「唯一」130〜

初出スレ:第四章130〜

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唇を柔らかく触れ合わせて頬を撫でると、ファリナは嬉しそうに頬を緩めた。
アルスレートはそれにつられるようにもう一度唇を触れ合わせ、その唇を甘く噛んだ。
きゅ、と、回されていたファリナの腕に力がこもる。
宥めるように頬を撫で、舌先で唇を辿る。
ファリナはあえかに唇を戦慄かせ、唇を開いた。
あまりにも従順なそれに、アルスレートの心は歓喜に震えた。
舌を差し入れて口内をくまなく弄ると、ファリナから鼻にかかった甘い声が零れた。
「…っん……」
アルスレートが舌を絡めれば、ファリナはたどたどしいながらも応えてくる。
舌を絡めるような口付けは、一度あるかないか、という程度だろう。
どうすればいいかわからない、と戸惑っているのが手に取るようにわかる。
それでも何とか応えようと、眉を寄せながら応えてくれる。
それがとても愛おしい。
煽られるように舌を絡め続けるが、ファリナが苦しさに身を捩れば唇も舌も容易く離れた。
「っは……し、死ぬ、かと、思う、た」
「死にませんよ。このくらいでは」
くすくす、と、小さく笑いながら色付く頬に口付ける。
「くすぐったい、ではないか」
「すみません」
笑いながら何度も口付けを落としていては、謝罪になっていない。
馬鹿者、と、詰る口調は甘える響きを持っている。

ふ、と、アルスレートが頬に口付けるのをやめた。
瞳を閉じてその口付けを受けていたファリナがアルスレートを見上げる。
見上げた先で、アルスレートはひどく真剣な顔をしていた。
「?」
アルスレートは疑問に思うファリナの頬に手を添えて顔を覗き込み、触れ合わせるだけの口付けを一度落とした。
「大切なことを、まだ言っていませんでしたね」
「大切な、こと?」
肯定するようにアルスレートの顔に苦笑が浮かぶ。
本当なら、告げるべきではないと思う。
けれど、ファリナの心を思えば―自分のため、というのも多分に含まれるが―……。






「――愛しています、喩えようもないほどに」
甘い微笑と共にアルスレートがそう告げたときのファリナの顔を、どう表現したらいいだろうか。
ぽろり、と、細められた瞳から涙が零れ、次いで現れるのは綻ぶ花のような麗しい微笑。
しかしそれだけではなく、甘く濡れた女の色香も窺える。
「……名を呼べ」
「御名を?」
意味を捉えかね、アルスレートは問いかけた。
嬉しくて仕方ない、と、如実に告げる微笑のまま、ファリナは尊大に告げる。
「さすれば、そのことは許してやろう」
「………ファリナ様?」
ぺちん。
「った…痛いです」
「嘘をつけ」
音からして痛そうではないではないか、とファリナはくすくす笑う。
くすりと笑い、痛まない頬を押さえながら、アルスレートは問いかける。
「では何と?」
「わからぬか、アルスレート?」
「……ファリナ」
恐る恐るそう呼べば、良くできた、と言わんばかりの笑み。
ファリナは、ぐ、と腕に力を入れて引き寄せた。
引き寄せられるままにアルスレートが顔を近づけると、ファリナはそっと唇を触れさせ、囁いた。
「こういうときは、名を、呼ぶものであろう?」
「そうですね」
「ならば、私の名を。……呼ばれたい、アルスレート」
「……はい」
そう願われて、拒否する理由などない。
この世に唯一つの、美しい響きを持つ尊い名を、囁くように音に乗せる。
嬉しい、と、目を細め、笑みを作る唇に、自分のそれを合わせた。
応えるように、薄くファリナの唇が開かれる。
その誘いのままにアルスレートは舌を差し入れ、絡めた。
頬に添えていた手で一度優しく撫で、首筋を撫で下ろす。
くすぐったいのだろう、ぴく、と、絡め合ったファリナの舌先が震える。
もう片方の手で、しがみ付くファリナの腕を緩めさせる。
そうしてできた隙間に撫で下ろした手を滑り込ませ、夜着の上から豊かな胸に触れた。
触れるか触れないかの強さで、やんわりと撫でる。
ちゅぷ、と音を立てて唇を離し、唇と唇を繋ぐ糸を拭い去る。
荒い息を繰り返すファリナの頬に口付け、耳へと舌を這わせていく。
食んで、舌を滑らせる。形を辿るように。




「っあ…?」
驚いたような、声がファリナの口から漏れる。
ほとんど力を入れずに胸を撫でながら、耳に唇を触れさせたままでアルスレートは問いかける。
「どうしました?」
「ぁ…い、いや…」
本当にわからない、というような声でファリナは答える。
「……いいんですよ」
アルスレートの許しにファリナは、こく、と、頷いた。
何がいいのかわかってはいないのだろう、と思いながらもそれ以上は言わず、かり、と、耳朶を甘噛みする。
それと同時に乳房を包み込み、感触を楽しむようにやんわりと揉み、撫で上げる。
何度か繰り返すうちに、その中心が夜着とアルスレートの掌とに擦られ、徐々に立ち上がってくる。
立ち上がってきたそこを転がし擦りながら、首筋に舌を這わせる。
重ねて付けてはいるが、忌々しい鬱血が目に入る。
その鬱血に吸い付いて更に色を濃くしながら、肌を下っていくと、鎖骨まで下りたところで夜着に阻まれる。
編み上げになっている胸元のリボンを解いて引き抜くと大きく広がり、胸が露わになる。
ファリナが夜着を掻き合わせて胸元を押さえた。
恥じ入っているにしては、夜着に皺を作るファリナの指先に力が籠り過ぎている。
「ファリナ?」
「……あまり、見るでない。私は、穢れている」
疑問に思い問いかければ、ファリナの染まった頬が翳を帯びた。
ほとんど反射といっていいほどに、アルスレートは即座に否定する。
「馬鹿な。貴女ほど美しいものを、私は知りません」
「いくらでもあるであろう」
「いいえ。ありません。……貴女は、美しい」
言い聞かせるように、ゆっくりと囁く。
アルスレートにとって至上の存在であるファリナの、どこが穢れているものか。
ファリナが気に病む必要など、ありはしない。
こうして触れることを許され、アルスレートの心は狂喜に満たされているというのに。
「何度でも言います。貴女は美しい」
「っ、ぅ…」
どれほど耐えていたのだろう、とめどなく零れる涙が哀しい。
「貴女が貴女であることを失わないなら、貴女は美しいままなんです。貴女を穢せるものなど、存在しません」
強張る身体を、心を解すように、アルスレートは言葉を重ねながら唇で涙を拭う。
「私の目に映る貴女は美しい。……だからどうか、恐れないでください」
こく、と、頷きながらも、力が抜け切っていない夜着を掴む手に、アルスレートは口付けを落とす。
何度も繰り返すうちに力が抜けていくのを感じ、ゆっくりとその指を外していく。
指を外しても、夜着に胸元は被われたままだ。
外した指に指を絡めながら空いた手で夜着を開き、現れた乳房に口付ける。
ぴく、と、絡められたファリナの指が震える。
ファリナはまだ、気に病んでいるのだろうか。
あれほどの仕打ちを受けていれば、それも仕方ないか、と、アルスレートは思う。
気にするな、などとは言えない。何の意味もない。かえって傷付けることになりかねないのだ。
今ある傷を、抉るような愚を犯してはならない。





アルスレートは乳房の中心に向かって舌を這わせた。
ぎゅぅ、と、絡め合う指に力が籠る。
そのまま口元に引き寄せながら、もう一方の手は肌を滑り肩へ向かう。
ファリナの手の甲と指先に口付けを落とし、向かった先の肩に僅かにかかるレースの飾り袖を腕から引き抜いた。
絡め合った指を離し、ファリナの掌に口付ける。
つ、と、指先で腕を辿り、その肩から飾り袖を落として引き抜くと、アルスレートは身を起こした。
見上げるファリナを見つめながら、アルスレートは上衣を脱いだ。
いくつもの傷跡が残る、均整の取れた上半身が現れる。
傷跡が数多いのは、儀式や式典の時以外、その身を鎧うことがないゆえだ。
戦場に赴く時さえ、例外ではない。

「アルスレート…」
微かな呼び声と共に、ファリナの両腕が伸ばされる。
にこり、と、笑んでアルスレートが覆い被さると、その首にファリナが腕を回し、ぎゅぅ、と、しがみつく。しがみつかれて密着したため、押し付けられて形を変える乳房。
それに、どうしようもないほどに煽られる。けれど。その思いのままに攻めることはしない。
ファリナにとって、行為は苦痛でしかない。抱かれる悦びを知らない。
苦痛ではないことを、忌避すべきことではないことを、教えなければならない。






すぅ、と、ファリナの足を撫で上げ、いまだ下肢を覆う夜着の裾を開いていく。
リボンが引き抜かれているため、容易く左右に滑り落ちた。
曝された腹部を撫でて下着のラインに指を這わせると、アルスレートの指先がサイドのリボンに辿り付いた。
「これ、誰の仕業です?」
そのリボンの結び目に指をかけて軽く引きながら問いかける。
慌てたようにファリナがアルスレートの手を押さえた。
「ひ、引くでないっ」
さすがに恥ずかしいのだろう、かっと染まった頬が見える。
誘惑してくれたときとは大違いのずいぶんと可愛い反応に、笑みが零れる。
「わかりました、引きません。…それで、誰なんですか?」
「だ、誰でも、いいであろうっ」
ファリナは答えないが、予想は付く。恐らくセフィラだろう。調達したのは他の侍女かもしれないが。
渋るファリナに「こういうのが好きなんですよ」とでも言って身に着けさせたに違いない。
アルスレートがリボンから手を離しても、ファリナはしっかりとリボンを押さえている。
ファリナがリボンを押さえているために無防備になった腹部を撫で上げ、乳房へと指先を向かわせた。
包み込んでやわやわと揉みがら、ぷくりと立ち上がる箇所を指の腹で擦る。
ぴくぴくとファリナの身体が震え、アルスレートの手に震える手が添えられる。
「どうしました?」
「どうした、らいいか、わから、ぬ」
アルスレートは答えず、そこに唇を寄せた。ねっとりと舌で転がし、歯で挟んで扱く。
「ひゃぅっ!?」
ファリナから、艶めいた声が上がる。
アルスレートは一度顔を上げ、ファリナを見た。
よほど恥ずかしかったのだろう。耳まで赤くして、唇を両手で押さえている。
「そう、それでいいんです」
ファリナが初めて見る、男の顔で、アルスレートは笑った。
「感じるままに声を上げてください?」
「へ、変な声、だ」
ぷるぷると首を振り、唇を両手で覆ったまま、くぐもった声でファリナは答える。
「――その声が聞きたい」
命令調でありながら強制力はなく、むしろ願うような響き。
アルスレートのお願いなど、これまで、手で足りるほどしかない。
う、と、詰り、ファリナは顔を逸らした。ずるい、そう思う。
知っているのではないか、とさえ思う。
持てる全てを捧げてくれるアルスレートの頼み事は全て叶えよう、と、決めていることを。
だがそれは、ファリナの中で定めたこと。アルスレートは知るはずもない。
うぅ、と、小さく唸り、唇を覆う手を退かす。
「………わ、かった……」
嬉しそうに笑い、アルスレートは再び乳房に唇を寄せた。
片方を含み、歯で扱き甘噛みする。もう片方は、掌で、指の腹で捏ね回し、摘む。
「あぁッ!あっ、あ!」
声を上げながら、何故、と、ファリナはぼんやり思った。
何故こうも違う。
あの時は、あんなに気持ち悪かったというのに。せめてもの抵抗に声を上げなかったのに。
今は、たとえ願われなかったとしても、声を耐えられそうにない。
これが、望む相手に触れられる、ということか。






快感を引き出すために熱心に愛撫しているアルスレートの手が、ファリナの身体の線に沿って下りていく。
それにすらびくびくとファリナは身悶える。
「可愛い方ですね」
手を追うように乳房から離れたアルスレートが肌に吐息がかかる距離でくすりと笑み、囁く。
「な、にを、っ!」
「褒めているんですよ、ファリナ」
「う、ぁんっ」
きゅ、と、摘まれ、嘘を言うな、と言いかけたファリナは背を撓らせて甲高く啼く。
「ほらね?ここをちょっと摘んだだけでこうなんですから」
「ゃ!」
「いや、ではなく、いい、っていうんですよ?」
くすくす、と、笑みを零してそう言い、アルスレートは滑らかな腹部に口付けた。
「っ」
ちりっ、とした小さな痛みに、小さく声を上げた。アルスレートが吸い付いたのだと理解する。
何度も腹部に吸い付かれ、胸に残る手に突起を捏ね擦られ、摘まれる。
じん、と、身体の奥深くが、甘く痺れる。初めてだった。
もっと、と強請りそうになる。それはなんだか悔しくて、ファリナは口を噤んだ。
下着を通り過ぎたアルスレートの手が、ファリナの太腿を撫で下ろして片足を立てさせた。
そうしてそのまま、足を持ち上げる。
恭しく両手で包み込んで捧げ持ち、そのつま先に舌を這わせた。
ちゅ、と、口付けて、そのうちの一本を口に含み舐る。
驚いて起き上がりかけたファリナの足が、びくん、と、震えた。
「んぁっ!」
ぴちゃぴちゃと一本一本丁寧に舐られ、ファリナは信じられない思いで身悶えた。
足を舐められて気持ちいいと思うなんて、と。
けれどそれも、もう片方の足も同じように舐られる頃には、消え失せていた。
「あ、ぁ……ん…」
素直に快感を得ていると知れるファリナの媚態を見ながら、これならば、と、アルスレートは思う。
肝心なところに触れていないのに、甘く蕩けるこの反応なら何も問題はないだろう。
は、と息を吐いて、アルスレートは早く押し入りたいと思う心を落ち着ける。



ファリナの足の間に身を置いて、太腿へ、更にその奥へと舌を這わせながら向かう。
太腿をぺろりと舐めながら、指先で下着の上から触れる。
ぐ、と力を入れれば、濡れた感触が指に伝わった。
何度か擦るうちに、下着の内側に隠された肉芽を探り当てた。
「ひぁっ!」
びくん、と、ファリナの身体が仰け反る。
「濡れて、気持ち悪いでしょう?取ってあげますね」
言うが早いか、アルスレートは肉芽をぐりぐりと押したまま、両サイドのリボンを口で解いた。
「あ、は…あぁっ」
下着を取り去ると、びくびくと身体を跳ねさせるファリナの秘裂が露わになる。
そこはしとどに濡れ、アルスレートを誘っているかのようだ。
たまらず、指を滑り込ませた。くちゅ、と、音を立てる。
「あっあぁっ!」
「こんなにして…」
滑り込ませた指先で探りながら、舌先で肉芽を暴き出す。
「きゃぁんっ」
大きく身体を波打たせたファリナが、アルスレートの頭を押す。
しかし悦楽に解けきったファリナの力では、添えられているようなものだ。
「あ…ん、はっ……やぁ!」
びく、と一際大きく体が跳ねた。とろり、と、更に蜜が溢れてくる。
見つけた。ふ、とアルスレートは笑う。
見つけたそこを、指を増やし、擦り合わせるようにしながら攻め立てる。
そうしながら肉芽を甘噛みしてやると、きゅぅ、と、指がきつく締め付けられた。
悦んでいる。肉芽を食まれ、指を差し込まれ、掻き回されて。
耳を打つ淫靡な水音が大きくなった。
「ア…ルス、レ…ト」
途切れ途切れに名を呼ばれ、アルスレートは顔を上げた。その口元は蜜で濡れている。
「どうしました?」
「へ、変、にな、る……怖、い」
アルスレートの指を咥え込み、蜜を零しながらひくひくと蠢くそこが、絶頂を迎えようとしている。
「変になるというなら、なってください。大丈夫、全て受け止めてあげますから」
「ゃ…だ……な、にか、く…る……こ、わい」
「それが普通なんですよ。それにそれは、いく、っていうんです」
言いながら、く、と、指を折り曲げ、肉芽を擦り上げた。
「っぁ、あぁぁぁっ、い……くぅ!」
ファリナが仰け反り太腿を痙攣させ、咥え込んだアルスレートの指をぎゅぅ、と、きつく締め上げた。
アルスレートが指を引き抜くと、泡立った蜜がどぷりと零れた。
「見てください、ファリナ。貴女はこんなにいやらしい身体をしているんですよ」
「ぁっ…だ、だが…」
蜜が滴るほどに絡む指を掲げ、それを舐め取りながらアルスレートは言う。
しかし、ファリナは快楽に瞳を潤ませ頬を紅潮させながらも、悲しげに顔を逸らした。
「あの方の言うことなど、戯言に過ぎません。こんなに蜜を溢れさせる身体のどこが不具ですか」
指を這わせれば、くちゅり、と、音を立てる。



「ね、聞こえるでしょう?……それとも、まだわかりませんか?」
ファリナは答えない。なんと言っていいのかわからないのだろう。
アルスレートは秘裂に顔を埋めた。
じゅ、じゅる、と、音を立てて蜜を啜る。舌を差し入れ、絡めるように掻き回す。
微かに血の味を感じ取る。先程蹂躙したときに傷を負ったからだろう。
だが、これほど濡れているなら、さしたる苦痛はないはずだ。
ファリナは身を離そうと捩るが、がっちりとアルスレートに太腿を押さえ込まれていてままならない。
喘ぎ仰け反るたびにアルスレートの頭に置かれたファリナの手に力が入り、より押し付ける形になっていることに気付いているのだろうか。
「貴女は私に触れられて、こんなに悦んでいるんです」
「あ、も…も、ゃめっ……お、かし、くな、るぅっ」
一度絶頂を迎えた秘裂から伝わる快感に、ファリナの気が狂いそうだ。
「そう、ですか」
す、と、アルスレートは身を引いた。
打って変わり、あまりにもあっさりと引いたアルスレートを疑問に思い、ファリナは快楽に潤む瞳を向ける。
アルスレートは、下衣を脱いでいた。
「っひ!?」
初めて直視した男のモノに、ファリナは悲鳴を上げた。
「そ、そんな…無、無理…」
「大丈夫、ちゃんと入ります。一度は入ったんですから」
そう言われても納得できるものではない。が。
「ファリナ」
覆い被さるアルスレートに名を呼ばれ、観念した。太腿に、熱く硬いモノが当たる。
くちゅり、と、秘裂を掻き分け、熱い塊がゆっくりと押し入ってくる。
「ぁ、あぁっ!」
ず、ず、と、奥まで満たされる。
痛みは、なかった。ぞくぞくとした快感が、ファリナの身体を駆け巡る。
「いやらしい顔、ですよ」
ちゅ、と、頬に口付け、悩ましげに眉を寄せたファリナの顔を覗き込む。
ファリナは顔を両手で覆った。やはり恥ずかしいのだろう。
そう思いながらもアルスレートはその両手を掴み、自分の背に回させた。
「私にしがみついていてください」
ファリナがしがみついたのを確認して、ゆっくりと律動を始めた。
熱く蕩けたファリナの膣は、アルスレートを歓迎して締め付ける。
悦ばせることを忘れてしまいそうなほど、強い快楽をアルスレートに与えてくる。
いけない、と、アルスレートは熱く息を吐いた。



そして、ひとつのことを思い出す。
「ファリナ」
「ぁ、っん……な、ん……」
「約束を、果たしましょう。……あの、遠く幼い日の」
「っぁ、ほ、んと、うか……?」
「ええ。ですから、待っていて、くれますか?」
「っう、れし………っん、ぁ!」
嬉しい、と、喘ぎながら微笑んで告げるファリナに愛しさが込み上げる。
ぐ、と、突き上げると背を撓らせ、アルスレートの背に爪を立てた。痛みは、感じない。
そしてねだるように、ファリナが顔を近づける。
「まだ、ダメです」
「な、っぜ…?」
突き上げられて、息を詰めながら問いかける。
「まだ、貴女の味がします」
ふ、と、荒い息でアルスレートは答える。
味?、と微かに首を傾げるファリナに苦笑する。
「貴女の、蜜の味、ですよ」
言い直すと、快楽を得て染まっていた頬が、さっと、さらに赤みを増す。
「どうします?」
うぅ…と、しばらく悩んで、ファリナは唇を寄せた。
して、という無言のおねだりを受けて、唇を食み、舌を差し込む。
それと同時に突き上げる動きから、腰を回し、掻き回す動きへと変える。
「ん、ぅぅ…」
もしかしたら抗議したのかもしれない。
そう思い、アルスレートが唇を離そうとすると、力のあまり入らない腕で、なんとかすがり付いてくる。
差し込まれた舌に、何とか応えようとファリナが懸命に絡めている。
愛しい。どうしてこんなに愛しいのか、わからない。もう、疑問に思うことさえ愚かな気がする。
「ん、んぅ……んふ、ぅ」
苦しそうな息遣いに、すぐに離してやる。そう長くはない口付け。
「っはぁっ……はぁ、は…」
「した、でしょう?」
「んっ……へ、んな、あ、じ……ふぁっ!」
「そう、ですか?私には、最高の美酒の、ようですが」
そういって、また突き上げる動きに切り替える。緩急を、強弱を、つけて。
乳房を揉みしだき、摘み、捏ね回す。
そうしながら肉芽を剥き、擦り上げる。
「あ、ぁっ…あぁっ!」
びくびくとファリナの膣が痙攣し、強くアルスレートを締め付けた。絶頂が近い。
子が欲しい、と言ったことは忘れていない。
けれど、やはり…と思い、身を離そうとしたアルスレートをファリナは弱々しく抱き締めた。
「ゃ…あっ!……は、なさ、な………ぁう!」
もう、耐えられなかった。
思いのままに強く突き上げる。応えるように締め付けが強まった。
肌がぶつかる音と、互いの荒い息遣い。そして、ぐちゅぐちゅという淫猥な水音が響く。
数度強く、奥まで叩きつけられる。
「ぁっ……はぁ、あぁぁっ!!」
ぴったりと合わされた身体の奥深くで、アルスレートのものが爆ぜた。
どくどくと熱いものが注がれるのを感じ、びくりと震えてファリナの意識は闇に沈んだ。
「っ、はぁ……ファリナ?」
アルスレートは顔を覗き込んだ。ファリナは気を失っていた。いく筋も涙の残る頬を撫でる。
「……やりすぎてしまいましたか。…困りましたね…」
いまだ硬度を保つそれを引き抜きながら苦笑する。
一度でなど、満足できない。しかし、だからと言って叩き起こすなど出来るはずもなく。
仕方ない、と、アルスレートは諦め、大切な宝物のようにファリナを抱き締めて横になった。







「ん…」
温かな何かに包まれ、ファリナは目を覚ました。
まず先に、逞しい胸板が目に入る。そのまま視線を上に向けると、アルスレートの顔があった。
包み込むように抱き締めているのは、アルスレートの腕だ。
そういえば、と、ファリナは思い出す。
意識を失う直前、途切れ途切れに、離さないで、と願ったことを。
そして、腹の奥にアルスレートの精を注がれ、満たされたことを。
下腹部を撫でる。この奥に――。
かっ、と、頬が火照る。恥ずかしい。願ったことなのに。

ぷるぷる、と、小さく首を振り、意識を切り替える。
―――やることが、ある。
アルスレートを見る。まだ、寝ている。だが、もう起きるかもしれない。
起きないように、強制的に深く眠らせるための呪を、小さく小さく唱えた。
「……」
腕を解き、半身を起こす。そっとアルスレートを仰向けにした。
身体をずらし、体制を整えると、とろ…と、零れる感触がする。
「っぁ……」
切ない。その思いを、もう一度小さく首を振って振り切った。
しくじるわけにはいかないのだ。



紡がれる声は、高く低く。
力を音に乗せ、調べの如く。
ファリナが力ある言葉を紡ぐたびに、目を射ることのない柔らかな光が増していく。
「―――、為さしめよ」
最後の一言が紡がれると、それまでのことが幻であったかのように夜の闇に包まれた。
力の残滓さえなく、ただ、やんわりと月の光が射すばかり。
「……」
強制的に深く眠らせたアルスレートの身体の上に、自分の身を乗せた。
逞しい胸元に頬を寄せ、甘えるように擦り寄る。
とくとく、と脈打つ鼓動に耳を澄ませ、ひとりごちた。
「そなたが知れば、怒るであろうか、泣くであろろうか……それとも、嘆くであろろうか…」


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2007年08月18日(土) 14:58:10 Modified by ID:+2qn2ghouQ




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