黒×鳥2

556 黒×鳥 sage 2009/04/22(水) 00:39:50 ID:SFwL73Xz
黒鳥で切甘で裏なしです。そして黒の正体ばらしです。

私のベッドの上に眠る彼を、ずっと見つめる。
さっきまでの情事なんか嘘みたいに、穏やかな時間は過ぎて。
膝を抱え込んで座る私、可愛い顔して眠る黒が憎たらしくって。

こんな関係になっても私は貴方のこと何も知らない、わからない、教えてくれない。
でも、なんとなくわかる。
この人、普通のヒトじゃないと思う。
貴方には、不思議が多すぎる。
知らないことを知りたいを思う、それが好きな人なら尚更。
だから、私のことも知ってほしいの。

おにーさんだけじゃない、奴良くんや及川さんも。
清十字怪奇探偵団に関ってるからって妖怪だなんて思う私も私だけど。


ふと、涙が零れる。
こんなに好きになって、一生懸命になって馬鹿みたい。

恋人同士だけど、不透明な存在。
勘でしかないけど、とても人間と思えない彼を。


涙でぐしゃぐしゃになってるんだろうな、顔。
そんなことを思いながら考える。

黒が妖怪だって私は構わない。
だけど、嘘は作らないで。
不安でいっぱいな私を、重いと嫌わないで。

こんなに、すきになってるだなんて思わなかった。
こんなに、無条件に相手をすきになれるだなんて思わなかった。                         




「…ふぇっ」 

声に出してしまいそうだった泣き声。
起こしてしまわなかったと彼のほうを向いたとき、

「…大丈夫か?」

彼は起きていた。

「…いつ、から、起きて…たの?」
「夏実が座り込んだときから…か?」

…つまり変な顔して悩んだり泣いたりしている私をずっと見ていたわけで。

「っ馬鹿ぁ! そういうときは見ない振りしなさいよぉ…。」

語尾から力が抜けてしまう。

すると、私の横に座った彼は

「拙僧は、愛しい女の泣いてる様子を見て見ぬ振りは出来ぬ。」

足の間に私を抱き寄せる。そして、

「いつ声をかけようか迷っていたんだが…。何があった?」

笑顔で聞いてくる。
…言ってしまっていいんだろうか、こんな黒い部分。

「拙僧には言えぬことか?」

寂しそうに聞いてくる。
それは貴方のことだと思う。

「黒こそ…、私に言えないことあるんじゃないの?

…どうして、秘密なんて作るの? 妖怪なんでしょう、貴方は…。」




(´・ω・`){シフトチェンジ!次は黒田坊のターン!!




「黒こそ…、私に言えないことあるんじゃないの?

…どうして、秘密なんて作るの? 妖怪なんでしょう、貴方は…。」

「…っ!?」

先刻まで不安に涙を流していた彼女の姿はなく、強気な瞳で真実を求めようとする彼女がいた。

拙僧は自ら正体を晒すようなヘマはしていないはず。
なら、なぜ…?

「ねぇ…、どうして何も言ってくれないの…?」

自問自答していると、夏実のほうから声をかけてきた。
このまま黙っていると、正体がばれかねない。

「何を言うと思ったら、何故妖怪だなんぞ…。」

そう、拙僧は妖怪。
だが愛しいと思ってしまったこの人間の少女を手放したくない。
このような関係でも、夏実と接することが出来るのなら嘘をつくことは容易い事。

「…そう。

なんにも言ってくれないんだ…。」

こちらを見ながら涙を流し続ける夏実。
なんだかんだ言いつつも、不安になっているらしい。
女の勘が恐ろしいとはこのことか。

「あ…、その…。」

上手い台詞が出てこなくて、口籠っていると

「大体ね、いっつも余計なことするくせに肝心なこと話さないなんて卑怯なのよ!!
私が黒のことが妖怪だからって嫌いになると思ってるの!?
こっちはすきすぎて不安になるくらいなのよ!! 隠し事なんかしないでって…、言ってるのよ!!」

早口で捲し立てられた。
何か腹が立つようなことを言われた気がするか、熱烈に愛の告白を受けた気もする。

…参ったな、拙僧の降参だ。

とりあえず、泣きじゃくっている夏実をどうにか落ち着かせよう。


「まぁ、泣き止め夏実。そなたの言いたいことは大方合っているから。」

全身を震わせている夏実の頭を撫でつつ話を進める。

「そなたの予想通り拙僧は妖怪だ。暗殺破戒僧、黒田坊。
まぁ、黒が愛称なのは嘘ではない。」

大分落ち着いた夏実の顔を見る。理解してくれているらしい。

「こっちに来ているのは拙僧の主人の護衛の為でな…「その主人って奴良くん?」
「ああ、リクオ様だ…って何故!?」
「気付かないほうがおかしいよ。及川さんもそうなんでしょう?」

隠してきた拙僧はなんだったのか…。

「拙僧ただの間抜けではないか…。」
「自分のこと隠し通せてるって思ってる時点で駄目だと思うよ?」

すっかり泣き止んだ彼女は追い打ちをかけてくる。

「ぴーぴー泣いておったくせに…。」
「だって、本当のことが知りたかったの。
…ごめんなさい?」

上目遣いをしてくる夏実に絆されつつ、会話を続ける。

「隠し事をしておった拙僧が悪い。
だが、激しい告白ももらったしな? 妖怪ごときで、嫌いになんぞならぬと。」
「あ、や、それは…!! いや、そうなんだけどね、うん…。」

真っ赤になって可愛らしい。

「不安にさせて本当に悪かった。だがな、拙僧も不安だったのだ。所詮化け物。嫌われたら一発で終わりであろう?」
「…私、そんなに信用ないのね。」
「いや、そんなこと…!!」
「うーそー。ふふっ」

本音を話す。
もう隠すことは何もないが、これだけは言っておこう。

「拙僧は夏実を離す気なんかさらさらない。
そなたの焼きもち、拙僧に比べたら可愛いものだ。

…拙僧は、夏実と生きていこうと思っている。
それじゃ駄目か…?」

ますます潤んだ瞳で抱きついてきた夏実。
肯定と取って良いのだろう、今はこの幸せを噛みしめる。






「なんで拙僧が妖怪だとわかった?やはり勘か?」
「私と一緒にいる時、たまに頭に角出てたよ…」



2009年05月12日(火) 11:39:35 Modified by ID:P3EJOw3Z0Q




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