時だった。

ややあって、
「…気づいて、おいでだったんですね…リクオ様…」

観念したように、首無がふすまを開けた。

「気づいた、っていうか知ったのは昨日の夜だよ。それまで全然知らなかった。
言っておくけど、別にだからって君たちの事を邪魔しようとか、そんな事は全然思ってないからね」
「ですが…示しがつかないのではありませんか」
さすがにばつが悪そうにしている二人の姿に妙に困ってしまった。毛倡妓も神妙な顔で離れ、座り直している。

「だから違うって。別に悪いことしてるわけじゃないんだし、君らの好きで…付き合ってるわけなんだから何もしないよ。
ただ、ホントに首無に聞きたいことがあっただけだよ」
「聞きたい、こと、ですか…?」
訝しげに首を傾げる。首がつながってないから好きな方向へ向けられるのは便利だよね。

「だからね。毛倡妓の弱いトコ」

はい?とばかりに二人揃って目を見張った。

「さっきも言ったけど、ボクは毛倡妓の弱いトコが全然分かんないんだ。いっつも余裕って感じで、ひょっとしてボクが下手すぎて感じられないのかなって。
昨夜も首無が言ってたでしょ?毛倡妓に最高に気持ち悦くなってほしいって」

そんなとこまで聞かれてましたか、と顔を赤らめる二人だが。




「ボクもそう思ったんだ。情けないけど、それで首無に教えてほしいんだ。他にも色々教えてもらいたいこともあるし…ダメかな?」

他にも色々ってナンですか?と思わず脳内ツッコミしてしまったものの、言われていることはわかった。
しかし受け取り方は対極であった。

「なる、ほど…。そのようなご相談でしたら、不肖首無、及ばすながらお力添えいたします」
「うん、ありがとう。やっぱり首無は頼れるお兄さんだね」
「そのような。リクオ様、過分なお言葉痛み入ります」


男二人で意気投合する中、毛倡妓はだんだん雲行きが怪しくなってきたことを感じ、だらだらと冷や汗を流していた。

いや、ちょっと、おねがい、まって…

情けないかな、今のいつわらざる心境だ。
リクオ様は最近閨での腕をめきめき上げてこられ、年上としての矜持から余裕を見せてはいたものの、実際はかなり追い詰められていたのだ。
首無に関してはもはや言うまでもない。
この二人がかりで責められるなど、正直どうなってしまうかわからない。
というかシヌ、イかされる。
間違いなく明日の日の目は拝めないというかつてない危機に直面し、どうしたらこの二人をなだめて逃げに転じられるかとない頭を絞ろうとしたものの。


「ひゃ、ん…!」

「あ、本当にココ弱いんだ」
「でしょう?」

いつの間に間合いを詰めたものやら、すでに臨戦態勢に入った二人に取り囲まれ、万事休す…!

「ちょ、冗談でしょ…、っく、や、はんっ」

「ボクはこんなことで冗談なんか言わないよ」
「私もそうですよ。ね、リクオ様」

すっかり共犯者の笑みを浮かべた肉食獣二人(もはやそうとしか見えない)に、首元へ噛り付かれた鹿のようにあおのいた。

あ、シンだわ妾(わたし)。








翌朝、お肌つやつやうるるんな者が二人と、精魂尽きはて真っ白になった者が一人いたとかいないとか。




End


毛倡妓姐さん、すみません。
【佳人薄命】てシリアスそうな題ですが、つまりはそういうこと。
もてることが罪なんですね。



2009年01月10日(土) 21:00:15 Modified by ID:1qcLIZH20g




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