「青信号の犬」369〜

初出スレ:第3章369〜

属性:原作沿いルート 鬱的展開

謁見の間のすぐに小部屋があり、そこに連れられ強く頬を叩かれた。
赤くなった頬もそのままにぼんやりと大臣の顔を見上げる。うつろな色を宿した瞳が大臣を映す。

何が起こったのか理解できない、という表情で女王は大臣を見上げる。
半開きの唇にふつりと鮮やかな色をした血の珠が浮かぶ。未だに痛みを知覚していない女王を酷くさめた目で大臣は見た。薄氷のような瞳の中に女王がゆらぐ。
薄い唇をゆがめて大臣は言う。
「馬鹿」
たった一言の罵倒ではあるが、それは硬質さを持って女王に刺さった。一拍置いて女王の顔に焦りの色が現れる。大臣は何度も言う。

「あっあっあっあぁ、ごめんなさい!ごめんなさい!ねえ!やめてっ、ねえ、ごめんなさい!」
腕を頭上にあげ女王はうずくまる。大臣もそれを追ってしゃがみこみ、その腕を強く掴んだ。男にしては細身であるというのに、掴まれた痛みに女王はうめく。
「私は貴女の兄上じゃあないんですよ。そんなに怯えることないじゃありませんか」
耳元に唇を寄せて大臣は酷薄な笑みを浮かべる。米神を軽く吸うと、女王は小さく悲鳴をあげた。
耳や目元をくすぐるように大臣はくちで触れる。女王はそれを唇を噛むことで耐えた。
大臣の片手はドレスの襟ぐりを彷徨い、くつろげると鎖骨から徐々に上がってゆく。歯を立てて女王に口付ける。血がつよく薫る。探しあてた舌を削るようにして絡めとる。

ひたりと、喉元を大臣の手が覆う。白く華奢なものである。脈が速くなるのが伝わって、女王は離れようとするが無駄に終わる。ドレスを片手で器用に脱がしつつ大臣は徐々に力をかけてゆく。
苦しさからか、女王の目が細められぼとぼとと涙が溢れた。それはそのまま顎を伝って、大臣の手を濡らす。口だけでも放してやる、少し離れて見るその表情は大臣の歪んだ劣情を煽るだけだ。
突き飛ばすようにして長椅子に押し倒す。開放された気管は懸命に動き出し、待ち望んだはずの空気は女王の肺をちりちりと刺激した。
「!っ・・・は、ケホッ!ケホッ、コホッ・・・!***っ」
激しく咽ながら女王は大臣の名を呼んだ。すがるような声を大臣は一蹴する。
「そんな目で見ないで下さい・・・もっといじめたくなる。
 ・・ああ、あの時の彼のように抱いて差し上げましょうか?」
嗜虐的な笑みを浮かべつつ、赤くなった箇所に爪をたてた。喉が上下するさまが微細に伝わる。
「やめて!***やだ、はなして!ちがうのっ」
女王はもがき大臣から逃れようとするが、その間にもドレスは腰にかろうじて纏わるまでになっていた。
「ちがう!ちがうの!あ、あにうえは」

乾いた音が狭い部屋に響く。
「何が違うのです。事実は事実として認めなさい」
「やめてえ・・・」
黙りなさいと大臣は目で制す。すると女王は両手で顔を隠し、それ以外の抵抗をやめた。
鎖骨を舌でなぞりながら膝で脚を割る。女王はすすり泣いた。乱暴にされたことで兄との、大臣との記憶がごちゃまぜになりそうだった。
いじわるや冷たくされたことは沢山あったが、父王も后も誰も女王を見てくれなかった中で、ずっと一緒に居てくれたのは大臣だ。兄の話相手になるために連れられた筈だったのにいつのまにか女王の教師として近くにいた。
兄は后に似て玲瓏であり聡明だったが残虐で、よく幼い女王をいびり倒しては笑っていた。その響く笑い声を聴いて駆けつけるのは母ではなく、大臣。
女王の中で大臣はずっと「やさしいもの」のカテゴリの属していたのだ。詩歌ができぬと馬鹿にされても、いびつな刺繍を鼻で笑われても。
気の触れた兄は大臣の前で女王を穢した。兄は父王を殺し、母である后も殺め、妹をも手にかけようと訪れたのだ。その際大臣は片目の視力を失い、女王は一年余り言葉を失った。
不必要までに過保護な大臣と侍従らは綿菓子のように女王を甘やかしてきた。
だが、それも終わるのだ。悪魔のような兄を知るものは皆わずらって倒れていき、もう大臣とボケ始めた乳母しか残っていない。

せつない嬌声がもれた。女王の荒れた呼吸は熱を孕み、その熱に浮かされたように瞳がゆらめく。
大臣の愛撫に慣れさせられた身体は、心とは裏腹にとろけてゆく。執拗なまでの愛撫に顔を隠していた手さえ、大臣のそれを受けようと強く押し付ける始末。冷静になろうとすればするほど自身の快楽の種を見つけてしまい、更に羞恥は昂ぶってゆく。
平素と変わらぬ顔で大臣は翻弄し続ける。痛みとも快楽ともつかぬものばかりが女王を追いたて弄ぶ。
いつもの、じゃれあいの延長のような行為ならばここで終わりだ。
ぎりぎりまで追い詰めておいて、そこで終わりにしてしまう。秘所に大臣が侵入することはあっても、それは指で。猫が捕らえた獲物を甚振るように、そのさきはない。求めても与えられない。

だが今は違う。
大臣は女王に告げた。「兄がしたようにする」と。甦る恐怖と共に暗いところからふつりと湧き上がる欲望。
とうとう潜り込んだ大臣の指を、きゅうっとしめつける。肉芽を摘まれて果てかける。それでは物足りなくて大臣にすがる。もっと欲しくて、懇願する。
「・・もっと、ちょうだぃ…いれてぇ。さみし、さみ、しいよ」
知らずに腰が揺れた。腰骨を掴んだ大臣の手に力がこめられると同時に、もう一本指がすべりこむ。二本に増えた指は早々に馴染み、ばらばらと胎内でうごめく。
「もう一本いれます。・・・貴女が私好みに育ってくれて、本当に嬉しいですよ。
 今回は私がしますけど、次はあの男にやらせてみましょうか。あれはよく彼に似ている…そう思いませんか?」

身体のうちに何か生き物がいるようだった。軽かった水音は粘り気を含んでぐちゃぐちゃと響き、聴覚を刺激する。あの男、というのが誰を指すのかはわからぬが、凄艶な笑みに恐れをなして女王はいやいやと首を振る。
そんなことより――はやくいれてほしい。
「***っ!さみし、い。せ、つないよぉ」
大臣は呆れたように息を吐いて指を抜く。そして息をつく間も与えずに、自身をあてがい先端をうずめた。
ヒュッ、と女王の喉が鳴った。むず痒い感覚に密かに狂喜する。長く、求めていたことが現実になるのだ。
ずぶずぶと入り込んでくる雄をよだれを出して受け入れる自分はなんて浅ましいのだろう。
挿入されただけで全身がひくついた。充分すぎるほどに慣らされたためか、喜びが勝るのか痛みは感じない。
「物欲しそうな顔をしないでください、はしたない」
「!ひゃんっ」
上気してはいるが無表情の大臣に咎められて、何故か内股がひきつった。大臣の眉根が寄せられる。叱責されて反応した自分が恥ずかしい。
ずるりと引き抜かれる感触におもわずつぶやいた。
「・・・どうして?」
「どうしてでしょう?なんだか面倒になりました。そうだ、乗って動いてくれませんか」
手を引かれて起き上がる。密着していた部分が外気に触れてぶるりと震えた。大臣は体勢を整えると女王を支え、ゆっくりと降ろした。
息が抜けない。女王はより増した圧迫感に息を詰める。先までとは違い、だるそうな雰囲気の大臣を見て悲しくなった。そして気付く。

もしかして、わたしは大臣に・・・焦がれていたのか・・・?
 ・・・・・・だが大臣はわたしを愛してはくれぬのだ。

泣きながら自身の快楽を追い求めて女王は腰を前後に動かした。大臣の手を胸に抱きしめ、一心不乱に腰を動かす。そうして大臣が果てたか知れないまま、意識を手放した。

自分の上で崩れ落ちた女王の衣服を整え、大臣は女王を子供のように抱え上げた。
そのまま女王の部屋へと連れて、ベッドに横たえる。身体を清めるということは大臣の頭には無い。なぜならまだ、用事があるからだ。大臣は赤く染まった頬にやわらかく口付けて部屋を出て行く。
すぐに戻ってきた大臣は手押し車に一人の男を載せていた。元捕虜である。手足を拘束され、猿轡を嵌められ、これでは捕虜であった頃より待遇が悪い。
ガタンと音を立てて車輪が浮き、落とされる。蹴落とされなかっただけましだと思うが、代わりにしこたま肘を打ちつけた。
背中に体重をかけ固定し、大臣は一本の針を突き刺した。痛みに元捕虜がうめく。頭上で声がした。
「五分。五分でよくなります」
指先に熱が溜まるのを元捕虜は感じた。次第に全身まで熱が巡る。大臣は元捕虜の上に腰掛けたままなにやら語った。重みで身体がひりひりとしている。理不尽な扱いは多く受けてきたが、無性にイライラとした。
「イけないんですよね。どうにもね、イけないんですよ。ねえ、君ちみどろの女性に勃ちます?」
知るか、と言いたいが口は塞がれていて抗議できない。上から動かない大臣を振り落とそうとして身をよじると身体の異変に気がついた。
「ED?これ、EDかな?でも、一応は勃つわけです。むしろこう・・・奉仕している時の方が楽しいというか」
布が擦れて痛かった。下着が元捕虜を締め付ける。床に押し付けられた事で陰茎が立ち上がり始めたのを強く自覚した。元捕虜の頭を疑問符が駆け巡る。
「大抵嫌がるんですけど、みんな口だけですし。挿入してもねえ、精神的にイけないから。精神的に?気持いいと言えば気持いいんですけど…どうも」
何もせず触れてもいないのに達しそうだ。頭上で下らない話を男にされて達するのもバカバカしい。だが男は痛いほどに張り詰めてきている。
「うーん。求める愛しかたが違うんでしょうねー?」

懐から時計を出して大臣は立ち上がった。重みから解放される振動に達しそうになり、口内の布を強く噛んだ。
「五分経ちました。君はベッドの女性を好きにしていいですよ。殺めるといけないので手枷は嵌めたままどうぞ」
拘束を解かれ、下をくつろげられる。平時ならば屈辱の他ないが、今だけはそのまま女性の下に駆け出しそうだった。元捕虜はその場にとどまり、熱をやりすごそうとする。見かねて大臣は声を掛けた。
「チャッチャッと入れて出した方がいいですよ。変に我慢すると脱水で死にますよ」
元捕虜は心中で謝罪の言葉を並べ立てるとベッドに近づく。その上には女性が、女性というには幼すぎたが所々に欝血の痕がなまめかしい体が横たわっていた。
音を立ててつばを飲み込む。元捕虜は大臣を振り返った。大臣は酒を口にしていた。これから行うことを余興にされているようで、酷く侮蔑された気になる。
「どうしたんです?辛いでしょう。ああ、酒はやりませんよ。まあ…薬入ってますから、ダメってこともないでしょうけど」
「違う。・・・このひとは、王ではないのですか」
喉がカラカラに渇いていた。薬が強すぎる上、女に欲情したのか静かに炎がともる。
「そうですよ。彼女はここの王です。それがどうかしました?」
ケロッとして口にした大臣を恐ろしく思う。謁見時の鋭い視線もそうだが、倫理観を持ち合わせていなさそうな今の声音も奥が知れない。
「さあ、さっさと犬のように腰をふりなさい。眠たくなってきました」
あくびをかみ殺すかのような顔をしつつ、向けられた殺気に急かされて元捕虜は女王に向き直った。

自由にならない手で、少しでも女王の秘所をほぐそうと手を伸ばす。襲を拡げるとこぽりと少量の白濁液と愛液がこぼれだす。
イけねーって言ってたじゃねーか
内心突っ込みつつどうにかそれらをかきだすと、白濁液が大臣の放ったものではない事に気がつく。顔を近づけると今までとは比べられぬほどの女が匂いたち、それが女王から分泌されたということを思い立つ。
「遠慮も準備もいりませんよ。ホラずずいと」
言われなくとも、元捕虜は男根を無防備な秘所にあてがい一気に貫いた。獣のように腰を打ち付ける。
肌が打ち合う音が何度も響く。悪夢を見ているかのように呻いた女王から逃れるように、元捕虜は白い肌を欝血の数まで焼き付けるように見つめ続けた。
早々に中で爆ぜるが熱は冷めず、何度もむさぼる内に女王も反応を徐々に現してくる。途切れ途切れに大臣の名を呼んだ。それに返事をすることは無く、元捕虜を促し大臣はただ座していた。
とろんとした瞳が元捕虜を捉えて言い放って伏せられる。
「・・・あに、うえ?」
それきり反応が返らないにも関わらず、元捕虜は精を放ち重なるようにして伏せた。


大臣は意識のないふたりを前にしてひとりごちた。
「子供ができたらどうしましょうか」
しばらくして、考えても仕方がない、というように紙を持ち出し書き付ける。
いつでも始末できるように近くに置いておこう。近くで武芸に秀でた者が多い場所。――城の警護につけよう。
「子供ができたらどうしましょうか」
楽しみでしょうがない、というように大臣は呟いた。

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2007年07月02日(月) 21:56:45 Modified by ID:+2qn2ghouQ




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