| アツロウ |
|---|
| …なぁ、（主人公）。 １０ＢＩＴさんから、 渡されたCOMPさ…。 |
何の話だっけ？ 
| はは…忘れちまったか。 まぁ、正直それどころじゃ なかったもんな、仕方ねぇよ。 |
衛国寺で渡されたヤツ？
| そう、それの話なんだけどさ…。 |
| そろそろ、あのCOMPの 中をのぞいてみようと 思うんだよ。 |
やめとけ
| ん…？ どうしてダメなんだ？ |
イヤな予感がする
| そっか…確かにな。 今のオレたちには、 他にやる事がある…。 …よし、分かった！ 中を見るのは、やめておくよ。 これは、封鎖を出られた時に、 １０ＢＩＴさんの遺族に渡す。 |
| ユズ |
|---|
| COMPが遺品なんて…、 ちょっと悲しいね…。 |
| アツロウ |
|---|
| …ああ。 そうだな…。 |
やっぱりやろう
（よし…！じゃあ〜）
いいんじゃない？
| よし…！ じゃあ、始めるぜ？ |
| ユズ |
|---|
| だ、だけどさ！ パスワードを間違えると、 ロックされちゃうんでしょ!? |
| アツロウ |
|---|
| ああ、そうみたいだな。 真剣、一発勝負だからさ、 みんなの知恵を貸して欲しいんだ。 ４ケタの数字で構成されてるんだけど、 彼がパスワードに使いそうなものって、 一体、何だろうな…？ |
| ユズ |
|---|
| ん〜と、誕生日とか、住所とか、 電話番号に、血液型とか？ |
| アツロウ |
|---|
| おいおい、そんなの今時、 銀行の暗証番号にも使わないぜ？ もっと、ひねってあるはずだよ。 |
社員番号は？
| そうか、彼の会社から交付された、 社員番号だな…？ …で、どうやって、 それを調べるんだな？ |
保険証番号は？
| そうだな、保険証の番号なら、 COMPが他人の手に渡っても、 そうそう知られるもんじゃないし…。 …まぁ、オレたちも、 例外なく、その他人に 当てはまっちますワケだけどな。 |
氏名は？
| なるほどなぁ、自分のフルネームを、 暗号化すれば、絶対に知られないし、 簡単に知られることもない。 …あ〜、ダメだ。 オレ、彼の本名は、 苗字しか知らないんだよ…。 |
ハンドルネームだ
| ハンドルネーム…。 『１０ＢＩＴ』が？ |
違うかな？
| や〜…どうだろうなぁ。 でも、彼がオレに託したって事は、 オレに分かる暗号って事だ。 ハンドルネームなら、 オレは確実に知ってるし、 あり得ない話じゃない…。 …一応、考えてみるか？ |
数字にならない？
| 数字か…やれそうだな。 一応。考えてみるか！ |
| ユズ |
|---|
| １０はそのまま数字でしょ？ っていうか、ＢＩＴ…って何なの？ |
| アツロウ |
|---|
| ＢＩＴ（ビット）は、プログラムで使う データサイズの最小単位だよ。 １ビットで、０と１の２種類を表せる。 |
| ユズ |
|---|
| ふぅん…２種類ね。 １０ビットってことは…、 １０×２で、２０種類？ |
| アツロウ |
|---|
| おっと違うんだなぁ、ソデコちゃん！ ビットは、ただの乗算じゃなくて、 ２の累乗で表されるんだ。 つ・ま・り、１０ビットを解く場合、 １の１０乗って事になる…エッヘン。 どうだ？ ちょっとは見直した？ |
| ユズ |
|---|
| あー…見直した、見直した。 ねぇ、（主人公）。 ２の１０乗って…いくつなの？ |
知るか
| アツロウ |
|---|
| そりゃそうだ…、 突然、聞かれて暗算できる 奴なんいねぇよ…。 ちなみに正解は、１０２４だ。 |
1024
| え…ぇええぇぇっ!? 正解です、１０２４…。 …まさか今、暗算したの!? 算数怪獣か…オマエは…。 |
2048
| まぁ…間違えて当たり前だわな。 突然、聞かれて暗算できる 奴なんいねぇよ…。 ちなみに正解は、１０２４だ。 |
| ん…？ １０２４…？ ４ケタになった…！ |
| ユズ |
|---|
| もしかして…それが正解なんじゃない!? ハンドルネームの事に気付くなんて、 凄いよ、（主人公）！ |
| アツロウ |
|---|
| 何だよ〜…オレの手柄も、 少しは認めてくれてもいいんじゃないの？ |
| ユズ |
|---|
| あーはいはい！ 早くやってみなさいよ、パスワード！ |
| アツロウ |
|---|
| わーヒドイ扱いだな、トホホ…。 よし、じゃ入れてみるぜ？ １…０…２…３…と。 |
| ユズ |
|---|
| ちょっと、アツロウ！ 間違ってるよ！ １０２４じゃないの!? いま、１０２３って入れたでしょ!? |
| アツロウ |
|---|
| まぁまぁ、落ち着けって。 プログラムの世界では、 ０も数として数えるんだよ。 だから０から数えて１０２４番目、 つまり、１０２３なんだ。 …おっ、ビンゴだ！ |
| ユズ |
|---|
| ああ、驚いた…。 もうっ、そんなの 普通の人には分かんないよ！ |
| アツロウ |
|---|
| だから、パスワードになるんだろ？ …それじゃ、読んでみるよ。 少し、時間をくれ。 |
| ユズ |
|---|
| 分かった、頑張ってね…。 |
| アツロウ |
|---|
| 何だよ…コレ…。 |
| ユズ |
|---|
| アツロウ、どうしたの？ 何か分かった !? |
| アツロウ |
|---|
| …ああ。 ＰＳＥ法って、知ってるか…？ |
| ユズ |
|---|
| ＰＳＥ法…？ |
| アツロウ |
|---|
| そうだ…。 電気用品の安全を確保するための 法律なんだけど、色々問題があるんだ。 専門機関の検査を受けていない 特定の電化製品は販売できないって いう法律なんだよ。 大学生の友達がずいぶん怒ってたよ、 金がないのに、新しいテレビなんて 買えるもんか、って…。 |
それがどうしたの？
話を続けてくれ
| ああ。 この法律、事業者はおろか、関連する 省庁にさえ十分な説明を行わないままで、 施行の直前に方針を告知したんだ。 おかげで、廃業に追い込まれた リサイクル業者も出たくらいなんだよ。 |
ニュースになった？
それで？
| ああ、施行直前になって、 事実を知った事業主や、 マスコミも騒ぎ出したからな。 ２００１年に施行されてから、 ２００６年まで５年間もの 猶予期間を設けたりもした。 |
| ユズ |
|---|
| あ…何か聞いた事はあるかも。 私、家電とか疎いからなぁ、 詳しくは知らなかったよ…。 |
| アツロウ |
|---|
| …そうだよな？ そうやって、時間をかける事で、 政府は国民を慣れさせて行ったんだ。 でも１０ＢＩＴさんや、 彼の知り合いのジャーナリストは、 そこに疑問を感じた。、 …そう、この法律には裏があったんだ。 |
| ユズ |
|---|
| う、裏…？ 何それ、だって電子レンジとか、 炊飯器とか、家電の話でよ!? |
| アツロウ |
|---|
| ああ、その通りだよ。 そして、それことが、 この法律のカラクリなんだ。 普段、何気なく使ってる電子レンジ…。 ユズの家にもあるよな？ アレの中身を見た事ってあるか？ |
| ユズ |
|---|
| えっ…!? 中身なんか…ないよ。 だって、電子レンジだもん。 |
| アツロウ |
|---|
| …そう思うよな、それが普通だ。 でも、国民たちがそう思うことで、 もうすでに、政府は目的を達したんだ。 ＰＳＥ適合商品の中身に、 謎のチップが埋め込まれてる事に、 誰も気付かないんだからな…。 |
謎のチップ？
政府が埋め込んだの？
| …ああ、そしてこれこそが、 知り合いのジャーナリストが失踪した きっかけだったって書いてある。 それを引き継いで、１０ＢＩＴさんが そのチップの中身を調べたところ、 …目的が、分かったらしい。 |
何が目的？
（特定の信号を〜）
外部からのコントロールか
| ああ…その通りだ。 |
| 特定の信号を受けると、 任意の出力に、 電源をコントロールするチップ…。 |
| ユズ |
|---|
| …どういう意味？ それで何が出来るの？ |
| アツロウ |
|---|
| そう、そしてその疑問を追った １０ＢＩＴさんは、やがて とんでもないものに行き当たった…。 それが政府の機密であり、 ＰＳＥ法の真の目的…、 『超電磁結界』だ。 |
| ユズ |
|---|
| 超…何それ？ テレビとか、ケータイからでてる 電磁波みたいなもの？ |
| アツロウ |
|---|
|…ああ。
『超電磁結界』は、
まさに、その電磁波を使った
超兵器なんだよ。
いいか…？
電磁波ってのは、
どんな電子機器からも出てるんだ。
まぁ…１つ１つは微弱だから、
全くと言っていいほど、
問題視されてないけどな。
でも、強力な電磁波は、
物質の運動を加速して発熱させる、
それこそ、電子レンジみたいにだ。
…ブラックジョークで、あっただろ？
ネコを電子レンジに入れて…ってヤツ。
つまり、沸騰死しちまうんだよ。|
| ユズ |
|---|
| うわ…なんて例えを出すのよ…。 でも、そこまで強い電磁波なんて、 そんな簡単に作れるの？ |
不可能だ
| アツロウ |
|---|
| ところが、波には合波ってのがあってさ、 ２つ以上の波が重なると、大きくなる。 物理で習わなかったっけ…？ |
簡単じゃないけど可能だ
| …その通り。 不可能じゃないんだ。 波には合波ってのがあってさ、 ２つ以上の波が重なると、大きくなる。 物理で習わなかったっけ…？ |
| １つ１つの家電は、 微弱な電磁波を出すに過ぎない。 だけど今の日本には、 家電製品があふれてる。 秋葉原を見れば、良く分かるだろ？ これら全ての家電に、ボタン１つで、 電磁波を発生させるチップが 埋め込まれている…。 それを誰かが一斉に制御すると…。 …どうだ？ |
| ユズ |
|---|
| ちょ…ちょっと！ 誰かって、その法律を作ったのは 政府なんでしょ？ 何のために、そんな危険なものを？ 国民を殺すような仕掛けをして、 一体、何をしようっていうのよ！ |
考えたくないね
| あっ…ごめん、（主人公）。 そ、そうだよね…。 |
侵略に対抗するため
| し、侵略って…！ じゃあ何 !? どこかの国が日本に攻めて来た時に…。 街を占拠した軍隊に向かって、 その『超電磁結界』って いうのを使うって事…!? |
| も、もういいよ、そんな話！ それよりも今は、私たちが 生き延びることを考えるべきでしょ？ ねぇ、２人とも行こう…！ |
| アツロウ |
|---|
| なぁ、（主人公）。 この話、今のオレたちに…、 本当に関係ないのかな…？ |
今は忘れよう
| …ああ、分かったよ。 でも、頭にはおいておこうぜ。 |
関係あるね
| だよな…。 |
| 今回の封鎖に、電力の遮断…。 『超電磁結界』と、 無関係であって欲しいぜ…。 |
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