女 |
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…キミたち、ちょっといいかな? |
声をかけてきた女性は、
ジャーナリストの東海林(ショウジ)と
名乗った…。
ショウジ |
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私は今回の『東京封鎖』の事を 記事にしようと、色々調べているの。 …あ、『東京封鎖』ってのは、 私が勝手に呼んでるだけなんだけどさ…。 そういうワケで、キミたちから 話を聞かせて欲しいんだけど、 ノー・プロブレム? |
ショウジ |
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良かった、みんな自分の事で精一杯で、 インタビューもままならないの。 …ありがとう。 |
アツロウ |
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そりゃ、インタビューされたって、 電気がなきゃ放送されないもんな。 誰も答えたがらないよ…。 |
ショウジ |
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そういう問題じゃないわ。 この封鎖は、人権と報道の自由を奪う、 狂気の行為なのよ。 それにね…外に出る秘策があるの。 |
ショウジ |
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お願い、こんな封鎖をこのまま許したら、 人々の人権や、報道の自由を、 見殺しにするのと同じ事になるのよ。 協力してくれるなら、 外に出る秘策を教えるわ…。 |
アツロウ |
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そ、外に出る秘策!? マジかよっ! |
ショウジ |
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こっちの質問に答えてくれたらね。 まずは簡単なところから…。 昨日はどこで寝ましたか? つまり、ウェアで寝たかを答えて。 |
ショウジ |
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これはまた悲観的な意見ね。 超ブルーな見解なのね? フムフム…貴重だわ。 |
ショウジ |
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…ありがとう。 色々、参考にさせてもらうわ。 山手線内には何人が閉じこめられているか 正確には分からないけど、 数十万人単位である事は確かよ。 それなのに、この状況に対する政府の 対応は、何もしていないに等しいわ。 これは、民主主義にあるまじき、 非常識かつ、異常な事なの! 封鎖が解除されたら、 私はその理由を調べて、 全世界に公表するわ! |
アツロウ |
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頑張って下さいね! 応援していますから! それより、外に出る秘策って何っスか!? そんなもの、本当にあるんスか? |
ショウジ |
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ええ…。 キミたち、こんな話は知ってる? 首都高が地下鉄と繋がっているって…。 |
ユズ |
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そうだよね? 首都高って、高架でしょ!? 地下鉄が繋がるのワケないよ! |
ショウジ |
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…首都高も、一部は地下を通ってるのよ。 ちょうど迎賓館のあたり、 赤坂トンネルと呼ばれているわね。 坑内に一般車両は行けない枝道があって、 それが地下鉄と繋がっている…、 そういうウワサよ。 私はまだこっちでレポートを続けるわ。 もし、そっちから 脱出できそうなら教えてね! |
ユズ |
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ちょ…ちょっと待って! 聞きたい事があるんです!! この封鎖の理由、分かりますか? |
ショウジ |
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正確な事はまだ分からないけど、 怪物を逃さないため…、 というウワサよ。 まぁ、怪物と言われてもね…。 どうせデマだと思うけど。 |
ユズ |
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あ、あはは…。 それにしても、 みんな良くパニックを 起こさなかったですね〜。 |
ショウジ |
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ちゃんとした理由を聞かされたから、 パニックを起こさなかったのよ。 たとえそれがウソであってもね。 有毒ガスが出たので、立ち入り禁止。 地下で爆発があり、送電線が切れた。 安全が確認されるまで行動は慎重に。 パニック映画みたいな事って、 実際はなかなか起こらないわ。 …逆にそれで手遅れになる事があるの。 |
ユズ |
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えっ!? 手遅れ…!? |
ショウジ |
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そもそも、なぜ人がパニックを起こすか、 そのメカニズムを考えた事がある? |
ショウジ |
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それはそうだけど…。 それよりも、 なぜ、焦ってしまうのかが重要よ。 つまり、情報が不足している時に 最悪の状況を想像してしまう事から パニックは起こるのよ。 |
ショウジ |
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だから、例え間違えていようとも、 ちゃんと情報さえ与えておけば、 パニックはコントロール出来るの。 |
ショウジ |
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今回のパニックコントロールは、 周到に準備され、そして綿密な計画に 基づいて、実行に移されているわ。 …昨日は、『有毒ガスの発生』そして、 『原因不明だから調査中』という 対応中の演出をする。 そして今日になり『有毒ガスは可燃性』 という風に情報が更新される。 …この『情報が更新される』 という事が重要なの。 |
ショウジ |
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政府の発表により情報が更新されて、 調査は解決に向かっていると思えるから、 最悪の結末を想像しなくなるワケね。 もちろん賢明な人は、政府の発表を疑う でしょうけど、情報封鎖が功を奏して、 その声が公になる事はないわ。 人々は疑念を抱きながらも、黙って 救助を待ち続け、真実に気付いた時は、 すでに手遅れになってしまうワケよ…。 |
ショウジ |
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…だといいわね。 対策を取れていない人が、パニックを 起こさない事を祈りたいけど。 …でもね、死の危機に直面したとき、 自分たちが騙されていたと知ったら、 絶対に暴動が起こるわよ。 |
ショウジ |
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そうね、早ければ明日か…、 おそらく明後日あたりから 暴動が始まるんじゃないかしら。 そうなったら、 民間人は一斉に暴走するわよ。 |
アツロウ |
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げっ!? マジかよ…! |
ユズ |
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本当ですか!? 本当に、明日以降は…。暴動が…? |
ショウジ |
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今まで耐えてきた人が 暴動を起こして、秩序は崩壊し、 暴力が支配する世界が訪れる…。 このまま封鎖が続けば、 イヤでもそうなるでしょうね。 そうならない事を祈るけど…。 それじゃ、また会いましょう! |
ショウジは立ち去った…。
アツロウ |
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くそ〜! 早ければ、明日からパニック状態か…。 もし暴動とか起こったら、 悪魔の他に人間からも、 身を守らないといけなくなるぜ…! |
ユズ |
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うん、そうだね…。 |
アツロウ |
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それにしても『東京封鎖』か…。 あの人、原因は 怪物を逃さないためって言ってたな…。 |
アツロウ |
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どうかな…。 あの人がデマだと思ってるだけで、 やっぱり政府は、悪魔の存在を知ってる って考えるほうが自然じゃないか? …ってとこは、ただ待ってるだけで、 この封鎖が解かれる可能性は、 ほとんどなくなるワケだ…。 |
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