3ヒロイン キスエロシチュ【大人味】

24 【大人味】つらら sage 2008/11/30(日) 16:46:04 ID:DLda2qjx

闇の中、白刃の閃き

絶命した男の躯は、床に崩れ落ちる前に夜風にさらわれて、散った。
罪深き裏切り者といえども、元は同じ釜の飯を食った仲だ、一撃で斃したのはせめてもの情け。
虚ろな目は、断末魔の瞬間に何を思ったのか。

「冥土の土産にゃあ…おあつらえむきかもな…」

高きから地上を眺めてひとりごちる。
ここの眺めははまた、見事だ。闇夜に輝く無数の輝きを、一手に支配した気さえする。
あの男が、愚かな野望(ゆめ)にとり憑かれたのもわかる。

ずっと後ろに控えていた影から、静かに声がかかる。

「あなたの、ものです。
この光も、闇も、全てあなたのものです。若…」

たとえ、朝になればすべて消えてしまうとしても


地上には無数の光
一つ一つが人の営みを照らす

天上には、満天星を抱いた はてなしの闇
月のない冴えた夜空には 至上の珠玉も及ぶまい

流れる夜風の滑らかさは、極上の絹


けれど

「今は、お前の方がいい」

闇色の滝のような髪に指をからめ、そっと引き寄せる。

「ん…」

ひやりと己を包み込む唇は、絹よりもなお滑らか
潤んだ瞳は、いかなる玉より妖しく輝く

「ふ、ぁん …リ、クオ様…!」

耳触りのいい鳴き声は どんな美酒より芳く酔えそうだ


(玉も錦も 君ありてこそ)



巻頭カラーでリクオの膝になついているつららからイメージ
…なぜか高級HOTELの最上階スイートルームが舞台 100万ドルの夜景を見つつ


25 【大人味】カナ sage 2008/11/30(日) 16:48:55 ID:DLda2qjx


私は、彼の手を取れなかった
彼もまた、最後の最後で手放した

それでも




私がお風呂に入って部屋に戻ってきた途端。
灯りをつける間もなく、背後から羽交い絞めされて心臓が飛び上がった。
上げようとした悲鳴は、乱暴に塞がれたまま彼の喉の奥に奪われる。

…まったく、もはや10年の大台に乗る付き合いのくされ縁でなかったら、
喜んで犯罪者呼ばわりして叩き出しているところだ…できるかどうかは不明だけど。


彼の、平素おだやかな黒い瞳が、闇の中でだけ金に輝くのだと知ったのはいつのことだったか。
その頃から、こうして時折夜中にふらりと姿を見せるようになった。

たあいのない話をして そのままふらりと立ち去る時もあれば、
今夜のように、深く強く触れてくることもある。

今日はまた、いつになく激しいな…

そして包み込まれた硬く弾力のある胸に意識を奪われる。
引き締まったその身体は意外に筋肉質でしなやかで、私のような女とは違う。



何があったのか なんてきかない

今日はかたくなに向けようとしない背中も
近くにいれば、かすかに鼻腔をかすめる鉄錆のにおいも
とざされた瞳が、今どんな感情を浮かべているのかも

何も きかないし きけない



顎まで滴った唾液をご丁寧に舌でぬぐい、ようやく目を合わせた。
どうやら今夜はこのまま帰るらしい。


ねえ
(次はいつあえる)

口元まで出かかった台詞を、のどの奥に押し込んだ。


この逢瀬を、あと何度交わせるのだろう。

(私はあなたと共には生きられない あなたなしでは生きていけない)



大人セフレ関係?な二人


26 【大人味】ゆら sage 2008/11/30(日) 16:49:46 ID:DLda2qjx


目覚めれば見知らぬ部屋
なじみのない寝具の感触
かたわらには見覚えのない女が全裸で寝息を立てている――

…男にとってはたいていの怪談などより、よほど背筋を涼しくさせてくれる話だというが。

それが見知らぬどころか、日は浅くとも毎日顔を合わせている相手の場合、どうしたらいいんだろう。


「やっぱここは、男として責任取らなきゃなんだよね」

今度ばかりは夜の自分とやらを殴り飛ばしてしまいたかったが

「う、ん…」

こちらが身じろぎして寒かったのか、そのまますり寄ってくる小動物のような彼女の
見たこともなかった安らかな寝顔を見ているうちに

何だかもう、どうでもよくなった


寝乱れた髪を梳き、羽のようなキスを落とす。

(さあ 目覚めた君に なんて声をかけようか)




朝チュン…


絶対こいつら皆場面外ではできあがってますが、今回は「キスエロ」です。


27 【大人味?】 sage 2008/11/30(日) 16:51:47 ID:DLda2qjx

前回おまけでご好評いただけた様子の「黒田坊×鳥居ちゃん」verもお届けします。





「だから違うと言っておるだろうが!」
「言い訳はけっこうです!ほんとに信じらんない!」
「信じられんのはこっちの方だ!少しはこちらの話も聞け!」


若の護衛として、学校の裏門について見張りをしていた。
ここは生徒たちがほとんど通らないと聞いていたのに、よりによってこの少女と出くわしてしまった。
こちらを認めた瞬間のこわばった表情に、つい声を掛けてしまったが、返った返事はけんもほろろだ。

「大体学校関係者でもないのに、なんでここにいるの?」
「それは、若…身内の者がここに通っているからだ。たまたまだたまたま」
でなくて誰が、人間の領域にわざわざ入るものか。

「へぇー?若いのに女の人にもてなくて、寂しくなってフラフラ入り込んだのかと思ったわ」
「…何だと?」

さすがにカチンときた。
若のご友人、無力な人間の少女と思い、穏便に済まそうと思っていたが、そろそろ我慢も限界だ。


己は暗殺破戒僧の異名をとる妖怪、僧の身なれど堕ちて久しい

酒戒も、殺戒も疾うの昔に破り捨てた


いわんや女犯(にょぼん)の戒なぞは



「―――言うてくれるな、小娘」

こちらの低い声に宿る響きに気付いたと見え、顔を引きつらせる。
もう遅い。

 





慌てて体を反転させ、逃げようとした少女の顔の脇に、どんと音をさせて片手をついた。
驚きに硬直した瞬間に、もう片方の手で少女の体を捕まえる。細いな、片腕で腰まで回るぞ。

「や、やっぱり変態なんじゃない!この犯罪者!離してよ!!」
「いちいち無礼なことを言う口だな…また塞いでやろうか?」

こちらを見上げる目に、また涙が盛り上がってきた。怖いのだろう。
夕方のせいか周囲には人影も見当たらず、大声を上げても聞こえるか分からない。

「……やだ…!」
ゆっくり顔を寄せると、嫌だというように顔を振るので、頭の後ろに手をやり押えた。
動かせない顔に、今度こそこちらの顔を寄せ…



「あ、裏門前で生殖行動発見」(屋上)



そっと唇で涙をぬぐってやった。
何をされるものかと震えていた少女が、ぱちくりと目を瞬かせる。
その耳元に吐息とともに吹き込んでやった。

「あまり大人を舐めるでないわ」
言い置いて、そこを立ち去った。


どさ、という軽い音を聞きながら、なぜだか勝利感に似た高揚を感じていた。

(こうしてだんだんドツボに嵌っていく、とはまだ気付かない頃)



この後河童に「見ーたーよー、黒田坊ー?」と言われるか、
直でリクオに報告されてしまい「どういうことかな、黒田坊?」と言われるか。

大人って、子供が思っているほど大人じゃないよね、という。


駄文ばかりですが、ここまで読んで下さりありがとうございます。



2008年12月03日(水) 22:40:59 Modified by ID:P34c9yBtRw




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