「Il mio augurio」(性教育その二)

初出スレ:第三章463〜

属性:エロなし

「では、まずは男性器と女性器についてお勉強致しましょうか」
「そのあたりは学校で学んだけれど?」
「テキストで理解なさいましたか?現物もご覧になっておられませんのに」
「それは…」
口篭る暁香を見つつ、現物見せるのか?、と暁良は内心ツッコミを入れるが口には出さない。
言われていることもあるが、迂闊なことを口にすれば薮蛇になりそうな予感がひしひしとするからだ。
「まぁ、お見せしても構わないのでございますが…それはおいおい、ということに致しましょう」
「じゃぁ、どうするの?」
「教材を御用意致しました」
とんでもないものには違いないよな、と思っている暁良を尻目に、用意したという教材がテーブルに置かれる。

まずは本。医学書レベルのもののようだ。
氷雨はそれをぺらぺらと捲り、生殖器の項を開く。
暁良はろくでもない教本でなくてよかった、と胸を撫で下ろしたが、次にテーブルに置かれた物に目を剥く。
「!?」
「これ、なぁに?」
そのうちの一つを暁香は手に取り、氷雨を見る。
「なんだかふにゅふにゅしてる…」
「それは男性器を模しものでディルド、あるいはディルドーと呼ばれる玩具でございます」
「でぃるど?」
きょとりと首を傾げて目を瞬く様は可愛らしいが、その発言と手にあるものはいただけない。
「はい、左様にございます。それは男性器についての教材でございます」
「こんな手触り、なの?」
「そうでございますね、おおよそそんなものかと。人体に近い素材を使用してございますから、より本物に近いかと思われます。もっとも現物はそれのように冷たくはございませんが」
じぃ、と興味津々といった風情で見つめる暁香に、暁良はなんだか居た堪れない気分がしてくる。
「………ずっと疑問だったのだけど……」
「何でございましょう?」
「ここって、どうしてこんな形なのかしら?」
男性器のカリの部分を指先で撫でながら暁香は氷雨に問う。
「某州立大学研究チームによりますと、性行為時に他の男の精液を掻き出すために発達した、ということでございます」
「ふぅん?そうなの」
つーか、氷雨さんあんたどこからそんな知識入手したんだよ!?しかもそんな淀みなく答えたりとかして!?暁香お嬢様もそんな簡単に納得しないで疑問に思ってください!
などと暁良が内心で暴走している間に講義は進む。
「陰嚢、陰茎、亀頭、亀頭冠…一般的にはカリと呼ばれる部分でございますね。それから、尿道口となります。とは申しましても男性の場合、ここから精液が出るのでございますが」
指で指し示しつつ氷雨は説明していく。
「ああ、それから、この形状は勃起している状態でございますので。常の状態とはやや異なってまいります」
「そう、なの?」
「常にこの状態ならば、動き難くて仕方ありませんでしょう」
じぃ、と氷雨の股間を思わず注視し、暁香は頷く。
「……そうかも?」
「私の股間をそう注視されても困るのでございますが」
苦笑しつつ氷雨は言う。
しかしそれほど困っている、といった風情ではない。
「じゃぁ、暁良ならいいの?」
「や、やめてくださいませ!?」
ぐるぐると脳内を暴走させていた暁良だが、悲鳴のように叫ぶと、暁香が暁良のほうを見るより早くしゃがみこんだ。
「……だめなの?」
慌てっぷりに一瞬驚いたものの、暁香は氷雨を見上げて問いかけた。
「通常は恥ずかしいものでございますからね」
「氷雨は?」
「恥ずかしがっていてはこのような講義などできませんでしょう」
たしかに、と納得し、暁香は先を乞う。

「勃起の経緯については後ほどDVDでお勉強することに致したいと存じます。玩具では理解できませんでしょうから」
こくり、と暁香が頷くと、氷雨は筒状のものを取り上げる。
「それは?」
「これは女性器を模したものでホール、あるいはオナホールと申します」
「ほーる…」
「はい。内側は男性が快感を得やすいように作られておりますので、参考にはなりませんが。多少の誇張はございますが、これならば外性器のほうの勉強になりましょう」
いやいやいや、そうじゃなくて!そんなの暁香お嬢様に見せないでくださいよ!?
などとしゃがみこんだまま暁良は内心で悶える。
無論そんな暁良を氷雨はしっかりきれいにスルーする。
暁香に至っては気付いていないが。
「こう見ますと、女性が仰向けになっている時と同様の状況でございます」
こう、と示しつつ暁香の目の前に差し出す。
「外から大陰唇、小陰唇でございます。大陰唇は体の他の皮膚と同様の色をしておりますが、小陰唇のほうは血管が多いためにピンク色をしております。
性的刺激を受けますと充血して膨らみ、更に刺激に敏感になってまいります」
「それでえーと…これが、くり…くり、とりす?とかいうの、よね?」
「そうでございますね。陰核、という言い方もございますが。クリトリス、のほうが一般的でございましょう。…ところで暁香お嬢様?」
「なぁに?」
「どこでそのようなお言葉をお知りになられました?」
そうですよ、どこでそんな言葉をお知りになったのですか、暁香お嬢様ー!?
本当は問い詰めたいが、開始前に氷雨に口出ししないように言われているので口を挟めない。
当然、薮蛇を恐れたものでもあるが。
「えぇ?お友達が言っていたの。気持ちいいって」
「なんとも素晴らしいご友人でございますねぇ…」
いやいや素晴らしくないから!誰か知らないけど暁香お嬢様に変なこと吹き込まないでー!
暁良の悶絶は続くが、それを気にする氷雨ではないし、暁香は気付いてすらいない。
ので、ある意味放置されたまま、更に講義は続く。
「ここが膣口でございます。この内側に処女膜、というものがございます」
「えぇ…と…初めての時に破れる、とかいう?」
「一般的にはそう言われておりますが、運動をしたり、タンポンなどを挿入するときにも破れる場合がございます。
また、始めから完全に塞がっているものではなく、穴が開いておりますから、膜、というのも語弊がございますが。
ですので、破る、破れる、には、実は該当しないのでございます」
「へぇ…そうなの」
初めて知った、と暁香は目を丸くする。
「便宜上、破れる、と表現致しますが…破れれば、多少の出血を致します。出血をしても、十分に濡れて潤っていれば痛みを伴わないこともございます。
また、激しい性行為によって膣内部が傷つき、裂けて出血する場合がございます」
「難しいのね」
「あまりそう認識されておりませんが、大変デリケートな器官でございますから」
つかなんでそんなに詳しいの氷雨さん!貴方男だよね!?
会話の一つも聞き漏らさないように躾けられている暁良は、悶絶しつつも全て耳に入れてしまう。
若い暁良には辛いが、哀しい使用人の性である。
「膣の内壁は口の中と同じような粘膜でできており、粘膜をたぐり寄せたように沢山のひだがございます。
また、子宮からの分泌液や膣自身からの分泌液で常に湿って潤った状態になっております 」
「おりものとか?」
「はい、一般的には体外に排出された分泌液はそう呼ばれておりますね。
ですが、性行為の際は十分に愛撫して興奮させ、愛液を分泌させる必要がございます。
これは性感を高める、ということのみならず、保護という役割も兼ねております。でなければ、大変痛い思いをなさるかと存じます」
「痛いのはやだ…」
眉を顰め、嫌そうな顔をしつつ暁香は言う。
「それが普通でございます。……子宮は…学校で学ばれた通りでございますから、割愛致したく存じますが、如何致しましょう?」
「えぇ…と…ええ、いいわ」
こくり、と頷きつつ暁香は頷き、手に持ったままだったものをテーブルに置いた。
「宜しゅうございますか、暁香お嬢様。伴侶には配慮のできる男性を選ばれませ」

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2007年07月02日(月) 21:48:54 Modified by ID:+2qn2ghouQ




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