アーモンドチョコ

転載:2008/03/15(土) 07:40:08 ID:llrHBHLp

「ちぇ、まぁいいや。今日は二人で食べようと思って、チョコを買って来たんだ!」
言いながら若は対面の座布団に座り、手に持っていたアーモンドチョコの箱を開ける。
「あら…」
しかしそこには、
「うへー、ドロドロだよー」
原型が崩れ、アーモンドのチョコレートフォンデュ? になった代打が存在した。
その溶解度に比例して、完全リンクで消える若の笑顔。
「あの……若? 私は気持ちだけで嬉しいですよ? そうだ、このチョコを別な型で作り直して差し上げます!」
そう申告し立とうとするが、
「そうだ、そうだよ雪女!」
肩に手を乗せられて防がれる。
「どうしたんです若?」
主の顔からは落ち込んでいた表情は無くなり、
「口を開いてアーンしてよ雪女!」
悪戯好きの少年スマイルが戻っていた。
「えっ……えっ?」
「ほら、早くアーンして!」
イマイチ理解の出来ないまま両手を畳に着け、
「あ、あーん」
身を乗り出す形で口を開く。
「そのまま動いちゃ駄目だよ雪女」
本当にフッと、一瞬で視界が暗転する。巻いていたマフラーを解かれ、目が見えなくなる様に巻かれ直されたのだ。
「にゃひなはれりゅんでふかわか!?」
「あははー! 何言ってるか分かんないよ雪女。でも、口は開けたままだよー」
身体が小さく……本当に小さく、ゾクゾクと震える。
視界を塞がれる事は、これまでに不安になる事なのだろうか?
「まずはコレ」
「ん…」
舌の上に異物感。だけれどコレは見当が付く。
溶けかけのアーモンドチョコ。
「次はコレ」
「んんー」

今度は熱い。恐らくドロドロのチョコ部分。
「はい口閉じてー雪女」
号令で口を閉じる。そして視界はいつも通りに開ける。
「あみゃい……」
舌の上でアーモンドが転がり、下には甘い甘いチョコの沼。
「そのチョコ、雪女が固めてよ。得意でしょ? そう言うの……」
未だに理解出来ず、言葉のままに唇の微かな隙間から空気を送迎し、チョコを少しずつ固めて行く。
「ふー…」
少しずつ、少しずつ、
「ふー……」
固めて行く。

「わかぁ、れきましゅた」
そして出来上がったのは、チョコレートでコーティングされた舌にアーモンドがトッピングされている変な物。
「それじゃあダメだよ。もっとベロ伸ばして」
言われるがまま、
「ひゃい」
べーと舌を突き出す様に伸ばし、若の次台詞を待つ………までもなかった。
「んぐぅ!?」
じゅるじゅると、大量の唾液音を混ぜて舌が吸われ始める。
「このまま動かないでね。ふふっ、雪女のベロ甘くて冷たくて美味しい……」
頭部を両手で固定され、甘い唾液を交換し、私の息は荒くなり。どんな思いで若がこんな事をするのか知らないけど、
「んふ…あっ…」
私の身体は欲情しっぱなしだった。
――気持ちいい、気持ちいいです若っ!
絡み合う熱で再び溶け始めたコーティングチョコの上で、アーモンドを姦る若の舌が気持ちいい。
私の舌を挟みくわえる若の唇が気持ちいい。
我慢出来ずに舌ごとチョコを甘噛む若の歯が気持ちいい。
「ん、どう雪女……美味しい?」

一旦唇を離し、口元を手の甲で拭いながら笑い掛けて来る。
身も心も慕うお方の問いに、一体どうやったら否定を返せるだろう?
「はい、気持ちい……美味しいです若」
にやける口と赤らむ顔を隠すのが精一杯。
「良かった。また買って来て上げるね雪女!」
若はその台詞と太陽の様な笑顔を残し、来た時と同じに足音を響かせながら去って行った。
――ふふ、熱い。とけちゃいそうですよ若。
結局、本当の所は分からない。若がどう言う気持ちだったのかも。
――接吻、しちゃいましたね。
「はふーん☆」
恥ずかしさが消えずバタンと横に倒れ、
「萌えー! 若萌えぇぇっ!!」
畳の上を転げ回った。


この時の事は今でも分からないまま。
中学生になった若にも聞けないで居る。
もしかしたら若は忘れてしまったかもしれない。
「いってらっしゃいませ若!」
でも良いんだ。
夏が嫌いだった私に、夏が来る度にニヤニヤ出来る甘い思い出をプレゼントされたんだから。



2011年08月26日(金) 03:11:10 Modified by ID:YQO7mb6raw




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