「唯一」242〜

初出スレ:第四章242〜

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「んっ、んんぅ」
激しく突き上げながらアルスレートは唇を離した。
「いい、ですよ?」
うねり締め付ける壁に絶頂の兆しを感じ、そう告げる。
背に腕を回し、しがみつきながらファリナは首を振った。
「強情な方、ですね」
苦笑を口元に上らせながら胸を揉みしだく。
それは少々手荒だが、すでに快楽に蕩ける身体には甘い刺激にしかならない。
「ああ、そうでしたね」
納得したようにアルスレートはファリナの背に腕を回し、繋がったまま抱き起こした。
「あぁっ!」
自重によって更に奥深くまでアルスレートを受け入れる形となり、ファリナは嬌声を上げて仰け反った。
「貴女は、こちらのほうが好きでしたね」
くすり、と、笑みを零しながら耳朶を甘噛みする。
耳を舌で弄り、肉芽を押し潰しながら数度突き上げると、限界だったファリナは容易く絶頂を迎えた。
ぎゅぅ、と、締め付ける壁に達してしまいそうになるが、アルスレートはそれを押さえ込んだ。
「…っ、ま……また……」
「……これに懲りたら迂闊なことは言わないことですね。私のような、餓えたケダモノには」
その言葉に、ファリナはぼんやりと快楽に蕩ける鈍った頭を何とか働かせようとした。
しかしなにも考えられない。目の前の愛しい男のこと以外は。
快楽に浸り潤むファリナの瞳に、あまり考えられないのだと思い、アルスレートは笑う。
「私にあわせたら、貴女は持ちません。それにそんな心配しなくても、ちゃんと満足していますよ」

満足しないはずがない。
幾度となく身体を重ね、ファリナの身体に快楽を教え込んだ。
今では、その意図を持って触れるだけで容易く悦楽を感じるようになっている。
自分の望む通りの反応を返す、素直で従順な身体に満足しないわけがない。
さすがに思うがまま抱くわけにはいかないので、多少なりとは控えているが。
それがファリナにとっては不満らしい。これ以上、どう溺れろというのか。本当に困った方だ。






「そうですねぇ…少し、趣向を変えてみますか」
くたりと凭れかかるファリナの身体から昂ぶったままのものを引き抜く。
その際、いやだと、離したくないと抗議するように壁が震えた。
まったく淫らな身体になったものだと思いながら、ファリナの身体を横たえ、うつ伏せにする。
髪を除けて項に舌を這わせると、ファリナが不安がるように視線だけをアルスレートに向けた。
「大丈夫、怖いことではありませんよ」
宥めるように言いながら、腰を高く上げさせる。
力の入らない身体では逆らうこともできずにファリナは寝台に頬を寄せ、弱々しく敷布を掴んだ。
泡立ち濡れ光る蜜と、内腿を伝う、アルスレートの精。
羞恥に震え、揺らめく腰。
誘うようなそれに目を楽しませ、アルスレートはファリナの背に覆い被さった。
アルスレートの昂ぶりがあたり、ぴくりとファリナは震えた。
潤んだ瞳で見るファリナの唇をぺろりと舐め、アルスレートは嫣然と微笑んだ。
「こう、しましょう…ケダモノらしく、ね」
「ぁ、あぁッ!」
ぐっと無遠慮に押し入られ、ファリナは嬌声を上げて仰け反った。
幾度も咥え込み、絶頂を迎えて蕩けるそこは難なくアルスレートを迎え入れた。
しっかりとファリナの腰を支え、ケダモノらしく、という言葉通りに獣のように荒々しく突き入れる。
がくがくと揺さぶられるままに、ファリナの肩がシーツに擦れる。
ひっきりなしにファリナの口から嬌声が零れ、びくびくと壁が蠢いてアルスレートに甘い酩酊を与えた。
ファリナが髪を乱して快楽を貪る様を楽しみ、曝される項に、背に、いくつも口付けを落として鬱血を残す。
視線を落とすと、白く泡立った蜜を絡みつかせて激しく出入りする自らのものが目に入る。
それにどうしようもないほどの愉悦と征服感を覚える。
悦楽に嬌声を上げて身も世もなく悶えることを教え込んだのは自分なのだ、と。
「あ、ぁ、あぁ…は…っあ!」
「言葉を、忘れてしまった、んですか?」
くすりと笑んで、肌がぶつかる音が響くほどに更に激しく律動を繰り返す。
「あ、はぁ………ん、あぁぁ!!」
再び絶頂を迎えたファリナの内壁の強烈な締め付けにアルスレートは小さく呻き、今度は抑えることなく欲を放った。








ばさばさと羽音を立てて、窓辺に鳥が止まった。
眠るファリナの髪を梳き、その寝顔を楽しんでいたアルスレートは身を起こす。
窓辺に歩み寄り、鳥を指先に止まらせて撫でると一枚の紙に変化する。その紙に目を通した。
「!!」
ひどく簡潔に、三行で書かれていた内容に驚き、次いで顔を険しくする。
「……少々、急ぐ必要がありますか……」
なるべく手は出したくなかったが、こうなっては致し方あるまい。
急がせて、どうしても手筈が整わないとなれば、こちらで城内を混乱させてやるしかないか。
手を出して混乱させると言っても、城門を開けて招き入れ、王の退避路を塞ぐ程度だが。
取れる手を考えながら、ファリナの眠る寝台に歩み寄った。
きしり、と、小さく寝台を軋ませて腰を下ろす。髪を梳いて一房持ち上げ、口付けた。
覆い被さるようにファリナの顔の両側に肘を付く。額の髪を除けて口付ける。
「ん…」
微かに瞼が震え、ゆっくりと露わになる、アルスレートの気に入りの色。
柔らかく口元を笑ませ、アルスレートはファリナの唇を覆った。
アルスレートが何度も触れるだけの口付けをすると、ファリナは腕を首に回してねだるように薄く唇を開いた。
その誘いに応じることなく、アルスレートはファリナの唇を甘噛みして離れた。
「アルスレート?」
寝起きのせいでもあり、散々啼かせたせいでもある掠れた声に怪訝そうな色が混じる。
常ならば、アルスレートはファリナのねだる通りに口付けをくれるのだ。
なのに、今はそうではなかった。アルスレートの表情も、違う。疑念を持つのは当然だった。
訝しげな表情のまま、ファリナはアルスレートの言葉を待つ。                                                                                       
「知らせが、ありました」
「知らせ?……何があったのだ?」
「陛下が崩御なさいました」
「父王が…そうか。では兄上が…」
「…兄君様は、ご重体です」
「何故だ!?」
父王のことはわかる。民には隠されているが、ずいぶん前から患っており、そう長くもないだろう、と典医が言っていた。
だからこそ、父王崩御にはさほど驚きはしなかった。
だが、世継ぎの君である兄は健康であったはずだ。



「そこまでは…。ただ、貴女にお戻り頂けるよう、請願がありました」
「……それほどに、悪いのか…。だが、私でなくともあれがいるであろう?」
「おそらく、弟君様はかねての態度を崩しておられないのでしょう」
「順に、というあれか」
「はい」
「あれも可笑しなところで律儀なものよ。嫁した者を順に入れる必要もなかろうに」
ファリナが苦笑と共に言えば、アルスレートが当然とばかりに答える。
「兄君様も弟君様も…そんなこと、認めておられませんよ」
「………認めておらんのか?」
それは初耳だ、と、そういわんばかりの表情。その表情を見ながら、彼らの言葉を伝える。
「ええ。必ず取り戻す、奪われたままにしておくものか、と」
「奪われた、わけではないのだが…?」
「同じことです。……我々にとっては」
「そう、なのか?」
「そうです。貴女が何もするなと、そう仰ったから、何もしなかっただけです」
そう。ファリナが、何もするな、と、我が国の安寧だけを考えよ、と、そう言ったから、皆それに従っただけだ。
臣下も国民も、どれほどの者が現状に納得しているだろうか。いないだろう、とアルスレートは思う。

「そうなのか…」
ファリナは嬉しそうにうっすらと笑みを零した。
「貴女が思う以上に、貴女は皆から愛されているんですよ」
私を含めて、と、ファリナの耳元に囁き、抱き起こす。
縋り付くようにアルスレートの首に腕を回し、ファリナはしがみついた。
擦り寄り甘えるような仕種をするファリナに薄く笑み、その身を抱き上げて膝に乗せる。
しっかりと抱き合いながら、言葉を交わすでもなく寄り添う。
求め合って身体を重ねることも勿論好きだが、こうして存在を確かめるように抱き合うのも愛おしい、と、アルスレートは思った。


「姫様」
ゆったりとした時間に身を委ねていると、どこか焦ったような声が寝所の外から聞こえた。
人を訪うには少し早い時間であることに、アルスレートは眉を寄せた。
夜毎、と、いえるほどにアルスレートがファリナを抱いていることを侍女たちは知っている。
国元であったなら隠す必要もないが、ここではまずい、と、ファリナの部屋に近づく者を悉く排除していた。
身支度が整うまで、寝所に、室内に、足を踏み入れることはないのだ。
なのに今、こうして訪いを告げるとは――。

「寵姫セラフィナ様、お越しでございます」
その言葉に、アルスレートは慄然とした。


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2007年08月18日(土) 14:57:40 Modified by ID:+2qn2ghouQ




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