じめんのした 後編
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thegreenway_46 2023年02月06日(月) 18:50:46履歴
「はぁ…はぁ…いちゃい…どういうことなのだ…？」
這いつくばり尻を振りながらぱぱずんは人型に尋ねる。
「そのままの意味なのだ。お前らは駆除されるために生み出され、今日まで生きてきたのだ。」
「うそなのだ！ぼくはおとーちゃとおかーちゃからうまれて、いきてきたのだ！」
「それはそうなのだ。正確にはお前たちという「種」を生み出したという方が正しいのだ。」
人型は語り始める
「お前は初めから街に住んでいるから知らないと思うがずんだもんは元々森に住んでいたのだ。森林開発により住処は減ってしまったが彼らは人里に降りることはしなかった。降りても死しか待っていない事を分かっていたのだ。だが、どんな種にも頭の弱いやつというのは必ず出てくるのだ。山を降りて街に出てきたずんだもんがいたのだ。そいつは人間の食べ物の味を知ると自分の家族と賛同者を連れて街へ来た。悲しいかな、目立ってしまうやり方だったため全員直ぐに捕まった。彼らを捕まえた企業はネズミや害虫駆除を行ったり殺虫剤、殺鼠剤を開発している製薬会社だった。当時、会社はライバル企業との差別化に悩んでいたのだ。今時駆除なんて値段くらいでしか判別できないからな…。で、この企業は考えたのだ。新種の害獣を生み出し、自ら専門的な駆除方法を提供する事で他の企業に差をつけられるのでは無いか…とね。」
「それとぼくたちとなんのかんけいがあるのだ！」
「お前が聞く最後の話なのだ。黙って聞くのだ。」
人型はぱぱずんにデコピンをかます。体重の軽いぱぱずんにとっては力士のぶちかましくらいに感じる一撃だった。
「のぎゃっ！いちゃい！はぁ…はぁ…」
「続けるのだ？そこで捕まえたずんだもん達を対象に様々な実験を行い生態を把握した企業はずんだもんの品種改良に挑んだのだ」
「ひんしゅかいりょう…？」
「元々出産は3-4匹だったのを数10匹単位で妊娠後直ぐに産まれるようにし、ずんだ餅や木の実を食べる植物主体の食性は食べられるものはなんでも食べる雑食性に！性格はより獰猛に！知性は限りなく低く！…その結果生まれたのが今街ずんと呼ばれているお前らの種なのだ。お前達のおかげで野田芽製薬は今業界No.1の売り上げを誇っているのだ。なんてったって自分の会社で常に研究が終わってから野に放っているからね…。薬剤耐性が付いても対抗する薬品を最も早く出せるのだ。要するに…最早お前達はずんだもんでも妖精でもないのだ。駆除するためだけに生み出された虫…ずんだ虫なのだ！」
「でたらめなのだ！ぼくはずんだもんなのだ！ようせいなのだ！むしなんかじゃないのだ！かとーちぇーぶちゅじゃないのだ！」
「ふふふ…虫だって生き残るために進化して現在の姿になっているのだ。そこには下等も上等もないのだ。お前達のように増えたり減らされたりするためだけの種こそよっぽど下等ではないのだ？」
「うそをつくななのだ！ぼくたちはようせいなのだ！くちょにんげんにつくられたちないのだ！」
「信じる信じないはお前の勝手なのだ。どうせお前はここで死ぬのだ。好きな考えを持って死ぬといいのだ。」
「や！や！ちにたくない！やだ！やだ！」
ぱぱずんの意識が白く塗りつぶされていく。
もう考えることも出来なくなるだろう。
(おちびちゃん…ままずん…みんな…どうちてこんなことになっちゃったのだ…みんなでたのちくくらしてるだけなのに…)
「ひどいのだ…」
それが最後になった。力尽きたぱぱずんを薬剤が他のずんだ虫のように分解されていく。
「最後まで被害者ヅラか…。ままええわ。結構楽しめたのだ。冷蔵庫の裏が空いていればまたそのうちコイツらはやって来るのだ。またのご利用をお待ちしているのだ。」
誰もいない空間に向かって1人呟く人型。
作業完了報告を会社に済ませると荷物を抱え彼は地上へ戻っていくのだった。
ー3ヶ月後、野田芽製薬ー
昼食をとりながら話す2人の人型の姿がそこにはあった。
「いやあ、この間の飲食店のは凄かったのだ、扉開けたらたりないやつとヘコずんだらけだったのだ」
「へえー。街ずんはやっぱり繁殖力凄いんだね。」
こうして僕が海外に行っている間の出来事を聞くのは楽しい。僕はずんだもん。名前は妖精と一緒だけど僕の家系は代々人型で、妖精だったのは遥か昔の事らしい。かつては寧央(ねいおう)大学の学生だった僕も卒業して社会人となった。今は教授の推薦もあり大手製薬会社である野田芽製薬で働くサラリーマンになった。主な仕事は世界中に生息するずんだもんの生態研究。ずんだもん用の治療薬なんかの開発にデータが必要だそうだ。今回も昨日まで出張で東南アジアの熱帯雨林まで新種のずんだもんの捕獲をしていたのだ。
「今回は結構長い出張だったのだ。そんなに捕まえるのに手こずったのだ？」
「いやあ、捕まえるのは簡単だったんだけど思いの外種類が多くてね…。」
「ふうん…。やべ、昼休み終わっちゃうのだ！その話また今度聞かせてな！」
バタバタと自分の持ち場に戻る同僚。彼は駆除班に所属しており、依頼があれば街ずんの駆除に出かけるがそれ以外の時はオフィスでデスクワークをしている。さて僕も戻らないとな。僕は食器を片付けるために席を立つのだった…。
ー今日もまた、何処かの街でー
「くんくん、ここからいいにおいがするのだ！」
「きっとごはんさんがあるのだ！みんなでいくのだ！」
「「「「のだ！！」」」」
『ずんだ虫にお困りのあなた。駆除のご依頼は是非野田芽製薬まで！〇〇○ー△○×□ー〇〇△□』
ー完ー
作者コメ
完結です。完全に蛇足くせえのですが、設定だけ発表したかったので書きました。この設定が真である！とは思っていません。私の作品の中ではこういう感じくらいに捉えていただけると。最後までありがとうございました。
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このページへのコメント
森ずんと街ずんが別物として書かれている他作品でも、森ずんは比較的賢く善良な個体が多いのに、街ずんは愚かな害獣ばかりである事の理由付けがされている作品は珍しいですね
野田芽製薬の商法の為のマッチポンプだとは…
どんな種にも頭の弱い奴はいる…確かにその通りだし、そんな奴らは野田芽製薬が絡んでようがいまいが害獣になって人々の迷惑になっていただろうから、また野田芽製薬の役には立ってるだけまたマシなのかもしれないですね…
最終的には「のだのだ」「ずんち」「おいしーのだ」「へこへこ」「たねちゃんでる」「めーきなのだ」「きもちーのだ」などの単語を喋って繁殖するだけのほぼほぼ虫になって行くのだろうなあ…
やはりあの害獣どもは人間のマッチポンプによって｢意図的に異常な繁殖力と貪欲な狂暴さ、愚かさ｣に品種改良された存在だったか……
畜生……たとえここだけの設定だとしても、存在自体が吐き気を催すほどキモくて忌々しいずんだ虫共が｢意図的に｣生み出され日本中……いや世界中にばらまかれて生態系や人間社会に深刻な悪影響を与えてるとは……もはや完全に"ずんだハザード"によって世界が変えられ(汚染され)、人もずんだもんも野田芽製薬の掌の上で踊らされてるも同然じゃないか!?!?
この妖精ずんだもんはくちょにんげんの思惑で進化したのだから被害者ヅラなんて言われてるけどそういう側面も少なからずあると思ってんすがね。こんな掘った穴を埋めるような仕事やるやつの気が知れない
まあ被害者面してはいるのは確かではありますがね…
人間（野田芽製薬）のエゴで品種改造されて街に放たれて生かされ殺されてるので人間側も悪いと言えば悪いですが、ずんだ虫共だって元々森や山にいれば良いものを人里に降りてきたから捕まってこんな事されてる訳だし、生きる為とは言え人間の食べ物を盗み、人間の生活空間に勝手に住み着いたりしているし、被害者面して良い立場ではないのですよ
野田芽製薬も他の製薬会社との差別化・競争の為とは言え、よくこんな事するなというのはごもっともな所ですが…
マッチポンプオチ大好きです。虫さんとは今後とも『仲良く』していきたいですね