じめんのした
最終更新：
thegreenway_46 2023年02月03日(金) 09:23:16履歴
じめんのした
＊環境的にあの害虫とか出てきそうですが描写すると自分のSAN値が削れてしまうためずんだもんだけでお送りしております
「うぎゃっ！」
「ぎゃあああ！！」
けたたましい悲鳴共に緑色の生き物が踏み潰され、緑色の体液が床に飛び散る。
ここは都心の駅の地下にあるフードコート内の厨房。潰されている生き物の名前はずんだもん。生息地を急激に増やしている妖精(自称)である。かつては枝豆を主食としていた彼らも生息域が広がるにつれてそれ以外のものも食べるようになり今は雑食と言って差し支えない種類のものを食べるようになった。森に住む種は藁の巣を作り冬を越すが、都会に住む種は虫のように冷蔵庫の裏や室外機等暖かい場所に巣を作って住み着くのである。そんなずんだもんたちにとって年中暖かく、頻繁に廃棄などの食料にありつける地下フードコートという場所はこの世の楽園に等しかった。
「またなかまがつぶされちゃったのだ！」
「にげるのだ！このごはんさんをもってかえろうなのだ！」
「くちょう！ごめんなのだみんな！」
「のだのだのだ！」
残ったずんだもんたちは冷蔵庫から盗んだ食べ物を持って冷蔵庫の裏側にある自分たちの巣に逃げ帰った。
「くそっ！何匹か逃しちまった！あいつらマジ1匹みたら30匹はいるからな…」
厨房スタッフが軽く舌打ちをして靴裏に付いた死体にアルコールを吹きつけ、ゴミ箱に放る。
「店長〜ずんだ虫用バ○サンとか使えないんですか〜？」
別のスタッフも店長に尋ねてみるが
「ウチは地下で換気も難しいし、食品を扱ってるからそういうのは難しいかな」
これはこの店に限ったことではない。地下街でずんだもんが増加している原因の一つである。繁殖力が高い上に明るいうちから這い出てくるため、見た目的にもよろしくない。彼らは生きるためにそうしているだけなのだが、人間にとって彼らはまさに害虫であった。
「上に掛け合ってなんか許可もらわないとなぁ…」
一方冷蔵庫のうら
「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！」
「おなかちゅいたよー！おかーちゃ！」
「もうすぐぱぱずんたちがごはんさんをもってかえってきてくれるのだ」
「のだー…のだー…」
「ずーん…ずーん…」
「のだのだのだ！」
「あっ！おとうちゃなのだ！」
「おかえりなのだぱぱずん！」
「おぎゃーのだ！おとーしゃ！」
「ごはんさんなのだ！ごはんさん！」
ぱぱずんの帰りを暖かく迎える一家。この冷蔵庫の裏だけで50匹近く…10前後の家族ずんだもんが暮らしている。この家族は2ヶ月前からここに住み始めた。それまでは自販機の下に住んでいたのだが、その自販機が撤去されてしまったのだった。ここは寒い風も吹かないし、何より食べ物が取り放題…と思っていたのだが、風はともかく食べ物には透明だったりキラキラした皮がついていて食べられなかったり、散歩をしていたら人間に気が付かれて子ずんが踏み潰されたり、ネズミに食べられたり、はたまた洪水が起こって仲間が家族ごと流されたりと決して楽とは言える環境ではなかった。それでも毎日袋にいれて置いていかれる食べ物や降ってくる食べ物など、食べるものにありつける確率は外にいた時よりは遥かに上がった。今回手に入ったのはキラキラした皮に包まれていたがこれはみんなで協力すれば剥くことができる。
「おちびちゃん、かわをむくのをてつだってほしいのだ！」
「わかったのだ！おとーとたち！よくみてるんだよ！」
2匹で皮の端をもち、引っ張ることで皮を破り、中の食料を取り出すことができた。今日手に入った青い皮の中には丸くて白い物が入っていたのだった。
「おとうちゃ、これはなんなのだ？」
「くんくん…さわやかなにおいなのだ…。」
「まるくてしろいのだ！きっとおもちさんなのだ！」
「おぎゃーのだ！おもちさん！おもちさん！」
「みんなでたべるのだ！」
「のだ！」「のだ！」
ずんだもんたちは白い「餅」に齧り付く。
「もぐもぐ！なんだかかたいけどおいちいのだ！」
「ぼりぼり！ふしぎしょっかんなのだ！」
「「おいち！おいち！」」
「わーん！おにーちゃがぼくのぶんをとったのだ！」
「あせらなくてもごはんさんはにげないのだ！なかよくわけようね！」
「はーいのだ！」
貧しいながらも幸せな家族の姿がそこにはあった。いつか子ずん達も大きくなって家族を持つことになるのだろう。ぱぱずんにはそれが楽しみだった。
翌日
「ずーん…ずーん…」
「おちびちゃんたち、いってくるのだ」
誰よりも早く起きたぱぱずんは食べ物をとりに冷蔵庫の裏から這い出した。
「よいちょ…よいちょ…」
この時間はまだ人間がいないので安全に食べ物を探すことができるのだ。
「おとなりさん！おはよーなのだ！」
「おはよーなのだ！」
「ねむねむのだ…」
この時間は誰もいないとわかっているため次々と他の家族も這い出してくる。人間達がやってくる前に食料を集めなくては。幸いなことに昨日の「餅」はまだ沢山あった。他の家族にあげても飢えることはないだろう
「みんな！きのうぴかぴかのかわにはいったおもちさんをみつけたのだ！たくさんあるからみんなでもっておうちにかえるのだ！」
「ほんとうなのだ？！」
「おもちさん！」
「おもちさん！」
皆ぱぱずんに連れられて普段の住処の隣にある大きな扉の前にやってきた。この扉は人間でないと開けることができないのだが、ネズミ穴ができており、段ボールで応急処置がされていたものの、ずんだもんたちはそこから入っていた。中にはさらに別の家族が住んでおり、ぱぱずんはその家族も誘って「餅」をとりに向かった。
「ぶるぶる！やっぱりここはちゃむいのだ！」
「でもごはんさんはたくさんあるのだ！さあここなのだ！」
ぱぱずんが示した先には四角い容器に大量に詰まっている「餅」があった。
「わぁー！ちゅごいのだ！ちゅごいのだ！」
「こんなにいっぱいあるのだ！これならふゆさんをこえてはるさんをむかえられるのだ！」
「ままずんとおちびたちもよんでみんなでおうちにはこぶのだ！」
「「「「のだ！！」」」」
そして全家族総出でのリレーが始まったずんだもんたちが一列に並び「餅」を冷蔵庫の裏の巣まで運び入れるのだ。
「うんちょ…うんちょ…」
「おちびちゃん！がんばって！」
「おとーちゃ！ぼく、おとーとたちのためにもがんばってごはんさんはこぶのだ！」
「けっこうはこんだのだ！」
「やったのだ！」
あれだけあった「餅」も残りわずかになっていた。このペースなら運び切れるだろう…そう思っていた。
「うおおおおおおおああああぁあああああああああ！！！」
鼓膜を震わせる悲鳴。まだ人間たちがくるのには早いはず…！？
「たまの早出になんつーもん見せてくれんだ！クソッタレが！」
人間は喚きながらこちらに向かって歩いてきた。
「みんなにげるのだ！」
「うわああああああああ！！」
「にんげんさんなのだ！」
「うわーん！こわいのだ！」
「おちびちゃん！」
咄嗟に声を上げるぱぱずん。人間は足を上げると逃げ回るずんだもんたちを踏み潰していった。
「へぶっ！！」
「おちびちゃ」
「やーやー！あしがいちゃいよ！はぁ…はぁ…たちけておとーぢゃッ！」
「うわーん！うわーん！おとーちゃとおかーちゃが！」
足の遅い子ずんや赤ずんから潰されていく。床が凸凹していることと、靴裏に隙間があることでひとふみで死なない子ずんもいたが何度も踏まれてすぐにずんだの塊に変わってしまった。
「とんでにげるのだ！」
「のだー！！」
「ふくちゅーちてやるのだ！」
「くらえなのだ！」
「おまえなんかにつかまらないのだ！ﾊﾍﾟｯ‼︎」
飛行し人間に体当たりするものもいたが全く通じず、手で振り払われた衝撃で壁にぶつかり死んでしまった。
「みんなおうちにもどるのだ！このままだとみんなちんじゃうのだ！」
「のだのだのだのだのだ！！」
ぱぱずんたちは全力で地面を這い、冷蔵庫の裏に戻ってきた。
「くそっ！どんだけいるんだよ…うわっ！なんで冷蔵室の扉ん中にもいんだよ！最悪だ…蝶番の裏にもいやがる…」
大きな扉の一家が見つかってしまったようだが他に構っている暇はない、自分たちも全滅する瀬戸際なのだ。後ろは見ずに一気に滑り込む。無事…とは言えないが全滅は免れたようだ。子ずんが全滅したり両親だけ死んでしまった家庭もあったがぱぱずんの家庭は奇跡的に誰も死んではいなかった。
「み、みんなぶじでよかったのだ…」
「うわーん！こわかったのだ！わーん！わーん！」
「もうだいじょうぶなのだおちびちゃんたち…、はっ！むこうのおうちはどうなったのだ！？」
ぱぱずんは隙間から隣の様子を覗き込む。すると…
「のだー…のだー…ん…もうあさなのだ…？」
「うわあ！にんげんさんなのだ！」
「こわいよ！おかあちゃ！」
「おちびちゃんはころさないで！もちもちでかわいいこなのだ！」
「ぼくたちはどうなってもいいのだ！このこたちだけでもかいずんにしてほしいのだ！」
「…」
「うるうるなのだ！」
「…」
「きらきらのだ！」
「ほら！こんなにかわいいおめめさんをしてるのだ！」
「まいにちしあわせになれるのだ！」
「…いや、お前達家族まとめて面倒を見てやるよ。準備するからここに全員集めな」
人間の言葉に両親と見ているぱぱずんは胸を撫で下ろす。よかった…これであの一家はこれから空腹や外敵に怯える必要はないのだ。
人間は厨房の奥へ向かって何やらゴソゴソ探し始めた。きっと移動するための巣であろう。一家は扉の隙間の家族を呼び出して扉前に集合させていた。
「うんしょ…うんしょ…」
「おちびちゃんたち！おひっこしなのだ！」
「きょうからにんげんさんのおうちでくらすのだ！いいこにしてるんだよ！」
「のだぁ？」
「おひっこし！の、だ、の、だ」
「るんるん！あたらしいおうちたのしみなのだ！」
ダンボールの裏や扉と床の隙間から子ずんが次々と這い出てくる。こうして一家15匹程度が揃ったのだった。人間はバケツと何かの入れ物を持って戻ってきた。
「うおぉ…こんなに扉の中にいたのか…よく見つからなかったな…これで全部か？」
「えっへんなのだ。みつかりそうなときはかげにいどうしてやりすごしてたのだ。おかげでこんなにかぞくがふえたのだ！」
「いつもお前ら何食ってんだ？」
「このなかにあるごはんさんとかにんげんさんがそこにおいていくごはんさんとかなのだ！」
「やっぱ生ゴミ常食してたのか…ほれ、準備できたからこの中に全員入れ」
「わかったのだ！おちびちゃんたちこのなかにはいるのだ！」
「のだ！」
「はーいのだ！」
「よいちょ…よいちょ…」
「あるくのちかれたのだ！」
「おなかすいたのだ！」
全員がバケツの中に入ったのを確認すると人間は入れ物の蓋を開けると
「にんげんさんのおうちはどこにあるのだ？」
中身をバケツの中にぶち撒けた。その瞬間…
「！？あががががががががががが！？」
「イギィ！！くるち…くるち！」
「はひっ！はひっ！かひゅー…かひゅー…」
「なんなのだこれ！くるち…たちゅけておかーちゃ！」
中のずんだもんたちが突然のたうちまわりだした。
「おぉ〜、漂白剤かけた時までGとそっくりなのなコイツら。口呼吸じゃないのかよ」
「に、にんげんさん…おせわしてくれるっていったのだ…どちて…どちて…」
一家はバケツの中で悲鳴をあげている。ぱぱずんは飛び出そうとする自分の足を止めるので必死であった。
「面倒見てやるとは言ったが飼うとは言ってないぞ。第一厨房で繁殖してるハエやネズミに「飼ってください」って言われて飼うわけないだろ、どんな病原菌持ってるか分りゃしない…。」
「ぼ、ぼくたちはなんにもわるいことちてない…のだ…」
「おとーちゃ…くるち…くるち…」
「ひぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ！ちんじゃう…もうだめ…」
「お前達に害意があるかどうかも見た目も関係ない。仮にも食品扱う場所だぞ、人間以外は猫だろうが犬だろうがアウトだ。だから責任持って消毒して殺してやる。」
見ているぱぱずんにもバケツの中の家族にもその言葉の意味はよくわからなかった。何故、どうして？それしか思い浮かばなかった。
「そんな…ひどいのだ…おちびちゃんたち…」
「ごめんね…ごめんね…」
「ひどいのだにんげんしゃん！」
「ががががががg！」
「中途半端に喋るし気分悪いぜ…早く業者来てくんねーかな…」
「ぼ、ぼくのおめめさん…みえなくなっちゃ…おかーちゃ、おとーちゃ…どこ？」
声が聞こえなくなった後、人間は一家の亡骸をまとめてゴミ箱に放り込んだ。
「さて、仕事始めるか」
それからぱぱずんはしばらく動けなかった。どうして人間はあんなに可愛い子ずんにあんなことができるのだろう。わからなかった。
自分たちの子も見つかればあんな風に残酷に殺されてしまうだろう。
「しばらくひるまのおさんぽはきんしなのだ！」
「どうちてなのだ？」
「おそとさんいきたいのだ！」
「おぎゃーのだ！ちゅまんないのだ！」
「にんげんさんにみつかったらみんなころさてしまうのだ！だめなのだ！」
「おちびちゃんたち、ぱぱずんのいうことをちゃんときくのだ！」
ぱぱずんは人間がいる時間帯の外出を禁止した。食料は大量に持って帰った「餅」があるし、水は冷蔵庫の下から湧いてくる。とりあえず人間が忘れるまで隠れておこうとぱぱずんは考えたのである。家族を守るために。
ーところ変わって厨房隣の冷蔵室
「さむ〜。早く準備しないと間に合わなくなっちゃうよ。全く妖精どもめ…。ん？」
スタッフは見つける。ずんだもんたちが箱の半分以上持って行った「餅」を。
「なんでコレがこんなに減ってるんだ…？」
ー野田芽(のだめ)製薬ー
「はい野田芽製薬です。はい…はい。なるほど、弊社の製品にはそう言った食品を扱う企業様向けの駆除プランもございます。はい…では来週の火曜日ですね。はい、では、失礼致します…」
続く
後書き
短編書こうとしたら長くなりました。(憤怒)
子ずんが擬音使うのとか〇〇さんとかいうのがとても好きなので今回もやらせていただきました。この物語は結末が決まっているので完結までお付き合い頂けると嬉しいと思います。
ps.今回の虐め方はクロークス様の「都会の越冬-最終手段-」に着想を得たものです。
＊環境的にあの害虫とか出てきそうですが描写すると自分のSAN値が削れてしまうためずんだもんだけでお送りしております
「うぎゃっ！」
「ぎゃあああ！！」
けたたましい悲鳴共に緑色の生き物が踏み潰され、緑色の体液が床に飛び散る。
ここは都心の駅の地下にあるフードコート内の厨房。潰されている生き物の名前はずんだもん。生息地を急激に増やしている妖精(自称)である。かつては枝豆を主食としていた彼らも生息域が広がるにつれてそれ以外のものも食べるようになり今は雑食と言って差し支えない種類のものを食べるようになった。森に住む種は藁の巣を作り冬を越すが、都会に住む種は虫のように冷蔵庫の裏や室外機等暖かい場所に巣を作って住み着くのである。そんなずんだもんたちにとって年中暖かく、頻繁に廃棄などの食料にありつける地下フードコートという場所はこの世の楽園に等しかった。
「またなかまがつぶされちゃったのだ！」
「にげるのだ！このごはんさんをもってかえろうなのだ！」
「くちょう！ごめんなのだみんな！」
「のだのだのだ！」
残ったずんだもんたちは冷蔵庫から盗んだ食べ物を持って冷蔵庫の裏側にある自分たちの巣に逃げ帰った。
「くそっ！何匹か逃しちまった！あいつらマジ1匹みたら30匹はいるからな…」
厨房スタッフが軽く舌打ちをして靴裏に付いた死体にアルコールを吹きつけ、ゴミ箱に放る。
「店長〜ずんだ虫用バ○サンとか使えないんですか〜？」
別のスタッフも店長に尋ねてみるが
「ウチは地下で換気も難しいし、食品を扱ってるからそういうのは難しいかな」
これはこの店に限ったことではない。地下街でずんだもんが増加している原因の一つである。繁殖力が高い上に明るいうちから這い出てくるため、見た目的にもよろしくない。彼らは生きるためにそうしているだけなのだが、人間にとって彼らはまさに害虫であった。
「上に掛け合ってなんか許可もらわないとなぁ…」
一方冷蔵庫のうら
「おぎゃーのだ！おぎゃーのだ！」
「おなかちゅいたよー！おかーちゃ！」
「もうすぐぱぱずんたちがごはんさんをもってかえってきてくれるのだ」
「のだー…のだー…」
「ずーん…ずーん…」
「のだのだのだ！」
「あっ！おとうちゃなのだ！」
「おかえりなのだぱぱずん！」
「おぎゃーのだ！おとーしゃ！」
「ごはんさんなのだ！ごはんさん！」
ぱぱずんの帰りを暖かく迎える一家。この冷蔵庫の裏だけで50匹近く…10前後の家族ずんだもんが暮らしている。この家族は2ヶ月前からここに住み始めた。それまでは自販機の下に住んでいたのだが、その自販機が撤去されてしまったのだった。ここは寒い風も吹かないし、何より食べ物が取り放題…と思っていたのだが、風はともかく食べ物には透明だったりキラキラした皮がついていて食べられなかったり、散歩をしていたら人間に気が付かれて子ずんが踏み潰されたり、ネズミに食べられたり、はたまた洪水が起こって仲間が家族ごと流されたりと決して楽とは言える環境ではなかった。それでも毎日袋にいれて置いていかれる食べ物や降ってくる食べ物など、食べるものにありつける確率は外にいた時よりは遥かに上がった。今回手に入ったのはキラキラした皮に包まれていたがこれはみんなで協力すれば剥くことができる。
「おちびちゃん、かわをむくのをてつだってほしいのだ！」
「わかったのだ！おとーとたち！よくみてるんだよ！」
2匹で皮の端をもち、引っ張ることで皮を破り、中の食料を取り出すことができた。今日手に入った青い皮の中には丸くて白い物が入っていたのだった。
「おとうちゃ、これはなんなのだ？」
「くんくん…さわやかなにおいなのだ…。」
「まるくてしろいのだ！きっとおもちさんなのだ！」
「おぎゃーのだ！おもちさん！おもちさん！」
「みんなでたべるのだ！」
「のだ！」「のだ！」
ずんだもんたちは白い「餅」に齧り付く。
「もぐもぐ！なんだかかたいけどおいちいのだ！」
「ぼりぼり！ふしぎしょっかんなのだ！」
「「おいち！おいち！」」
「わーん！おにーちゃがぼくのぶんをとったのだ！」
「あせらなくてもごはんさんはにげないのだ！なかよくわけようね！」
「はーいのだ！」
貧しいながらも幸せな家族の姿がそこにはあった。いつか子ずん達も大きくなって家族を持つことになるのだろう。ぱぱずんにはそれが楽しみだった。
翌日
「ずーん…ずーん…」
「おちびちゃんたち、いってくるのだ」
誰よりも早く起きたぱぱずんは食べ物をとりに冷蔵庫の裏から這い出した。
「よいちょ…よいちょ…」
この時間はまだ人間がいないので安全に食べ物を探すことができるのだ。
「おとなりさん！おはよーなのだ！」
「おはよーなのだ！」
「ねむねむのだ…」
この時間は誰もいないとわかっているため次々と他の家族も這い出してくる。人間達がやってくる前に食料を集めなくては。幸いなことに昨日の「餅」はまだ沢山あった。他の家族にあげても飢えることはないだろう
「みんな！きのうぴかぴかのかわにはいったおもちさんをみつけたのだ！たくさんあるからみんなでもっておうちにかえるのだ！」
「ほんとうなのだ？！」
「おもちさん！」
「おもちさん！」
皆ぱぱずんに連れられて普段の住処の隣にある大きな扉の前にやってきた。この扉は人間でないと開けることができないのだが、ネズミ穴ができており、段ボールで応急処置がされていたものの、ずんだもんたちはそこから入っていた。中にはさらに別の家族が住んでおり、ぱぱずんはその家族も誘って「餅」をとりに向かった。
「ぶるぶる！やっぱりここはちゃむいのだ！」
「でもごはんさんはたくさんあるのだ！さあここなのだ！」
ぱぱずんが示した先には四角い容器に大量に詰まっている「餅」があった。
「わぁー！ちゅごいのだ！ちゅごいのだ！」
「こんなにいっぱいあるのだ！これならふゆさんをこえてはるさんをむかえられるのだ！」
「ままずんとおちびたちもよんでみんなでおうちにはこぶのだ！」
「「「「のだ！！」」」」
そして全家族総出でのリレーが始まったずんだもんたちが一列に並び「餅」を冷蔵庫の裏の巣まで運び入れるのだ。
「うんちょ…うんちょ…」
「おちびちゃん！がんばって！」
「おとーちゃ！ぼく、おとーとたちのためにもがんばってごはんさんはこぶのだ！」
「けっこうはこんだのだ！」
「やったのだ！」
あれだけあった「餅」も残りわずかになっていた。このペースなら運び切れるだろう…そう思っていた。
「うおおおおおおおああああぁあああああああああ！！！」
鼓膜を震わせる悲鳴。まだ人間たちがくるのには早いはず…！？
「たまの早出になんつーもん見せてくれんだ！クソッタレが！」
人間は喚きながらこちらに向かって歩いてきた。
「みんなにげるのだ！」
「うわああああああああ！！」
「にんげんさんなのだ！」
「うわーん！こわいのだ！」
「おちびちゃん！」
咄嗟に声を上げるぱぱずん。人間は足を上げると逃げ回るずんだもんたちを踏み潰していった。
「へぶっ！！」
「おちびちゃ」
「やーやー！あしがいちゃいよ！はぁ…はぁ…たちけておとーぢゃッ！」
「うわーん！うわーん！おとーちゃとおかーちゃが！」
足の遅い子ずんや赤ずんから潰されていく。床が凸凹していることと、靴裏に隙間があることでひとふみで死なない子ずんもいたが何度も踏まれてすぐにずんだの塊に変わってしまった。
「とんでにげるのだ！」
「のだー！！」
「ふくちゅーちてやるのだ！」
「くらえなのだ！」
「おまえなんかにつかまらないのだ！ﾊﾍﾟｯ‼︎」
飛行し人間に体当たりするものもいたが全く通じず、手で振り払われた衝撃で壁にぶつかり死んでしまった。
「みんなおうちにもどるのだ！このままだとみんなちんじゃうのだ！」
「のだのだのだのだのだ！！」
ぱぱずんたちは全力で地面を這い、冷蔵庫の裏に戻ってきた。
「くそっ！どんだけいるんだよ…うわっ！なんで冷蔵室の扉ん中にもいんだよ！最悪だ…蝶番の裏にもいやがる…」
大きな扉の一家が見つかってしまったようだが他に構っている暇はない、自分たちも全滅する瀬戸際なのだ。後ろは見ずに一気に滑り込む。無事…とは言えないが全滅は免れたようだ。子ずんが全滅したり両親だけ死んでしまった家庭もあったがぱぱずんの家庭は奇跡的に誰も死んではいなかった。
「み、みんなぶじでよかったのだ…」
「うわーん！こわかったのだ！わーん！わーん！」
「もうだいじょうぶなのだおちびちゃんたち…、はっ！むこうのおうちはどうなったのだ！？」
ぱぱずんは隙間から隣の様子を覗き込む。すると…
「のだー…のだー…ん…もうあさなのだ…？」
「うわあ！にんげんさんなのだ！」
「こわいよ！おかあちゃ！」
「おちびちゃんはころさないで！もちもちでかわいいこなのだ！」
「ぼくたちはどうなってもいいのだ！このこたちだけでもかいずんにしてほしいのだ！」
「…」
「うるうるなのだ！」
「…」
「きらきらのだ！」
「ほら！こんなにかわいいおめめさんをしてるのだ！」
「まいにちしあわせになれるのだ！」
「…いや、お前達家族まとめて面倒を見てやるよ。準備するからここに全員集めな」
人間の言葉に両親と見ているぱぱずんは胸を撫で下ろす。よかった…これであの一家はこれから空腹や外敵に怯える必要はないのだ。
人間は厨房の奥へ向かって何やらゴソゴソ探し始めた。きっと移動するための巣であろう。一家は扉の隙間の家族を呼び出して扉前に集合させていた。
「うんしょ…うんしょ…」
「おちびちゃんたち！おひっこしなのだ！」
「きょうからにんげんさんのおうちでくらすのだ！いいこにしてるんだよ！」
「のだぁ？」
「おひっこし！の、だ、の、だ」
「るんるん！あたらしいおうちたのしみなのだ！」
ダンボールの裏や扉と床の隙間から子ずんが次々と這い出てくる。こうして一家15匹程度が揃ったのだった。人間はバケツと何かの入れ物を持って戻ってきた。
「うおぉ…こんなに扉の中にいたのか…よく見つからなかったな…これで全部か？」
「えっへんなのだ。みつかりそうなときはかげにいどうしてやりすごしてたのだ。おかげでこんなにかぞくがふえたのだ！」
「いつもお前ら何食ってんだ？」
「このなかにあるごはんさんとかにんげんさんがそこにおいていくごはんさんとかなのだ！」
「やっぱ生ゴミ常食してたのか…ほれ、準備できたからこの中に全員入れ」
「わかったのだ！おちびちゃんたちこのなかにはいるのだ！」
「のだ！」
「はーいのだ！」
「よいちょ…よいちょ…」
「あるくのちかれたのだ！」
「おなかすいたのだ！」
全員がバケツの中に入ったのを確認すると人間は入れ物の蓋を開けると
「にんげんさんのおうちはどこにあるのだ？」
中身をバケツの中にぶち撒けた。その瞬間…
「！？あががががががががががが！？」
「イギィ！！くるち…くるち！」
「はひっ！はひっ！かひゅー…かひゅー…」
「なんなのだこれ！くるち…たちゅけておかーちゃ！」
中のずんだもんたちが突然のたうちまわりだした。
「おぉ〜、漂白剤かけた時までGとそっくりなのなコイツら。口呼吸じゃないのかよ」
「に、にんげんさん…おせわしてくれるっていったのだ…どちて…どちて…」
一家はバケツの中で悲鳴をあげている。ぱぱずんは飛び出そうとする自分の足を止めるので必死であった。
「面倒見てやるとは言ったが飼うとは言ってないぞ。第一厨房で繁殖してるハエやネズミに「飼ってください」って言われて飼うわけないだろ、どんな病原菌持ってるか分りゃしない…。」
「ぼ、ぼくたちはなんにもわるいことちてない…のだ…」
「おとーちゃ…くるち…くるち…」
「ひぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ！ちんじゃう…もうだめ…」
「お前達に害意があるかどうかも見た目も関係ない。仮にも食品扱う場所だぞ、人間以外は猫だろうが犬だろうがアウトだ。だから責任持って消毒して殺してやる。」
見ているぱぱずんにもバケツの中の家族にもその言葉の意味はよくわからなかった。何故、どうして？それしか思い浮かばなかった。
「そんな…ひどいのだ…おちびちゃんたち…」
「ごめんね…ごめんね…」
「ひどいのだにんげんしゃん！」
「ががががががg！」
「中途半端に喋るし気分悪いぜ…早く業者来てくんねーかな…」
「ぼ、ぼくのおめめさん…みえなくなっちゃ…おかーちゃ、おとーちゃ…どこ？」
声が聞こえなくなった後、人間は一家の亡骸をまとめてゴミ箱に放り込んだ。
「さて、仕事始めるか」
それからぱぱずんはしばらく動けなかった。どうして人間はあんなに可愛い子ずんにあんなことができるのだろう。わからなかった。
自分たちの子も見つかればあんな風に残酷に殺されてしまうだろう。
「しばらくひるまのおさんぽはきんしなのだ！」
「どうちてなのだ？」
「おそとさんいきたいのだ！」
「おぎゃーのだ！ちゅまんないのだ！」
「にんげんさんにみつかったらみんなころさてしまうのだ！だめなのだ！」
「おちびちゃんたち、ぱぱずんのいうことをちゃんときくのだ！」
ぱぱずんは人間がいる時間帯の外出を禁止した。食料は大量に持って帰った「餅」があるし、水は冷蔵庫の下から湧いてくる。とりあえず人間が忘れるまで隠れておこうとぱぱずんは考えたのである。家族を守るために。
ーところ変わって厨房隣の冷蔵室
「さむ〜。早く準備しないと間に合わなくなっちゃうよ。全く妖精どもめ…。ん？」
スタッフは見つける。ずんだもんたちが箱の半分以上持って行った「餅」を。
「なんでコレがこんなに減ってるんだ…？」
ー野田芽(のだめ)製薬ー
「はい野田芽製薬です。はい…はい。なるほど、弊社の製品にはそう言った食品を扱う企業様向けの駆除プランもございます。はい…では来週の火曜日ですね。はい、では、失礼致します…」
続く
後書き
短編書こうとしたら長くなりました。(憤怒)
子ずんが擬音使うのとか〇〇さんとかいうのがとても好きなので今回もやらせていただきました。この物語は結末が決まっているので完結までお付き合い頂けると嬉しいと思います。
ps.今回の虐め方はクロークス様の「都会の越冬-最終手段-」に着想を得たものです。
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このページへのコメント
ちょっと中途半端でスッキリしないですね。
Gみたく勝手に住み着いて繁殖するものの、特に口汚くもない、見た目“だけ”なら特に不快要素も無い、言葉が通じるし言うこと聞く……
飲食店でさえなければ、上手く利用、いや共存もできそうですね
大量に持って帰った「餅」の正体や食品を扱う企業用の駆除プラン
続きが楽しみです
共存させずに皆殺しにしてほしい
禿同!こんなマメカス如きに慈悲なんざ、注ぐな!!
この手の作品では珍しく駆除される側の視点で書かれていて読んでいて楽しかった
ただ生きているだけで悪いことをしているつもりなんて無くても無慈悲に殺されるのいいですね
冷蔵庫にしまう様なものだから冷蔵庫用の消臭剤とか防菌剤とか？
石鹸ですかね？
餅の正体が気になる