柳田日記

○月×日
屋敷が騒がしい。鏡斎が何やら拾ってきたらしい。
聞けば、京都の花開院とかいう陰陽師の血を引く娘を捕らえたとか。物好きなことだ。
言葉遣いは「放さんかい、このボケェ!アホゥ!」と下品極まりないが、
ただならぬ霊力を秘めていることは私にもわかる。
もっとも術の媒介となる護符はすべて取り上げたそうだから、何もできまい。
鏡斎は座敷牢に放り込むように命じたようだ。何をする気なのやら。
まあ彼の「作品」の糧になり、山ン本さんの復活に役立つなら文句はない。

○月△日
屋敷が昨日以上に騒がしい。あの小娘が泣き叫ぶ声のようだ。
座敷牢を覗いて見ると、小娘が大勢の妖怪どもによってたかって犯されている。
素っ裸に剥かれ、股間から血を流し、「やめてえ!いやや!ああっ!」と
泣き喚く姿は、人間ならさぞかし痛々しいと感じるのだろうが、
怪談を生み出す風情には欠けているので、私にとっては鬱陶しい騒音でしかない。
それでも鏡斎にはとっては格好の絵の素材らしく、一心不乱に筆を走らせている。
頑張りなよと一声かけたが、耳に入らないようだ。
こうなったらあの小娘が狂うか死ぬかまで描き続けるのだろう。

○月□日
まだ叫び声が聞こえる。よく体力が続くものだ。
「もういややぁ!助けてぇお兄ちゃぁん!」だのと、いくら泣こうが助けなど来ないのに。
鏡斎はいいだろうが、私はうるさくて仕事にならない。出かけるとしよう。

○月☆日
地下鉄少女の働きぶりを見に行って帰ってみたら、泣き声が止んでいた。
ようやく死んで静かになったかと思って座敷牢を覗くと、驚いたことにまだ小娘は生きていた。
三日以上、入れ替わり立ち替わり妖怪どもに犯されているのに大したものだ。
ただし心は壊れているらしく、「おちんぽ、もっとおちんぽちょうらい」と
うわ言の様に繰り返しながら、腰を振り、両手で肉棒をしごき、口にも咥えている。
元々淫乱の素養があったのかもしれぬ。いかにも人間らしい浅ましさだ。
鏡斎はと言えば、こちらも飽きもせず書き続けている。描き上げた半紙が山積みだ。
こちらも大したものというか、呆れかえるばかりだ。

○月#日
物は試しにと鏡斎が勧めるから、私も小娘を犯してみる事にした。
私の方も最近良い怪談の話の種が見つからなかったので、気分転換になるかもしれない。
だが精液まみれで床に転がっていた小娘は、怯えるどころか私の下半身にむしゃぶりついてきた。
勝手に着物の裾をまくり、私の逸物をしゃぶって来る始末で、実に不愉快だ。
腹が立ったので蹴り倒し、後ろから犬っころのように犯してやったのだが、
「気持ちええよぉ!もっと、もっと突いてぇ!」などと尻を振って喜んでいる。
このまま中に出しては喜ばせるだけだろうから、引き抜いて顔に精液をかけてやった。
それでもうれしそうに顔にかかった精液をぺろぺろ舐めている。
当然怪談のネタになるはずもなく、馬鹿馬鹿しい時間の無駄だった。

×月×日
鏡斎の「作品」がようやく完成した。十二畳あまりの部屋を埋め尽くす数百枚の大作だ。
名づけて「喜怒哀楽図」。さらわれてきた時の『怒』、犯されている時の『哀』、
それが快楽に転じた時の『楽』、孕んだ子供が生まれた時の『喜』が、
数百枚の半紙の中で、小娘の表情に表れている。
そして鏡斎が一声かけると、次から次へと半紙から実体化して屋敷の外へふらふら出てゆく。
夜な夜な男の精を求めて街をさ迷う小娘の群れは、さぞかし良い怪談を産んでくれるだろう。
その本体の小娘といえば、既に数回妖怪の子を孕み、出産しているにも関わらず、
飽きもせず妖怪どもと交わっている。また腹が一段と大きくなっていて、次の出産も近そうだ。
「お兄ちゃん、好きぃ、もっとしてぇ」などと繰り返すだけで、もはや生ける屍だ。
せいぜい長生きして役に立つがいい。山ン本さん復活のお役に立つように。

(了)
2012年10月14日(日) 13:55:48 Modified by ID:99wFBwRdlQ




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