三十路男とツンデレ少女

初出スレ:4代目164〜

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リナは、鏡に向かって最後の点検をしている。
身に纏う白いワンピースは、先週友人達と買い物に行った際、散々迷った末にお小遣いを
はたいて買ったものだ。かっちりとした襟に、フレアのスカートが愛らしかった。袖無しの
袖から伸びる腕は白く華奢で、少女はそこにガラスのブレスレットを付ける。
同居する片野が先月の誕生日に買ってくれたものだ。こんな子供っぽいもの、とその時の
リナは頬を膨らませたが、付けてみるとそれは光に反射してキラキラと光り、
とても綺麗だ。
別に、片野と出かけるからお洒落をしている訳ではない。久しぶりに行く遊園地が
嬉しいからだ、と誰に言うわけでもなく一人ごちて、リナはその小さな桜色の唇に薄く
リップを付ける。甘いピンクのリップスティック。微笑んでみる。鏡の中には、いつもの
制服姿よりも、少しだけ大人っぽくなった少女がいた。
「こんなの見たら、おじさんなんて言うかなあ……」
思わず呟き、はっと口元を押さえた。これじゃあまるで、好きな人とデートに出かける
前みたいじゃないか。リナは傍にあったティッシュで慌てて口元を拭う。
「そうだよ。別に、デートとかじゃないんだから。へ、変にお洒落する事もないじゃん」
もう一度鏡を見る。そこには、白いワンピースを着たいつもの自分がいた。その事に
満足した少女は、もう一度笑う。
「あ、お弁当作んなきゃ。面倒だなあ、もう」
口振りとは裏腹に、リナは足取りも軽く駆けだした。

紺野リナが、片野貴史と暮らしだしてもう一年が過ぎようとしている。
一年と少し前、リナは事故で両親を一度に亡くした。両親には身寄りが無かったため、
親戚の家に身を寄せる訳にも行かず、養護施設へ預けられそうになった時現れたのが
片野という男だった。リナには良く分からないが、亡くなった父と片野は師弟関係にあり、
片野にとって父は恩人だったらしい。30過ぎの独身である片野がどうやってリナを養子に
したのかは分からないが、とにかく当時13歳のリナと32歳の片野は一緒に暮らすように
なった。暮らしだした当時は、両親を亡くしたショックと見知らぬ男と過ごさねばならない
戸惑いで、部屋に閉じこもった事もある。だが片野は、傷心の少女に辛抱強く接した。
夜の街で補導され、泣きじゃくる少女の頭を何も言わず一晩中撫でていた事もあった。
意地っ張りなリナは、気の強い態度を崩さないものの、それでも少しずつ心を開いて
いった。そんな一年だった。いつしか朝食を一緒に取るようになり、片野の仕事が早く
終わった時には一緒に夕食を取るようになり、朝食を作って片野を起こしてやるように
なり……。今では、まるで本当の親子のように生活している。
ふと、鼻歌を歌いながらサンドイッチを作っていたリナの手が止まった。
でも、ここの所の私は少し変だ。前はそうでもなかったのに、最近おじさんに子供扱い
されると胸が不穏にざわめいてしまう。くたびれかけたおじさんのスーツに満員電車の
せいで口紅がついていたりすると無性に苛つく。同じ学校の男の子達――かつて、
好きになりかけた子もその中にはいたと言うのに―― と遊んでも、胸が全く高鳴ら
なくなった。何故だろう、前はそんな事無かったのに。その答えを、リナはまだ気付いて
いない。
「ん……お、早いな。おはよう、リナ」
後ろからドアが開く音がして、リナは満面の笑みで振り返る。
「違うよぉ。おじさんが遅いんだよ。もうお弁当も作り終わるとこなんだから。朝ごはん
テーブルの上に出てるから、早く食べてよね」
「張り切ってるなー。たかが遊園地で嬉しそうに」
大あくびをしながら、片野はぼりぼりと頭をかく。味噌汁をよそってやりながら、リナは
いつものように頬を膨らませる。
「別に嬉しくなんか無いよ。言ったじゃん、友達はみんな部活とか塾で忙しいって。だから
仕方なくおじさんを誘ったんだから。それにタダ券、今日までだし」
嘘だった。遊園地のタダ券があると自分が一言言えば、友人達は部活など適当な理由を
付けてサボり一緒に出かけてくれるだろう。でも、リナは友人達とよりも、片野と出かけた
かった。それは、無精がって休日は寝てばかりの片野を連れ出すためであり、いつも
養ってもらっている片野への感謝であり、そして、一番大きいのは肝心のリナが片野と――
「リナ、どうかしたか?顔赤いぞ」
気付くと、怪訝な顔をした片野の顔があった。リナはううん、と首を振り弁当の仕上げを
しようと台所に戻っていく。


よほど嬉しいのか、リナは遊園地への道中でずっと喋り続けている。
「あのね、そこの遊園地はね、新しく水の上にジェットコースターが出来たんだって。
それでね、最後は水しぶきを上げながら……」
少女のいつ終わるとも知れないはしゃいだ声を聞きながら、片野は微笑んだ。仕事の
疲れが溜まっている休日に、こうして連れ出されるなど冗談じゃないと思っていたが、
こんな少女の笑顔を見れるのならそう悪くはないと思えてくる。一年前は、両親を亡くした
ショックで深く傷つき頑なに自分を拒んでいた少女だったが、今では何の屈託もなく笑い
かけてくれるようになった。その顔は14歳と言う年齢に相応しく愛らしい。少女と女が
混ざり合う危なっかしい魅力。恩師の娘であるリナに手心を加える気は全くないが、
それでも彼女は魅力的だ。後数年もしたら、道行く人々の目を強く惹きよせる娘に
なる事だろう。
「なによお」
ふと気付くと、リナが横目で片野を睨んでいた。今の自分の笑いが、生意気盛りの少女の
癪に障ったらしい。
「あ、あのね。別に、あたしに友達がいないとか、そういうんじゃないんだからね?仲の
良い子は部活だったり習い事があったして忙しいから、だからおじさんを誘ってみただけ
なんだから。変な誤解しないでよね」
朝と同じセリフを繰り返し、リナはつん、と白い肩をそびやかしてみせる。長い黒髪が
ふわりと甘く香って翻った。冷たく感じる口振りとは真逆に、少女の足取りはステップでも
踏みそうなくらい嬉しげで、ふわりと広がる可憐なワンピースも真新しい。今日のために
用意したのだろうか、と片野は一瞬自惚れ、まさか、とすぐに自分の考えをうち消した。
「変な誤解って何だよ。何もいってないだろ」
「思ってそうだから言ってるの。本当に、一緒に出かけられて嬉しいとかってわけじゃ
ないんだから」
そう言いながらも、リナはそっと歩みを揃え、片野のシャツの裾を掴んでくる。
「……でも、遊園地は嬉しいかな。ね、お化け屋敷も絶対行こうね。おじさんの怖がってる
顔見たいもん」
「いやぁ、お前絶対泣いて夜中トイレ行けなくなると思うけどなあ。無理はしない方が……」
片野のからかいの言葉に、リナの白い顔が朱に染まった。
「えー、おじさん何言ってるの?あたしもう14歳だよ!?いつまでも子供じゃないんだからぁ」
少女はむくれ、片野の傍をさっと離れてかけだした。清楚で大人しそうな外見に
似合わず、リナの口調はクソがつくほど生意気で気も強い。それは、初めて会った頃から
今も変わっていなかった。
「それより、早く入ろうよー。ほら、入り口まで競争。負けたらジュースおごりね」
その時、長い道の向こうに、賑やかな飾り付けを模した遊園地の入り口が、ぽっかりと
姿を見せた。


遊園地は楽しかった。
リナと片野はいくつもアトラクションを回り、子供のように声を上げはしゃいだ。水の上を
走るジェットコースターも楽しかったし――真新しいワンピースは少々濡れてしまった
が――観覧車からの景色も良かった。お弁当も上手に出来て片野に褒められたし、
ゲームセンターでは一緒にプリクラも取った。元気の塊のようなリナに片野は引きず
られるようにしていたが、その表情はとても明るく楽しんでいるようだった。
二人で撮ったプリクラを携帯に貼ってから、リナは片野を振り返る。
「もう夕方だね。あと、回ってないのってどこだっけ」
手に持っていたパンフレットを広げる。
「んーと、ゾウさん観覧車はさすがに子供過ぎだし、ゴーカートはもうやったし……」
リナの目が、一点に目を留めた。
「あ、そう言えば、まだお化け屋敷入ってなかったよね。行かなきゃ」
それを聞いた片野は、面倒そうに頭をかいた。もううんざり、と言った表情でベンチに
座り、くしゃくしゃの煙草を取り出す。
「いや、俺はもう疲れた。いいから、そこは一人で行って来いよ」
「えー!?やだよぉ。おじさんの怖がってる様子が見たいからこそ、お化け屋敷に行くん
だからね」
紫煙を吐き出しながら、片野はリナをせせら笑う。
「……あのなあ。30半ばにもなろうっておっさんが、お化け屋敷で悲鳴上げるわけない
だろ。どう考えても気持ち悪いぞ、そんなの」
「だからこそ、見たいんだってば」
リナもふふん、と鼻で笑い返す。
「あっれえ?そんな事言って、おじさんもしかしたら怖いんだぁ。ね、そうなんでしょ?
だから行きたくないんだ。そりゃそうだよね〜、お化け怖がってるなんてあたしにばれ
ちゃったら、すっごい恥ずかしいもんね」
片野は小さく舌打ちすると、面白く無さそうに灰皿で煙草を潰す。リナは一人ほくそ笑む。
自分の挑発は、どうやら成功したらしい。
「……そこまで言うなら行ってやるさ。その代わり、お前も怖がるなよ。怖がったら夕飯
当番だからな」
「じゃあ、怖がらなかったらおじさんが夕食作るんだからね。あたしもう14だよ?あんな
子供騙し、怖がるわけないじゃん」
リナも不敵に笑い、片野に負けじと肩を張った。

お化け屋敷は、外の暑さが嘘のようにひんやりとしていた。
片野はすたすた歩き、リナもその後ろを一歩一歩踏みしめるように進んでいく。
「ちょっ……ちょっと、おじさん。そんなに早く歩かないでよ」
「怖くないんじゃなかったのか?」
そのからかうような口調に、少女はいつもの意地っぱりな態度で返す。本当は、暗闇に
一歩足を踏み入れた時から、不安で胸が張り裂けそうだ。けれど、それを片野に悟られ
たくはなかった。
「べ、別に怖くなんかないよ。ただね、ほら。はぐれちゃったら困るし」
その瞬間、女の泣き声が聞こえてきて、リナは短い悲鳴を上げる。暗がりの向こうで、
片野が吹き出す声が聞こえた。
「……ぶぷっ。やっぱり怖いんじゃねえか」
「怖くないって言ってるでしょ!」
叫んだ途端、目の前に包帯でぐるぐる巻きにされ血をあちこちに付けた人形が飛び出した。
「やだあああああああああっ」
リナは泣き声を上げ、夢中で片野にしがみついた。がっしりとした肩に顔を埋め、ぶるぶる
と首を振る。片野の無骨な指がリナの肩に回され、とんとんと安心させるようにつつく。
「なに叫んでるんだよ。ただの人形だろ?」
「あっ……。えと……」
頬が、かあっと熱くなるのが分かった。もう言い逃れなど出来ないのに、リナはまだ
意地を張り続ける。
「い、今のはちょっとビックリしただけだもん。怖がってる訳じゃないもん」
そう言いながらも、少女の指は不安に震えながらさまよい、片野の手を探り当てる。
きゅっと、その指の一つを掴んだ。
「そうだよ。本当に、怖いんじゃないんだから」
リナは指に強く力を込め、片野の手を掴む。初めて握った男の手は熱く乾いていて、
少女の小さな胸は高鳴なった。その高鳴りは恐怖のためだけではないのだが、リナは
気付かぬ振りをする。
「ほら、早く行こう」
「ああ、そりゃ行くけどさ。けど……」
男はそこで言葉を切る。目の前にある片野の顔が、からかいのため歪むのが薄暗い中
でもはっきりと分かった。
「手をつないだままで、か?」
「……そうよ。悪い?」
「いや、俺は別に良いけど。全く、普段は生意気な癖に、こう言う時だけは子供なんだ
なあ、リナは」
「…………!」
リナは、頬だけではなく耳から首筋に至るまで熱くなった。悔しかった。それは、からかわ
れたから悔しかっただけではない。“子供なんだな”と、片野に言われた事。子供扱い
された事。何故かは分からないが、それが何よりも悔しかった。思わず目の縁が熱くなる。
無我夢中でその手をふりほどいて叫んだ。
「もういい加減にしてよ!だから、あたしはおじさんが思ってるような子供じゃないって
いつもいつも言ってるじゃん!もういいよバカ。あたしだって一人で回れるもん」
新しく飛び出してきた血塗れのお化けを力一杯押しやり、少女は駆けだした。背中から、
待てよ、おい!と呼び止める片野の声がしたが、リナはますます歩みを早めた。
「……ったく」
片野は、少女を追いかけるために早足で歩きながら、今日二度目の舌打ちをした。
「あのガキ、手間ばっかりかけさせて」
口ではそうは言いながらも、本当はリナの事がとても心配だった。彼女を引き取って
から一年、何とか上手くやってきたつもりだ。最近では随分心を開いてくれたように思う。
だが、時々片野には理解しがたい態度を取るようになったのも最近の事だ。子供扱い
すると妙に怒る。変に絡んだかと思えば、何でもない事で蕩けるような笑顔を見せたり
する。女性というのは複雑な心理をもつものだが、少女のそれだって全く変わらないと
片野はため息をついた。
「やれやれ」
と、その時だった。聞き覚えのある悲鳴が少し先で聞こえた。

「やだ、やだあっ!こっちこないでよおっ」
リナはうずくまり恐怖のあまり涙をぽたぽたと落とす。近づくな、と叫ばれても天井から
落ちてきた目玉が半分飛び出した人形は、なかなか上がろうとはしない。それをちらりと
見て、また悲鳴を上げる。
「やだ、怖いよ……。助けて、助けてよおじさん!お願い助けて!」
「リナ」
リナの肩を、力強い腕が包み込んだ。目を上げると、そこには片野の、無精髭を
生やした顔があった。リナは何のためらいもなく片野に抱きつく。その肩はとても広く、
リナを守ってくれる。
「もう、大丈夫だ」
「……うん」
リナは素直にうなずき、片野に抱えられるようにして立ち上がった。片野はしっかりと
リナの手を繋いだまま歩き出す。
「もう離さないから。一緒に行こう」
「うん」
「……その。さっきはからかって悪かったな」
「うん」
リナも、涙を拭いながら歩き出す。冷たい空間に、指を絡め、繋がった手だけが温かかった。

結局、家に帰るまでその手は離れず、繋がれたままだった。
リナは、寝る前のお風呂に入りながら自分の手をじっと見つめている。
おじさんの手。あの時あたしを見つけて助けてくれた、優しい手。この手とずっと
繋がっていた、がっしりしてて節くれ立ってて浅黒くて、でもとても温かかった手。
「……そっか」
ちゃぽんと音を立てて、浴槽にもたれる。うなじの髪が一筋だけ垂れ、湯船に泳いだ。
「そういう事なんだ」
なんであの人の言葉や行動や仕草や態度の一つ一つに、いちいち苛々して嬉しくて
悔しくて胸が高鳴るのか、リナはやっと分かった。いや、気付いたと言うべきなのか。
にっこりと笑う。自分の手にキスをした。自分に近すぎて、だからこそ気持ちに気づけ
なかった人と、長い間絡まっていた手に。

昼間の遊園地で疲れきり睡眠を貪っていた片野は、ノックの音で目を覚ました。
「……あ?なんだ」
「あたし。ね、開けてよ」
片野は、寝ぼけた目を擦りながらドアを開ける。ドアを開けた瞬間、石けんの甘く
爽やかな香りがした。
「リナか。どうした?」
「あのね、怖くて寝れないの。おじさん、一緒に寝てもいいかな」
半分眠っている頭が、ぼんやりと昼間の出来事を再生する。闇の中で一人しゃがみ
こみ、泣いていた少女。よほど怖かったのだろう。
「別にいいけど、狭いぞ」
「いいの」
枕を抱え、リナは薄暗い部屋の中を進む。子供とは分かっていても異性と一緒に
寝ると言う行為に、片野の胸はかすかに高鳴った。だが一晩だけだ。どうと言う事も
ないだろう。
「……来いよ」
枕元の明かりを付けると先にベッドに転がり、片野は傍に立つ少女を見上げた。
しかし、リナは部屋のあちこちに視線を走らせるばかりでなかなか動こうとはしない。
「どうしたんだ?」
「ううん。あのね、あたし……その。えっとね」
そこで言葉を切り、少女が男の胸に飛び込んできた。どさりとベッドが軋み、少女の
甘い香りが片野の鼻腔を満たした。
「な、なんだよ」
「えへへ。おーじさん」
戸惑う片野に、少女は更にしがみついてくる。さっきは部屋が暗くて分からなかったが、
こうして肌を密着させていると少女が薄着なのがはっきりと分かる。肩紐が外れかけた
薄いキャミソールに、太股も露わなショートパンツ。普段そういった格好で家の中を
うろうろされていた時は何の感慨も持たなかったが、ここまで触れ合っていては嫌でも
意識してしまう。下着を付けていないらしく、腕に押しつけられた胸の感触はぷっくりと
柔らかかった。中央にぽつりと硬い突起を確認した所で、片野の理性がむくりと動いた。
「……一緒に寝るのは良いが、あんまりくっつくな」
「なんで?」
目の前でぱっちりと目を見開くリナは、片野が知る限り一番可憐で愛らしい表情を
していた。大きな黒目がちの目を縁取る睫毛。バラ色の頬。少し尖らせた唇は薄桃色で、
白い歯がかすかに覗いている。駄目だ駄目だと頭の中で理性が喚いているが、その
耐え難い誘惑には勝てず片野は手を伸ばした。眉の下で切り揃えられた前髪を整えて
やり、頬に触れる。髪を撫でると、少女特有の甘酸っぱいような香りが濃く漂った。片野が
無意識のうちに抑えていた欲望を呼びさますような、直接官能に訴えかける匂い。
「おじさん……すきだよ」
触れていた唇から、リナの告白がこぼれた。その言葉に、片野は自分でも意外なほど
驚かなかった。こんな状況が、そうでもなければ成立しないものであり、そして、少女の
強気な言葉に隠されていた真意を、片野もどこかで気付いていたからかも知れない。
「あたしなんて、おじさんから見たら子供なのかもしれないけど。でもね、あたしは自分の
気持ちにやっと気付いたの。そうしたら、居ても立ってもいられなくて」
片野の腕の中で、リナは言葉を紡ぐ。片野の頭の中で、理性の声が一際高くなった。
駄目だ駄目だ。けれど、胸の下で瞳を潤ませる少女は今確かに女の姿をしていて。
いつのまにこんなに大人になったのか。初めてこの家に来た時には、ほんの子供にしか
思えなかったのに。ズキン、と下半身が痛いほど疼く。
「ね、おじさん。なんか言ってよ」
もう限界だった。少女に対しこの一年密かに押し殺していた情欲が、むっくりと頭をもたげ
咆哮する。片野は硬く目を瞑り、理性を押し殺した。駄目だ駄目だとオウム返しに繰り
返していた声は、それを待ちかねていたようにあっさりと消える。
自分の意志の弱さに笑いそうになりながら、少女の唇に自分の唇をそっと重ねた。初めて
触れるリナの唇はぐにゃりと柔らかく、どこまでも沈んでいきそうだった。それこそ、最後の
最後に残っていた、恩師に対する罪悪感ごと沈んでいく。
「やっぱりお前は子供だな。こう言う時はおじさんなんて呼ばないでくれ」
囁き、もう一度少女に口付けた。
片野の腕の中で、リナは苦しげに呻いている。少し口を開け、少女の唇全体を吸うように
味わっていた片野はいったん口を離した。
「あ……。もしかして、嫌だったか?」
「やじゃないよぉ。びっくりしたけど」
「……けど、なんだ?」
片野は少女の顔中に唇を這わせる。頬、まぶた、額、耳の生え際、顎に至るまでキス
を繰り返した。
「ふふっ。嬉しいよ、すっごく」
一センチも離れていないリナの瞳と目があった。悪戯っぽい微笑み。数分前までは、
子供など趣味ではなかったはずの片野だが、少女が放つ危うい誘惑に抗う事はもはや
不可能だった。今一度覚悟を決める。
「目を、閉じろよ……」
「うん」
こんな素直な声をお化け屋敷の中でも聞いたなと思いながら、片野はまたリナの口
を塞ぐ。躊躇うことなく少女の唇を舌でこじ開け、小さな歯から歯茎を舐め回した。
かすかに開いている歯の隙間から口腔に侵入する。舌を動かし、少女の舌を探した。
口の奥で小さく縮こまっている舌に自分の舌を絡ませる。その舌は最初は怯えたように
逃げ回っていたが、段々とこちらに触れてくる。唾液をたっぷりと絡め、片野はなおも
少女に舌を絡ませていく。
「んっ……んふっ」
男の唾液を流し込まれたリナは、眉を寄せくぐもった声を上げた。片野はそれには
構わず、もっと深く少女と口づけたいと舌を突き出した。その舌をリナの小さな舌が
ちろりと舐め、そのリナの舌に片野が吸い付いていく。
「……んんっ。ん……」
長い長いキスの後、リナと片野は見つめあい、無言でもう一度唇を重ねる。さっきと
同じくらい濃厚な口づけをかわしながら、片野の手がリナの未成熟な身体に伸びた。
太い指が少女の華奢な首筋から鎖骨に降り、そしてささやかな胸の膨らみにまで
到達する。薄手のキャミソール越しに、小さな突起が屹立しているのがはっきりと分かった。
「……小さいからって、笑っちゃ嫌なんだからね?」
唇を離し、リナは不安げに囁く。自信が無さそうにけぶる瞳が愛らしく、男は優しく笑う。
「そんな事しないよ」
片野は荒くなる息を抑えながら、半分ほど胸が覗けるキャミソールの中に手を
差し入れる。そうしながらも唇は耳元まで辿り着き、耳たぶを軽く噛んだ。耳の穴に
舌を入れ、そこにも唾液を絡ませる。
「ああっ!ひゃっ……やだぁ……いやっ」
リナはくすぐったそうに声を上げ、身をよじった。
「いやなのか?」
そう聞きながらも、片野の手は動きを止めなかった。薄い胸板の上に乗っている
かすかな脂肪を揉みしだき、唾液をたっぷり付けた舌を首筋へと滑らせる。
「そんな事無い、けど……くすぐったいよぉ……あっ、やだっ!やめて、や、きゃはははは」
少女は身をよじらせ、喉をのけぞらせて笑い声を立てた。その笑い声を喘ぎに変え
させたくて、片野はキャミソールを一気に引き上げる。ベッドスタンドの明かりに、少女の
上半身は全て晒された。
「やだあっ!見ないで……」
リナの高い笑い声が、あっという間に小さな悲鳴へと変わる。
柔らかな灯りに照らされる、殆ど膨らんでいないささやかな双丘。その滑らかな肌は
目を射るほど白く、唇と同じ桜色の突起が小さくぽつりと立っている。そこから臍まで続く
なだらかなラインはくびれと言うにはあまりに幼く、心細げに震えていた。
「いやだよぉ……電気、消して……ううっ」
普段あれほど気の強い態度を見せていたリナは、今やすっかり片野の胸の下で
涙を滲ませ、哀願していた。そのしおらしい仕草に、片野の心は妖しくざわめく。
この少女をもっと泣かせてみたいと、悪魔の声がささやきかける。
「何だ、思ったより胸が小さいんだな。こんな身体で、人のベッドに潜り込んできたのか?」
さっきは笑わないと確かに言ったくせに、男の口の端は残酷に歪んだ。その笑いを
見て、リナは傷ついたように顔を背ける。そのあどけない目にたちまち大粒の涙が
浮かんだ。
「うっ……。ひどい……あたし、まだ14歳だし。そんなの仕方ないのに……ああっ」
しかし、その泣き声は途中で打ち切られた。片野はリナの言葉など耳に入らぬかの
ように聖域のような乳房の頂点に吸い付く。乱暴に舐め回し、時折軽く歯を立てながら
強い刺激を与える。
「やっ。ああん、いやっ……ああっ」
背中から脳天へと駆け上る切ない電流に、リナはたまらず甘い声を上げていく。
節くれ立った手に吸い付く、少女の白い肌。首筋から胸元にかけて、いくつもついた
唇の赤い鬱血の跡。その眺めはあまりに残酷だった。誰も足を踏み入れた事のない
雪原を踏み荒らしていくような乱暴な悦楽が片野の心に走り抜ける。
二つの乳首を舌で交互に愛撫し、そうしながらもリナの口の中に指を差し入れる。
少女は漏れる嬌声を抑えるようにその指に歯を立ててきた。指先に触れる、熱くて
小さくて滑らかなリナの舌。
「んっ……んくっ……んんんんっ」
少女は片野の下で身体をくねらせ、初めて味わう快感にためらいながらも身を
任せていた。その初々しい様に、片野はますます愛撫の手を強めていく。
散々乳房を弄んでいた片野の手が、下半身へとするすると伸びていった。尻を覆う
ショートパンツに手をかけ、下ろそうとする。
「ひゃっ!やだ、やなの……」
これまでにない強い力で、リナの手が男の手を押さえてきた。潤んだ目で、まっすぐに
片野を見上げてくる。楽しみを中途半端に遮られ、男は顔を上げた。
「どうして」
「だって、汚いじゃん……ね、お願い。他はいいけど、そこだけはやなの」
「けどなあ、リナ。そこを使わないと何も出来ないんだが」
片野の言葉に、リナはえぇー、と小さく泣き声を上げた。本当に困惑しているのか、
整った眉根がきゅっ、と限界まで寄せられる。
「それは、わかってるよぉ。でもさ、あたしにも事情ってものが……あぁ、どうしよう。
じゃ、じゃあね?ちょっとだけなら、いいけど。でもね、言っとくけど、あのね。えっとね
……ああ、どうしよう。恥ずかしいよ」
リナは一人で頭を抱え、羞恥と苦悩に悶えていた。その様子は恥ずかしがってるだけ
でも無さそうで、片野は訝しく思う。
「ん?どうしたんだ」
「あのね、おしっことかで、漏らしてそうなったんじゃないの。そこだけ、誤解しないでね」
少女が言った言葉は唐突で、男は首を傾げた。
「どういう意味だ?」
「だ、だからぁ!あ、あの、ぱんつ……ちょっと、汚れちゃったんだけど。でもね、それは
おしっこが出ちゃったとか、そう言うんじゃなくて。その、おじさ……じゃなかった、えっと。
その、片野さんと」
おじさんと呼ぶな、と言われた事を思い出したのか、リナはかえって他人行儀な
呼び方をした。
「キスとか、胸とか触られてるうちに自然と汚れちゃっただけなの。だから、気に
しないでね?」
あまりに無知で幼い告白だった。そんな事も知らないで、彼女は自分のベッドに
潜り込んできたのか。その無謀な大胆さに片野は少し笑う。だが、当のリナは真剣
そのもので、首筋まで赤くして恥ずかしさに耐えていた。腕を伸ばし、震える少女を
優しく抱きしめる。
「あのな。嫌だったら、無理しなくてもいいんだぞ。リナ」
「無理してないよ。でも……」
リナは即答するが、最後の言葉は喉の奥に引っかかってしまったようだった。片野は、
そんなリナの朱に染まった耳たぶにそっと囁いた。
「一つ、いい事を教えてやる。リナの下着を濡らしているのは、確かにおしっこじゃない。
それは――」
不意をつき、男の手は一気に少女の下着の中に侵入した。ささやかな茂みを抜け、
果実の入り口まで辿り着く。たしかに、そこはリナの言う通り下着まで湿らせそうな
ほどたっぷりと潤っていた。指でなぞり上げると、ちゅぷっ……と、粘着質な音が響く。
「やっ、あぁぁぁっ!恥ずかしいよぉ……」
指にからみつく粘液を、肉の裂け目から少しだけ飛び出している性感帯の集中している
突起へとなすりつけた。たちまち少女は腰を跳ねさせる。唇から漏れる声は、羞恥を
訴える声からはっきりと快感を伝える嬌声へと、たちまち変化した。
「だめっ……、そんな事したらあっ……。ん、んんっ、あっ、やだあっ、だめ、あ……」
溢れ出る蜜を繰り返し敏感な突起に撫でつけられる。ひたすらクリトリスを責められる
強烈な刺激に、少女の未成熟な性感はひとたまりもなかった。片野の腕の中で、
リナはあっけなく達していく。
「……ふっ、あふっ……。も、もう、やだ…やなのぉ……あ、あぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴と共に、がくり、と首を折って軽い絶頂を味わうリナ。朦朧とした表情を浮かべる
彼女に、片野はさっきの言葉の続きを、赤く熱を持つ耳に吹き込んだ。
「リナが、大人になった証拠なんだ」

片野は、少女をシーツの上に仰向けに寝かせた。ショートパンツも濡れたショーツも
とうに脱がせてあったので、リナは今や一糸まとわぬ全裸だった。ごく薄い茂みの下に
息づく秘裂に、自分のペニスをあてがう。ここまで来て今更かも知れないが、片野の心に
改めて迷いが走った。リナは恩師の娘で、ずっと一緒に暮らしてきた少女だ。そして
何よりまだ14歳なのだ。そんな子供を、二回り近く年の離れた自分が手にしても
良いのだろうか。そのためらいを、片野はそのまま口に出した。
「本当に、いいのか?」
「さっきまであんなにやらしいことしてた癖に、どうしてためらってるの?変なの。
あたしはもう大人だって、さっき言ったじゃん。だったら、おじ……じゃなかった、
片野さんが。って、これも変か。ね、なんて呼べばいいの?」
「何でもいいが、今さら片野さん、ってのはやめてくれ」
少女は一瞬迷ったが、「じゃあ、貴史くんでいい?」と片野を見上げる。まるで同級生に
対するような呼びかけだな、と片野は思ったが異論は挟まなかった。
「貴史くんに、本当の大人にして欲しいの。今、ちゃんとして欲しいの。もう子供扱い
されるのはいやなの。絶対いや」
「……そうか」
確かに、ほんの数十分前までは、片野はリナの事をただの子供としか思っていなかった。
リナも14歳、自分の少年時代を思い出すまでもなく難しい年頃だ。もしかしたら、片野の
悪気無い台詞に傷つく日々を送っていたのかも知れない。
「悪かったな」
片野は呟き、リナの髪をわしわしと撫でる。それにも苛立ったのか、少女は怒った
ような声を上げる。
「だからぁ、そういうのをやめてって言ってるの!もう、貴史くんてば全然分かってない」
「ああ、すまんすまん」
片野はまた少し笑うと、今度は少女の唇に口付けた。それは、子供ではなく、恋人と
しての謝罪の証だった。
リナの口の中を執拗に舐め回しながら、片野はもう一度屹立しきったペニスを
少女のスリットにあてがった。ぬるり、と滑る感触。何度か亀頭でこするうちに、ぴたりと
膣口に照準が合わせられる。
「んふっ……」
敏感に反応してくる少女の肩を抑え、片野は少しずつ腰を動かし始める。リナの
くぐもった声が、苦痛を示すかのように一気に高くなった。
「んっ、んーーっ!んむっ……ふぐっ……。んんっ」
リナの中にもぐりこむ。強引に窮屈な壁を押し進むと、きつく締め上げられている片野の
先端が、そこだけ狭まっている肉の輪に当たった。片野は、ペニスでガリガリと容赦なく
そこを引っ掻き、ためらうことなく貫いていく。少女の秘奥に、永遠に刻まれる刻印。
リナは激しく首を振り男の唇から逃れると苦痛の声を上げた。
「……っ!やめて、もうやだ、痛い……!イタッ、いたぁ……だめえっ!」
そう言われても、今更止められるはずもない。それに、ゆっくりと処女を奪っては
余計に彼女を苦しめる事になる。片野は少女の腰を押さえつけると、一気に最深部まで
突き進んだ。
「あっ……。あ、ああああっ!いや、いやっ」
「痛いか?」
囁くと、「当たり前じゃん、バカ」と真っ赤に潤んだ目でこちらを睨みつけてくる。限界まで
足を開かされ、純潔を失おうと彼女の鼻っ柱は折れる事はなかった。しかし、そんな
虚勢も長くは持たない。片野が少しずつ腰を動かし始めると、「うっ……」っと、まるで
腹痛でも訴えるような低い呻きを漏らした。
「うぐっ……うっ……」
よほど痛いのだろうか、先ほどまであれほど赤く染まっていたリナの顔色は白く
なっていた。噴き出した汗で、切り揃えられた前髪はぺったりと貼り付けている。奥歯を
きりきりと噛みしめ、少女は破瓜の痛みに耐えていた。
「リナ……。ごめん」
謝罪の言葉を口にしながらも、片野は更に体重をかけ腰をぐっとくねらせる。結合が
より一層深まった。少女はたまらず泣き声を上げ、ぽろぽろと涙を零しながら片野の背に
爪を立てる。
「もっ、もうやだ貴史くんっ……。謝るくらいなら、これ抜いてよぉっ……。あたし、
やっぱりまだ子供でいい。だからっ……」
こんな状況になってからそんな事を言われても、ここまで深く繋がり腰を動かそうと
していたところでやめられるわけがない。事実、こうしてじっとしている今でさえ
たっぷりと潤ったリナの体内はしなやかな弾力ときつい締め付けを持ち、四方八方から
片野を刺激して責め立てるのだ。今さら止めるなんて、生き地獄以外の何物でもない。
「すまん、後でなんだってする。けど、それだけは無理だ」
かわいそうな少女の顔をそれ以上見ていられなくて、片野はきつく目を閉じた。
申し訳ないと心の中で謝りつつ、欲望の赴くまま腰を小刻みにゆさぶってしまう。
壊れたレコーダーのように「いや」と「痛い」とだけ繰り返すリナをきつく抱きしめる。
陶器のように滑らかな肩を強く噛みしめる。荒い息もそのままに、ピストン運動を
ひたすら繰り返した。少女の膣内は幾重にもたわみ、深くまで侵入した際には
ペニスを誘い込むような締め付けを示し、入り口まで戻った際には押し返すような
弾力を見せる。その柔らかで温かで全てを包み込んでくる感触。
ああ、やはり彼女はもう子供ではない。あどけない外見の下でその身体は日々成長し、
密やかに女を磨いていたのだ。こんなにも自分を興奮させるほど。
「ぐっ……うぅ」
そのあまりの快感に、片野はうめき声を漏らす。気がつくと、昂りが限界を迎えて
いた。腰がぴったりと少女の足の間に押しつけられ、もっと奥まで行きたい、少女と
限界まで繋がりあって精を放ちたいと叫んでいる。ひたすら痛みに耐え、泣きじゃくって
いたリナも違和感を覚えたらしく顔を上げた。その濡れた顔に、新たな恐怖と
不安が走る。
「な、なに貴史くん……?あっ、やだっ!そんなに奥までしないで、これ痛い、
すごい痛いの!」
これで最後だから、もう少し我慢して欲しい。そう片野が告げる前に、主の意志など
無視したようにペニスが跳ね勝手に射精を始める。白濁した侵略者が、容赦なく
少女の未発達な子宮口へと叩きつけられた。既に鮮血に染まっていた粘膜を、
さらにどろどろに汚していく。
「やっ……や、やあぁぁぁぁっ!」
「くっ……。あ、出るっ……」
どくっ……どくっ……どくっ……。
まるで10代の少年のような、いつまでも後を引く絶頂に、片野は少女の身体に
しがみついて最後の快楽を貪った。
「あぁ、痛かった。もう、本当に裂けるかと思ったんだからー」
リナは、自分の肩を抱き寄せる片野を軽く睨みつけた。後始末も終え、二人は裸の
まま抱き合って寝そべっている。不思議だ。さっきはあんなに痛くて辛くて自分を貫く
片野が怖くてたまらなかったのに、何故か今は全然怖くない。それどころか、本当に
申し訳なさそうにすまなかったと繰り返し呟く、二回り近く年の離れた片野が可愛くて
愛おしくてならないのはどうしてだろうか。
それはきっと。リナがまた一歩、大人になったからで。
「リナ。悪かったって言ってるじゃないか。本当にすまん。どう詫びれば良いか……」
「えぇ?どーしよっかなぁー」
怒りの気持ちなど全く湧いていないにもかかわらず、リナはわざともったいぶって
頬杖をついた。目の前の片野のほおをつん、とつつく。
「じゃあねぇ、とりあえず来月からあたしのお小遣いアップして?それと、毎日アイス
クリームが食べたいなぁ。あと、明日からの家事当番はぜーんぶ貴史くんでお願い。
それにね、これからは今日みたいに一緒にいろんなとこ行きたいな、最低週一以上で。
あとあと……」
「お前なあ!いい加減に……」
「なによお、こんな子供を傷つけておいて。文句あるの?」
リナがつん、と顔をそらせると、思った通り片野は沈黙した。そして、リナの思惑通りに
屈服の呻きを漏らす。
「いや……わかった」
がっくりと枕に顔を埋める片野の耳に、リナはそっと囁く。
「なーんてね、冗談じょーだん。あたし、嬉しかったよ?最後まで貴史くんから大人扱い
してもらって。……だいすきだよ、貴史くん」
枕からゆっくりと男の顔が上がる。どちらからともなく、唇が重ねられた。

     おしまい






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2010年02月26日(金) 22:41:14 Modified by ID:Bo5P9jtb2Q




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