「青信号の犬」335〜

初出スレ:第3章335〜

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「いんやー今日も寒いねえ!大臣クン」
あっけらかんとした声が暗い廊下に響いた。兵士らをその声の方へと向うようにと、大臣が指図する。
年若い大臣は声の主を認めて、米神を押さえるポーズをとる。
「わざわざ、家畜小屋までいらっしゃったんですか?女王陛下」
「なんだね!いいじゃあないかぁ、自分の国のホリョくらい見たって!触ったって!」
女王陛下、と呼ばれた少女は両手を広げて大臣に文句を言う。
少女、いや、女王が動くたび衣装から、豊かな髪から芳しい香が漂う。
大臣の言う家畜小屋、捕虜収容室とは対照的な香りだ。既に(この部屋だけでも)死人が複数名でており、ほのかな死臭が糞尿に吐寫物の臭いと混じり悪臭を放っている。
「それにしてもひどいニオイだねえ!まいっちゃううね!てかどーするんだい?このひとたちは」
鼻をつまむ仕草をする女王に、大臣は大げさにため息をついて見せモノクルを掛け直す、「私は呆れています」ポーズをする。そして随分と冷え切った目をして、女王を臨む。
「陛下はどのようなお考えをお持ち・・・で?」
「ヤダなあ!ヤダなあ!大臣クンよ!私に意見を仰いでおいて馬鹿だとまた言うんだろう!?いいかげんお説教は飽き飽きさ!
・・・ホラいつものよーに君がどう指揮するのか待っているだろ!サアサア、早くしておくれよ」
ふんぞり返った女王を横目に、満足そうに微笑むと大臣は言った。
「代表を連れて来なさい」

「働かせてください!ここで働かせてください」
「・・・大臣クン、君はセントチヒロのカミィカクシィというジャパニメーションを観たかい?」
「あの会社の話は私に合いません」
上記は家畜のように繋がれた男の一番である。
物語の流れからすれば、登場する捕虜→反抗的な態度→教育的指導→砂を噛む思い、というのが王

道なのだが、この男は違った。
入場と共に土下座。そして開口一番に就職希望宣言。全入学時代がやってきたというのにだ。
スレッドの消費を考慮し、要約させていただく。
>325の447を参照
大臣は女王と捕虜の(一方的な)やりとりを横目に、帳面を取り出し書き付けた。
「あなたがたの食事は保障しますが、他は面倒見ませんよ。それでも良いのなら、誓約書にサインを」
床に這って名を書き付ける捕虜の姿を見届けると女王はのーてんきな声で放った。
「よかったねえ!まもろうね!私と君と大臣クンの国!」
捕虜と大臣は気を殺がれた声で、「そうだね。まもろうね」とこたえた。

均衡状態にあった隣国が動きはじめた、という報告を耳にして女王の顔は輝いた。
元首という立場、妙齢の女性であるにも関わらず、城の廊下を走りぬけ大臣の政務室の扉を開ける。
「攻めてくるの?攻めてくるの?隣国と戦争になるの?ねえ戦争?第一次大臣戦争勃発なの?」
「そうですね。攻めてくるようですよ。大臣戦争は終結しましたけど」
乱れた裾を指摘すると、大臣は女王に茶を勧め、仕事に戻る。
「本当?大丈夫なの?危なくない?財政難だったりしない?」
「ええ、大丈夫です。この間の捕虜も奴隷もいますし、植民地けっこうありますし」
「しょくみんちかー、アレだな!コーヒーとれたりするところだ!」
「そうですね。香辛料採れたり金山があったりするやつです」
メイドのエプロンを握ったりソーサーをなぞったりと、落ち着かない様子でいる。
本当に言いたいことをその場になって探す、女王の悪い癖であり、過去教育係であった大臣としてはとてつもなくむず痒い行為であった。
「なんです、気持悪いですね。さっさと仰い」
わざとけしかければ、バネのようにはねる。
「気持悪いとか言うのはないと思うよね!・・・ホラ王様だから!戦争とかチスイとかわかんないから!このままでいいのかな?とかおもうけど結局王様だから!どうしていいかわかんないから!」
女王の視線は大臣の手元の書類に向けられ、本棚に向けられ、メイドに向けられ、大臣に向けられた。
「そうですね、わかりませんね」
メイドに目配せをする。すぐさまメイドは退出した。使用人は壁ではあるが、壁に耳ありだ。危険は少ない方がよい。大臣は移動し女王の前にしゃがみこむ。下から大臣が見上げても、女王は机の書類を観ている。
「うん。でも平気なんだ!大臣がやってくれてるから!平気なんだろう?安心してていいんだよね?」
「そうですよ。安心しててくださいね」
自由に動く手を捕らえる。華奢では有るが、柔らかい。
「そうかー、いいのかー。普通にしてればいいんだな!いつもどおりだものな!」
「はい。落ち着いていましょうね」
手首に指を這わす。普段より熱が高い。即位して初めての侵攻だ。恐れるのも無理は無い。
「うん!おちつくぞー。でもドキドキするな!」
「いつもどおりに、任せてくださいね」
女王のワンピースのボタンをひとつひとつ外してゆく。ワッフル地のそれは柔らかく香っていた。
「ねえねえなんで脱がすの?ホラもうすぐ戦争じゃないか!いけないよね!」
「そうですね、寝間着で部屋を出るのはいけませんね。でも・・・いつもどおりでしょう?」
大臣の指は裸の腹をなぞった。柔らかな肉をそのまま這うようにしてのぼって行く。ほのかなふくらみに手を添えて大臣は告げる。
「あなたは見てるだけでいいんですよ」

大臣の手のひらは胸を包み、つめたい指はその頂をゆっくりとこねはじめた。そこはすぐに立ち上がり、淡く色づく。女王は身体をまるめて、大臣の両頬を掴んで鼻が触れそうなほどに寄せる。
「いいのか?いつもどおりで、仕事が出来なくて、みてるだけで・・・本当にいいのか?」
「いいんです。なにもしなくとも。そこにあれば」
うるんだ翡翠の奥にはなにも見えない。近すぎて、歪み、そこに何かあったとしても大臣が認めることは出来ない。
お慈悲を、と小さく呟いて唇を合わせた。
女王はそろそろと舌をさしだし、大臣の舌に誘われ絡まられ息も荒くなってゆく。苦しさに逃れようとすればするほど大臣は追い立てる。
耐え切れないというように肩に触れて引き離そうとすれば、逆に手を纏められ口付けはますます激しくなる。さしても大きくないはずの水音が、ぬめった舌の感触が女王の意識を乱してゆく。ぐったりとした女王に大臣はつまらなさそうに離れた。
「昔はキスが一番お好きでしたのに」
女王はゆるゆると首を振って否定する。唇をたどって喉元まで唾液でてらてらと光り、火照った頬には絹糸のような髪が張り付く。それをやさしく梳いてやると、女王は咳き込んだ。
「・・・ッは、くちびるがはれそうなのは、いやだ」
「我慢なさい、すぐによくなるんですから。ほら、濡れてきてるじゃないですか。苦しい方が良いんでしょう?」
「ちがっ」
指で割れ目をなぞられると、息を飲んで女王はその箇所を見た。今度はゆっくりと指を押し付けるようにして形をたどる。むず痒そうに女王は身をよじる。構いもせず大臣は指を曲げ差し入れる。
「あ!・・・だめ」
「だめ?だめ。そうですか」
大臣は乱暴にかき回した後、指をすぐさまひっこめ、代わりに頭をそこへ近づける。へそをぺろりと舐め上げると女王にしゃぶりついた。ひとつひとつのパーツを丹念に舐め、一滴も溢すまいと太腿に伝う蜜を啜る。女王は大臣の頭に手を添え苦しそうに喘ぐ。
「だめっ!ああ、だめ・・!だめだよ・・」
ひときわ大きな水音を立て、口を離す。涙と興奮にぬれた女王の目を見つめ、大臣は怪訝そうな口調で問う。
「何がだめなんです?仰ってくださらないとわかりかねますよ」
「足らないんだ!はやくっ・・・はやく、いれてよ・・・」
「堪え性がないですねえ」
呆れたような口調とは逆に大臣の目は笑っていて、女王を見据える。女王はこの目が苦手だ。幼い頃からずっと傍に居て時たまこの目に晒されたが、何を考えているかわからない大臣が怖かった。
女王自ら両脚を大臣の肩に掛けると、あの恐ろしい目に見られたくなくてつよく目を瞑った。大臣が小さく笑ったのが伝わる。
「そんなことをしてもね、してあげませんよ」



明くる朝、女王は御自ら庭を眺望できるテラスに立ち兵士たちを鼓舞された。
彼らは先陣隊であり、一番の辺境・激戦地に回される。奴隷階級も捕虜たちを中心に編成されていたその隊は苦々しい面持ちで伏せていることを女王は知らない。
彼らも一般兵と同じ様にあつかわれると思っている。首級を挙げれば一足飛びすると信じている。そんなこと一般兵内でも中々有りはしないのに。
勿論、大臣らが彼らに条件付で生活保障を申し出たことも、知らないだろう。


一部完

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シリーズ物:「青信号の犬」335〜 青信号の犬353〜 「青信号の犬」369〜 「青信号の犬」415〜 「青信号の犬」451〜 「青信号の犬」35〜 「青信号の犬 大臣編」(前半) 「青信号の犬 大臣編」(中)
2007年07月02日(月) 21:52:05 Modified by ID:+2qn2ghouQ




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