【氷の華】

140 【氷の華】 sage 2008/12/19(金) 00:56:40 ID:MK5p6Tyl
牛頭つら妄想
つららはリクオと同年代だと思ってる人すいません。このSSは年上設定(…)です。
以前ネタに出されていた『雪女×牛頭丸』の強 ピー!SS書きました。
…のはずが、長い、エロ短い、ギャグ多いと、エロパロでいいのかという仕上がりになっていますが、
よろしかったらご覧ください。




【氷の華】


浮世絵中学には毎年恒例のスキー旅行がある。
しかも泊まりがけ、宿泊先には温泉もあるということで、生徒たちには毎年楽しみにされているイベントとのこと。
当然、我らが奴良組若頭 リクオ様もご参加なさるということだったが。

「すいやせん、若…」
「いいって。本家の指示なんだからそっちに集中してて。ボクの事は気にしないでいいから」
「そうおっしゃられましても…」

私と同じく若の護衛を務める青田坊は、今回急な任務が入り別行動。
泊まりがけということで、いつも以上に生徒同士が固まって行動するため、どう見ても若と同年代には見えない毛倡妓と黒田坊は潜入しにくい。
首無は…言うまでもない、見た目だけですぐに妖怪とばれる。
河童は、残念ながら季節柄行動が制限されてしまう。アイツは水の性なので池が凍りつくほどでは動きが鈍くなるのだ。
私にとっては願ってもないことだが、いかんせん性別の問題がある。入浴時や就寝時までは一緒にいられない。
とはいえ…

「なぜ、よりによってあんたが護衛につくのよ…牛頭丸」
「ちっ、こっちだって願い下げだぜ。てめえらのお守なんざ」

そう、若と同年代に見えて腕の立つ男といったら、なぜかこいつが充てられたのだ。

「ぼくもいるよー。ぼくたちは今は本家の妖怪なんだから役に立てってー」
「…仕方がないから護衛はしてやる。牛鬼様のお顔に泥を塗るような真似はできないからな。
いいか、くれぐれもあん時みたいな情けない真似晒すなよ、雪んこ」

だあぁれが、雪んこですってぇ〜〜!!?


多大なる不和の芽を抱えつつ、生徒一行を乗せたバスは一路スキー場へと向かった。







「うわーー!!きれー!まさにパウダースノーってカンジー」
「昨日まで降ってた雪が、今朝になって止んだんだって!楽しみー」

ふっ、そりゃあそうでしょうとも。
リクオ様にお楽しみいただくために、この雪女、頑張ったんですからね!

なぜかこの山だけ異様に真っ白な光景に、いささか違和感を覚えるが、
生徒たちはそんなことは全くかまわず滑り出していった。


「ねー、ぼくも一緒に遊びたいよー」
「だめだ。おまえは目立つんだからな。おとなしく隅にいて、不審なやつがいないか監視してろ」
「そんなこと言って、牛頭丸だって滑るんでしょ、その「すきー」で」
「あのなあ、俺たちは遊びに来たんじゃないんだぞ」
「まあまあ、馬頭丸だけ滑れないのはかわいそうだよ。今からでも予備の道具は借りられる筈だし、
その頭の被り物さえ取れば、生徒に混ざっててもばれないんじゃ「だめー!!これは取っちゃいけないの!」…そうですか」

まあリクオ様、なんておやさしい。


1日中ゲレンデで滑り続け(リクオは転んだり迷ったりした生徒を救助したりもしていたが)、夕方になったことで宿泊先の温泉宿に移動した。

「うわーい、温泉よー!!」
「すっげー豪華な晩飯ー!」
「こらあ、静かにしないかお前たち!」
まだまだ遊びたい盛りの中学生たちは、宿中を大はしゃぎで闊歩していた。
おかげさまで…


「ねー、お腹すいたよー」
「ほら、晩飯の残りだ」
「冷めてるー。ねー、寒いよー、中に入ってあったまりたいよー」
「だめだ。今入ったら人間に見つかる」
「そんなぁ〜。牛〜頭〜丸ぅ〜」

明らかに普通でない格好をした馬頭丸をかくまう場所がなく。仕方なく一人で外にいる羽目になっている馬頭丸の我慢も限界らしい。
今夜も吹雪くと天気予報士が告げていた。

「さすがに少々気の毒になってきました…」
「うん。顔色も悪いし…。つらら?どうしたの、君もかなり顔色悪いみたいだけど?」
「え…?そうですか」

そういえば少し目の前がふらふらするような…疲れが出たのかしら?

「つららも体調悪いの?なら、無理しないで寝てた方が…」
「大丈夫です!」

この間ちょっと力を使いすぎたからかもしれないが。大丈夫、今度こそきちんと護衛の任を全うしてみせる。
リクオ様はなおも私を心配そうに見てくださっていたが、私が折れないと分かると諦めたように苦笑された。

「わかったよ。でもつらら、くれぐれも無理はしないで、辛かったらちゃんと休んでね」


そんな二人の姿を、牛頭丸が不審そうに眺めていた。






「やっぱり吹雪いてきたわね…」

窓から眺める雪景色にふと目をやった。視界は暗く、無数の雪片だけが浮かび上がっている。
…冬は、好きだ。私の季節なのだから当たり前だ。
でも、いつからか、私の中に溶けない氷のように凝っているものがある。


かつて、冬の到来とともに畏怖を轟かせ、雪原を席巻した恐るべき妖。
生けるものを思うさまに蹂躙し、奪い、覆いつくした。
狂ったように乱れ散る六花の輝きを統べる、白い魔物。
そは―――


「何してんだ?」

かけられた声にハッと息をのんだ。いけない、何に気を取られていたのか。
振り向けば、やはりいけすかない男の顔がある。

「何の用?」
「ふん、確かにな…ひどい顔色してやがる。休めって言われてたんだろうが、こんなとこに突っ立って何してんだよ」
「それをわざわざ言いにきたの?おあいにく様、私はこれくらいでどうにかなったりしないわよ」
「弱っちい雪んこの癖にいきがってんじゃねえよ。そんなザマで何ができるってんだ」
「うるさいわね。用もないならどっかにいきなさい」

本当に、目障りな男。
なのにこいつと来たら、こちらの気分もまるで考えずにずかずかと近づき。

「足手まといにうろちょろされたら迷惑なんだよ。てめえまで世話かけさせてんじゃねえぞ」

触れるほど近くでそんな寝言をのたまった。ああ、『うるさい』

『いっそ凍りつかせてその口を黙らせてやろうか』
『いやそれもいささかもったいないか』

今は若とおなじ服装に身を包んだコイツの身体の線を知っている。程よく筋肉の付いた、なかなか引き締まった体つきだった。
何のことはない、コイツは夏の間、暑いからと鍛錬の間中上着を脱ぐような男なのだから。

『ならば糧にはちょうど良いかもしれないな』


どくり、背筋に異様な悪寒が走る。
いやこれは、かつて慣れ親しんだ感覚だった。
人間の娘であれば顔面が紅潮するところなのだろうが、私の場合さらに血の気が引いたようにしか見えないだろう。
もう、間に合わない。このままじゃ…っ。

「おいっ!?」

一目散に外へと飛び出した。後など振り返れない、必死に走った。

あの建物には人が多い。若が大切にしている人間たちもだ。
若を悲しませることだけはならない…!






はあっ、はあっ、はあっ…、ドッ

どこまで走ったか、何かに足を取られ転んでしまった。
頭上を見上げれば、無音の闇の中から降り注ぐ無数の雪。頬をなでる凍てつく風も、何もかもが懐かしい。
この世に生まれたことを私が理解して、真っ先に目にした光景だ。
だからか、ずっと抑え込んできていたモノが「私」を超えて歓喜しているのは。
だというのに…

「お前、いい加減にしろよ…。勝手なマネしやがって」

『おや、ついてきていたのかい』
「こないでよ…、どうなったって知らないから…」
「ああ…?お前にか?どうにかされるか馬鹿」
『ほう、言ってくれるじゃあないか』
「馬鹿に、して…」

ああ、もうその肩にも頭にも数知れない白い欠片が。お前、それがどんな意味をもつか知らないのかい?
それがかつてお前の同胞を何体も葬ってやったというのに。

知らぬというなら教えてやろう。忘れたというなら思い出させてやる。





視界を覆うほどの吹雪の中、雪女の体が反転した。
人間の変化を解き、妖怪本来の姿となって、…否。

ゆらりとこちらを見据えた瞳に、かつてない戦慄が走った。


「この間はよくもやっておくれだねえ、坊や…?」

その声、その表情、その眼に浮かぶ光、
姿かたちさえ違えた『女』がそこにいた。



己とて妖怪として永の歳月を過ごしてきた。そこらのモノなど相手にもならない。
だのに、何の冗談か。

白い繊手が伸ばされる。その動きから目が離せない。
闇に浮かぶ白い顔、ひときわ輝く瞳から目が動かない。
ゆっくりとこちらに近づく歩みから逃れられないのだ。


「おまえは…なん、だ…?」

かろうじて口は動いた。動きすぎた後のように口が渇く。冷えた空気が喉に入り込む。

はたして女は嫣然たる笑みを浮かべて応えた。

「私は雪女。かつて奴良組総大将ぬらりひょん様に頭を垂れた女よ」

頭を垂れた、と言いながら、女はどこまでも気高く傲岸だった。







「は…、いつもの引け腰はどこいったよ?これくらい気が強い方がまだ見られるな」
「奇遇だねえ。私もお前のような男は好きだよ?後悔しなくてすむからね」

つ、と伸ばされた手に軽く肩を突かれた。それだけで受け身すらとれず、雪の上に倒れこんだ。

「てめえ…、オレに何をしやがった?」
「雪も氷も私がつかさどるもの。故に触れたものを私の思うままにできる。動きを奪うなど造作もない。
覚えてはいなかったのかい?あの日、これで何匹もの牛鬼(うしおに)を葬ってやったのに」
「―――!?…お前、あの時の…牛鬼組を襲った時にいた雪女なのか…?」


あの日のことを忘れたことなどない。
あの日、突然現れた「奴良組」とぬかす集団に、牛鬼組はかつてない苦戦を強いられた。
3日続いた抗争はこちらの敗北で幕を下ろし、以来牛鬼組は奴良組の傘下となったのだ。

あの拭いようのない屈辱感と敗北感。
あまつさえ、我らが主たる牛鬼様は、刃を交えた奴良組総大将ぬらりひょんに心酔し、以来熱心な下僕(しもべ)となっている。
そのぬらりひょんの傍らに、確かにいた。
翠の黒髪をたなびかせた、一切の感情も窺えぬ、玲瓏たる女が。


「あれが、…お前だったってのか…?」
あの時自分は若輩ながら戦陣に参加していた。及ばずながら力を尽くして戦った。
だがそんな気概も何も吹き飛ばすが如く、圧倒的な力を奮っていた女。
…それがこの、あんなちっぽけな存在感しか持たなかった娘だと?



「ふん、やっと思い出したのかい?
なら、雪女にまつわるもう一つの逸話も思い出すんだね」

「だが、お前…なぜこんなにも弱くなっている?て…、
ちょっと待て!お前、何をする気だ!?」

するりと上着の留め具を解かれ、素肌が冷気に晒される。
凍えてますます力が入らなくなっていく心地がするが、それどころではない。

「わからないのかい?やだねえ、無粋な男は」


雪女…
雪山に入った人間の男を誘惑し、精気を奪う…女妖。

………………


「正気か!? ば、ばかやろう、離せ!!」





事態をやっと理解してじたばたと暴れだしたが、遅い。
冷たい指が乳首をつまみ、こりこりと弄り、摘み上げる。

「うっ」

そのような所を弄られた覚えなどついぞなく。よって己が困惑している間に冷たい手の平が徐々に下へ降りてきた。
急いで出てきたため、上着は一枚しか着ていない軽装である。

「こいつ…!」

牛頭陰魔爪!!

己の武装の一つでもある攻撃術を繰り出そうとする。しかし、

「ああ、この雪の中では妖術は使えないよ。私が妖力を吸い上げるからね」

つまり、術を使おうとしても、こいつに妖力を奪われるだけということか!
体もうまく動かず、なすすべなく声を上げるしかなかった。

「て、てめえ…っ、離せ、よ…」
無言。
「離せっつってんだよ!聞こえっ!」
「うるさい」
返された瞬間、喉の奥に灼けるような痛みが走る。いやこれは、冷気、だ…!

「まったくやかましいこと。これだから腕にしか覚えのない男はいやだね。風情がなくて。
しばらく口をつぐんでおいで」

ヒュー…と、かすかなうめきに似た声しか出せない。のどに直接冷気を吹き込んで声を潰したのか。



凍えた身体からは、徐々に感覚がなくなっていく。意識もだんだん薄くなっていく。
うつ伏せにされたことには気づいたが、もう何をされるかもわからない。
「ここが、…若に斬られた箇所なのだね…」
つぅ、と冷たい指が背を這うのはわかった。捩眼山でリクオと対峙した時、斬られた痕だ。

一閃。奴の体が脇を通り抜けるのがわかった瞬間。前を袈裟がけに、背を十文字に斬られた。
刀ごと斬られた前は傷も浅く済んだが、背は爪を全て斬りおとされてしまい、回復に時間がかかった。今も傷痕が盛り上がったままだ。
その傷痕の上で指に力が入れられる。

「ぎ、いっ!」
歯を噛みしめて、傷をふたたび抉られる激痛に耐えた。この、女…っ!
痛みに目を上げれば、感情のない目で凝視されていることに気づく。今のこの女には、オレの表情などどうでもいいのだ。

「ふぅん。お前の血も赤いし、温かいのだね…」

当り前だろうが。そう毒づいてやりたかったが、いやに真摯な目で傷口を凝視され言葉を飲み込んだ。なんだこいつは。

「う!?」
不意に開いた傷に濡れた冷たい感触が触れて背がしなった。びりりと傷に染みる冷気に血さえ凍りつきそうで、背筋が震える。
ぴちゃり
水音からして、まさか…傷を舐めているのか?

「ふ、雪の上に血が滴るのは好きだけどね。よく映える。お前の血でも花のようだよ?」

ざらざらとした感触に、冷気とは違うぞくりとした悪寒が走る。
悪寒は徐々に体を追い上げ、覚えのある衝動を喚起させられた。





「ぁ…、な、せ…。も…」
このままでは自分がどうなってしまうのか、気づかされた事実に戦慄した。冗談じゃない、こいつの前でそれだけは嫌だ…!
「ん?」
雪女の体を押しのけてやりたくても、手が凍えてうまく動かない。
指先の感覚すら定かでないのに、ちぎれそうな痛みだけはある。真っ赤な指は腫れて今にも血が出そうだ。
放っておいては手遅れになる。そう思って咄嗟に意識の優先順位を切り替えた。これだけは、何があっても失くす訳にいかない…!

ぎこちない手で自らズボンの前あわせをいじる。
「なんだい?おかしいねえ、まだそんなに…?ああ、へえ…」
かちゃかちゃと上手く動かない指を操り、なんとか己のモノを出す。女の視線から逃れるように体をできるだけ丸め、両手で己を包み、放った。

じょろじょろじょろ…

一部始終を見られていると分かっていても放尿の勢いは止められず、両手を温かく濡らした。間違っても手を凍傷になどさせられないからだ。

「はあ、はあ、はあ、はあ…」

ばしゃり

やっと少しばかり温まった手に大量の水が掛かる。
「汚いねえ。それできれいになったろう?」
びしょぬれになった手に冷たい風が吹き付け、再びちぎれそうなほど痛んだ。もうこれ以上は耐えられない…!

「…て、が…」
「手?…ああ、刀を使うのだものね。そうか、凍ってしまったら腐って落ちてしまうか。
それなら…」

不意に手にかかった水がみるみるうちに凍りつき、両手を上げた格好で固めてしまった。

「な、にを…」
「安心おし。氷の中なら案外物は凍らないものだよ。晒しておくよりましさ」

…表情を見る限り、今のは悪意なくこいつなりの気遣いのつもりらしい。

よく、わかった。こいつに常識は通じねえ…!
妖怪のみならず、人間相手であってさえ通じる当然のことが理解も認識もできていないのだ。
それはつまり、こいつ一人だけが誰も知らない世界を生きているということ。
熱のない、生き物の息吹の一つとしてない、激しく威を振るいながらも音さえ吸い込まれて届かない。
胡乱な頭にふと、見た覚えもない遠い雪景色が浮かんだ。


「やれやれ、さすがに汚れたままじゃ私も触る気はしないね。どれ」
まさか腹にも水をかける気かと、気付いて慌てて身をよじった。冗談じゃない。こっちは生身だ、そんなことをされたら死ぬ。
手を拘束されては衣服も直せない。情けない格好だが、極力足を曲げ見えないように尻でずり下がった。
だがやはり、逃がす気はさらさらなかったようだ。
どすん、と音を立てて背が何かに当たる。辺りに木などなかったはずなのに。
振り向けば、ばかでかい氷の柱。
「な、ん…?」
驚く間に、手の氷が柱の氷とつながり、背中、腰、両足までも氷漬けにされた。
凍ると同時に氷柱がさらに上に伸び、腕を上にあげたまま椅子に座ったような体勢になる。
無論前もすべてはだけたまま、見動きすらできなくなった。

「く、そ、…ひぁぁっ!」
上からぼとぼとと氷交じりの水が垂れてくる。落ちる先はやはり下腹部。体の中で最も柔らかく温かく保たれなければならないはずの部分に
冷え切った重量がかかり、一気に全身の体温が奪われた。
「ひぃっ、や、め…」




みぞれ交じりの水が下腹部を伝い、己のモノまでも包んでいく。その過程で擦られる刺激が脳にまでびりびりと届く。
だが凍えた体では熱が生まれるなり奪われ続けていて、肝心の先端にまでは届かず縮こまったままだ。

「なんだい、若いくせにちっとも大きくならないねえ。なら…こうしたらどうだい?」
水が下衣の中にまで入ってくる。水に混じった細氷が下履きの中にまで届くなり溜まり続け、素肌を直接覆う。
冷えた水が萎んだ尻の孔に届いて沁みるような感覚が…じゃねえ!
「や、ぁあっ、ば、何しや…っ!」
入り込んだのは小さな氷。水が孔に届くなり凍りつき、それがだんだん大きくなっている。
耐えがたい冷気と圧迫感に身をよじっても身動きは叶わず、逃げようもない刺激に悶えるしかない。
「ぐ…は、う、ぅっ…!」
氷は少しずつ長く大きく成長していく。まさか…このまま腹でも突き破る気か…!?
「さて…この辺りとは思うがね…」
「…くぁう!?」
びくん!と全身に痙攣が走るような衝撃があった。なんだ今のは!?
「知らなかったかい?男はここに、我慢の出来なくなる弱点があるんだよ」
知るかああああぁっ!!

己の体にまだこれだけ熱源があったかと思うような灼熱が生まれる。奪われるだけ強く熱を呼び起され、今度こそ先端にまで届いて持ち上がった。
「まったく、これだけ手間をかけさせけられたのは久しぶりだよ。その分楽しませておくれ」
つ、と細い指が先端を弾き、下の筋までも滑らせる。もう冷たいとも感じない指の動きだけで、一度達してしまった。
「――っあぅ!」
「…本当、勢いだけはいいようだ」
その様をじっくりと眺めた女が淫蕩な笑みを見せる。
達した後も硬直したままのモノへ軽く刺激を与えつつ、すっと身をかがめて裾を捌く。
そのままこちらに乗りかかってくるような体勢だが、…おい?

固い先端がこれまでになくひやりとした、だが柔らかいナニカに触れる。
着物の裾に隠れて見えないが、それが何かに思い当った瞬間、かつてないほどの衝撃に思考が吹き飛んだ。
「ふふ、興奮してるんだね…さっきよりさらに大きくなったよ?」

つぷ、と先端が押しあてられる。
ぐ、ぐ、と少しずつ押し込まれていく。

―――――――!

細く、悲鳴のような吐息をもらしたのは同時だった。

痛い。絞り上げ、締めあげる刺激に顔がゆがむ。その感触が全てを覆い、逃れようのない衝撃に息が荒くなる。
「…ふ、く…なかなかいいね…。だが少し、もの足りないねえ…」

雪を固めたような滑らかな内壁が急激に波打ち、たわんだかと思えばぎりりと絞り、背骨から電撃のような苦痛が走る。
動けない己の上を、女がゆるりと蠢き、そのたびにありえない刺激に戦慄いた。
というか、腹の中に氷が入ったままだ…!
女が動くたび己のモノのみならず腹の内からも刺激が走り、声も出ないほどの責め付けに意識までぐちゃぐちゃにかき回される。
もう、めちゃくちゃ、だ…!
それが快楽であることすら、今の自分には気付けなかった。

「ぁ…う、くぉ、ひぃ…ぁぁっ!―――――っぁ!!!」




触れるほど近くにある女の顔が哂う。
「おや、泣いているのかい」
「る、せ…」
「可愛いねえ。やっと少しばかりお前のことが可愛らしく思えたよ」
こっちは極悪非道としか思えないがな!この白い悪魔が。





すい、と髪を梳かれ目尻を拭われる。触れるだけの柔らかい感触を口元に感じ、
ふいに、目の前が弾けた。
「坊や?」

降り積る雪は白く。
目の前の女は白く。
己の意識もまた、脳裏の白い闇に呑まれていった。








「…丸、牛頭丸」
…遠くでオレを呼ぶ声がする。

「起きなさいったら!いつまで寝てるのよ」
「ん、あ…?」

ズボッ

いきなり口の中に雪の塊を押し込まれて一気に覚醒した。

「ぶっ、ゲホッ、…いきなり何しやがる!」
「やっと起きたわね。本当に死んだかと思ったけど、意外と丈夫ね」

そう言う雪女は既に人間へ変化し直し、身支度も整えている。
その顔色も格段に良くなっているようだ。
…こいつ、オレの妖気を根こそぎ奪って回復しやがったな。こっちは指を動かすことすら億劫なほどだってのに。
こちらも一応、戒めは解かれ見られる格好にはしてくれていたらしい。

だが顔色に反して、表情は冴えない。

「おい。雪女」
雪女、の呼称に振り向かずつららは応えた。
「何よ」
「お前、本当はこれだけ力があるくせに、なんでわざわざ力を抑えているんだ?
自分を抑え続ければ、本当に弱るってわかってるくせに」

問われたつららはしばらく無言だった。答えるつもりがないのかと思い始めたころ。

「だって、力を抑えないでいたら…若が凍えてしまうじゃない」

「はあ?」

振り向いたつららの顔は、見たこともないほど穏やかで、静かな、柔らかい笑みをたたえていた。
例えるなら、月明かりに照らされた、心に沁みいるほど美しい雪原のような。

「若が、リクオ様がお生まれになったとき…」





その日、リクオ誕生後に初めて本家の皆へ若君がお披露目されたのだ。
いとけない若君の健やかな姿に、皆が誉めたたえ、一人一人抱かせていただいた。
しかし、雪女の腕に渡されたとき、

「それまで、ずっとお休みになっておられたのに、急に泣きだしたのよ」

雪女の冷気にあてられたか、火がついたように泣きだした。
呆然とする間に、今度は不自然に泣き声が小さくなっていく。
落ち着いたのではなく、冷気に凍えて声が出せなくなりつつあったのだと悟った周囲の者が、慌てて取り上げた。
その一部始終、自分は動くこともできなかった。

これまで、ずっと。
生きとし生けるものの熱を奪い、息吹を奪い、精気を奪って生きてきた。
その屍(かばね)を真白の褥(しとね)に横たえ、春になるまで返しはしなかった。
そのことを後悔などしたことはなかった。
私は雪女。四季の巡りの「死季」を象徴する、冬の畏れだ。

私の腕は
…生けるものを、大切だと思う者さえ抱くことはできないのだと、初めてわかった。だから。

「だから、自分を、力ごと抑え込んで生きることにしたのよ」
二度と、大切なものを傷つけないように。


「…馬鹿じゃねえか…?」
振り向いたときのつららの顔に宿っていたものが「哀しみ」であったとようやく気付いた。

「馬鹿とは何よ」
「それで弱っちくなってたら本末転倒だろうが。ああ?おまけに結局抑えきれずに暴走してりゃ世話ねえな。
しかもそんなことのために、10年以上も男日照りでいたのかよ。淫乱女の癖に」
さぞや激しい怒りを見せるかと思いきや。

「へえ、言ってくれるじゃない。童貞の癖に」

冷やかに一瞥を向けられ、しかめっ面で黙り込んだところを見れば、どうやら図星の様子。

「そりゃあそうよね。あんたみたいな性格してたら、見てくれがどんなに良くたって女にもてるわけないもの。
素直な馬頭丸の方が、まだしも相手にされそうだわ」

ますます顔をしかめたところを見ると、またも図星をついた様子。


はた、と気づいたが。


「ところで、あんたがここにいるってことは、
今リクオ様のそばには馬頭丸しかいないってことよね…大丈夫かしら」
「大丈夫だ。あいつだって牛鬼組の一員なんだからな、護衛の任くらい一人でもこなせる…筈だ、多分」
「……………………………そう、とっても安心ね」







「いた!?アイツ」
「こっちにはいないみたいよ!!あっちも探して!!」
「見つけてもあんたらだけでは絶対手ぇだすなや!うちが着くまで待つんや!!」
「え?ちょっと何の騒ぎ?」
「妖怪よ!前に捩眼山で女湯襲ってきた奴がいたの!ここに!!」
「えええええええええっ!?」
「しかもまた女湯に堂々と現れて…!なんなのあの変態妖怪!」
「どこに隠れたんや…?ふふふ、ここで会ったが百年目や…。あんときの借り、倍にして返したるわ、フフフフフ…」



ガラッ
「こっちか!?」
ガラッ
「ここか!? あ、ここ奴良君おったんか。
なあ、ここら辺で妖怪見んかったか?頭に牛の骨被った奴や!」
「け、花開院さん??どうしたの?妖怪って?」
「ここに妖怪が出たんや!しかも女湯に! 奴良君も怪しい奴おったら気ぃつけや!」
「う、うん」
「ほな、失礼しました!」
バタバタバタ…




「行ったみたい、だよ。…それにしても大騒ぎになってるなあ…」
「…うん…。ありがとー、こわかったよー」(もぞもぞと布団から這い出てくる馬頭丸)
「だからせめて被り物くらい取ったらって言ったのに…」
「だって、これは大事なんだよ〜」
「大体、なんで女湯に行ったりしたのさ?」
「違うよ〜。寒かったから風呂であったまろうと思って、人のいない時に入ったんだよ。そうしたらいきなりあいつらとはち合わせて…」
「あのね。説明書き見てなかった?ここ12時過ぎたら男湯と女湯が入れ替わるんだよ。
彼女たちそれを見計らって入りに行ったんだと思う」
「こわいよー。あの陰陽師、いきなり式神出して攻撃してくるしー」

まあ目の前に敵として(しかも入浴中に)遭ったことのある妖怪がいたら、普通陰陽師は攻撃するのかもしれない。

「ねー、お願い助けてー。ぼくをかくまっててよー」

そりゃあ目の前で涙ながらに助けを請われては、奴良組若頭としても見捨てるわけにはいかないが。
この喧噪の中を全く気付かず安らかに眠りを堪能する清継と島を見つつ、せめて君たちだけは騒ぎに加わらないでくれとささやかに願う、
三代目総大将への道の険しさをしみじみと感じるリクオなのであった。


ちゃんちゃん



【氷の華】後書き

リクオが蚊帳の外とは、これまであまりなかったSSになりました。

いやまあ、冷酷ドSの女王様な雪女は考えただけで乙なんですが、
主筋のリクオ相手にはできないよなあ、ということで牛頭丸相手に存分に発揮してもらいました。

実はこのSSで、まずオチが先に書きあがったあたり、自分はつくづくギャグ脳の持ち主だと思います。
相変わらずの超長下手SSですが、ここまで読んでくださってありがとうございました。



2009年01月10日(土) 20:57:29 Modified by ID:1qcLIZH20g




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